桜蕾戦 レポート

第4期桜蕾戦ベスト16D卓レポート

【桜蕾戦ベスト16D卓、加護優愛の鮮烈デビュー、桜木里咲と勝ち上がり】

デビューしたての新人でも放送対局に出られる可能性が高いという触れ込みで始まった桜蕾戦(男性は若獅子戦)、今期の1つの注目にこの9月にデビューし、ベスト16に残った加護優愛が挙げられる。
もちろん放送対局は初めてなので、どういう麻雀を打つかはベールに包まれている。
加護が店長をしている新潟の健康麻雀のお客さんと、ごく少数しか知らない情報だ。
『リーチをたくさん打つ雀風で、憧れのプロが、前原雄大、佐々木寿人』とインタビューでは語った。

 

加護優愛(38期後期・東京本部所属)

1回戦東1局
加護はインタビューの宣言通り、リーチ、ピンフだけではあるがリーチといった。

 

 

緊張しているとも語っていたが、開局から対局に入り込めている様子に、加護の強さを感じる。
繰り返す必要もないと思うが、初の放送対局であるし、公式戦にデビューしてから2ヶ月しか経っていない。

1回戦を浮きの2着だった加護は、続く2回戦の東4局。
実況の大和「七万は(待ちとして)いいんじゃないですか?」
タンヤオ、七対子、ドラ2のテンパイで、良い待ちを探しているところに、七万を引き、ノータイムでリーチ。
精度の高さ――山に3枚残り――も素晴らしかったが、ノータイムでリーチに踏み切る思い切りの良さには非凡な才能を感じさせる。
これを見ていただろうベスト8に残っている6人には、驚異に映ったに違いない。

 

 

ほどなくツモって3,000・6,000。

もう1局、この局も取り上げたい。

 

 

この二万二万三万四万で鳴いたのは、とても実戦的だった。
上家の親の藤根のスコア状況だと、この親を落とすわけにはいかずマンズを絞る余裕はない。
その点まで加味されていたら末恐ろしいので、そこまでは考慮されていないと思いたいところではある。

 

 

藤根からホンイツ、ドラ2の7,700(+900)。
このアガリでトータルが+50ポイント近くになり、ダメ押しのアガリになった。
3・4回戦では杉浦に迫られるも、ここまでの大きいリードがきいて、勝ち上がり。
加護「応援ありがとうございました。ベスト8も自分の出来ることを全部出し切りたいと思います。」

 

藤根梨沙(35期・関西本部所属)
桜蕾戦は初のベスト16。

僕は藤根の麻雀を見るのが初めてで、楽しみだった。
この日を見た限りだと、持ち味は高打点での押し返しだろう。
しかし、1回戦からあと1牌が遠かった。

 

 

高目12,000、安目でも7,700の先制リーチは、杉浦が追いかけリーチで1,000・2,000のツモアガリ。

 

 

8,000のテンパイで加護のリーチに追いつくも3,900の放銃。

 

 

出アガリでも18,000だが、リーチの桜木と2人テンパイで流局。

1つ2つでもアガリになっていれば、全然違う展開になっていただろう。
手数で勝負するタイプではないだけに、1つも決まらないのではどうにもならない。
解説の仲田加南曰く、「前半、重たく丁寧にやっていて、(この対局への)大事な思いが伝わってきたが、逆に裏目に出る日だった。もっとラフにリーチや仕掛けをしても良かった。」という総評だった。
また次回の登場に期待したい。

藤根「不甲斐ない結果になってしまったんですが、これに懲りることなく、精一杯麻雀を頑張っていきますので、これからも応援よろしくお願いします。」

 

杉浦まゆ(35期後期・東京本部所属)

杉浦は2年前に女流桜花のC2リーグから入れ替え戦を経て、Aリーグに飛び級するも、今期は成績が振るわず降級。
8月に行われた「麻雀最強戦2022 女流プロ最強新世代」で優勝。ファイナルへの切符を手にしている。
桜蕾戦は第1期ベスト8以来のベスト16進出。

1、2回戦をどちらも3着となり、後のない3回戦だったが格上の意地を見せる。
(スコアは次のキャプチャを参照)

 

 

加護から南白、ホンイツ、ドラ2の12,000を直撃。

 

 

次の南2局は藤根から中、ホンイツ、ドラの8,000。
この3回戦をトップとし、加護や桜木と30~40ポイント差で最終戦を迎える。

しかし、反撃もここまで。
最終戦では加護と桜木に局を回されてしまい、敗退になった。
振り返ると2回戦、この放銃が痛かった。
前局の東2局に桜木から7,700を直撃し、この半荘の失点を回復したところだった。

 

 

迎えた親番でダブ東が暗刻になってリーチ。
二筒もまあまあ良さそうな場況に見える。(実際に山に2枚)

 

 

しかし、桜木の手が進み二筒が入ってこの形(三筒切り)、杉浦がホウテイで九万を掴んで8,000の放銃になってしまった。
リーチをかけた時点ではそこまで桜木の手は整っていなかったので、危険牌を切らずに桜木の手が進んでしまったのは不運でしかない。
杉浦「初め(前半)の方、凄くふわふらしていて、オリ打ちで放銃してしまったのが…。
(中略)あと3回くらい桜蕾戦には出られるので絶対優勝します。そのために今後も(麻雀の)勉強を頑張って、いい麻雀を見せられるように頑張りたいと思います。」
杉浦の言う通り、前半で防げた失点もあったかもしれない。
次回の挑戦と、まずは最強戦のファイナルに期待しよう。

 

桜木里咲(34期後期・東京本部所属)
前回の第3期桜蕾戦では準優勝。

最終戦で猛烈な追い上げをしたのは記憶に新しい。

桜木の今日の会心のアガリはこれだろう。

 

 

見切れているが、上家の藤根の第一打目が四万でソーズのホンイツ模様。加護も前巡に四万を切っている。
それを踏まえての六万切りは、打点派の桜木らしい良い一打だった。
(結果は、杉浦から三万でのリーチ、一気通貫のアガリ)

最終戦、本人はヒヤヒヤしたと語っていたが、危なっかしい打牌はなく逃げ切り。
安定さが加わり、前回の桜蕾戦での戦いから急成長したように思う。
その一因は、桜木が語った戦前のインタビューにある。
桜木「前回の準優勝で、自分の麻雀プロに対する気持ちがかなり変わった。
それまでは全然自信がなかったけど、こんな自分でもまだまだやれるんだ、挑戦していいんだと前向きになった。」

そして、最後に加えたこの一言に、インタビューで断言したその力強さに、僕は今日の桜木の勝利を確信したのである。
桜木「ベスト16、絶対に負けたくないし、絶対に勝ちたいです。」

これでベスト8が出揃った。
前回優勝の廣岡璃奈やMリーガーの岡田紗佳といった注目選手がいたり、今年デビューの新人がなんと4人も残っていたりと見どころ十分。
誰が第4期の桜蕾に輝くのか、この後も必見です。

 

 

ベスト8A卓:10/28(開催済)
ベスト8B卓:11/18(金)16時~
決勝戦:11/25(金)14時~

 

 


(文:福光聖雄)