第30期プロリーグ A2 第7節レポート
2013年10月10日
今節は別日対局が2卓ということで行われたのは1卓のみ。
首位を独走する勝又に対し、4位・石渡、7位・仁平、9位・山井、10位・遠藤の5名での対局となった。
今期のA2リーグは9節36半荘での戦いという事で、残る半荘は後12回。
勝又がどういった戦い方をするかにも注目が集まるところではあるが、私が注目したいのは他4名の戦い方。
ここまでの勝又の内容はまさに盤石であるが、これ以上勝又に楽に首位を走らせたくないという想いは4者の共通した想いだろう。さらには、例年になく激戦の昇級争いにも注目したいところである。
初戦の抜け番は勝又。
勝又との差を詰めたい4者ではあるが、現在プラスしている石渡と仁平としては、昇級争いに何とか踏みとどまりたい気持ちが強いはずであろうし、僅かながらにマイナスしている山井と遠藤にとっても、これ以上マイナスを増やす事は即降級争いに繋がるだけに、何とかプラスに転じたいところだ。さらには、今節の結果如何では、山井や遠藤にも昇級の可能性は十分にあるだけに、勝又のいない初戦での戦い方に注目してみたいと思う。
東1局、早くもこの日の方針がはっきりと見える瞬間がやってくる。
西家・石渡の6巡目、
ツモ ドラ
絶好のドラをツモっての石渡の選択は?
石渡が選んだのは切りのヤミテン。
上家の仁平が、前巡にを切ったことも理由の1つであろうが、石渡はここで確実にアガりをつけることを選んだのだろう。
すると同巡、山井が打。そして9巡目石渡ツモ。
切りの‐‐待ちでも出アガリとツモアガリを果たしていた石渡だが、直後に山井からが放たれて8,000と一歩リードすることに成功したのだ。
石渡の選択は、A2リーグで戦う上で最善で最良の策である様に映った。
ヤミテンで出て満貫、ツモって跳満の手を、慎重に且つテンパイ気配を出さぬように摸打を繰り返す石渡の背中からは、「絶対に昇級争いに踏みとどまってやる」といった決意すら感じられた。もちろん、毎節緒戦の入り方に苦しむスロースターターの石渡にとっては、待ちに待った先手を奪える絶好のチャンスであっただけに、この東1局を制することが出来た事は大きなエネルギーとなった事だろう。
対して、不運な形にて放銃スタートとなってしまった山井はどうだろうか?
続く東2局、西家・山井の7巡目、軽快なテンポで毎回摸打する山井の手が止まる。
ツモ ドラ
タンピン三色の変化を見越していた山井に訪れた牌は、ターツ選択に迫られる。
場をじっくりと見渡した山井が選んだ打牌は、手役を落とさずタンヤオを確定させる打。
するとツモ、打。ツモとテンパイを果たすと、打とシャンポンのテンパイを選択。
そこに仁平からリーチが飛んでくる。
仁平のリーチは、
ドラ
打点こそ低いが、待ちとしては十分の‐‐待ち。
同巡山井、ツモと絶好の手変わりを果たすと、迷うことなく間髪入れずに打のリーチを宣言するのだ。
前巡、山井がカンでのテンパイを選択していると、ツモで打と仁平に放銃という結果に終わっていた。場にが2枚切れというのも山井には幸いしたが、仁平の攻めをしっかりと交わした上での跳満リーチ。時間はかかったが、前局の負債を瞬間で返済することに成功した山井。
リーチ ツモ
石渡と山井の選択は実に対照的であるが、どちらも最後まで昇級争いに踏みとどまりたい気持ちが十分に出たアクションだと感じる。勝又が抜け出している現在、現実的には昇級の最後の一席を争う戦いは最終節まで縺れ込みそうな予感がする。
さて、山井の上手い選択で競り合いに負けた形となってしまった仁平。
この日の仁平は、私の知っている仁平とは全く違って、まるで別人の麻雀を見ているような打牌選択とその内容に、今節は大きくマイナスを増やす形になってしまった。
例えば東4局1本場、石渡が切った1枚目のを仕掛ける仁平の牌姿は、
ドラ
ポンして1シャンテンとはいえ、ドラも無いこの形から仕掛ける仁平は怖くない。
この仕掛けの結末は、
ポン ツモ 打
この1シャンテンからを切って遠藤に放銃。
「山井さんに競り負けた所から嫌な予感はありました。」
とは仁平のコメント。
確かに、常に先手を取られ苦しい中での対局が続いたのは間違いないが、それにしても仁平らしくない戦いの連続だったことは否定できず、苦しんでいる中、顔を上げてしまっての放銃が続いてしまった事は残念で仕方がない。ポイントも▲95.2Pと大きくマイナスし、昇級を争うどころか降級争いに足を踏み入れてしまった仁平。
