第11期女流桜花決定戦 最終日観戦記 藤原 隆弘
2017年01月12日
いよいよ最終日を迎えた。最後の1週間を選手たちはどのような気持ちで過ごしたのだろうか。
最終日最初の半荘となる第9回戦はそれぞれの思いがぶつかりあった壮絶な一戦となったのである。
9回戦(起親から 仲田―松岡―魚谷―宮内)
東1局、西家・魚谷に好配牌4巡目でこの形。
ドラ
全て場に生牌だったのでホンイツトイトイや四暗刻まで狙える大チャンスと思ったのだが、魚谷は1枚目のをチーして切りとした。
少しもったいないような気がした。鳴かないで進める場面を見たかった。
仲田も好配牌で魚谷のチーで宮内に流れたをチーテンに取り、直ぐにツモで2,000オール。
チー
魚谷の仕掛けに対応した機敏な動きで仲田が今日も好発進。
1本場では仲田が1シャンテンで切ったドラのを魚谷がポンして789の三色。
チー ポン
仲田もポンテンを取り両者テンパイで流局。
2本場は魚谷が9巡目リーチ。
リーチ ドラ
をツモって2,000、3,900だ。
東2局、ここも魚谷10巡目に先制リーチ。
リーチ ドラ
ドラをツモったらまた2,000・3,900。今日の魚谷は最初から全力で攻める気迫満々だ。
しかしここは親の松岡にも手が入った。
こうなったところで、私はカンマチの方が少し良いと思えたのだが、松岡は切りとしてシャンポンで追いかけた。
魚谷のマチは他家に流れ純カラとなり、山には松岡のアガリ牌のみ。魚谷はピンチだ。
その魚谷が掴んだのは、辛くも難を逃れてラッキーと思ったのも束の間、魚谷の最後のツモはだった。
行く手を阻まれる12,000これは痛い、痛過ぎる。
松岡連荘の東2局1本場。
今度は私の出番だとばかりに、宮内が6巡目ツモリ三暗刻のリーチ。
リーチ ドラ
親の松岡が追いかける。
マチの多さで松岡に軍配、安目だが即をツモる。
魚谷も宮内も、今日はエンジン全開で仲田を追わなければならないのだが、少しでも意地を見せたい松岡の頑張りが仲田にとって有利な展開となっている。
2本場
ここも松岡が仕掛け、ダブトイトイの親満テンパイ、ツモなら6,000オールだ。
ポン
宮内が追いつき9巡目リーチ。
リーチ
マチは苦しいがそんなことは言ってられない。手が入ったときは引けないのだ。
魚谷も同じで12巡目に追いかける。
リーチ
この局は、仲田が6巡目にチーテン1番乗りしていた。
チー
ここは仲田が軽く捌くと思ったのだが全員に手が入り、最後方から来た魚谷がをツモって3,000・6,000で再びトップ目に立つ。
東3局の魚谷が10巡目リーチ。
ドラ
序盤の場況から、ピンズの上が良さそうに見えるので面子選択で残したカンマチ。
松岡が追いかけた。
ここは魚谷の読み通り、山に2枚生きのを松岡が掴んで7,700。
1本場は、魚谷がソーズホンイツで仕掛ける。
チー ドラ
今回は打点もマチも良くないが連荘のための手段、次の本手への繋ぎだ。
南家の宮内がこれに対応してピンズに寄せる。
ポン ポン
打点もマチも勝る宮内が、ツモで2,000・3,900。
東4局
北家・魚谷が2フーロしてタンヤオトイトイ高目跳満のテンパイ。
ポン ポン
親の宮内にもメンホンのヤミテンが入る。
は生牌でトイトイの魚谷がいるから出にくいが、1枚切れのを狙いヤミテンを続ける。
ヤミでもツモれば6,000オール。安目出アガリでも9,600あるから、リーチしないで損になるのはツモアガリのときに8,000オールにならないところだけ。なので宮内は慎重にヤミテン続行。
松岡がリーチときても追いかけず、魚谷も宮内も一歩も引かず、松岡がを掴んで宮内9,600のアガリ。
1本場は松岡が9巡目にメンホン七対子リーチ。
リーチ ドラ
