プロリーグ(鳳凰戦)レポート

プロリーグ(鳳凰戦)レポート/第30期プロリーグ A2 第4節レポート

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いつの間にか梅雨入り宣言したかと思えば、東日本は記録的少雨に見舞われ、農作物の生育までも多大な影響を及ぼすほどに人々の生活に混乱を来している異常気象。
そんな中、関東甲信越地方はこの日、梅雨明け宣言が発表されていた。
日差しは梅雨明けに相応しいほど強烈な熱さを齎していたが、リーグ戦会場も大勢のギャラリーに包まれ、それと変わらぬくらいの熱気を帯びていた。
「止まない雨は無い」
誰が言ったか知らないが、良く出来た言葉だ。
麻雀でも同じことが言える。
劣勢が続いたとしてもその状況が永遠に続くはずもなく、いつか好転する時を待ち、じっと機を窺う事もまた、必要な事なのだろう。
長いリーグ戦も中盤戦を迎え、少しずつではあるが縦長の展開になってきた。
下位に低迷する者も、このままの位置で指を咥えて大人しくしているほどお人好しではないだろう。
いつか状況が好転する時までじっと我慢を続けるのか、それとも自身のアクションに変化をつけ一気の浮上を目論むのか、興味は尽きない。
今期のA2リーグは15名で行われているため、全卓5人打ちでの対局となっている。
卓割りが発表された後、各卓に分かれ抜け番抽選が行われる。この抽選の結果も興味深い所なのだが、私は今節抜け番となった選手の動きにも注目して観戦してみた。
1回戦抜け番は滝沢、金子、四柳。
四柳と金子は卓の後ろに陣取り、戦いの行く末を見守る。滝沢は1人離れた場所から、同じ時間に対局しているB2リーグの様子を窺っているようだ。こういった部分を見るのも選手の心理を図る上では重要な事なのかもしれない。
今回私は運営の計らいで、首位を争う山井と前田、そして佐々木、滝沢、刀川の卓を注目しながら、残り2つの卓を同時に見ることの出来る場所に腰を下ろし、全ての戦いに目を光らせながらの観戦が始まった。
首位を争う山井と前田の共通点は、とにかくテンポがイイという事。その2人に、Aリーグ屈指の打牌スピードを誇る佐々木が入っての対局となるのだから、観ているギャラリーの思考が追いつかないこともしばしばだろう。慎重に歩を進める刀川も、3人のペースに合わせようとしているのか、いつもより心なしか打牌のテンポが早いような気がする。
そんな打牌スピードに合わせるように、淡々と、いや、粛々と、と言った方が正しいのかもしれないが、局が進んでいく。
ポイントを持っている2人は牽制しあっているのか、また、脇の2人が抜け出すことを阻んでいるのか、観ているこちらが怖くなるくらいの雰囲気で戦っているのだ。
そんな雰囲気の中、まずぶつかり合ったのが佐々木と山井。
東1局、先手を奪いたい佐々木は5巡目のファーストテンパイで即リーチ。
二万三万四万六万七万八万七索八索九索三筒五筒七筒七筒  リーチ  ドラ三筒
その佐々木の思惑を知っているかのように、山井が押し返す。
九万北六筒七索と無筋を四万連打。そしてリーチ。
同じカンチャンリーチではあるが、追っかけリーチを打つだけの勝算が山井にはある。
山に残り3枚のこのカン八索をあっさりとツモり、山井が開局に抜け出すことに成功する。
五万六万七万一索一索二索三索四索七索九索三筒四筒五筒  リーチ  ツモ八索
続く東2局は、刀川が6巡で佐々木から1,600を、東3局は前田がこちらも7巡で刀川から1,300を、東4局はまたしても刀川が6巡で佐々木から1,300をアガるのだが、驚くのはその3つのアガリともテンパイ直後のロンアガリだということ。つまり、どのアガリも相手に自分の影をも踏ませることなく最速のアガリを手にしているという事だ。
