第11期女流桜花決定戦 二日目観戦記 藤原 隆弘
2017年01月06日
2日目の朝も心地よい快晴だった。この1週間で松岡は気持ちを立て直すことができただろうか。
今日はなんとか食らいついて行って欲しいと思いながら私は会場に向かった。
5回戦
(起親から魚谷―松岡―宮内―仲田)
東1局は松岡がタンヤオのポンテンで1人テンパイ。
迎えた親番ではをイチ鳴きして仕掛け倒れにはなったが、相手3人を対応させての全員ノーテンでここまでは良かった。
東3局2本場、親の宮内5巡目にのポンテン、テンパイ打牌のドラを仲田もポンテン。
宮内捨牌
手牌
ポン ドラ
仲田捨牌
手牌
ポン
宮内有利かと思いきや、北家の松岡がで仲田に放銃。
松岡手牌
ここからの打ちだったが、ここは慎重に切りで受けに回るべきだった。
ドラを切った親の宮内はほぼ間違いなくテンパイだし、仲田はまだテンパイではないかも知れないがアタれば高い。
何より松岡の手はスピードも打点もこの局面で割り込むに値しないから、ここは2人の勝負にさせておく場面でそうすれば必ず次にまたチャンスが来る。
こんな放銃をしていてはまた今日も辛い日になってしまいそうだ。
西家の松岡がテンパイ一番乗りもリーチはかけない。
仲田からが打たれドラのを引いてドラ単騎にマチ変えしてリーチと行く。
親の仲田にドラが1枚浮いていたがそのが重なっての追いかけリーチ。
リーチ
もし松岡が待ちで即リーチだったら、1,300だけど仲田は必ずで放銃していた。
前局の悪い放銃が、早いけど安いリーチを打てなくしてしまう悪循環をもたらすのだ。
こうなれば決果は明白で、松岡がを掴んでまた仲田に7,700
東4局1本場では、南家・魚谷の手が凄い。と切り出した2巡目で、
ドラ
ドラのを2枚落とすことはないだろうが、最高に仕上がれば字一色、大三元、四暗刻までありますよね。4巡目にツモったは、目立たせないようにカンをしないでツモ切る。
仲田の連荘中なので、あまりのんびりしていられないと、オタ風のからイチ鳴きしてマンズのホンイツに向かうと8巡目にテンパイ。
ポン
かを重ねて、三倍満をツモアガリたかっただろうがこれでも跳満ある。
ここに飛び込んだのが松岡。前巡この形から
ツモ
魚谷の仕掛けに対して生牌のをツモ切りしたので危ないなと思っていたが、次巡をツモるとに手をかけた。
松岡の手はまだ七対子1シャンテンでドラが1枚しか無い、もも2枚切れているから、このどちらかを切るべきでありそれでもアガリへの期待は薄いから受けるべき局面だ。
ドラが2枚ある七対子のテンパイをして、マチではアガリにくいから出やすい単騎にして、勝負に出た結果の放銃ならば仕方ないのだが、相手の速度も手役も打点も自分の手牌との兼ね合いや状態の悪さも考慮されていない。
またも見合わない放銃で持ち点は3,700に、松岡今日も初戦から大きく置いて行かれた。
南1局は宮内がヤミテンで仲田から5,200で3人浮きに。
ドラ
南3局は3着目宮内の親。かろうじて30,000点をキープしているが、仲田と魚谷のトップ争いの展開でこれ以上置いて行かれる訳にはいかない。
しかし、松岡が2フーロでマンズホンイツをテンパイ、魚谷も松岡より先の7巡目に三色テンパイ。
松岡
ポン チー
魚谷
この時親の宮内の手は
ももアタリでは生牌、宮内の親は風前の灯だと思われたが、ここからの宮内は慌てず騒がずA1並みの粘りの打ち回し。魚谷がオリてが通り、を使いきり最後のツモでしぶとくテンパイに漕ぎ着けた。
魚谷がリーチと行かず冷静にヤミテンにしたのも正解で松岡のロン牌を引いてピンポイントでヤメたのは流石「カンからのチーだからドラマタギのマチが残っている筈。」と
読みもピッタシビンゴ。宮内と魚谷の好プレーが光った1局だった。
1本場、苦心の連荘の甲斐あって宮内先制リーチ。
リーチ ドラ
魚谷追いかけリーチの宣言牌が捕まる。
2本場、またも魚谷のヤミテンと松岡の仕掛け。
魚谷
ドラ
松岡
ポン
マンズの高いこの局、宮内が果敢に割り込み2フーロ
チー ポン
ここから打点の高い切りのドラ単騎とせず、切りとしてカンマチに取り、見事ツモアガる。
細い蜘蛛の糸をたぐり寄せるような連荘で、僅かながらトップ目まで抜けた。
オーラスは、仲田がヤミテンの単騎で七対子を宮内から直撃するなどでトップ目に、宮内は再び3着目となっていた。
南4局5本場
親の仲田が6巡目から好形1シャンテンで、今にもリーチがかかりそうなのになかなかテンパイしない。
ドラ
アガればトップの魚谷も、なかなか手が進まないので11巡目に仕掛けた。
ここから仲田の切ったをチーして1シャンテン。
ノーテン、テンパイでもトップがかわるし、仲田へのプレッシャーをかけることにもなるからだろうが、諦めずに逆転のチャンスを伺っていた宮内がツモ切りリーチだ。
前巡に、ドラ単騎の七対子をテンパイしていた宮内、なぜかヤミテンで1巡回し、魚谷がチーすると決断良くリーチと行き見事一発でを引き当てた3,000・6,000。
2人まとめてひと捲りで逆転トップだ!即リーチなら仕掛けが入らないから、ツモアガリできたかどうかわからない。素晴らしい感性と勝負感だった。