松岡の優勝はかなり厳しいが、少しでも意地を見せ最後までプロらしく戦わねばならない辛い立場。
安アガリで局を進めることもできず、できるだけ高い手を作りなるべくならヤミテンも避けたいところだ。
出アガリ倍満リーチだが実は純カラ。親の宮内今日は松岡のリーチに怯んで親を落とすわけにはいかない。
マチが変わればが出る形、宮内は覚悟を決め危険を承知で追いかける。
仕掛けて手詰まりとなった魚谷がでオリ打ち、宮内危機回避で親番キープだ。
2本場は宮内11巡目リーチ。
リーチ ドラ
ツモれなかったが1人テンパイで遂にこの半荘のトップ目に立つ。
3本場、もう宮内の親はやらせないと魚谷が捌きに行く。
ポン ドラ
ところが終盤、仲田も一気に追いつき、
ポン ポン
魚谷がをツモ切って7,700。ここまで3人の猛攻に耐えていた仲田がひとアガリで浮きの2着になり、ほぼ全局に参戦した魚谷は3着目まで落ちた。
追う魚谷には手痛過ぎ、逃げる仲田にはかなり手応えのあるアガリ。やはりこのまま仲田の逃げ切りで終わるのかなと思えたが、放銃した魚谷は顔色一つ変えず点棒を払い、姿勢も崩れない。
私なんかだともう心が折れそうになるけど凄い鉄メンタルである。
長い東場が終わり3者の持点は、宮内42,100 仲田35,600 魚谷31,300。
南入した仲田の親で、魚谷3,000・6,000をツモアガる。
ツモ ドラ
なんという生命力か執念か、素晴らしい凄すぎる!
南2局は魚谷がリーチツモ。南3局は再び勢いを盛り返して迎えた魚谷の親。
怖い怖い親番なのは充分承知の仲田が、ヤミテンのピンフツモで連荘させない。
オーラスは宮内の親。トップ目の魚谷が3巡目リーチ。
リーチ ドラ
少しでも点差を詰めるためヤミにせず1,000・2,000をツモリに行く。仲田の持点は31,600、もし仲田から出たときに2,600なら沈むからだ。
もちろんそれも承知の仲田はオリる。連荘したい宮内も魚谷のリーチが早すぎて追いつかない。
魚谷に8巡目に望外のが来た。勿論、暗カンこれでツモれば2,000・3,900となり仲田が配源を割るのだ。
魚谷キッチリとをツモって大打撃戦の半荘を締め括った。
9回戦成績
魚谷+30.6P 宮内+7.8P 仲田▲4.4P 松岡▲34.0P
12,000に9,600に、3,000・6,000が2回、2,000・3,900が3回、7,700が2回、東場だけで12局全16局の殴り合い。
Aルールでこれだけの高打点が飛び交う半荘は滅多に見られない。4者の意地と気迫がぶつかり合った見ごたえありすぎる打撃戦。まさに、今期の女流ベストバウトと言える半荘を制した魚谷が仲田追撃への狼煙を上げた。
トータル成績
仲田+90.4P 魚谷+62.5P 宮内+28.1P 松岡▲149.0P
10回戦(起親から 魚谷―宮内―松岡―仲田)
仲田と魚谷の差が約28Pに縮まり、半荘1回で容易に変わる差となった。残り3半荘、宮内はもう1ゲームも落とせない。
東1局は魚谷が親で1人テンパイ。1本場で10巡目リーチ。
ドラ
これをツモれば仲田を抜いてトータルトップに立つ、もうそこまで追い上げたのだ。
しかしここはまだ諦めてない宮内が魚谷の現物マチのピンフでダマ押し、押し勝って魚谷からロン。
東2局(ドラ)の宮内の親は6巡目に七対子テンパイの仲田が、ドラの単騎にかえてリーチとした。
ヤミにするかと思っていたが、押さえ込みと跳満ツモで決めに行く方を選んだ。山に1枚残っていたが流局し宮内の親は落ちた。
局は進んで東4局仲田の親。松岡が10巡目リーチ。
リーチ ドラ
どうしてもトップを取っておきたい宮内が追いかける。
松岡がをツモり宮内残念。
南1局でも僅か4巡で1,300・2,600をツモった松岡が大きくリードする。
