女流プロリーグ(女流桜花) 決勝観戦記

第14期女流桜花決定戦 二日目観戦記 柴田 吉和

5回戦(起家から、仲田・魚谷・武石・古谷)

4回戦終了時
仲田+21.6P  古谷+ 0.6P  魚谷▲ 4.0P  武石▲18.2P

東4局

 

100

 

ここまでトータルトップを走る仲田。
今局好配牌に恵まれ早くも決断を迫られるが、リーチ宣言はせず四万を縦に置いた。
ダブリー宣言の時点で、待ちは悪くとも出アガリ8,000の打点がある事が決め手で私はリーチ宣言してしまいそうだが、ダブリーしなくても、発ポンからドラ一万単騎仮テンからのホンイツ移行で、容易に満貫は確保できそうな手牌でダブリーするしないの意見が分かれそうだ。

 

100

 

配牌からのイメージ通りに、4巡目に魚谷の発にポンを入れドラ一万単騎テンパイ。更に2巡後ツモ白で小三元に待ち変え後、更に2巡後絶好のツモ四索。待ってましたとばかりにノータイムで5メンチャンに待ち変えをすると思いきや、仲田はノータイムで四索をツモ切り白単騎を続行した。これには驚いた。
白が3巡前に武石から切られているとはいえ、その後二万一万とドラのターツ外しが強烈に見えており、他家からははっきりと高打点、最高大三元がある事が見えているだけに、そうそう切っては貰えない三元牌待ちでの12,000。何よりも5メンチャン待ちでツモアガリできそうな8,000が魅力的すぎるからだ。

 

100

 

しかし結果は仲田にとって最高のものとなった。
らしくないのは放銃の魚谷だ。自身役ありテンパイ・武石のリーチに対して現物とはいえ、ノータイムで白を切り出している。武石がリーチ宣言するという事は、中を持っているはずと信頼の読みが入ったか?仲田の手出し牌が少なすぎて、打点が安いテンパイもあると読んだか?決定戦仕様で、ただ単にトータルトップを走る仲田のアガリを阻止したかっただけか?いずれにせよメンタル強者の魚谷にとっても、ぐっとくる放銃になったのは間違いない。
この放銃を機に、魚谷は苦しい1日を送る事となる。

 

100

 

南2局1本場

 

100

 

親魚谷が6巡目に打ドラ八筒後、14巡目七万にチーを入れテンパイ濃厚だ。
一方古谷は6巡目に発の片アガリヤミテンを入れており(二索は空切り)13巡目、仲田が六万チーを入れた事を機に次巡ツモ切りリーチへ踏み切った。
仲田視点で見ると、親の魚谷は高くても2,900程の打点で連荘狙いか。古谷は切り出しが変則で、ドラ絡みか手役で打点がありそうな捨て牌。そこに仲田がツモってきたのが発
放銃になるとしたら古谷、そして間違いなく打点もつきそうだが、仲田は発を勝負した。
2日目終了後のインタビューで、古谷に放銃になれば打点があると分かっていたが、魚谷の親落としを優先したと仲田は話した。また、魚谷をマークしていたともありのまま話した。
4期連続での対決となる仲田魚谷。今決定戦に限らず、お互いに彼女には負けられないとうプライドも少なからずあるはずだ。
3連覇中の仲田とて、やはり魚谷の存在は宿敵であり脅威なのだろうと伝わってくる場面であった。

 

100

 

5回戦成績
仲田+20.2P  古谷+14.2P  武石▲12.7P  魚谷▲21.7P

5回戦終了時
仲田+41.8P  古谷+14.8P  魚谷▲25.7P  武石▲30.9P

 

 

6回戦(起家から、古谷・仲田・魚谷・武石)

東1局

 

100

 

起家古谷、隠れドラ3で待ち選びも成功し、武石から11,600の先制。

東1局1本場

 

100

 

