女流プロ麻雀日本シリーズ2017 決勝戦レポート 楠原 遊
2017年03月29日
3月12日、女流プロ麻雀日本シリーズ2017の決勝戦が行われた。
全4節の予選と、プレーオフを経て勝ち進んだプレーヤーは以下の4名。(敬称略)
仲田加南
日本プロ麻雀連盟所属。現女流桜花。予選・プレーオフ1位通過。
朝倉ゆかり
日本プロ麻雀協会所属。現女流雀王。予選・プレーオフ2位通過。
宮内こずえ
日本プロ麻雀連盟所属。現プロクイーン。予選・プレーオフ3位通過。
二階堂亜樹
日本プロ麻雀連盟所属。女流モンド杯優勝。予選・プレーオフ4位通過。
予選序盤で四暗刻をアガリ、その後も終始安定した成績を守った仲田、敗退圏内から強い麻雀でぐいぐいとポイントを伸ばし2位まで上りつめた宮内、そして大きなトップやラスがなく各回素点を守り続けて常に上位にいた朝倉。そして最後に守備型というイメージを大きく覆し、要所でしっかりとした攻めを見せ決勝進出を果たした亜樹。
決勝はこれまでのポイントをリセットして4回戦。
個性的な4名の打ち手が集まり、ここから女流プロ日本一を決める熱い戦いが始まった。
決勝1回戦 朝倉 宮内 亜樹 仲田
ポイントをフラットにして決勝1回戦。初戦のトップは一体誰が手にするか。
東2局1本場
8巡目、先手でリーチを掛けたのは南家・亜樹。
ドラ
このリーチを受け北家・朝倉の手がこちら。
を切ればタンヤオのシャンポンテンパイだが、ここは中筋のを切り1シャンテン維持とする。
そしてその同巡、親の宮内も
ツモ ドラ
こちらの形でドラ切りのテンパイ取りも出来たが、が薄いことも有り一旦切りとして後退。
その後もツモが伸びず、朝倉・宮内の手が再びテンパイすることはなかった。
西家の仲田も、1シャンテンまで手を伸ばすが、有効牌を引かずノーテン。
このリーチがなければ手格好としては誰がアガっていたか分からないような局だったが、3者が慎重に打ち、亜樹の1人テンパイで流局となる。
東4局3本場
7巡目、南家の朝倉が鳴いてゆく。
ポン ドラ
1枚目のをポンしてドラ表示牌の待ち。ここまで、予選やプレーオフで2枚目の字牌も鳴かないことが多かった朝倉の、決勝ならではの打ち方が現れた仕掛けといえる。
その後仲田のリーチを受けるも、すぐにをツモって500・1,000は800・1,300。
しっかりと局をさばいてゆく。
南3局
5巡目北家・宮内の手。
(ツモってきたのは)
南家の仲田がオタ風の・とポンしてマンズが高い状況。
一旦テンパイ外しの切りかと思われたがここは真っ直ぐにヤミテンの打とする。
染め手に見える仲田の色であるを先に切った形で、思いきった選択にも見えたがすぐにをツモって300・500。宮内らしい素直なアガリで局を進めていく。
南4局
親の仲田の配牌がこちら。
ドラ
ここから、と引いてきたをポンして8巡目、この形まで手を育てる。
ポン ポン
ドラ3枚使いのチンイツ3メンチャン24,000点。巡目も早く大きな手が決まってしまうと思いきやここは流局。宮内との2人テンパイで局が終了。
その後連荘した仲田がアガ続け、トップで半荘終了。亜樹、宮内、朝倉と続いた。
1回戦結果
仲田+24.6P 亜樹+8.6P 宮内▲3.9P 朝倉▲29.3P
決勝2回戦 亜樹 仲田 宮内 朝倉
南4局
ここまで中々チャンス手が回ってこなかった親の朝倉に大きな手が入る。
四暗刻の1シャンテン。ここからドラのを先切りとせずを切って行く。打ち手によってはここで先にドラを放してしまうもの者も多いだろう。
この時西家・仲田の手がこちら。
ドラ
ドラのポンが入る手がたちだった。
そして朝倉、次巡4枚目のツモ。
ドラのを先に切って仲田がポンしていると、対面に座る仲田にとっては絶好の牌が入っていたことになる。ここで朝倉、の暗カンはせずに打、一巡遅れてこれを仲田がポンする。
そして朝倉、次巡待望のツモ。を暗カンし、満を持しての四暗刻リーチとする。
暗カン
