麻雀日本シリーズ/女流プロ麻雀日本シリーズ2017 第2節レポート 楠原 遊
2017年02月10日
女流プロ麻雀日本シリーズ、予選第2節が行われた。
1節までの成績は以下の通り。
1位 和泉由希子 +69.1P (3/8)
2位 和久津晶 +29.5P (2/8)
3位 大平亜季 +23.2P (1/8)
4位 魚谷侑未 +17.7P (3/8)
5位 朝倉ゆかり +12.8P (2/8)
6位 仲田加南 +10.4P (3/8)
7位 二階堂亜樹 ±0.0P (0/8)
8位 高宮まり ▲8.7P(2/8)
9位 宮内こずえ ▲56.2P(2/8)
10位 大崎初音 ▲97.8P(2/8)
※()内は予選半荘消化数
※予選全20回戦(各自8回対局)を行いポイント上位8名がプレーオフ進出
※プレーオフ全4回戦(各自2回対局)ポイントを持ち越し上位4名が決勝進出
※ルールに関してはこちら→女流プロ麻雀日本シリーズ2017第1節レポート
役満が2回飛び出す大荒れの開幕戦となった第1節。大きなトップ2つでアタマ1つ抜けた形の和泉、初戦の東1局で48.000点を放銃し苦しいポイント状況となった大崎。各選手消化済みの半荘数は0~3回とバラつきはあるものの、まだ予選の4分の1が終わったばかり。
後半戦の戦い方を左右する、予選第2節がはじまった。
6回戦 魚谷+17.7P 亜樹±0.0P 和泉+69.1P 朝倉+12.8P ※数字はトータルポイント
二階堂亜樹 第14回女流モンド杯優勝・第2・3期女流桜花・第3期プロクイーン・天空麻雀9・10女性大会優勝
日本プロ麻雀連盟所属。多くのメディア出演と対局での実績で女流プロナンバーワンの知名度を誇る。守備的・俯瞰的とされる彼女の麻雀が、WRCルールでどのように発揮されるのか注目していきたい。
東3局 5巡目 南家 朝倉
西家の魚谷がカンを入れてリーチ
暗カン ドラ カンドラ
それを受け北家の亜樹
現物ではない–待ちだが、ヤミテンに構えを押していく。
リーチをすれば裏ドラ2枚めくれるピンフ高目イーペーコーだが、ドラドラの振り替わりもある手で、どっしりと構える。
すぐに魚谷がを掴んで2,000点のアガリ。場を良く見て手を作る、亜樹らしい1局となった。
南1局 2本場
南家の亜樹が仕掛けてこの形
ポン ドラ
一方前局4,000は4,100オールをアガった魚谷は、ドラドラ。
9巡目に上家の朝倉の打ったこのをスルー。
三色とドラのの両天秤、以前の魚谷であればチーの一手もあったのか、と思われるがここはじっくりと手を作ってゆく。
そこに西家・和泉からリーチが入る。
リーチ
場が一気に緊迫するが、ここは
ポン ポン
ここから放銃回避の切りを選択した亜樹が見事にをツモって2,000・4,000。
南2局、9巡目、親の亜樹が仕掛ける。
ドラ
ここから1枚目のをポンして打。手を大きくする鳴きだ。
そこに北家の魚谷もこの形。
ポン
この時、トップ目魚谷41,100点、2着目亜樹40.500点。半荘のトップを決めてしまうような展開かと思われた。
ここに西家・和泉がテンパイ。
親番が残っているとはいえドラドラのチャンス手。待ちのはリーチをしなければほぼ4人でツモるような牌だけに和泉の判断に注目が集まるが、ここでの選択はヤミテン。丁寧に攻めてすぐに朝倉から5,200のアガリ。
攻撃型、というとリーチを多用する打ち手を想像する方も多いと思うが、和泉の攻撃は「アガるチャンスを逃さない」ことに重点を置くものだ。それに基づいたこの瞬間の判断が、鮮やかに決まった局だった。
南3局、ドラのが4者にバラけた形。
一番はじめにテンパイしたのは朝倉。
チー ドラ
ここからを切って単騎。次にテンパイを入れたのは亜樹。
ここからこちらもを切って単騎。
