プロクイーン決定戦 決勝観戦記

プロクイーン決定戦 決勝観戦記/第11期プロクイーン決定戦 最終日観戦記

第11期プロクイーン決定戦、最終日。
僕が対局場である連盟スタジオに着いた時には、7回戦抜け番である二階堂以外の選手は既に到着していた。
初日の雰囲気とは、やはりどこか違う。
談笑している様に見えていても、どの選手も目の奥は真剣そのもので、若干の緊張や闘志を肌で感じる。
今日で、全てが決まる。
対局開始までの間、椅子に腰かけていると、解説のため会場にきていた藤崎智が、小さな声で話かけてきた。
「(プロクイーン決定戦で)初日が終わって、こんなに差がついていないのってあったっけ?観ている方は面白いね。」
・・・確かにそうだ。
ここ数年の決定戦は、誰かが抜けだしそれを捕える展開。
しかし、今年はトップを走る二階堂が+30.0P。5位・和久津が▲26.1P。
もうどうなるか分からない。
立会人、藤原隆弘の合図により、最終日の初戦、7回戦が開始された。
 
7回戦
(起家から、手塚、豊後、安田、和久津)抜け番:二階堂
微差ではあるが、トータルトップの二階堂が抜け番の初戦。
ここで少しでも二階堂に追いつきたい、いや追い越したいと誰もが思っているだろう。
その様な思惑が渦巻いている中、北家の和久津が4巡目にリーチ。
二万三万四万五万五万五万八万八万二筒三筒発発発  リーチ  ドラ一筒
高目ツモで満貫からと、打点、待ち共に申し分ない形だ。
初日、僕個人の感想は、和久津にしては全体として少々押しが弱かった印象を受けた。
もちろん、それ相応の手が入っていないというのもあると思うのだが、若干引くのが早いなと思う局も数局あった。それが和久津自身の作戦で、手が入っていないなりの対応なのかもしれないし、丁寧と言い換えることもできる。しかし、和久津の猛プッシュが見たい、と誰もが思っているはず。東1局のこの手は今半荘、もしくは、最終日通しての和久津のいい着火材料になりうるのでは、と見ていたが。
「・・・ロン」
放銃したのは豊後。手を開いたのは和久津ではなく安田だった。
二万三万四万四万五万六万二索三索八索八索四筒五筒六筒  ロン一索
和久津の現物待ちで、こっそりとテンパイをいれていた安田。
1,000点ながら、今日という日を戦う意味で、とても大きな1,000点に思えた。
東2局、和久津が1枚目の東から仕掛けてホンイツに向かうも、上家の安田に完全に絞られてテンパイすら入らない。今局の安田には、初日の最終戦に見たブレている様な感じは全く見られなかった。
この局は豊後、手塚の2人テンパイ。
そして東2局1本場、終局図がこれだ。
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手塚4巡目に小考してのリーチ。
その理由は、高目の一索が場に既に2枚切れ。それでも果敢にリーチといった。
受ける親の豊後と安田。それに対して、正面からぶつけにいったのは和久津だった。
6巡目に、
四万四万五万八万九万七索八索一筒二筒三筒四筒四筒五筒
ここにツモ六万ときて無筋の打四万。更に、この形から10巡目に五索も叩きつける。
「こんなところで引くか」
次巡ツモ六索でテンパイを果たし、迷うことなく辺七万でリーチ!これが和久津の強さだ。
結果は流局となったが、この闘志溢れる摸打は、観ている者に和久津がくるのではないか、と感じさせるには充分なものだったと思う。
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また、対戦相手の心理状態もある。
開けられたこの手を見て、他の対局者は多少なりとも怖さを感じるのではないかと思う。
そうすると、手が縮こまる打ち手が出てきて、和久津に有利に働く、というケースもあるだろう。
こういう心理状態からくる、摸打のブレがいわゆる「流れ」というものを造るのでは、と考えるのも面白いかもしれない。
続く東3局は、手塚が丁寧な手順で、ノーミスで七対子ドラ2のテンパイ。
リーチを打って、トイツ落としの豊後から一発で出アガると、続く東4局も自然な形で仕掛けて3,900を安田からアガる。その後、まっすぐ打ち抜いた牌で、安田に8,000を献上する局があったものの、すぐに加点し、オーラスをトップ目で迎えた。