この切り順でしかテンパイ出来ない大物手。決勝の舞台での大きなアガリに期待が高まるが、ドラポンの仲田も押し返し、配牌からなかなか手が進まなかった宮内もようやくテンパイし追いかけリーチ。3者による手に汗握る戦いとなったがここは宮内がツモって2,000・4,000。しっかりとラス目から2着に着を上げて半荘を終わらせる。
一方、1回戦4着だった朝倉にとっては厳しい3着落ちとなってしまった。
2回戦結果
亜樹+24.9P 宮内+8.2P 朝倉▲10.7P 仲田▲22.4P
トータル
亜樹+33.5P 宮内+4.3P 仲田+2.2P 朝倉▲40.0P
3回戦 仲田 朝倉 亜樹 宮内
2着、1着と安定してポイントを伸ばした亜樹、そしてそれに続く宮内、仲田までがポイントプラス。一方、ここまで大きくマイナスしている朝倉は、この3回戦が大きな勝負どころとなるだろう。
最終半荘は規定によりそれまでのポイントで席順が決まるため、各者、この半荘での戦い方が大切になってくる。
東1局1本場
10巡目、西家・亜樹が配牌のドラトイツを活かして七対子テンパイ、リーチといく。
ドラ
生牌のか、1枚切れのの選択となったが、ここは隙なく待ちを選択。どちらも山に全て残っている牌だった。受ける3者も各々、1シャンテンまで手を伸ばすが追いつけない。
リーチから6巡、亜樹が自力でを引き3,000・6,000のツモアガリ。
東2局
6巡目、北家の仲田が仕掛けていく。
ポン ドラ
ドラ色のホンイツで、小三元・大三元も見える手だ。
しかし一番にテンパイしたのはここでも亜樹。
仲田の仕掛けに対し、字牌の切りだしは注目が集まる局面、ここではかの選択だったが、三元役を想定しここは単騎のヤミテンとする。
そして仲田も手が進んでこの形。
ポン ポン
ここに4枚目のを引いてくるが、ここはカンせずリリース。
それを見た亜樹は引いてきたもツモ切ってゆく。
そして次巡、仲田が引いたのは4枚目の。
変則的な捨て牌で染め手に押している亜樹に、は切りづらくなっていた仲田だったが、この4枚目の牌を引いてのテンパイ、待ちは今切られた。
ポイント的にもアガリが欲しい仲田がを切り亜樹に6,400の放銃。
2局連続の七対子ドラドラで、亜樹が一気に5万点近くまで点数を伸ばす。
南2局
ここまで、トータル1位の亜樹がトップ目。ここでもトップを取られてしまうと、3者の最終戦はかなり厳しいものとなってしまう。最短残り3局で、亜樹をどれだけ苦しめることが出来るかが課題となる。
10巡目、初めにテンパイを入れたのは宮内。
一通確定の手を、迷わずにリーチ。
そして次巡、親の朝倉もテンパイ。
ドラ
朝倉らしい、丁寧に取っておいた安牌を切っての追い掛けリーチ。
トータルラス目、この親が終わってしまうと優勝への道はかなり厳しいものとなる。どうしてもアガリたいリーチ。
そしてその気持ちが通じたのか、この手をすぐにツモり、この日ほとんど乗らなかった裏ドラを3枚乗せ嬉しい嬉しい6,000オール。
これで朝倉が亜樹をまくり、この半荘のトップ目となる。
そのまま朝倉がトップを守り、最終戦へチャンスをつなげる。そこに亜樹、宮内が続くが、苦しくなってしまったのは連続4着の仲田。持ち味の攻撃力で、一発逆転を狙ってゆけるか。
3回戦結果
朝倉+34.0P 亜樹+14.4P 宮内▲12.4P 仲田▲33.9P
トータル
亜樹+45.8P 朝倉▲6.0P 宮内▲8.1P 仲田▲31.7P
最終戦
亜樹+45.8 朝倉▲6.0 宮内▲8.1 仲田▲31.7
27戦を経てきた女流プロ日本シリーズ2017もついに最終半荘となった。
ここまで、2着、トップ、2着の二階堂亜樹が1人浮きとなり、かなり優位な位置に立った。
対する3者は、亜樹との差を着順のウマと素点でどのように縮めていくかの戦いになっていく。
泣いても笑っても、これが最後。決勝最終半荘が今はじまった。
※日本プロ麻雀連盟の競技規定により、席順はトータル2位→3位→4位→1位でのスタート。
東1局
そんな3人の意図とは裏腹に、北家・亜樹の手がいい。なんと開局3巡目のリーチ。
捨て牌
それを受けて1発目、西家・仲田の手がこちら。
手の中に亜樹の現物はない。
放銃の可能性をなるべく抑える切り、効率通りに手をまっすぐ進めるなら打、345の変化を見つつ、ツモでもテンパイを取れる打。様々な選択肢のある中で、仲田が選んだのは打。
