第9期女流桜花プレーオフA卓レポート 山井 弘
2014年12月08日
「涙の数だけ強くなれるよ・・」
という歌があるが、正に彼女にぴったりの歌ではないだろうか。
女流桜花も今期で9期目を迎える。
現女流桜花である、吾妻さおりに挑戦する3つの権利を巡って、プレーオフに進出する8名の選手が出そろった。
第6節終了時プレーオフ通過順位
1位:魚谷侑未+191.3P
2位:和泉由希子+121.5P
3位:安田麻里菜+99.7P
4位:二階堂亜樹+93.3P
5位:仲田加南+62.3P
6位:和久津晶+53.0P
7位:斎藤理絵+46.2P
8位:清水香織+29.1P
プレーオフは、各卓、日本プロ麻雀連盟チャンネルで生放送されるため、同時に開催することができず、A卓終了後の1週間後にB卓が行われる。
そのため、事前に順位によって卓組が決まる訳だが、1位、3位、5位、7位の奇数卓が後半、前半は偶数卓の対局となる。
どうしたって、後にやるほうがポイントを把握して対局に挑めるため、有利になるのは間違いないが、それでもポイント差を突き付けてしまえば、そのポイントをクリアするのは容易ではない。
前後してしまたが、女流桜花決定戦へ進出できるのは、この8名の中から3名。
なので、1卓から2名か1名が進出することになるだろう。
数字上、1卓から3名進出することも可能性だが、ほぼない。
暫定1位の魚谷が、ここから大コケすることは考え辛いので、A卓の選手がまず考えるのは、安田のポイント。
「+99.7P」
ここがボーダーラインではあるが、安田が大きく浮いた場合、残りの椅子は1つになるため、この卓の選手の目標は、「このB卓で1位になること」。
そうなれば、まず通過は確定といっていいだろう。
従って、暫定2位の和泉が目標になる。
和泉自身もこの卓で1位通過することが目標だが、安田とのポイント差を広げておけば、最悪残るケースもあるので、例え1人に交わされたとしても、浮いて終われば3位に残る可能性が高いといえる。
そんな状況の中、1回戦が始まった。
今日は攻めようと決めて挑んだという二階堂亜樹。
東2局、清水のこの仕掛けに対して、
ポン ポン ドラ
亜樹は、
ここからを押して、次のもツモ切る。
1回戦ということや、今日は何としても和泉を、そして、追い上げてくる和久津、清水を寄せ付けない、そんな気迫の一打だったかもしれないが、その牌が清水に捕まる。
改めて映像を見て思うが、清水はテンパイしてからの、そしてがすべてノータイムのツモ切りだ。
そのため、その切るスピードに、まだテンパイではないかもと、亜樹の読みが少し狂わされたのかもしれない。
東3局、和泉がドラ3枚の仕掛けでカンのテンパイ。
しかし、亜樹が追いつく。
リーチ ドラ
和泉は当然勝負、そしてもう1人、黙っていられない女。
超攻撃アマゾネス、和久津晶だ。
ツモ
一発で掴んだを軽くツモ切ると亜樹に6,400の放銃となった。
和久津はご存知の通り、超攻撃型雀士である。
とにかく攻める。攻めて攻めて、攻めまくる。
和泉との差は70P弱。直接対決とはいえ、このポイント差を半荘4回で捲るのは中々厳しい。
相手に一度でも浮かれて(ポイントを加算)しまえば、ほぼ無理。
亜樹同様、和久津もここは覚悟を決めて、このプレーオフに臨んでいると言える。
1回戦はそのまま清水がトップ。
2着には追い上げてきた和久津が、そして和泉は最後にリーチピンフをアガって沈みではあるが3着。
1回戦が終わってトータルは、
和泉117.4P
亜樹82.4P
和久津57.1P
清水40.0P
こうなった。
2回戦
前半苦しい亜樹が東3局1本番、
ロン ドラ
この6,400を清水からアガる。