打点的にも牌姿的にもアガった当人には満足いかないものなのかもしれない。
しかしそれ以上に、放銃した相手やギャラリーには強烈な印象を残すのではないか。
東1局に先手を取りながらも競り負け、そしてこの2つのアガリに放銃をした佐々木の心境は如何なるものか。自らが進むべき道を突き進む道中に立ち塞がる障害の持つ意味を、佐々木は敏感に感じているに違いない。だからこそ、南1局1本場の山井の7巡目リーチにも敢然と立ち向かい、生牌のドラまで押し切ってアガリを掴み取ることが出来たと、私は思っている。
一索一索二索三索三索五索六索七索四筒四筒五筒六筒七筒  ロン二索  ドラ南
しかし、そこまでして戦う姿勢を見せたとしても、オーラスを迎え佐々木の点数は25,500。
首位を走る山井は33,100。以下刀川30,800、前田30,600。
試合巧者の3人の後塵を拝する形となっている佐々木は、12巡目に以下のテンパイ。
四万五万六万六万七万八万三筒四筒五筒五筒六筒七筒七筒西  ドラ西
佐々木が取ったアクションは、当然のように七筒切りリーチ。
だがしかし…
佐々木のスタイルとしてはこのアクションが自分らしさなのかもしれない。ファンが佐々木に望むべき形はこれなのだろうし、本人に聞いたとしても恐らく悔いは残らないと語るのだろう。私自身もフラットな状態であったり、自分に追い風が吹いていると感じているなら七筒切りリーチを好むタイプであるだけに、これが平時での佐々木の選択であるなら何の異論もない。
しかし今現在、佐々木にとって逆風が吹いているからこそ、この瞬間だけは違う選択があってもいいのではと私は感じた。遮二無二トップを奪いに行く姿勢こそが佐々木の持ち味なのは重々承知しているが、長いリーグ戦の道中だけに【ラスを受け入れる】姿勢も必要かと。東1局の競り負けから始まった劣勢を打破する瞬間は、リーグ戦だからこそ1日単位で判断する選択もあったのかもしれない。
このリーチの恩恵を受けたのは、ドラが雀頭の前田。
16巡目、首位を争う山井が、佐々木の現物をツモ切ると、その前巡にようやく追いついた形の前田がロン。
一万二万三万七万八万三索四索五索七索八索九索西西  ロン九万  ドラ西
この半荘でも首位を走り、昇級争いでも凌ぎを削る山井から望外の3,900で逆転トップ。幸先の良いスタートを決める。放銃し3着に転落した山井は次戦が抜け番。2回戦が行われている最中、1人離れた所に腰を下ろしじっと瞑想している様子はいつもと同じ。しかし、いつも以上に集中し心を落ち着かせるように努めている様子に、次戦以降の復調の気配が感じられた。
2回戦、山井に代わり卓に着いたのは滝沢。しかし、滝沢にいきなりの試練が訪れる。
東1局に刀川に5,200を、続く東2局には親の前田に18,000を献上し大きな負債を背負う事になる。
苦しい状況に追い込まれていた滝沢だが、東2局2本場には、
七万八万九万九万六索七索八索三筒四筒五筒六筒七筒八筒  リーチ  ツモ六万
南1局2本場には、
二万三万四万三索四索一筒一筒二筒三筒四筒六筒七筒八筒  リーチ  ロン二索
この二発の三色をアガるものの、刀川と前田の勢いに押され持ち点を割ってしまう。
1回戦に苦しい戦いを強いられた佐々木と共に、大きなマイナスを押し付けられた形でのスタートとなってしまった。
別卓に目を移すと、石渡、右田、仁平の元A1リーガーに、黒沢が挑む形となったこの卓では、ここまでの勢いのままに黒沢がトップで初戦を終える。しかし、黒沢の独走を許さないのは抜け番中じっと対局を見つめていた四柳。2回戦、その黒沢にラスを押し付ける形で四柳が大トップ。ポイントを更に上積みし、絶好のスタートを切った。
もう1つの卓では、勝又が好スタート。