苦しい戦いが続くが、最後まで粘り強く戦い続けてもらいたいと願う。
不調の仁平に対し、この日好調だったのは遠藤。
首位を走る勝又が、
「遠藤さんはホントに強かった。」
と語るだけあって、状態の良さを感じる1日となった。
前述の仁平からの出アガリも5巡目、
ツモ 打 ドラ
このテンパイからテンパイ取らずの打。
手牌変化を見越した余裕ある打牌は、心身ともに充実している事を実感する一打だ。
実際はツモ打と、自身が思い描いた形とはいかなかったものの、遠藤自身が語るスタイルの変化を十分に感じさせる対局だったように思う。
例えば3回戦南2局1本場、仁平の6巡目三色リーチ、山井の7巡目リーチを受け、10巡目に三軒目のリーチを宣言した遠藤の手は、
リーチ ロン ドラ
このメンホンから移行のドラ単騎リーチ。
腹を括った攻めに、このドラを掴んでしまうのは不調の仁平。
このようなリーチを打ったかと思えば、4回戦東1局は、
ロン ドラ
この満貫をそっとヤミテンに。そして勝又から価値ある7,700を召し取る。
この日の遠藤は+50.5Pと借金完済に成功。これで降級を気にすることなく残り2節を昇級を狙った戦い方に重心を置けることは、遠藤にとって大きな自信となる1日となったに違いない。
さて、勝又を追いかける石渡と山井はどうだろうか?
開局に大きなリードを奪う事に成功した石渡だったが、その後は苦しい状況が続く。初戦も遠藤と山井の攻勢を受け3着に終わると、続く2回戦、3回戦共に我慢の展開。それでも最終戦、東3局南家で、
ポン ツモ ドラ
この3,000・6,000と、続く親番で、
リーチ ツモ ドラ
この4,000オールで、この日のプラスを確保した石渡は、4位から2位へと昇級圏内へ浮上。
一期でのA1復帰に希望を繋いだ。
一方山井はというと、この日は終始門前で攻める姿勢を崩さず、常に場を支配する戦いで局面をリードしていた。放銃もあるが、手数でも圧倒していた山井の姿勢を象徴したのが次の牌姿。
ラス目で迎えた東4局に、遠藤から7,700をアガって迎えた南1局の親番、
ドラ
配牌ドラ暗刻の手がこの牌姿まで育った1シャンテン、上家から出た4枚目のを悠然とスルー。
「鳴いて失敗するより、鳴かないで失敗する方がいい。」
とは山井。
結果は別として、このような構えで山井が戦い続ける限りは、爆発力がある山井にも最終節までにもうワンチャンス訪れる可能性もあるだろう。
そして最後に首位勝又。
この日は初戦トップを奪うも、どこか周りと噛み合わない場面が多く見られた。
とは言っても、A2屈指の試合巧者であり、首位を快走する今の勝又には多少の負債は問題ないのかもしれない。最終戦、南場の親番が落ちてから、2,000・4,000、6,400、3,900と怒涛の3連続アガリで一瞬にしてトップを奪取。この日もプラスでまとめ、開幕からの連続プラスも7節まで伸ばした。
勝又の今期の安定感を見る限り、残り2節で大きくポイントを減らすとは到底考えられない。最終節は1位~5位での上位対戦が行われるとはいえ、勝又の昇級はほぼ確定したと言ってもいいだろう。
勝又が抜け出してしまっただけに、実質の昇級枠は残り1つ。その僅か1つの枠を9位山井までが争う形となろう。牽制しあう戦いが予想されるだけに、最終節の最終戦まで昇級枠を争う戦いが続くのは間違いない。
昇級争いに増して厳しいのが降級争い。
10位・仁平から16位・山田までのポイント差は約70P。
残留ボーダーの滝沢のポイントが▲79.5Pだけに、誰が残留しても不思議ではないだろう。
最終節は下位5名での戦い。降級枠は4つであるから、各人共に次節までに是が非でも10位以上に浮上したいと考えるはずだろう。
別日対局を残しているとはいえ、上位と下位が大きく分かれる形となってしまったA2リーグ。これだけの混戦模様になってくると、1半荘、1局たりとも無駄に出来ない厳しい戦いが続くだろう。別日対局で一歩抜け出した選手が、昇降級争いを一歩リードすることになりそうだが、現実的にはやはり勝又を除く上位4名と下位5名の選手の中で昇降級が決定すると見るがどうだろうか?とすると、次節の結果が最終的には大きく影響するのは間違いない。
残り2節、最後まで熱いA2リーグから目が離せないだろう。
カテゴリ:プロリーグ(鳳凰戦)レポート