そして3人目のテンパイは魚谷。
ツモ
ギリギリまでを引っ張っていたが、ここはテンパイで朝倉に3,900の放銃となった。
各者ドラを最後まで大切にした面白い局となった。
オーラスは魚谷の1人テンパイで、亜樹がトップを守る形で半荘が終了した。
6回戦結果
亜樹+24.5P(1/8) 魚谷+14.2P(4/8) 朝倉▲12.6P(3/8) 和泉▲27.1P(4/8)
※()内は予選半荘消化数
7回戦 宮内▲56.7P 亜樹+24.5P 和泉+42.0P 大平+31.3P
東2局、北家の宮内が、と仕掛けていく。
ポン ポン ドラ
南家の和泉
親の亜樹
ここから場に出づらいであろうに期待しない切りとする。
宮内からのプレッシャーのある仕掛けと、2者のテンパイに挟まれた大平。
宮内に切りづらいピンズと字牌、そしてドラの。かの選択になるが、ここは冷静に場を見渡し切り。親への放銃を回避した。
待ち替えした和泉が亜樹から1,600をアガリ、東2局を終わらせる。
東3局、南家の大平が先行リーチ。
リーチ ドラ
そこに押し返していく親の和泉もテンパイ。
が現物のため、一旦ヤミテンとする。
ほどなくして無筋のを持ってきてツモ切るが、この手にロンの声を掛けたのは宮内。
ロン
リーチ者の大平とそれに押し返す親の和泉、この2人の間隙を縫った宮内のヤミテンがしっかりと決まった1局となった。
南3局、13巡目、西家・宮内の先行リーチ。
リーチ ドラ
親の亜樹はリーチを受けてこの形。
ドラ3の1シャンテンとなったが、丁寧に現物のを切ってゆく。すぐにを引いて、の三色ドラ3のテンパイとする。
結果は2人テンパイで流局となった。
実際、は宮内のテンパイの入り目の牌でドラ筋。切りづらい牌ではありも見た目ほど残っていない。注目すべきは
最後の手番の大平。宮内のハイテイをずらそうかという逡巡があったように見えた。
もし亜樹がのトイツ落としで待ちヤミテンとなり大平が宮内のハイテイをずらしていたら、宮内がを掴み亜樹にタンピンドラ3の放銃となった局であった。
麻雀のたらればはつきないが、映像対局だからこそわかる牌の後先も、このシリーズの楽しみの1つだろう。
オーラスは大平のリーチに、ドラの手変わりを待った亜樹が追いかけて出アガリ、3着で半荘を終了。宮内は嬉しい初トップとなった。
7回戦結果
宮内+23.2P(3/8) 大平+7.9P(2/8) 亜樹▲2.2P(2/8) 和泉▲28.9P(5/8)
8回戦 高宮▲8.7P 和久津+29.5P 大崎▲97.8P 仲田▲10.4P
東2局、親の和久津がドラも切って8巡目にこの1シャンテン。
ドラのも躊躇なく切っていた和久津はここでもノータイムの切り。手を高い方に伸ばしていく。ほどなくしてダブを引いてダブ・ツモり三暗刻のシャンポンリーチに踏み切る。
そこに追いついたのは南家の大崎。
ドラ
現物のドラ待ちだがここは追っかけリーチ。7巡後にドラを引き裏が1枚乗って3,000・6,000。ポイント的にビハインドがある大崎にとって、大きな大きなアガリとなった。
和久津にのターツが残っていればツモアガリの可能性もあったが、アガリやすさよりも打点を取ったオリジナルのプロセスに、ファンは興奮したことだろう。
東4局、先行したのは親の仲田。
ドラ
場に安いピンズ待ちでの11巡目ドラドラリーチ。
そこにじっくり手を育てていた北家・大崎もすぐに追いつきこの手をヤミテン。
しかしこの卓に、ここで大人しくしているプレイヤーはいない。
西家・和久津もすぐに追っかけリーチ。
リーチ
3者に挟まれた高宮は現物の牌を切りながら丁寧に立ち回り、
フリテンながら4人目テンパイ。ヤミテンに構えるも、すぐに自身で切っているをツモり返し400・700。各者の勝負手の間を縫った値千金のアガリとなった。