初日、非常にしっかり打っていると思われた手塚だったが、初日を終えての成績は▲18.7P。
ここをトップで終えて、手塚の反撃が始まるはずだった。
しかしオーラス、和久津が2つ仕掛けて、手塚のピンフテンパイを掻い潜り1,000オールをアガると、次局は、
四万五万五万六万六万七万八索八索二筒三筒五筒六筒七筒  リーチ  ツモ四筒  ドラ八索  裏五索
この6,000オールで一気にトップ目に。
更に3本場では、手塚の3巡目リーチに追いかけて2,600は2,900オールと、ダントツになってしまった。
そして4本場。なんと3着目の安田がダブリー。
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二万四万五万五万六万七万八万七索八索九索四筒五筒六筒  ドラ八万
数巡後に満貫のツモアガリとなり、手塚はなんと3着でこの半荘を終えることになってしまった。
この半荘の手塚は本当に不運だと思うが、ここから気持ちの切り替えができるかどうか。
手塚にとって、次の半荘が抜け番なのは良かったのかもしれない。
7回戦結果
和久津+39.9P  安田+10.7P  手塚▲7.0P  ▲43.6P
7回戦終了時
二階堂+30.0P  安田+14.3P  和久津+13.8P  手塚▲25.7P  豊後▲32.4P
 
8回戦
(起家から、安田、和久津、豊後、二階堂)抜け番:手塚
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8回戦開始前に、控え室で二階堂が気合いをいれるかの様にポツリと一言。
「よし。ひよっていてもしょうがない!」
東1局、二階堂が早速前に出る仕掛けを打って出る。
六万七万五索五索六索七索八索二筒二筒四筒六筒八筒北  ドラ東
10巡目、ここから2枚目の七筒をチーして打四筒
この打四筒三筒が既に2枚切られていて、なおかつ北は2枚切れでほぼ安全牌であることから。
これは二階堂本来のフォームなのか、戦略なのか。
二階堂にとっては、この日の初戦ということもあって「卓に入る」という意味もあったのかもしれない。
すぐさま、3巡目にドラを離している和久津からリーチが入るが、終局間際に粘ってテンパイを入れた安田から、二階堂がタンヤオ三色をアガって2,000点。
東2局は、普段から「三色が好き」と公言している二階堂らしい手順で三色ドラドラのテンパイ。
三万四万五万六万七万八万六索八索六筒七筒八筒発発  ドラ発
道中、現実的に一気通貫が見える1シャンテンにもなるのだが、それには目もくれず、三色一本に絞った趣き深い手筋だった。豊後が二索をポンして打発。これを見た二階堂、勝負!と、即座にツモ切りリーチといくが、ここは豊後が力強く2,000・4,000。
五万五万五万九万九万九万五索五索七筒七筒  ポン二索  ツモ七筒
現在、トータル5位の豊後。ここから一気に巻き返したいところだ。
東3局1本場。南家の二階堂がここから1枚目の南をポン。
七万七万八万八万四索五索五索南南西北中中  ドラ六万
遅そうだし、完成すれば高くなる可能性もあるが、二階堂にとっては珍しい仕掛けなのではないだろうか。
これまでの内容を見るに、いつもより仕掛けを多くいれて、相手に対応させること、そしてきっちりと捌くこと、この2つが、今回の決定戦で二階堂が優勝する為に、意識してやろうとしていることだと強く感じた。
結果は、和久津の早いリーチにまっすぐ向かって8,000は8,300の放銃に。
この後和久津が、南1局に満貫のツモアガリ、南2局は豊後が二階堂から2,600点のアガリ、和久津、豊後のトップ争いでオーラスを迎えた。
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2人にとって都合がいいのは、トータルトップ目の二階堂が現在ラス目であること。
安田にしても、自身が3着でもできればこのまま終わって欲しいと思っているに違いない。
豊後42,100点、和久津43,800点で迎えたオーラス。5巡目の豊後。
一万二万三万一索二索三索四索五索八索九索五筒白白  ドラ一筒
ここに嬉しくないツモ三索でテンパイ。
300・500のツモでは和久津に届かないが、一気通貫への変化や、白とのシャンポン形の変化を待って、打五筒のヤミテンとした。次巡のドラ一筒をツモ切り、更に次巡、中をツモ切ると和久津がポン。
