麻雀マスターズ レポート

麻雀マスターズ レポート/第26期マスターズ ベスト8トーナメントレポート 小車 祥

第26期麻雀マスターズのベスト8トーナメントが夏目坂連盟スタジオにて行われた。
決勝という夢の舞台への階段もあと1つというところまで来た。
対戦カードは以下の通り。
A卓:村上淳(最高位戦)vs西野拓也(連盟)vs武藤武(連盟)vs四柳弘樹(連盟)
B卓:忍田幸夫(麻雀連合)vs矢島亨(協会)vs佐月麻理子(協会)vs松崎良文(連盟)
日本プロ麻雀連盟WRCルール(一発・裏ドラありの世界大会ルール)での対局。
同一メンバーで半荘3回戦を行い、トータルポイント上位2名が決勝へ進出となる。
 
 
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A卓
1回戦(起家から、武藤・四柳・西野・村上)
東1局1本場、11巡目の四柳の手牌。
五万六万六万七万八万六索七索八索五筒五筒五筒七筒八筒  ツモ九万  ドラ八索
場にはすでに九筒が4枚切れていて、あまり嬉しくないテンパイに見える。
普段の四柳のイメージからも、ここはテンパイ取らずとする打八筒九万のツモ切りとなるかと思ったが、数秒考えた四柳は五万を切りリーチを打つ。
この数秒間に何を思ったか定かではないが、このリーチを打つことで対戦相手がどう出てくるのかを早い段階で見ておきたいというのもあったのかもしれない。
ほどなくして六筒をツモ。1,000・2,000は1,100・2,100のアガリ。
東2局1本場、親の四柳がリーチを打ち1人テンパイで流局した次の局。
13巡目という遅い巡目に四柳がテンパイしてリーチ。
四万五万六万四索五索四筒五筒六筒七筒八筒九筒中中  リーチ  ドラ六筒
安目ではあるものの、三索を一発ツモ。裏ドラは五万
4,000は4,100オールの大きなアガリで四柳が抜け出す。
 
100
 
東4局、親は村上
まずは10巡目に武藤がリーチ。
二万四万二索四索七索八索九索二筒三筒四筒五筒五筒発  ツモ三万
リーチの発生の後、ドラの発を切る。そのリーチ宣言牌を村上が仕掛けテンパイ。
一万一万四索五索六索六索七索八索四筒六筒  ポン発発発
さらに西野、仮テンのようなテンパイだったところから以下の勝負手になる。
四万五万六万八万八万八万三索三索三索六索四筒五筒六筒  ツモ五索
武藤の河には五万が切られていて、スジの八万を切るかと思ったが、西野の選択は打三索であった。
ドラを切ってリーチした者よりも、ドラを仕掛けて勝負に出た親の村上の方を強くケアすれば、安全度は八万よりも三索の方が高いように見える河だったのは確かだ。
武藤の待ちが見えているこちらからは一瞬「ん?」と疑問に思ったが、よく見てみるとなるほど確かにそうかもなという繊細な選択を西野はしていた。
しかし想定の範囲内であったとしても、武藤のリーチに手役が絡んでおり、さらには裏ドラが三索で8,000の放銃になってしまったことは、西野にとっては痛手となってしまった。
 