放銃となった清水だが、1回戦はトップだが小さなトップで、この局もドラが暗刻の勝負手だった。
清水にしてみれば、もうひと押しのアガリがほしいところでのこの放銃。
歩いていて石に躓くような感じだろうか。
過去に、G1タイトルでもある王位、そして女流桜花やプロクイーンなどの輝かしい実績を持つ清水を持ってしても、中々すんなりとは行かせてくれない。
亜樹は、これで持ち点を20,000点台まで戻す。
東4局、アガって迎えた亜樹の親番。
ドラ
6巡目、亜樹はここで上家から出たに反応してしまう。
アガって迎えた親。たしかに劣勢ではあったが、いい雰囲気で親は迎えられたと思う。
これまで放銃となってしまった局もあったが、それは戦うと決めたのだから、ある程度はリスクも背負うのは当然。
そんな姿勢でここまできた亜樹であったが、このチーは亜樹らしくなかった。
この仕掛けでドラのが流れる。
メンゼンで行くと亜樹の手牌は、
このような形になり、ここで選択になっていた可能性が高い。
ここから仕掛けを考えても遅くはなかったかもしれない。
実際には和泉にこのテンパイが入り、
暗カン ロン
亜樹が、
チー ツモ
ここから放銃となってしまった。
亜樹にとっては、ここが今期女流桜花の勝負所だったように思えた。
この後亜樹は、バランスを崩し持ち点も箱を割ってしまう。
トップ目にたったのは和泉。
和泉にしてみれば、2番手の亜樹が転んでくれたので、ここで1回でもトップを取れば、卓内トップ通過が見えてくる。
この半荘、その最大のチャンスが訪れた。
しかし、その前に立ちはだかったのが和久津。
ドラ
11巡目、ここでリーチ。
ヤミテンでも出アガリ満貫、ツモって跳満の手なので普通は慎重にヤミテンにするのが定石。
しかし和久津は迷わずリーチ。
現状、和泉がトップ目で46,800点、追う和久津は38,400点。
確かにトータルまで含めるとまだまだ足りない。
和久津にとっては当然のリーチで、当たり前のようにをツモりあげた。
これで一気に和泉を突き放して、トップ目に立った。力強い。
さらにオーラス、
ポン ツモ ドラ
ダメ押しのこの倍満のアガリで、トータルで一気に亜樹を付き離し、和泉に迫る。
2回戦終了時トータル
和泉122.0P
和久津104.5P
亜樹41.7P
清水28.2P
3回戦は、オーラスまで亜樹がリード。
何とか最終戦に向けて望みを繋ぎたいところ。
せめて和久津だけでも交わして、あとは次週の結果待ちに持ち込みたいという思いか。
亜樹41,000
和久津31,500
和泉24,800
清水22,700
南家・和久津は、前局、清水から12,000点をアガリ、ラス抜けに成功し浮きに回ってのオーラス。
この配牌から打。
ドラ
このまま終われば和泉と和久津は2ポイント差となり、最終戦は着順勝負となる。
和久津は何とか浮いて終わりたい。ドラは2枚あるが手牌はかなり厳しい。
しかしこの後、それは普通の人であった場合だと思い知らされる。
4巡でするすると牌を重ね、この七対子1シャンテンとなると、ここからをポン。
満貫ツモでトップまで狙う。
オーラスで、各者前に出てくるだろうと読んでの仕掛けかもしれない。
あとは、親の亜樹に少しでもプレッシャーをかけたいということもあるだろう。
ポン
13巡目、この時点で、和久津のほしい、、は2枚づつ他家にもたれて出ない様子。
も1枚しかなく、テンパイすら無理であろうと思っていたのだが、麻雀は不思議なものである。
14巡目ツモ→打
15巡目ツモ切り
16巡目ツモ切り
17巡目ツモ→打
そしてこのに反応したのが和泉。
は4枚目。清水がテンパイの場合、自分がラスになってしまう。