オーラス、ラス親の仲田が肉薄するも、大崎が自身でアガりトップを守り切った。
8回戦結果
大崎+24.2P(3/8) 仲田+11.4P(3/8) 高宮▲11.9P(3/8) 和久津▲23.7P(4/8)
9回戦 朝倉+0.2P 大平+31.1P 魚谷+31.9P 高宮▲20.6P
南1局1本場
ドラ
親の朝倉が9巡目この手から1枚切れのを先に1枚外す。そして直後に北家の高宮がをポン。
ポン
そして南家・大平はこのツモ。
チンイツにいく選択肢もあったが、ここはツモ切り。
このをポンして高宮がテンパイ
ポン ポン
先に高宮のロン牌であるを処理していた朝倉の判断が光る。
そしてここで西家・魚谷もテンパイ。
しかしポンされていることもありヤミテンに構える。
そして朝倉も終盤、仕掛けてテンパイ。
チー
片アガリの安手となるが、周りのスピードと足並みを揃えるとやむなしの仕掛けか。
しかしここでアガったのは、チンイツに向かわなかった大平。
ツモ
4者がテンパイする中で、他者がアガる前に、しっかりと自身で局を捌く。手におぼれず、他者とのスピードの測り方の上手い大平ならではのアガリとなった。
南2局1本場
北家・朝倉がドラを切ってリーチ
リーチ ドラ
そのドラを鳴いて南家・魚谷もテンパイ。
ポン
しかしここでもアガったのは捌き手。
ロン
ひっそりとテンパイを入れていた高宮が、魚谷から3,200。メンツ手とトイツ手、どちらに向かうか難しい手だったが、ここはノーミスでリーチとドラポンをかわすアガリをものにした。
南3局
3巡目、ラス目の親の魚谷の手はドラドラ。ツモは。ここで魚谷が選択したのは切り。
何気ない選択の1枚だが、ロスを減らし、広く受け入れる非常に魚谷らしい一打といえる。
9巡目、魚谷の手はこのように変化していた。
ツモ ドラ
ここでの選択は。ドラを活かしつつ手広く受けたい。次巡、を引いて、さらに受け入れ枚数を増やし、さらに次巡のツモで待望のテンパイ…と思いきやこれがたったいま張った大平に捕まる。
ロン
魚谷らしい間違いの無い手順でストレートなテンパイとなったが、先にテンパイしていた大平に高目で放銃してしまう。トータルトップ目になっていた魚谷にとっては苦しい半荘となった。
9回戦結果
大平+46.2P(3/8) 高宮+6.9P(3/8). 朝倉▲9.4P(5/8) 魚谷▲43.7P(4/8)
10回戦 亜樹+22.3P 和久津+5.8P 大平+77.3P 宮内▲33.0P
東2局、北家の亜樹が6巡目リーチ。
リーチ ドラ
そのリーチを受け南家・大平、8巡目にこの形。
自身のシャンテン数を考えると2枚切れのドラを外す選択肢もあったが、ここは筋のを切って粘る。そして筋などを切って手を育てる。
手をしっかり育て好形ドラドラの1シャンテンとなったところにアタリ牌のを引いてくる。ドラの無い子のリーチ。先ほどよりも押したくなるが、ここは一旦切り。を引きさらに迂回。
そのままアタリ牌を止めテンパイかなわず亜樹の1人テンパイでの流局となったが、大平の粘りが大きく光った1局となった。
東3局3本場、和久津がドラドラのリーチ。
リーチ ドラ
しかし大平もドラドラテンパイ
トータルトップ目、この半荘でもトップ目だがここは追っかけリーチ。
安目はもう山にいないリーチだったが、高目のを一発でツモりメンタンピン一発ツモイーペーコー表表裏の8,000オールでリードをさらに広げる結果となった。
そのまま大平の連荘は続き、5本場、6本場と続く。
東3局6本場
そしてついに6本場まで来た。他の3者は何としてでも大平の親を流したい。しかしうかつに攻めての攻め返しも怖い。
この局、最初にその名乗りを上げたのは和久津だった。
リーチ ドラ
しかし親の大平もドラドラの手。