100
 
四柳リードの展開で迎えた南4局、村上の親番。
最初にテンパイを入れたのは西野。西野は現状4着目で3着目の村上とは1,300点差。
四万五万六万三索四索五索五筒七筒東東南南南  ドラ六筒
西野はヤミテンに構える。そしてオーラス連荘して2着、トップと目指していきたい村上がリーチ。
三万三万六万七万一索二索三索四索五索六索七索七索七索  リーチ
このリーチの直後、武藤もテンパイ。
二万三万三万三索四索二筒三筒三筒四筒四筒五筒六筒六筒  ツモ二索
一万四万が村上の河に置かれていて、出ていく三万もそこまで目立たない牌。
武藤はヤミテンを選択した。
西野が四万をツモ切り、武藤が12,000をアガって1回戦が終了。
1回戦成績
四柳+40.7P 武藤+20.0P 村上▲19.2P 西野▲41.5P
2回戦(起家から、村上・四柳・武藤・西野)
東1局、親は村上。
1回戦で大きなリードを持った四柳が6巡目に先制リーチ。
三万四万五万六万七万八万二索三索四索六索六索三筒四筒  ドラ五万
直後、村上がリーチ。
二万三万六万七万八万一索二索三索七索八索九索発発  リーチ
しかしすぐに村上が二筒を掴む。裏ドラは七索で、四柳8,000のアガリ。
東2局、四柳の親番。
10巡目に四柳がリーチ。
四万四万二索三索五索六索七索七索八索九索五筒六筒七筒  リーチ  ドラ八万
同巡、武藤もテンパイ。
一万一万八万四索四索九筒南南西北北中中  ツモ八万
九筒は場に1枚。西は生牌。四柳の第一打が八筒だったので、どちらの選択も有力に見える。
武藤の選択は打西九筒単騎のヤミテン。次巡九筒をツモアガリ。2,000・4,000。
1回戦ワンツーだった2名がリードを広げる展開で2回戦の序盤は進んでいく。
東3局、村上が1シャンテンから九万を暗カン。
一索三索五索五索六索七索二筒二筒六筒七筒七筒  暗カン牌の背九万 上向き九万 上向き牌の背  ドラ二筒六筒
村上はここから七筒ではなく打五索とする。四索が2枚切れだということが要因だろうか。
10巡目、親の武藤がテンパイ。
四万五万六万六万七万八万六索七索二筒二筒発発発
裏ドラを2枚見られる状況であってもしっかりとヤミテンに構える。
ここで村上が二索を引き入れ五筒八筒待ちでリーチ。
そう、村上は1シャンテンで五索を切っていなければ、ここで五索が武藤への放銃となっていたのである。
2巡後、武藤が八筒を掴む。八筒は見た目にもかなり危なそうな牌。五索がリーチした村上の現物で、自分は7,700のテンパイ。どうするか見ていたが、武藤は少考の後八筒をツモ切った。
一索二索三索五索六索七索二筒二筒六筒七筒  暗カン牌の背九万 上向き九万 上向き牌の背  ロン八筒  裏南九万
裏ドラが4枚乗り、16,000のアガリ。
リードしている立場の武藤はオリる選択もあっただけに、結果としては最悪となってしまった。
ここまでかなり苦しい展開が続いていた村上だったが、ここに来てワンチャンスをものにした。
この瞬間、順位点も入れると2.8P村上が武藤を捲る。
 
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南3局1本場、親は武藤。
村上はこの2回戦トップを取りたいところだったが、そうはさせなかったのは四柳。
七筒七筒南南  ポン西西西  ポン六筒 上向き六筒 上向き六筒 上向き  ポン白白白  ツモ南  ドラ一万
3,000・6,000は3,100・6,100。
この2回戦の道中も、四柳はリードしている立場としての立ち回りをうまく見せていた。
その中でしっかりと大物手をアガリきり、自身のリードを大きく広げる。
そのまま四柳が2連勝。自身の勝ち上がりをほぼ確実のものとした。
2回戦成績
四柳+34.5P 村上+3.9P 武藤▲13.3P 西野▲25.1P
2回戦終了時
四柳+75.2P 武藤+6.7P 村上▲15.3P 西野▲66.6P
最終戦(起家から、西野・武藤・村上・四柳)
決勝行きのチケット2つの内、1つは四柳。
もう1つのチケットをめぐって武藤と村上が戦う。
そこに西野が大逆転を狙うという構図。
東1局、親は西野。
村上が6巡目に先制リーチを打つ。
一索二索三索一筒二筒三筒五筒五筒六筒七筒七筒九筒九筒  リーチ  ドラ南
待ちも打点も良いとは言い難いが、やはり最終戦のギリギリの戦いではこういう手はリーチをしてアガリたいところ。
大量リードの四柳、特にリーチに対して安全牌もなく自然と手を進めて10巡目にテンパイ。
五万六万七万四索四索五索六索七索四筒五筒六筒六筒七筒
村上、この四柳のテンパイ直後に五筒をツモ切り8,000の放銃となってしまう。
東2局、親の武藤がアガリを決めて村上を引き離す。
一万二万三万九万九万四索五索六索九索九索九索四筒六筒  リーチ  ツモ五筒  ドラ五筒
2,600オール。
 