5回戦成績
宮内+24.2P 魚谷+9.5P 仲田+5.0P 松岡▲38.7P
トータル成績
仲田+56.6P 魚谷+53.4P 宮内+7.9P 松岡▲118.9P
仲田と魚谷のマッチレースの様相にトータルをプラスに持ち込んだ宮内が追いすがる。
6回戦
(起親から仲田―松岡―宮内―魚谷)
東1局、親の仲田に疑問手が出る。
ドラ
ここにをツモるが、マチがとても良く見えたのかをツモ切り、タンヤオ確定形に構えないおかげで魚谷の捨てたカンをチーテンに取れず1,000オールのアガリ逃し。
それでも他家の進行が遅く、局面は長引いて全員テンパイ。仲田もとを引いてこうなったがもうアガリまでは望めないはずだった。
松岡が最後のツモでこうなった。
は宮内と魚谷の2人にアタリで、テンパイを維持すれば必ず放銃。松岡が迷いながら手をかけたのは暗刻ので仲田望外の5,800。
負債を抱えすぎてノーテン罰府も払いたくない気持ちはわかるが、悪い状態の時ほど我慢だ。ここは堪えてを抜いてほしかった。
1本場では3人の手がぶつかる。
13巡目に仲田が高めツモで6,000オールのリーチ。
リーチ ドラ
続いて宮内がここは闘わなければと勇敢に追いかける。
リーチ
ならばと魚谷も追いかける。
リーチ
見ごたえのあるめくり合いは、宮内が仲田から打ち取って3,900。
南場に入って仲田の親番。西家・宮内から6巡目リーチ。
リーチ ドラ
リーチ一発目にツモ切りで出やすくなった。ベタオリの松岡が手詰まりでデキ面子からを抜いての8,000放銃は痛すぎる。
南3局は、持ち点47,500の1人浮きとした宮内の親番。
勢いに乗じて得点を積み重ねるべく、ソーズホンイツに進み8巡目のポンテンからトイトイに変化。
ポン
ツモれば6,000オールで、トータルトップまで突き抜ける。宮内もツモる指に力が入るが、宮内のソーズ寄せの裏で仲田がピンズに寄せ返し、メンホンテンパイを入れた。
宮内のマチが山に3枚、仲田のマチが4枚残りの勝負局は、宮内がを掴んで仲田が浮きの2着に。
オーラスは魚谷が1回連荘して持ち点を30,500としたが、1本場で仲田との仕掛け合いに敗れ僅かにマイナス。
仲田は宮内のトップを捲るより、自分と競っている魚谷を沈めて終わらせることを優先したようだ。
6回戦成績
宮内+15.5P仲田+10.2P魚谷▲4.8P松岡▲20.9P
トータル成績
仲田+66.8P魚谷+48.6P宮内+23.4P松岡▲139.8P
丁度半分の6回戦が終了。宮内の連勝で三つ巴の状況になってきた。
松岡1人が6戦5ラスと大敗。本人もここまで最悪の結果は想定外だったであろう。
7回戦
(起親から 松岡―宮内―魚谷―仲田)
東1局は親の松岡の甘い放銃から始まった。
南家・宮内のソーズホンイツ仕掛けに、七対子のみの1シャンテンで、一度止めたを宮内のテンパイまで待ってから3,900放銃。
ところが、次局から松岡に手が入り始めた。
東2局、松岡7巡目にリーチで、2,000・3,900をアガリ宮内が親カブリ。
リーチ ドラ ツモ
東3局は魚谷の親。
魚谷がダブポンテンの5,800。
ポン
この後、松岡の切ったをスルーしたことを魚谷は後悔していた。
ポンすればアガリ点は半分になるが、の3面張、次ににも変わる。
すると松岡から高目タンピン三色のリーチが来て、高目のを掴み放銃したのだ。
ポンしていても松岡に同じテンパイが入り3,000・6,000の親カブリだったようだが、松岡がアガリは3人とも問題なしで、1人で満貫打つよりは親カブリのほうがマシだったのだろう。
私の見解はポンしないのが悪いのでは無く、ポンしなかった結果、リーチが入り危険牌を掴んだのなら、現物の雀頭を落として回る選択があったのでは?と思うのだがどうだろう。
南1局は松岡1人浮きの親番でリーチ。
リーチ ドラ
さらに親の満貫の上乗せかと思われたが、魚谷がポンで仕掛け同テンをツモ300・500と松岡の親をける。
トータルの状況から、他の3人は松岡がトップならそれで良し、無理に捲る必要無しで、他の2人を沈めて2着を取ればOKとなる。
南2局の親で連荘し、僅かに浮いた宮内。その1本場で仲田6巡目のリーチ。
リーチ ドラ
早いドラ暗刻リーチで山に6枚残り。これを当たり前のようにツモアガリまたもプラスの2着に。
南3局ラス目魚谷の親。松岡への満貫放銃の後、ここまで我慢の魚谷にようやく先制リーチ。
リーチ ドラ
ツモれば三暗刻で満貫、が出ても7,700だ。
このリーチに仲田がチーテンで無スジのを勝負。
チー
直ぐにをツモ1,000・2,000で浮きの2着を決定づけた。
初日から仲田は魚谷を一番マークしているようで、魚谷の親番には特に辛く厳しく打っているようだ。
7回戦成績
松岡+18.3P仲田+9.0P宮内▲9.0P魚谷▲18.3P
トータル成績
仲田+75.8P魚谷+30.3P宮内+14.4P松岡▲121.5P
松岡がようやく初トップを取れたが、ここまでほぼ仲田の戦略通りに展開している感がある。
魚谷と宮内は追いすがることができるだろうか?