2巡の間しのぎつつ、ドラの受け入れを残し、234・345の三色の可能性も残す一打だ。
この局面において冷静に最も柔軟に攻めを選んだ仲田らしい一打だといえる。
しかしそのが亜樹への放銃となる。
ロン ドラ
リーチ・一発・・ドラの8,000点。
役ありのテンパイだが、ここは攻めのリーチ選択をした亜樹に嬉しいアガリとなる。
一方仲田にとって、そして他の2名にとっても、不穏な半荘スタートとなった。
東2局1本場
またしても南家・仲田の選択。
親の宮内がを、西家の亜樹がを仕掛けている局面。
効率で考えれば切りだが、仲田の選択は。567の可能性を追うもあったが、場に打たれている枚数でを外し、ドラのまたぎのを極力打たない選択をする。
この時の亜樹の手牌はこの形。
ポン ドラ
もも欲しい手であった。
そして次巡、仲田が嬉しいツモでテンパイ、3枚持ちのを使いきり、を勝負してリーチといく。
亜樹もそのをチー、トータル4番手の仲田のリーチに応戦の構えだ。
戦いの行末に注目が集まったが、仲田がすぐに7枚目のを掴み、亜樹に2,000は2,300の放銃。
上手く立ち回り攻めた仲田だったが、ここでも亜樹に絡めとられてしまい、苦しい展開となる。
南1局2本場
ここまでの点数状況は、朝倉17.1P 宮内31.4P 仲田34.1P 亜樹37.4P
10巡目、どうしても連荘したい親の朝倉に大物手のテンパイが入る。
ドラ
リーチをかけツモって6,000オールとなる手、ポイントが欲しいこの状況ならその選択もあったがここはヤミテン。亜樹からの直撃を狙う。
局が長引き、各者の手にかかる牌に注目が集まるが、ここは誰もを切ることなく流局。
残り4枚のはすべて王牌に眠っていた。
南2局
6巡目、西家・亜樹の手が早い。
ツモ ドラ
ここはピンフの役ありテンパイを目指してここは切りとする。
東1局は役ありもリーチと構えた亜樹だが、ここではしっかりとヤミテンに出来る手組をしていく。
次巡、を引き、ひとまずを切って、との役なしテンパイにとる。
そして8巡後、手変わりを待たずにをツモり300・500。
ゆっくりと、しかし確実に、優勝への階段をのぼっていく。
南3局も亜樹が自力で400・700をアガリ局を進めていく。
そしてオーラス、3者に与えられたまくり条件は、宮内役満ツモ三倍満直、朝倉ダブル役満ツモ三倍満直、仲田ダブル役満ツモ役満直、とかなり厳しいものとなった。
この局、亜樹が三倍満や役満は放銃することも、3者がツモ上がることもなく、半荘が終わる。
4位朝倉ゆかり
「もう少し腹をくくらないといけないところがあったと思います。自分の中ではディフェンスによってしまう時は良くない時が多い気がしていて、もう少し勝負できたらよかったのですが、足りなかったと思います。」
3位宮内こずえ
「亜樹ちゃんが強すぎました。見逃しをしてもいい局面もあったかもしれません。また映像を見直して、勉強しなおしたいと思います。」
2位仲田加南
「今日は亜樹さんにばかり放銃してしまい、捕まっているのをどこかで止めなくてはいけなかった。ツキはあったと思うのですが技術が足りなかったです。」
優勝二階堂亜樹
「ものすごく手が良かったわけでも、ものすごくツキがあった訳でもなかったのですが、とにかく展開に恵まれました。最後まで気を抜かずに打とうと心がけていましたが、最終戦の南2局、なかなか手変わらないシャンポンのテンパイをツモ上がれた時に、優勝を意識しました。」
長かった28半荘が終わり、女流プロ日本シリーズ2017は、二階堂亜樹の優勝で幕を閉じた。
昨年は女流モンド杯優勝に戦術本の出版、そして今年は最強戦の女流プロ代表決定戦を勝ち、夏には自身の半生を描いたコミックスが映画化される。
決勝戦を見ていた誰かが言った。
「今年は亜樹の年になる。」
プロになって18年、常に女流プロの最前線を走り続けていた二階堂亜樹の活躍から、これからも目が離せない。
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