南2局(ドラ)親の宮内は仲田と魚谷が沈んでいるこの半荘、最低でも浮き2着は取りたい。
の一鳴きでドラのを重ね、親満の1シャンテンとするも、ここから最後までテンパイせず、東場の親と同様無念のノーテン親落ちとなった。
南3局は仲田が7巡目にリーチ。
リーチ ドラ
親の松岡が1シャテンでまっ直ぐ押して放銃。
仲田がこのアガリでプラスの2着に浮上した
オーラスは仲田の親(ドラ)
魚谷は仲田だけは捲って終わりたい。宮内は2人を捲る必要があり満貫ツモ狙いで強引にピンズに向かう。
しかしこの半荘は松岡の半荘だ。ドラ暗刻のリーチを一発でツモ、1人浮きのトップにした。
10回戦成績
松岡+34.2P仲田▲4.1P魚谷▲10.8P宮内▲19.3P
トータル成績
仲田+86.3P魚谷+51.7P宮内+8.8P松岡▲148.8P
親っカブリで仲田もマイナスしたのは魚谷には救いだったが、宮内はここでのラスは痛すぎた。防衛のためには残り2半荘、特大の連勝を決めるしかない。
11回戦(起親から 松岡―仲田―宮内―魚谷)
東1局は北家・魚谷が軽く捌きを入れる。
チー ポン ドラ
12巡目に西家宮内がドラ暗刻のハネツモリーチ
リーチ
しかしを掴み無念。
東2局、親の仲田が遠い仕掛けを入れ2フーロでまだ1シャンテン。
ポン チー ドラ
ドラのを引いたのでホンイツにはならなかったが、ダブが鳴ければ打点が高くなるし他家への牽制力は充分だ。
宮内がとを1枚ずつ掴まされたが、ギリギリまで絞り切り先にテンパイを入れ単騎でリーチ。
リーチ
受けながらも粘って攻め返す宮内、必死に逆転の糸口を求める。仲田もポンでテンパイ。
ここに松岡が追いついた。
ドラ2七対子だからアガリたい気持ちは解るが、2人に対してかなり危険な(宮内の入り目)を切り仲田のアガリ。松岡には我慢して欲しかった。
次局、連荘の仲田が12巡目リーチ。
ドラ
既にマチはが1枚だけしか残ってなかったのだが、一発目に引き当てて2,600オール。1人浮きとなり現時点で魚谷との差を約60Pと大きく広げた。
2本場(ドラ)は宮内が鋭い攻撃を見せた。七対子に照準を定めノーミスでテンパイし狙いの単騎でリーチ。タンピンの1シャンテンでを抱えていた仲田を狙い撃ちのような直撃。
3,200の2本場で3,800点。点数的には大した痛手ではなかったろうが、この一撃で仲田に向いていた流れが少し揺らいだようだ。
東3局、親の宮内に好手が入るが、牌の来る順番が悪くてこうなる。
ドラ
ここから切りとすればが来て大正解となったのだが、宮内は普通に切りとして仮テンを取る。次にを引きフリテンだがマチに変わると次にを引く
まさかこんな単騎にはできずにツモ切ると、仲田がこのドラをポンして1シャンテン。
この鳴きで宮内にが来ると、宮内は即座に単騎に変えてリーチと行った。は仲田が1枚切っている。
このを仲田が即掴んで宮内2局連続で仲田を狙い撃ちだ。
オカルト的かもしれないが、私はこの連続字牌単騎での直撃が、オーラスの仲田の失着に繋がったのではないかと思う。
1本場で喰いタンの1,500をアガった宮内はついにこの半荘のトップ目に立つと、続く2本場で大チャンス! 僅か5巡でこのテンパイ。
ポン ポン ドラ
この手がアガれると大逆転が現実味を帯びてくる。
宮内もこの局は行けると思ったに違いないが、無情にも魚谷にヤミテンのピンフで躱されてしまった。
東4局(ドラ)親の魚谷面前のカンマチテンパイから好判断で作り変え、ダブをポンして宮内から2.900のアガリ、今度は魚谷がトップ目に立つ。
南場は小さな動きで進んだオーラス。
3者の持ち点は魚谷36,300 仲田33,800 宮内29,800。