8回戦
(宮内―松岡―仲田―魚谷)
東1局は北家・魚谷が先制リーチ。
リーチ ドラ
最後の半荘は私が獲るという気迫も、仲田が1枚切れのでホンイツ仕掛けの松岡に3.900放銃。
魚谷は是非アガリたかったろうが、仲田がラス目になるならばまだ良しか。
東3局と進み、仲田の親、松岡が36,100点持ちの1人浮きで仲田ラス目だが、5巡目に七対子ドラ単騎リーチ。
この決定戦では仲田の沈んでいる状態からの一発復活を何度見たか。
リーチ ドラ
いとも簡単にを引き寄せて、ラス抜けどころか一気にトップに立ち、宮内、魚谷を大きく大きく引き離す6,000オールだ。
続く1本場でも、
リーチ ドラ
8巡目リーチで即ツモでダメ押し。
さらに2本場でも足止め気味のリーチ
リーチ ドラ
ここはドラ暗刻の宮内が追いかける。
リーチ
ベタオリの松岡が手詰まりで両者の後スジになったをオリ打ちしてまたも沈没。
南1局、親の宮内が2フーロでトイトイテンパイ。
ポン ポン ドラ
魚谷にもテンパイが入る。
が2枚が3枚出ていて、宮内の現物なだけにヤミテン。仲田から高目がこぼれた。
仲田から打ち取れたことは一筋の光明。
続く南2局、魚谷はをポンしてマンズチンイツのテンパイに持ち込む。
ポン ドラ
まだ1枚も余らないのが良かった、ドラのとの後付けで、チーテンを入れた仲田から直撃できて浮きに回った。
南3局は、宮内が2フーロのホンイツを松岡から3,900出アガリし宮内も浮いた。
2人共まだまだ追撃を諦めない。
オーラスの親は魚谷。
3者の持ち点は、仲田40,000、魚谷33,600、宮内31,900
ラス目の松岡に早いピンフテンパイが入るが、これでアガるわけにはいかないので何とか高目三色に作り直してリーチ。
宣言牌のを仲田がチーして形式テンパイを入れる。宮内に言わせると、これが「殺人チー」だった。
先にテンパイを入れていた宮内。
ドラ
魚谷が1枚切っている単騎でヤミテンしていた。ツモか仲田直撃でトップだが、仲田のチーで余計ながきた。宮内はここで松岡への放銃を嫌い切りとしたが単騎ではアガリが難しい。
松岡のリーチは立場上安いわけがないので、放銃すればダメージが大きいが、宮内ならここは思い切りよく闘うと思った。
ラス親の魚谷は、テンパイには遠過ぎたので、浮き守りを重視してオリたがこれは仕方ないと思う。
しかし、宮内は逆転手をテンパイしていたのだから、ここは危険を犯しても勝負に出て欲しかった。
もし仲田のチーがなかったら、宮内のツモはではなくて。のマチは見えているだけで残り2枚しか無いから、マチ変えせずに現物のを切るだろう、すると次にをツモって逆転トップだった。
を引いたこの場面でも最強手は単騎のまま追いかけリーチ、松岡からの跳満で逆転トップとなっていた。
8回戦成績
仲田+19.0P宮内+5.9P魚谷+1.6P松岡▲27.5P
トータル成績
仲田+94.8魚谷+31.9P宮内+20.3P松岡▲149.0P
仲田がリードを広げ2日目が終了した。ラス無しで連帯を外した3着が1回だけという安定感は崩れそうに無い。このまま逃げ切ってしまうのだろうか?
宮内「70Pの差はあって無いようなもの。」
魚谷「最後は60Pの差を受け入れてオリました。最終日宮内さんと一諸に必ず追いかけます。」
私なんかから見ればかなりの大差に思えるけど、この2人が言うと決して強がりに聞こえないのだ。
このままでは終わらない、きっと何かが起こりそうな最終日に期待したい。
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