親古谷、ツモ六索九索四筒であれば迷わずリーチになりそうで、ツモ一筒だけ判断が難しく意見が分かれそうだなと見ていた所にツモ一筒。安めドラ・高めチャンタのリーチ選択。古谷はノータイムでリーチ発声をした。
初日の古谷は、こういった難しい判断に迫られた時、手迷いが多くまだ決定戦の闘い方が固まっていない様に私には映ったが、今局ノータイムでのリーチ宣言は「今日は逃げず立ち向かって強く闘う」という意思が見て取れ、古谷の中で決定戦の闘い方が決まったんだなと強く感じ取る事ができた。今2日目の古谷は、このノータイムリーチ選択の様に、初日とは別人と見違えるほどに闘う姿勢を貫き通す1日となる。

 

100

 

だが相手も強い。親リーチの現物待ち・タンヤオやドラ振り替えを考えヤミテンにしてしまいそうな所だが、アガリを逃さない絶妙な追いかけリーチで追加点を許してもらえない。

南2局2本場

 

100

 

11巡目に親仲田からのリーチを受けた魚谷の手牌。完全安全牌も無い事からこの形で五筒五索二筒と押してアガリを目指したが、16巡目ツモ七索で残り巡目との兼ね合いもあり打六筒で降りを選択した。

 

100

 

がしかし、これぞ不調者と言わんばかりの局面になって全員へ通りそうな八筒でヤミテンへ高打点放銃。仲田への現物は一索八筒での選択だが、武石は12巡目の初牌の発は強いものの、その後は共通安牌を切っており、そこまで目立ってはいない。一方古谷の打ち出した二索二万六筒はいずれもスジとはいえ危険牌を3枚押している事からテンパイ濃厚で、さらに最終手出し二索、魚谷としては八筒を選択する事は必然であり、この防ぎ様のない放銃は観ている側も泣けてきてしまう。
私の主観かもしれないが、点数申告の際、珍しく魚谷の顔が歪んだのが印象的だった。

南4局

 

100

 

オーラス(古谷34,000・仲田31,600・魚谷27,400・武石27,000)
全員原点付近で浮き確保を目指す場面、古谷が手牌にも恵まれ、あっさりと2,000・4,000。
3巡目仲田の七筒チーで打北だったが、

一索一索一索二索四索四索四索五索南南西北北

この形でも1枚目の北には見向きもせず、落ち着きを見せる。
何よりこの満貫のツモアガリで、トータルトップを走る仲田の原点を割った上に、1人浮きトップに成功する。

6回戦成績
古谷+24.0P  仲田▲ 1.4P  魚谷▲ 7.6P  武石▲15.0P

6回戦終了時
仲田+40.4P  古谷+38.8P  魚谷▲33.3P  武石▲45.9P

 

 

7回戦(起家から、古谷・仲田・武石・魚谷)

全12回戦の折り返し6回戦を終え、ハッキリと上下2名ずつに分かれる展開となった。
武石は首位仲田まであと6半荘で85Pと言うとそれ程遠くは感じないが、間にいる同ポイントを持っている古谷も交わさなければいけない。頭取りにしか意味のない決定戦の難しい所だ。
そんな下位2名が差を詰めたい状況だが、それをあざ笑うかの様に上位2人のアガリ合戦が始まる。

東1局 親:古谷

二万二万六万七万八万五索六索一筒二筒三筒六筒七筒八筒  リーチ  ツモ四索  ドラ三筒

古谷6巡目リーチで、10巡目に2,600オール

東2局2本場R1

五万六万八万八万一筒二筒三筒  チー四索 左向き五索 上向き六索 上向き  ポン発発発  ロン四万  ドラ八万

魚谷から古谷3,900は4,500(+1,000)

東3局1本場R1

一索二索三索五索六索七索八索九索西西  ポン南南南  ロン四索  ドラ八索

魚谷から仲田7,700は8,000(+1,000)

東4局1本場R1

三万四万六万七万八万西西  加カン発発発発  ポン南南南  ツモ二万  ドラ三万

仲田2,000・4,000は2,100・4,100(+1,000)

南1局

 

100

 