宮内はこのまま終われば、防衛するためには絶望的な点差で最終半荘を迎えることになるので、絶対にトップを取る必要がある。
魚谷に迫られている仲田は、できれば魚谷を捲ってトップをとり最終戦を楽な点差で迎えたい。
まずは宮内にドラ2枚の好配牌で2巡目に選択ミス。
宮内はここで切りとしたのだが、次のつもがでモロに裏目。この時かかとかを切れば誰が打っても5巡目にマチのリーチがかかり、誰も抵抗しなければツモアガる。
こも後、長引いたが仲田の動きもあったり、先切りしていたを残したのも良く、またを引き戻して13巡目にリーチ。
リーチ
2,600点以上のアガリが欲しい仲田は、この形からチーとした。
チーで喰い下げたのは。鳴かなければ面前で2,600のテンパイが入りアガリがあったように思う。
喰いタン三色ドラ1で3,900だから、だけはチーの気持ちは解るが少し焦ったかもしれない。
それでも仲田はを引いてテンパイしたが、宮内のリーチもかかり危険牌も引かずハイテイで引いたのは。
宮内は満貫級のリーチの筈だから、放銃できないのは仲田も魚谷も同じ。親の魚谷がオリているのは誰の目にも解った。仲田がテンパイを維持すればノーテン罰符でトップになれる。
チー
切りリーチではシャンポンマチがあるかもしれないが、先に切りしててそれは無いだろう、が4枚見えでも通ってるから、両面マチも無いので切るならの方が良かったのではないか?
は自分から見て4枚目、しかもアガリ損ねとなった牌だ。あるならカンマチだが現物を抜いてオリる選択もある。
みなさんならどうしますか?
仲田は少考してからをツモ切り、ホーテイのおまけ付きで満貫放銃、宮内がトップになり、仲田はマイナスの3着に陥落、魚谷との点差が大きく縮まった。
初日からここまで、ほぼ思惑通りに試合運びを続けてきた仲田が、ここで初めて痛恨のミスをしてしまった。
魚谷と宮内の躓いても転んでも追撃を諦めない気迫が徐々に仲田にプレッシャーをかけ、エラーを誘ったのであろう。
11回戦成績
宮内+15.8P魚谷+10.3P仲田▲8.2P松岡▲17.9P
トータル成績
仲田+78.1P魚谷+62.0P宮内+24.6P松岡▲166.7P
仕方なくオリたら、望外の仲田の放銃で僅かに16.1P差となった魚谷に逆転優勝が見えてきた。
とりあえず最低条件のトップを取り、首の皮一枚残した宮内は特大のトップを取るしかない。
さあ最後の半荘に入る。
12回戦(規定により起親から魚谷―宮内―松岡―仲田で始まる)
東1局は魚谷と宮内のテンパイで連荘。
2本場は仲田が魚谷から1.300をアガリ仲田第一関門クリア。
東2局(ドラ)は魚谷が仕掛けるも親の宮内7巡目リーチ
リーチ
安目のしか残ってなかったが即ツモで2,600オール。
奇跡へ向けて前進する宮内、連荘の1本場
宮内は2巡目で1シャンテン。
ポンテンも利くし面前テンパイならリーチだ。
これに対して魚谷が5巡目にをイチ鳴きで仕掛ける
ポン
少し遠いようだが、魚谷の狙いはソーズのホンイツだった。
これに対して、食い下がったドラを手に残した宮内。を切っているのでフリテンの1シャンテン。
西家の仲田の手牌はこうだった。
ここで生牌のを切り魚谷にポンされたが、当面の敵に対して少し甘くはないか?もしポンされたらホンイツでもトイトイでも満貫だ。
マンズがで超充分形とか、好形のテンパイでの打牌なら良いと思うが、ここは切りとして堪えるべきかと思う。
をポンした魚谷はを暗刻にしてマチの満貫テンパイ。
仲田にもテンパイが入る。
フリテンを入れた宮内もリーチ。
リーチ
しかし宮内がを掴んで魚谷のアガリ。
魚谷がついにこの決勝戦、ここで初めてトータルで首位に立ったのである。
仲田が少し甘かったと記したが、もしも仲田がを1巡でも絞った場合、宮内のツモは、となり、フリテンリーチなら4,000オール。ヤミでも2,600オールのアガリだ。