ここでツモ切りリーチに踏み切った。
和久津は1シャンテンから真っ直ぐアガリに向かっているが、中々テンパイが入らない。
豊後のアガリ牌の七索も中々姿を見せない。
「リーチ!」
声の主は二階堂だった。そして流れる様に一発ツモ。
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四万五万六万八万八万一索二索三索七索八索二筒三筒四筒  リーチ  ツモ六索  ドラ一筒  裏二筒
二階堂はこの4,000オールで3着に浮上。
1本場は、和久津が5巡目リーチを敢行。待ちはペン三万と苦しいが、アガればトップだ。
その宣言牌八筒をチーする豊後。
二万二万一索三索八索三筒三筒四筒七筒九筒中中中  ドラ八索
ここからチーして打三筒
そして、和久津の河など見てないかの様に、不要な牌を全て河に置く豊後。
いや実際見ていなかっただろう。
跳満を放銃しなければ降着しない豊後にとって、ここは攻めやすい。
13巡目には、ドラの八索まで放ち二筒五筒でテンパイを果たすと、見事和久津から討ち取り自力でトップをもぎ取った。豊後、和久津共に、ここへきて自身の持ち味を存分に出してきている感がある。
8回戦結果
豊後+24.7P  和久津+12.2P  二階堂▲7.4P  安田▲29.5P
8回戦終了時
和久津+26.0P  二階堂+22.6P  豊後▲7.7P  安田▲15.2P  手塚▲25.7P
なんと和久津が半荘2回でトータルトップまでいってしまった。
このまま突き抜けてしまうのでは、と思ったが、次の半荘の抜け番が和久津。
先程の、手塚の抜け番とは対照的に、ここで抜け番は少し嫌な感じがしただろうか。
 
9回戦
(起家から、豊後、安田、手塚、二階堂)抜け番:和久津
この9回戦辺りから、マイナスしているものにとっては途中敗退も意識していかなくてはならない。
特に10回戦抜け番の安田、現在トータル5位の手塚にとって重要な一戦だ。
この様にポイントが詰まっている場合、マイナスしているポイントが小さくても途中敗退になる危険がある。が、逆に捕えれば、優勝する為のポイントもまた小さい可能性があるということだ。途中敗退してしまえば優勝する確率は0%だが、免れればまだ分からない。特に、この様にポイント差が小さい場合、優勝も大いにあり得るということだ。
安田は最低でもこの半荘は手塚より着順を上回って、手塚に条件を突きつけたい所だろう。
東1局、いきなり手塚に試練が訪れる。
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4巡目にドラが3枚になった手塚。
四万五万六万六万八万二索五索七索八索九索二筒三筒四筒  ツモ六万  ドラ六万
ここで打八万とする。
1巡目に二索を切っていて三索引きを狙ったのかもしれないが、ここは素直に打二索としておくべきだと思う。
更に6巡目の一筒もツモ切るが、ここでも打二索がいいだろう。
そして7巡目、豊後から親のリーチを受けて、上の手牌になった。
ここでの手塚の選択は、現物の打七筒
ここは最も手広い二索を打ってほしかった。手牌的にもここは完全に勝負所。
手塚もそれは分かっていると思うのだが、多少の恐れを抱いてしまったのか。
手塚、次巡に中をツモ切って12,000の放銃になる。
攻める気持ちがあれば、この中で誰が打っても放銃になるのだが、上の図の局面から打二索として、次巡、放銃するのと、打七筒として放銃するのでは、やはり印象が全く違う様に思う。
これまでしっかり打っていて、僕自身、普段の強さを知っている手塚だからこそ、ここは真っ直ぐに打ち抜いている譜を残して欲しかった。
東3局、手塚は親で二階堂から7,700をアガるも同1本場、今度は二階堂が2,000・4,000と、なかなか点棒がリカバリーできない苦しい展開。
更に東4局、手塚の8巡目の手牌は、
五万六万七万六索七索三筒四筒五筒六筒八筒八筒九筒九筒  ツモ二筒  ドラ九索
ここで当然の打九筒。すると親の二階堂からリーチが入る。
次の手塚のツモはドラの九索で、安全牌は六索のみ。
テンパイすればドラも勝負する覚悟で打九筒とするが、これが二階堂の当たり牌で12,000の放銃となってしまう。
1本場も、二階堂が2,600は2,700オールとトップ目だった豊後を抜き去り、持ち点は既に55.000点に。