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東3局3本場、追う立場となってしまった村上の親番。
南場にも親番は残っているとはいえ、ここは連荘して粘らなければならなくなった。
村上は深い巡目にテンパイ。
五万五万六万一索一索一索二筒三筒四筒南南北北北  ドラ三筒
場に四万が1枚、七万が4枚場に切れていた。そうじゃなくともツモって三暗刻になるシャンポン待ちにしたかもしれないが、四万七万待ちにする理由がほぼなくなっていた。
自然とシャンポン待ちにしてリーチを打つ村上。
四万ならツモっていたが、これは致し方ないところか。
東3局4本場、村上のアガリ。
三万四万五万七万七万五索六索七索二筒三筒四筒七筒七筒  ロン七万  ドラ五筒
2,000は3,200。
東3局5本場、村上は5巡目に十分な形の1シャンテン。
二万三万四万七万八万九万六索六索七索三筒三筒五筒六筒  ドラ五筒
しかし16巡目まで一切テンパイできないまま、役なしテンパイを取っていた四柳のツモアガリとなる。
三万四万五万二索三索四索一筒一筒四筒六筒七筒八筒九筒  ツモ五筒
500・1,000は1,000・1,500のアガリ。
村上がテンパイさえできてリーチと言っていれば、おそらくこのテンパイは維持できていなかったであろう四柳の手。
村上は開けられた手牌を見てどう思ったか。
南3局1本場、大きな動きはないまま迎えた村上最後の親番。
村上は早い巡目で七対子に決めた手牌進行。ドラ含みの七対子1シャンテンで、良い単騎探しをしていたところだったが、10巡目にツモ切った六万が四柳への放銃となる。
五万六万七万七万八万一索二索三索四索五索六索北北  ロン六万  ドラ四索
2,000は2,300。
オーラスは全員ノーテンで終了し、リードを守り切った2名の勝ち上がりとなった。
最終戦成績
武藤+26.8P 四柳+11.3P 村上▲12.1P 西野▲26.0P
最終結果
四柳+86.5P 武藤+33.5P 村上▲27.4P 西野▲92.6P
A卓決勝勝ち上がり
四柳弘樹 武藤武
西野「地方リーグチャンピオンシップの時に映像対局の緊張がありましたが、今回は自分らしく麻雀が打てたのでよかったです。また出直します」
村上「後悔はないですね。精一杯やりました」
 
 
 
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B卓
1回戦(起家から、松崎・矢島・忍田・佐月)
東1局、親の松崎にテンパイが入る。
一万一万四万五万六万四索五索六索八索九索四筒五筒六筒  ドラ八索
ヤミテンに構えた松崎。次に忍田が以下のテンパイ。
三万四万五万三索三索六索七索八索二筒二筒二筒三筒四筒四筒
選択肢はいくつかある中、忍田は強気な二筒切りリーチを選択。
忍田の河には六筒が切られていて三筒はスジになっていたが、宣言牌が二筒ではその効力は弱いように思う。
忍田自身そんなことは当然わかっている。それでもこの開局に最高打点でリーチすることに、意味を持たせようとしたのかもしれない。
すぐに三筒を掴んだ松崎。現物の六筒と入れ替えることはできたが、それだと三色が崩れてしまう。
さらにはリーチしている忍田の河には七索が切られていた。
二筒切りリーチで三筒が危ないとわかっていながらも、松崎は三筒をツモ切った。
裏ドラは東で8,000のアガリとなった忍田。
それぞれの思惑、思考が1つの結果に繋がっていく様が、1回戦目の1局目から名勝負の予感をよぎらせた。
 