すると三つ巴の混戦となり、宮内の連覇があったかも知れないのだ。今回の決定戦で、このような展開のアヤみたいな部分では、宮内が一番損をさせられているように思う。
東3局は魚谷1人テンパイで、東4局は仲田の親。首位に立った魚谷が10巡目テンパイ。
ドラ
高目のは生牌でが3枚切れていて、仲田の現物なだけにヤミテンにすると思ったが魚谷は即リーチとした。
確かにここで満貫をツモればかなり引き離すことができるが、私はヤミテンにすると思ったので後で魚谷に聞いたら「が山に数枚残っていると思ったから決めに行きました。」とのことだった。
実は1枚残りで、まだまだ諦めてない宮内が追いかけリーチ。
リーチ
このも山に1枚残り、宮内のアガリになれば宮内にもまた逆転の可能性が復活してくるのだが流局した。
南入して魚谷最後の親番。
北家の仲田が6巡目にドラを重ねて1シャンテンとしたが、宮内が9巡目にテンパイ1番乗り。
ドラ
三色に変わればリーチして跳満ツモ狙いというつもりでヤミにしたら、魚谷からが出てやむなくロン2,000。
さあ南2局は宮内最後の親番だ。まずはドラのを重ねてリーチ。
リーチ
山に2枚残りだったが流局。
連荘の1本場はリーチツモで1,000オール。
2本場は宮内と魚谷の2人テンパイで流局と、親番を死守するものの決め手のアガリはまだ出ない。
3本場で西家仲田から5巡目にリーチ。
リーチ ドラ
魚谷に抜かれた仲田としては、逆転のチャレンジをしなければならない。
この親を落とせば逆転が困難になる宮内、ここはリーチに構わず自分本意に打って良い場面なのだが、思うように手が伸びずノーテンで親を落としてしまった。
宮内は残り2局で跳満ツモ2回が必要と、ついに瀬戸際まで追い込まれた。
南3局4本場、最低でも満貫はツモっておきたい宮内が、何とか手を作り12巡目リーチ。
リーチ ドラ
これも流局で遂にオーラス。
流局が続いて回ってきたため、オーラスは5本場で供託リーチ棒が2本。親の仲田が3巡目にのポンテン。
ポン ドラ
直ぐにツモって500と5本場で1,000オールプラスリーチ棒2本は、大きなアガリとなりトータルで魚谷を僅かに1.6P逆転した。
6本場が優勝者を決めた最後の山場となった。
逆転されたとはいえ、魚谷は1,000点アガるだけで優勝。親の仲田がトップに立ったので宮内も倍満ツモで2人を捲って優勝という条件になった。
勿論、仲田も魚谷とのノーテン罰符だけで再逆転されるから、魚谷がテンパイなら流局しても手を伏せられない。
まず仲田が4巡目にの3種の生牌から、オタ風のでは無くから切り出し、これを魚谷がポン。ここから局面が大きく動き出す。
アガれば良い魚谷としては、カンチャンとペンチャンの役無し1シャテンだからポンは必然。
ポン ドラ
次にを引いてを切ったのも間違いでは無いと思うし、むしろ正着と思う。魚谷の仕掛けのあと、仲田にも好牌が入って手が進み、宮内の手にもソーズと字牌がなだれ込んだ。
仲田には、ドラのが中ブクレの形で浮いていたが、魚谷がと落としてきたので1シャンテンで処理した。
1,000点アガれば優勝の人が、面子選択でドラマチのペン受けを残す訳がないし、あるとすればからを引いて、さらにを引いたときだけだから仲田は安全牌のを残して先にを切った。
仲田は次巡、引きでテンパイし、魚谷も同巡、を引きカンマチテンパイ。
仲田
魚谷
ポン
タラレバの話だが、魚谷がを引いたときの形からを切っていれば、仲田もテンパイしてからを切るだろう。すると魚谷もチーテンの単騎で宮内にが喰い下がる。
そのときの宮内の手牌は、
こうだったから、倍満ツモ条件に突き進む宮内が、をツモ切れば魚谷の優勝だったのだ。