そのようなことが色々と和泉の頭の中を駆け巡ったに違いない。
テンパイを取ってドラの勝負。
当然和久津はポン。
18巡目ポン→打
これで和久津はまたしても山にないほうが手牌に残ってしまう。
よくてテンパイまで。と、誰もが思ったに違いない。
そして、和泉のこのツモである。
チー ツモ
和泉少考しての選択は打。
ここはが切れない、でもテンパイはほしい。そんな中途半端な思いがこの打を選択させてしまった。
思い切って打。もしくは、さすがにこのはやり過ぎと思えば完全撤退がよかった。
そもそも、その前のをチーしてのドラ切りも危ないと言えば危ない。
確かに粘ってテンパイを入れることは本当に大事なことではある。
しかし、和久津は打の後に打としており、かのトイツは濃厚であった。
捨て牌にがあるため、はかなりの確率で持っている可能性が高い。
極限の勝負になったとき、このような見落としや、テンパイしたいがラスは引きたくないという欲が出てしまうものだが、それでもいかに冷静に打てるかで、明暗を分けることも少なくはない。
「冷静沈着なアイスドール」と言われている和泉由希子でさえ、このよな極限状態では普通に打てないのがタイトル戦と言える。
和泉にとってはこの一打が致命傷となった。
19巡目ポン→打
20巡目ツモ
ポン ポン ポン ツモ
3回戦終了時トータル
和久津126.0P
和泉109.8P
亜樹50.7P
清水10.4P
たった3回でついに和久津が和泉を捲った。
4回戦(最終戦)
和久津と和泉の差は16.2P差。トップラスで変わるポイント差である。
東2局、和久津の親番。普通はラスだけは引きたくないと思うもの。
しかしそんな常識はアマゾネスには通用しない。
和泉が和久津の親だけは落とそうと仕掛けて行く。
和久津もそれに負けずに連荘狙いで仕掛ける。
そして亜樹にテンパイが入り
リーチ ロン ドラ
これに突っ込んで行ったのは和久津。亜樹に7,700を献上する。
これで和泉と和久津は並びができ、このまま行けば和泉が卓内トップになる。
しかし、このまま終わらないのが和久津。
ポン 暗カン チー ツモ
この2,000・3,900であっさりとトップを捲り返す。
さらにダメ押しで、清水、和泉のリーチ合戦にもひるまず参加し、
ロン ドラ
清水からこの7,700のアガリ。
和久津はこれであっという間に44.600点のダントツになる。
これで安泰か。普通はそう思う。でもやっぱり和久津は常識では計れない規格外。
南3局3本場、清水が最後の親で最後の意地を見せ連荘。
清水
リーチ ドラ
和久津
ツモ
「和久津は飛び込まないと思うよ」
「いや分かんないですよ」
「いやさすがにここは飛びこまないでしょう」
こんな実況と解説のやりとりが終わるか終らないかの間に、打。
「え!?うそー」
「ほら」
これで和泉の射程圏内に入る和久津。
南3局4本場。
亜樹が意地の
ドラ
高目で九連宝橙のテンパイ。
和久津は仕掛けてこのテンパイ。
ポン ポン
は残り1枚。和久津は掴んだら終わりだ。
しかし、ここまで戦う姿勢を貫き通してきた和久津に当たり牌はよってこない。
を見事引き寄せ、オーラス、親の和泉はテンパイすらすることができず、和久津が最後をトップで締めくくり、A卓1位で予選を終えた。
これで和久津はほぼ通過確定となり、和泉は次週の結果待ちとなった。
第7期女流桜花=準優勝
第8期女流桜花=準優勝
第11期プロクイーン=準優勝
第25期麻雀マスターズ=準優勝
これまで和久津は多くの涙を流してきた。
それだけ強くなったということだろう。
決定戦も大いに暴れてくれること間違いなし。
今から待ち遠しくて仕方がない。
カテゴリ:女流プロリーグ(女流桜花) レポート