豊後も負けじと、親で500オールをアガった次局、一打目の手塚の北をポン。手牌は、
五万五筒六筒七筒八筒西西発発発  ポン北北北  ドラ西
すぐに四筒を引いて、鉄板と言ってもいい3面張の満貫テンパイ。
これは巡目が早いだけに、誰が打ってもおかしくはない。
トップ目の二階堂から直撃するチャンスでもある。
しかし、この局の二階堂の対応が素晴らしかった。
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配牌から持っていた九筒を打ち出さない。
豊後の上家であるということも九筒を打たなかった理由の1つなのは間違いないと思うが、この局は豊後に危険を感じて、完全に受けに回っている。テンパイが入っているかは分からないが、1枚たりとも鳴かせない、という構えだ。
結果は、誰一人1枚もピンズを打ち出すことなく、豊後がツモアガって4,000オールとなった。
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これで手塚は、持ち点がマイナスとなってしまい、非常に苦しい展開になってしまった。
どうにかして安田より上に行きたい所だ。
南3局の親番でリーチを打ち、高目をツモって4,000は4,100オールとし安田にせまるが、続く2本場
一索一索四索五索九索九索九索三筒四筒五筒六筒八筒発  ドラ発
ここにツモ六索ときて、発切りのヤミテンに一旦構えるが、そのドラを安田がポン。
次巡の二万をツモ切ると、安田からロンの声。
本当に厳しい。こうなると手塚は10回戦にかけるしかない。
そしてオーラス、注目のトップ争い。
親、二階堂50,100点、豊後48,200点。二階堂、10巡目にテンパイが入る。
二万四万二索三索四索一筒一筒三筒四筒五筒六筒七筒八筒  ドラ二筒
ここは234の三色、ピンフの手変わりを待ってヤミテンを選択。
そして13巡目
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五筒をツモって場を一瞥すると、打一筒
観戦記者という立場上、自分は対局室内の出入りを許可されていて、たまたま二階堂の後ろで観ていたのだが
「やりすぎでしょ!」
と正直思った。豊後とはテンパイノーテンでも変わる差。これでテンパイが入らず流局し、豊後に捲られてしまう結果になると最悪だ。
しかし二階堂、次巡、ラス牌の三万を引き入れると今日一番のリーチ発声。
そして安目ながら五筒をツモ。
二万三万四万二索三索四索三筒四筒五筒五筒六筒七筒八筒  リーチ  ツモ五筒  ドラ二筒  裏六万
格好良すぎるこの2,600オールで、この半荘を締めくくった。
9回戦結果
二階堂+41.9P  豊後+22.6P  安田▲17.8P  手塚▲47.7P
9回戦終了時
二階堂+64.5P  和久津+26.0P  豊後+14.9P  安田▲33.0P  手塚▲73.4P
抜け番の最中、控室で和久津が呟いた。
「(局を)終盤までもっていったらルミさんにやられるな。」
やはりこの2人、相当意識しあっている様だ。
 
10回戦
(起家から、二階堂、手塚、豊後、和久津)抜け番:安田
この10回戦で、途中敗退の者が1人出る。手塚は安田と40.4P差。
順位点が、トップをとると15,000点なので、55,500点のトップが途中敗退を免れる為の条件だ。
開局、自然な手順で豊後が満貫をツモると、東2局の親は手塚。
普段はしないであろう1枚目の白をポン。ほとんど1,500にしかならなそうな仕掛けだが、2回の親番を落としたくない、ということだろう。
今局、和久津も仕掛けるが、ピンフテンパイの二階堂が和久津から1,000点。
東3局、二階堂がソーズのホンイツ模様で仕掛け始めるが、わりと遠い仕掛け。
上家の和久津に自由に打たせない様にとの作戦か。
すると終盤親の豊後に、こんなヤミテンが入る。
三万四万五万九万九万三索四索五索二筒三筒三筒四筒五筒  ドラ九万
ここで和久津、
四万五万六万九万四索四索一筒二筒三筒四筒七筒八筒九筒  ツモ七万
このテンパイが入り小考。
和久津の雀力なら、豊後にも打点は分からないが、おそらくテンパイが入っているなと思っていただろう。
しかし、打四筒として豊後に12,000の放銃。打つのは想定内であったとしても、予想より高かったのは違いない。