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東3局、親の忍田。
その証拠に……。これは東1局の最後の文章に繋がる言葉である。
忍田が12巡目テンパイ。
四万五万六万二索二索四索五索六索三筒四筒四筒五筒六筒  ドラ西
タンピン確定三色をヤミテンに構える。
その巡目の松崎の手牌。
五万五万五万七万七万六索七索八索二筒四筒六筒六筒西  ツモ三筒
もちろん本人にはわからないが、二筒が放銃となってしまいそうな手牌だっただけに助かったツモ。
そのままドラを切りリーチを打つ。松崎は四万を切っていて、場にマンズは安かった。
一発で忍田が七万を掴む。現物の四万とスライドして入れ替えることはできたが、忍田は七万をツモ切る。
裏ドラは三筒で8,000の放銃。
その証拠に……まるで東1局の人を入れ替えただけのような出来事が起こる。
親の確定三色ヤミテン。スライドできたがしなかった牌での放銃。
いきなり展開がドラマチックである。
東4局、親の佐月が先制リーチ。
一万二万三万四万五万六万四索五索六索五筒五筒七筒八筒  ツモ九筒  ドラ七筒  裏七筒
4,000オールで1人抜け出す。
東4局1本場。
松崎は仕掛けを入れてドラ3のテンパイを入れていた。
八万八万二索二索二索六索七索六筒七筒八筒  ポン三筒 上向き三筒 上向き三筒 上向き  ドラ二索
そこへ矢島がリーチ。
三万四万五万五万六万七万五索六索五筒五筒六筒七筒八筒  リーチ
松崎、一発で四索を掴むがこのテンパイでは止まらない。
矢島、8,000は8,300のアガリ。
 
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南3局2本場、親の忍田がリーチ。
二万三万一索二索三索三索四索五索一筒二筒三筒西西  リーチ  ドラ四万
以下、矢島の手牌。
一万二万三万四万六索七索七索八索三筒五筒六筒六筒七筒  ツモ七索
矢島は二万六万七万を河に切っている。忍田のリーチへの現物は三万のみ。七索がスジだった。
1枚しかないが現物を切る手もあるし、七索を切って迂回する手もあると思う。
矢島は1シャンテンキープの打一万。矢島の目から二万が3枚見えていてワンチャンス。仮に放銃してもドラではない方で安目になる可能性が高い。確かにその選択もある。
しかしこれが忍田に高目の手痛い放銃となってしまう。裏ドラは七万
12,000は12,600。
1回戦は佐月が逃げ切る形で終了。
1回戦成績
佐月+30.6P 忍田+16.4P 矢島▲15.5P 松崎▲31.5P
2回戦(起家から、矢島・忍田・松崎・佐月)
東1局、親は矢島。
10巡目、最初にテンパイしたのは松崎。
一筒二筒二筒三筒三筒六筒七筒八筒八筒八筒発発発  ドラ南
一筒は場に2枚。四筒は場に1枚。松崎はヤミテンに構える。
次に忍田が仕掛けてテンパイを入れる。
七索八索九索七筒九筒北北中中中  チー八万 左向き七万 上向き九万 上向き
続いて親の矢島も仕掛けてテンパイを取る。
一万二万三万四万五万六万南西西西  チー四万 左向き二万 上向き三万 上向き
更に佐月もポンをしてテンパイ。なんと全員テンパイとなる。
二索二索二筒三筒四筒南南南白白  ポン四索 上向き四索 上向き四索 上向き
流局が近づいてきた頃、あとは決着か流局を待つばかりかと思ったが、忍田がさらに北をポンして打七筒とする。
七索八索九索九筒中中中  ポン北北北  チー八万 左向き七万 上向き九万 上向き
忍田の目から七筒は4枚見えていて、場に1枚切られている八筒は絶好の待ちに見える。
三色を見切ってあえて九筒単騎に受けたことには当然理由があるのだろう。
ピンズの一色手をやっていそうな松崎が少考して七筒を切った。松崎が八筒を2枚以上は持っていそうに見える。全員が前に出てきているこの状況で八筒がここまで出てこないのは、おそらく松崎が固めて持っているからではないか。だとすれば場に2枚切れている九筒単騎の方がアガリが見込めそうな上に、危なそうな牌を持ってきても1巡はほぼ安全にテンパイをキープすることができる。
その仕掛けを忍田が入れなければ忍田がツモっていた一筒を松崎がツモ。
結果は偶然だが、繊細な思考が放銃を回避する。
一筒二筒二筒三筒三筒六筒六筒八筒八筒八筒発発発  ツモ一筒
1回戦ラスの松崎は3,000・6,000のアガリから2回戦を気持ちよくスタートする。
南1局、東場は流局が多い展開。
佐月はピンズの一色手で仕掛け、自分のツモでテンパイを入れた。
一筒一筒二筒三筒四筒四筒五筒六筒七筒九筒  ポン二筒 上向き二筒 上向き二筒 上向き  ドラ四索
そこに2つ仕掛けを入れていた忍田から八筒が出る。
佐月、8,000のアガリ。
 