山田から7,700、12,000と召し取り、今節も盤石なスタートを切ったと感じたのだが、この2つのアガリで勝又が勢いづいたのではなく、逆に放銃した山田に受難の時が訪れる格好になってしまったようだ。
同卓の遠藤、白鳥に対しても放銃が相次ぎ、終わってみると1人沈みの大きなラスに。
結果、山田がこのダメージを払拭することは出来ず、この日はこのまま1人で大きな負債を抱える格好に。
元A1リーガーの山田に早くも黄信号が灯ってしまったが、地力はある山田だけに早急な立て直しを期待したいところだ。
好スタートを切った刀川と前田。対する滝沢と佐々木は苦しい立ち上がり。山井も緒戦のオーラスの放銃がどこまで響くものかと不安視していたのだが、今期好調の前田が抜け番の3回戦、不調を感じた3者が刀川を捕らえる。いや、捕らえるというよりもそれぞれの地力で不調を抜け出すきっかけを作ったという方が的確か。
3回戦、緒戦と同様に東場は粛々と局が進むものの、南場に入り一気に場が動く。
まずは滝沢の復調の瞬間から。
南1局、親番の滝沢は9巡目にリーチ。
このリーチを受けた山井は七対子ドラドラのテンパイも待ち取りに悩む。
1枚切れの北か、七筒の選択。長考しギリギリまで悩むも、七筒が打ちきれなかった山井は打北
すると次巡、滝沢のツモは北。瞬間ポーカーフェイスの山井の表情が一瞬だが歪む。
放銃を回避した形となった滝沢は、ハイテイで大きな3,200オール。
南3局にも刀川から8,000をアガリ、この半荘のトップをモノにする。
苦しい展開が続いていたのは佐々木も同じ。
南2局、親番も刀川の3巡目リーチを受ける。
それでも佐々木は戦う姿勢を崩さずにギリギリまで押し切り、大きな4,000オール。
このアガリによってこの半荘のプラスを確定させると、今度は山井も黙ってはいない。
オーラス、1,300・2,600のツモアガリで何とかプラスを確保。緒戦のマイナスを帳消しに。
このアガリが勢いのきっかけとなったのか、4回戦の開局で、
三索三索四索四索六索六索六索  ポン三筒三筒三筒  暗カン牌の背白白牌の背  ツモ三索  ドラ中
この4000オール。さらにラス前、オーラスと7,700、3,900と加点に成功。
大きなプラスでこの卓でのトータルトップに躍り出たのだ。
全体の成績に目を移すと4回戦までの成績では四柳が+40P程上積みし首位を独走ムード。
以下山井が+30P、前田が+15P弱それぞれ加点して最終戦へ。
最終戦抜け番の勝又は+35Pで90Pオーバー。別卓の様子を窺う。
最終戦も首位の四柳は盤石の出来。ラス前までトップで迎えるものの、最後に落とし穴が。
ここまで苦しい状況の続いていた仁平が渾身のヤミテン。
一万二万三万五万五万二索三索三索四索五索一筒二筒三筒  ロン一索  ドラ三索
この放銃で一気に3着へ転落。
今節も大きくポイントを伸ばしたものの、本人にとっては悔いの残る結末だったのではないか。
山井にとっても最終戦は苦難の連続。
昇級を競う前田に7,700を献上すると、そのまま浮上のきっかけを掴めずにラスで終局。
また、トップ目に立った前田も、南2局の親番で痛恨の打牌ミス。
更なる加点が見込めただけに、本人も後悔の色を隠せない。
そんな中、逆転トップは滝沢。緒戦を終え▲45Pと大きなマイナスを抱えたものの、終わってみれば最小限のマイナスに終えた事は本人も満足だろう。現状は苦しい位置に立つ滝沢だが、後半戦の巻き返しも十分に期待できるのではないか。
「止まない雨は無い」
苦しい状態に置かれた時の対応の良し悪しが、結果に如実に反映される結果となってしまった今節。
各選手の打開策は人それぞれであることは承知しているが、ゴール地点は皆同じ。最終節を終えた時点でどのポジションにいるかを競っているリーグ戦だけに、一打一打の選択に後悔が無いような、意志のこもった打牌を繰り返してもらいたいと願う。