そして南2局、手塚の最後の親番だ。持ち点は25,200点。ここで何とか加点しないと途中敗退濃厚だ。
まず二階堂、6巡目にしてメンホン七対子のテンパイを入れる。待ちは七万単騎。
そこに手塚も、苦しいながらも七対子のテンパイを果たし、とりあえずの三筒単騎。
手塚がテンパイを果たした同巡、和久津がメンタンピンの四万七万でリーチ。
更には、豊後までがピンフドラ2でリーチと4者がテンパイを果たした。
誰にとっても勝負局。果たして誰が勝つのか。
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三筒単騎から通ったばかりの発単騎に変えた手塚。次巡、和久津のアガリ牌である四万を持ってきて受けかえる。すると今度は、豊後のアガリ牌である五筒が手許に。ここまで粘ったが、流石にこれはどちらかを打たざるをえず、豊後に8,000は8,600の放銃となってしまった。
この局で事実上、手塚の途中敗退が決まってしまったが、最後の粘りは見事なものでとても見応えのある1局だった。
オーラスは、和久津をラスのまま終わらせようと、二階堂が仕掛けて和久津の親を流し、豊後の完勝に近い形で10回戦が終わった。
10回戦結果
豊後+42.4P  二階堂+12.2P  手塚▲19.4P  和久津▲35.2P
10回戦終了時
二階堂+76.7P  豊後+57.3P  和久津▲9.2P  安田▲33.0P  手塚▲92.8P(途中敗退)
 
11回戦
(起家から、安田、和久津、豊後、二階堂)
残り2回戦。ポイント状況を考えると、安田は二階堂を沈めての連勝が条件。
和久津もここは二階堂が沈んでのトップが欲しいところだ。
二階堂と豊後はあって無いような差。
解説で勝又健志も言っていたが、1着順につき10Pの差がつくので、最終戦で10P差付近だとほぼ着順勝負ということになる。
東1局から和久津の猛攻が始まる。
終盤、1枚切れの発単騎で、七対子ドラドラのリーチを打つと、発が2枚になった豊後から8,000。
豊後は和久津に対する安全牌はいくらでもあったので、これは完全なるミス。
優勝に手の届きそうな位置にいることで、やはり緊張しているのか。
二階堂を追う1番手としては手痛い失点だ。
そして東2局、親番になった和久津、10巡目リーチ。
五万五万五索五索五索七索七索七索二筒四筒五筒六筒七筒  ドラ南
特に三筒が良さそうな場況でもないが、リーチで攻めたてる和久津らしい判断だ。
これをドラ2になり、リーチと被せてきた安田から捕えて裏ドラが五万
大きな12,000のアガリとなった。
未だ無傷の二階堂、同2本場に、
一万一万三万三万四万五万六万六万七万八万三筒四筒中  ドラ五万
3巡目のこのメンツ手1シャンテンの形から三万をポン。
三万のポンによって、比較的一万は鳴きやすく、チンイツまでいけば跳満と実戦的な仕掛け。
いつもゆったりと構える二階堂とは違い、勝ちたいという思いが伝わってくる。
しかしここは、豊後のヤミテンのタンヤオに1,300は1,600の放銃となった。
そして次局。和久津、なんと四暗刻単騎テンパイ。豊後も親でドラ3のリーチを打った。
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結果は、数巡前からテンパイしていた二階堂に和久津が放銃。
和久津は、七索を残して3面張に受けていればアガリがあったが、追う立場でポイント差を考えると、32,000点はあまりに大きい。その為、四暗刻単騎確定の受けにしたかったのだろう。
ツモアガれば、二階堂にトータルで一気に並んだだけに、ここは本当にアガリたかっただろう。
南1局にも和久津の先制リーチを受け、一歩も引かない二階堂。
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攻めるしかない安田のリーチ宣言牌を捕えて、得意の三色で大きな8,000点のアガリ。
四万四万四万七万九万四索四索七索八索九索七筒八筒九筒  ロン八万  ドラ四索
二階堂の点数が減らないどころか増えていってしまう、3者とも厳しい展開。
しかし南3局、和久津がこのリーチを一発でツモアガって3,000・6,000のアガリ。
二万三万四万七万七万二索三索四索六索七索八索三筒四筒  リーチ  ツモ二筒  ドラ九索  裏八万