先制テンパイは親古谷。絶好のドラ六万を引き入れ選択。
安目七索での3,900出アガリが不満という理由でリーチを選択しそうだが、古谷は手堅くヤミテンを選択した。

 

100

 

しかしこの古谷のヤミテン選択は、仲田への放銃という最悪の結果となってしまう。
古谷が11巡目即リーチをしていたら、仲田が五索六索を切れるのかいう論点になるが、トイツ二万が現物になっている為、真っすぐにはソーズは打てずトイツ落としになりそうなので、役ありテンパイはストレートには組めそうになかった。また魚谷の追いかけリーチのペン三筒待ちはリーチ時点ですでに純カラで、山に残り2枚の6,000オールをツモれるかの勝負に持ち込めていた。
もちろんアガリ牌は紙一重・1牌の後先、ヤミテンにして四索が山に浅くすぐに12,000を出アガリできる事もあるので、結果論だけたどっても意味のない事なのだが、今まで見てきた古谷は、好形の勝負手はリーチでツモリに行く事が多かった様に思うので、この高めをヤミテンで拾いに行く判断は古谷のスタイルではない様に私には映った。

南3局

五索六索七索七索八索二筒二筒二筒三筒三筒  ポン南南南  ロン九索  ドラ七索

古谷から仲田3,900

南4局

 

100

 

2人のアガリ合戦の終演は古谷。武石・魚谷と大物手でぶつかったが、見事に押し切り、またもや逆転トップを鮮やかに決め2連勝を飾ったと同時に、トータルポイントでも首位に躍り出た。

 

100

 

7回戦成績
古谷+21.7P  仲田+14.0P  武石+ 3.7P  魚谷▲39.4P

7回戦終了時
古谷+60.5P  仲田+54.4P  武石▲42.2P  魚谷▲72.7

 

 

8回戦(起家から、武石・古谷・仲田・魚谷)

東1局

 

100

 

上下が約100P差がついてしまい、残りこれを入れて5半荘。もう後がない下位2名は、多少のリスクを伴ってでも打点をつけながら、前のめりに踏み込まなければならない状況になっている。
それを象徴しているかの様な今局魚谷の選択打九筒だ。ツモ三索でリーチを打てば3,900の中級打点テンパイだが、満貫級のアガリが見込めそうな手牌はテンパイ取らずの高打点狙い。しかも親がダブ東をポンしている状況での大リスクを背負っての選択だ。
この選択は、百戦錬磨の魚谷といえど、これ以上の点差は自身優勝不可能をはっきり意識している証明でもある。

 

100

 

100

 

一方で点数を持っている仲田は、跳満1シャンテンの手牌でもダブ東が鳴かれている状況ならば、四筒七筒チーテンの3,900で万々歳だ。画像でも分かるように、四筒七筒チーシフトになっていた。この手牌を魚谷にそっくり渡したならば、終盤までチーの選択など1ミリも考えない事だろう。

南3局1本場R1

 

100

 

古谷うまく七対子に決め打ちし7巡目ドラ五筒単騎リーチ。
驚いたのは、仲田がこのリーチ宣言牌四筒をこの形から食い延ばしのチーだ。自身手牌がチーして現物六万だけ・手牌パンパン・メンツなし!しかも真っ直ぐ手を進めない打六万!正直観ている側は、なんじゃそりゃと声が出かかった、本能で鳴いたとしか思えないもの凄い勝負感。

 

100

 

2巡後、古谷の3,000・6,000ツモ喰い取り!

 

100

 

次巡三索チーを入れると、挙げ句の果てにはアガリまで成就した。
麻雀って怖い…。心底そう感じた。

南3局2本場

 

100

 

今日1日通して苦しかった武石だったが、久々に高打点を決めトップ終了となる。
これで武石は、トータルトップ仲田まで残り4半荘で約80P差、僅かな希望の光が見えてきた。

 

100

 

8回戦成績
武石+20.6P  仲田+ 5.2P  魚谷▲ 7.4P  古谷▲18.4P

8回戦終了時
仲田+59.6P  古谷+42.1P  武石▲21.6P  魚谷▲80.1P