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南3局、矢島が8巡目にリーチ。
四万五万六万二索三索四索七索八索九索二筒三筒発発  リーチ  ドラ発
追いついた忍田もリーチ。
二万二万二万三万四万五万六万七万五索五索五索六索七索  リーチ
軍配は矢島に上がる。一筒を忍田からロン。5,200のアガリ。
南4局、親は佐月。
13,200点持ちで苦しい忍田。3着の矢島との差も15,200点と、跳満ツモでも変わらない。
七万八万九万一索二索三索七索八索九索一筒二筒西西  リーチ  ドラ四索
それでも忍田は少しでも素点を稼ぐため、上記手牌でリーチを打つ。
しかしここはアガリまでは辿り着けずに流局。
最終戦は佐月が抜け出し、松崎・忍田・矢島の三つ巴となった。
2回戦成績
松崎+26.6P 佐月+9.8P 矢島▲7.6P 忍田▲29.8P
2回戦終了時
佐月+40.4P 松崎▲4.9P 忍田▲13.4P 矢島▲23.1P
最終戦(起家から、忍田・矢島・佐月・松崎)
東1局、矢島が4巡目に先制リーチ。
一万二万三万四万五万七万八万九万九索九索六筒七筒八筒  リーチ  ドラ九万
10巡目の佐月の手牌。
二万二万三万四万六万九万九万三索三索三索四索五索六索  ツモ四索
ここまでは比較的安全な牌を切りながら立ち回ってきた佐月だったが、ここで不要牌は全て無スジになる。
ドラドラの1シャンテンとはいえ、リスクは取らずに現物である五索六索を切る手もある。
しかしここで佐月は四索をツモ切り。自分の目からドラが2枚見えていて、矢島のリーチは安い可能性もあるという判断か。佐月、ここは強気に出る。
その気持ちに呼応するかのように次巡の佐月のツモは七万。さらに矢島に無スジの二万を切って追っかけリーチを打った。
矢島からすると「君は大人しくしててくれよ」なんて気持ちになったかもしれない。
しかしそこは勝負の世界。それぞれがリスクやリターンと対話しながら戦っているのだ。
二万三万四万六万七万九万九万三索三索三索四索五索六索  リーチ  ロン八万  裏七索
佐月、矢島から5,200のアガリ。これで佐月はさらに盤石な位置へ。
東4局、完全に追う立場となった矢島が2巡目テンパイ。
三万四万五万七万八万九万二索四索六索七索八索七筒七筒  ドラ四筒
ここはヤミテンとし、ツモ五筒で打二索、ツモ四筒で打四索のリーチを打つ。
三万四万五万七万八万九万六索七索八索四筒五筒七筒七筒  リーチ  ツモ三筒  裏中
1,300・2,600。
南2局、松崎が先制リーチを打ち、ツモアガリ。
二万三万三万四万四万五万一索一索三索四索五索二筒三筒  リーチ  ツモ一筒  ドラ二筒  裏二索
1,300・2,600のアガリで優位に立つ。
南4局1本場、供託のリーチ棒が1本。親は松崎。
点数状況は以下の通り。
佐月31,300
松崎30,600