この手から無筋のを押していく。しかし和久津にばかり任せてもいられない。仕掛けて亜樹も続く。
チー ポン 打
2人がかりでの親流しは亜樹のツモで決着。
4人にとってとても大きな300・500は900・1,100となった。
南3局、北家・和久津の6巡目リーチ
リーチ ドラ
それを受け、廻っていた西家・亜樹の手が12巡目にこちら
この形になるも、フリテン含みということもありラス目ながらここから我慢の(6)切り。
そしてそこから大平が終盤にテンパイ。
宮内も続いて
この形でテンパイ。しかしハイテイで生牌のを掴み、冷静にこちらもオリ。
熾烈な2着・3着争いの中で、アガリに向かいたくなる局面ではあるが、ここは打たないことにより次局に勝負のチャンスの残した形となった。
オーラス 2本場
亜樹にドラドラの勝負手が入る。
ドラ
この手をリーチ、ラス親で連荘したい宮内から8,000は8,600をアガリ、南3局での我慢で残した条件を活かす形で、4着から2着へと大きく着順を上げた。
10回戦結果
大平+48.5P(3/8) 亜樹+2.9P(4/8) 宮内▲15.1P(4/8) 和久津▲30.5P(4/8)
以上をもって第2節の対局が全て終了した。結果は以下の通り。
システム
■予選全20回戦(各自8回対局)を行いポイント上位8名がプレーオフ進出
■プレーオフ全4回戦(各自2回対局)ポイントを持ち越し上位4名が決勝進出
■決勝全4回戦
予選成績
順位 | 名前 | 1回戦 | 2回戦 | 3回戦 | 4回戦 | 5回戦 | 6回戦 | 7回戦 | 8回戦 | 半荘消化数 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 大平 亜季(女流最高位) | 23.2 | 7.9 | 46.2 | 48.5 | 4/8 | 125.8 | ||||
2 | 仲田加南(女流桜花) | ▲ 10.0 | 45.9 | ▲ 25.5 | 11.4 | 4/8 | 21.8 | ||||
3 | 二階堂 亜樹(女流モンド杯優勝) | 24.5 | ▲ 2.2 | ▲ 2.9 | 3/8 | 19.4 | |||||
4 | 和泉由希子(連盟会長推薦) | ▲ 40.9 | 80.9 | 29.1 | ▲ 27.1 | ▲ 28.9 | 5/8 | 13.1 | |||
5 | 朝倉ゆかり(女流雀王) | 7.0 | 5.8 | ▲ 12.6 | ▲ 9.4 | 4/8 | ▲ 9.2 | ||||
6 | 魚谷 侑未(モンド王座優勝) | 12.5 | 0.8 | 4.4 | 14.2 | ▲ 43.7 | 5/8 | ▲ 11.8 | |||
7 | 高宮 まり(前年度優勝) | ▲ 20.2 | 11.5 | ▲ 11.9 | 6.9 | 4/8 | ▲ 13.7 | ||||
8 | 和久津 晶(連盟会長推薦) | 37.5 | ▲ 8.0 | ▲ 23.7 | ▲ 30.5 | 4/8 | ▲ 24.7 | ||||
9 | 宮内 こずえ(プロクイーン) | ▲ 9.1 | ▲ 47.1 | 23.2 | ▲ 15.1 | 4/8 | ▲ 48.1 | ||||
10 | 大崎初音(ファン投票1位) | ▲ 93.2 | ▲ 4.6 | 24.2 | 3/8 | ▲ 73.6 |
大平が大きくポイントを伸ばし、2位以下の選手は平たい差の下、プレーオフ進出を争うこととなった。直接対決も多く残り、まだまだ誰が敗退するかは分からない。
予選の後半戦、順位やポイントに合わせた各々の選手の戦い方に、注目していきたい。
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