仲田が1シャンテンでを切ったとしても、仲田からを喰い取るから魚谷が有利だった。
実戦では、仲田と魚谷にテンパイが入った同巡、宮内が1シャンテンとなる。
倍満ツモで優勝という条件があるだけに、ここで宮内はツモリ三暗刻に決めてに手をかけたのだ。
テンパイまで持っていると、仲田に対して危ないから切るなら今でしょと切ったのがピンポイントで今テンにストライク。
仲田は大きな大きな5,800プラス本場の1,800のアガリ。
宮内は両面受けを嫌ったのだが、三暗刻の2ハンが無くてもハイテイが回るので、リーチツモ二役メンホンハイテイで倍満という可能性もあるから、を1巡先に処理しなかったのならギリギリまで切らない選択枝はあった。
この時点で仲田のマチは3枚、魚谷のマチは1枚、宮内の必要な牌はかなり生きていたので結果はどうなっていたか解らない。
いずれにしてもこの局は、色々な選択で大きく結果が変わる要素があるので、皆さんも牌譜を検証してみて頂きたい。
さあ、仲田が優勝へ大きく近づいたが、次局は魚谷もまだ1,300・2,600のツモアガリで逆転する。
しかし、魚谷が条件に合うテンパイを入れられないまま終局となり、仲田の7年ぶり2度目の優勝で幕を閉じた。
初日の2回戦で首位に立ち、一度もラスを引かず、大きくマイナスした半荘も無く、安定感抜群の内容でずっと首位を守り続けてきた仲田。
最終戦で一度は魚谷に逆転されたが、土壇場で差し返す二枚腰も見せての辛勝は喜びもひとしおだろう。
この激戦を盛り上げ素晴らしい闘いにしてくれたのは、何度躓いても打たれても最後まで逆転を諦めず仲田を追い込んだ魚谷と宮内の粘りだ。
特に魚谷は最終戦で、一度は仲田を抜いていただけにオーラスは本当に紙一重、どちらが優勝していても不思議ではなかったと思う。
予想外の惨敗で苦い初舞台となった松岡、他3人との現状での実力差が露呈し多くの課題が残ったが、女流のAリーグを勝ち抜いて決定戦に残った事には自信を持つべきで、まだ若いしキャリアも浅いのだから、決勝に残った者にしか体験できない貴重な経験を生かして、この次に決勝に残った時には優勝争いが出来るようスキルアップして欲しい。
超攻撃型、悪く言えば何でも要らない牌を切って前に出るだけ、アタリ牌を掴まないだけ、というイメージで勝っていた7年前から、真逆に近い守備型麻雀を取り入れる大改造に取り組み遂に女流桜花に返り咲いた仲田。
「いろんなパターンを沢山シミュレーションしていたので何があっても動揺せずに打てたこと、ほぼ思い描いていた通りの展開で回せたことが主な勝因だと思います。唯一11回戦オーラスにホーテイで宮内さんに満貫を打ったのが覚悟の無い想定外の放銃で、優勝できなかったら大きな敗因になるところでした。映像対局主流の時代になってから活躍できずにいましたが、ようやく勝てました。こらからは第一線で活躍を続けられるように頑張っていきたいと思いますので、今後共応援よろしくお願いします。ありがとうございました。」
映像対局が頻繁に流されるようになった効果も大きいと思うが、女流プロの人数も増えてきてその麻雀レベルも上がってきている。
仲田や魚谷や宮内だけでなく、女流のタイトルや人気に甘んじることなく、Aクラスの男子プロと闘っても勝てる実力をつけたいと本気で望み、考え、努力している女流プロは少なくない。
創世記のプロクイーンや女流桜花の決勝戦に比べ、闘牌の内容がレベルアップしてきていると思うし、今期のプロリーグで、和久津が女流プロとしては21年ぶり2人目のA1リーガーとなったのもその証であろう。
女流プロが鳳凰位や十段位の決定戦を闘う姿を観る日もそんなに遠くない。
カテゴリ:女流プロリーグ(女流桜花) 決勝観戦記