矢島29,200
忍田27,900
松崎は現状トータル2位だが、最低でも着順が忍田より上でなければならず、矢島とも着順が2つ下だと捲られてしまう。
忍田の条件は、矢島・佐月からは1,600点以上のアガリ。それ以外は何点をアガっても松崎より上になるので勝ち上がり。
矢島の条件は、ツモなら何点でもOK。佐月からだけは1,000点でもアガると松崎の着順が佐月よりも上になってしまうので、跳満以上でないと佐月からはアガれない。しかし松崎・忍田からは1,000点でもアガれば勝ち上がり。
最終戦オーラス、3名にかなり現実的な条件が残るというシビれる展開に。
こうなると親番の松崎が、一度アガって連荘しなければならない分、現状上にいるはずなのに少し不利に見える。
最初に仕掛けたのが矢島。
二万四万四万八万八万二索二索五索二筒七筒  チー三索 左向き四索 上向き五索 上向き  ドラ南
スピード勝負のオーラスだからこその仕掛け。
忍田も仕掛け返していく。
七万五索六索二筒三筒五筒七筒八筒九筒九筒  ポン白白白
忍田さらに一筒をチーして打七万。重ねた七筒をポンしてテンパイ。
五索六索九筒九筒  ポン七筒 上向き七筒 上向き七筒 上向き  チー一筒 左向き二筒 上向き三筒 上向き  ポン白白白
矢島、2フーロ目を入れて1シャンテン。
八万八万二索二索三索五索七索  チー三万 左向き二万 上向き四万 上向き  チー三索 左向き四索 上向き五索 上向き
そしてここで松崎がメンゼンテンパイ。
三万五万六万七万四索四索六索七索八索六筒七筒発発  ツモ五筒
リーチ棒を出すと、忍田はどこからでも1,000点のアガリができるようになる。
ドラも切れていて、忍田は明らかに1,000点の仕掛けを入れているだけにリーチは躊躇われる。
しかし自分の勝ち上がりのためには打点のあるアガリをしなければ、連荘したとしても次の局も他者にそこそこの条件を残してしまうことになる。
数秒考え、決意を秘めたまなざしで松崎はリーチ宣言。
待っていたのは2巡後の発ツモ。裏ドラは二万で乗らず。しかし大きな2,000は2,100オール。
このアガリで勝負あり。
南4局2本場は矢島の1人テンパイで終了。
最終戦成績
松崎+21.9 矢島+5.1 佐月▲6.8 忍田▲20.2
最終結果
佐月+33.6 松崎+17.0 矢島▲18.0 忍田▲33.6
B卓決勝勝ち上がり
佐月麻理子 松崎良文
矢島「負けました。また頑張ります」
忍田「ここまで残れて嬉しいですけど、せっかくなんで決勝残りたかったですね」
観戦記者としてというより、一麻雀打ちとして胸が熱くなる対局を見せつけられた1日だった。
勝者の胸にある期待や不安が詰まった熱い思い。
敗者の胸にある悔しさや来年こそはという野望の詰まった熱い思い。
それぞれに共感しながら、観戦者としての熱い思いを私も秘め、決勝の舞台を楽しみに待つことにした。