やれることは全てやった和久津。
二階堂を沈めることはできなかったものの、大きなトップで最終戦に何とか望みを繋いだ。
11回戦結果
和久津+48.0P  二階堂+14.7P  豊後▲21.1P  安田▲41.6P
11回戦終了時
二階堂+91.4P  和久津+38.8P  豊後+36.2P  安田▲74.6P
 
最終12回戦
(起家から、和久津、豊後、安田、二階堂)
日本プロ麻雀連盟では、タイトル戦の最終戦の座順が、トータルの順位によって決められる。
東家=2位、南家=3位、西家=4位、北家=1位。
親番が落ちて優勝の可能性がなくなった者が、麻雀に参加しなくなるという歪みをできるだけなくし、トータルトップ者をラス親にする事で、不自然なオーラスの連チャンがなるべく起きないようにする為だ。
トータルトップ二階堂との差は、和久津が52.6P、豊後が55.2P。順位点が1着順によって10P縮まるので、二階堂とのトップラスを決めての約25,000点差が優勝の条件だ。安田は現実的に厳しい条件となってしまったが、なるべく高い手を狙いつつ親で何とかするといった感じだろう。
東1局、安田が11巡目にメンホンリーチ。
二索三索四索七索七索七索八索八索南南白白白  ドラ六万
しかし終盤、和久津が追いついて安田からロン。
四万五万六万六万七万八万五索六索七索東東発発  ロン東
12,000のアガリだが、リーチを打っていれば一発のアガリで1,8000、裏次第では倍満の可能性もあっただけに、二階堂との差を考えると15巡目とはいえリーチという選択もあった。
1本場は、豊後が力強く3,000・6,000!
三万四万四万五万五万六万八万八万三筒四筒六筒七筒八筒  リーチ  ツモ五筒  ドラ八万
これで、和久津、豊後が点棒を持つ面白い展開となった。
東2局は豊後、終盤に形式テンパイを取るも、二階堂のかわし手にホウテイで放銃。
点数こそ2,000点だったものの、豊後の親を落とせたことは二階堂にとっては非常に大きい。
東3局、豊後の4巡目の手牌。
五索五索六索一筒二筒二筒三筒三筒七筒七筒八筒八筒九筒  ツモ六筒  ドラ一万
ここでの豊後の選択は打六索のリーチ。
ここは二階堂との点差を考えると、リャンペーコーやチンイツの変化を考えてヤミテンとしておくのが優勝の確率をあげる為の本手だと思った。
結果は、四筒をツモって700・1,300。二階堂はアガリ形を見て少しホっとしたかもしれない。
東4局、二階堂の親番。
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この形から七筒をチー、打一万。こんな仕掛けをする二階堂を見たことがない。
焦りなのか戦略なのか、それは本人にしか分からないが何というか感情剥き出しの仕掛け。
こういう、人間臭いところが出る対局が自分としては本当に好きだ。
結果は、豊後に発三筒九筒と連続で送り込んでリーチを誘発してしまうが、二階堂自身もダブ東を暗刻にしてテンパイ。決着はつかず流局となった。
1本場は、二階堂が配牌1シャンテンも、ドラ2の和久津が3巡目リーチ。
すぐに満貫をツモって、二階堂に親カブリさせることに成功する。
和久津はトップで二階堂が3着なら、32,600点差をつければ優勝。
南1局を迎えて和久津は二階堂より18,400点上なので、この親番で満貫をツモるだけでトータルで和久津の方が上へ行く。
和久津、8巡目リーチ。
一万二万三万六万七万八万五索六索七索四筒五筒発発  ツモ六筒  ドラ三筒  裏二万
安目ながら2,000オール。差はもうほとんどない。
1本場、和久津がドラ2の好配牌。しかしアガったのは二階堂。
一万一万一万五万六万七万四索四索四索五索六索南南  リーチ  ツモ南  ドラ六筒  裏三万
力強い1,300・2,600は1,400・2,700のアガリ。
そして次局、勝負を決定づけるアガリが出た。
四万五万六万四索四索五索五索六索七索七索四筒五筒六筒  ロン六索  ドラ五万
二階堂が豊後から捕えて勝負あり。二階堂が大好きな美しいタンピン三色の和了りが決め手となった。
最終12回戦結果
和久津+30.8P  二階堂+14.6P  豊後▲9.5P  安田▲39.9P
最終結果
二階堂+106.0P  和久津+69.6P  豊後+26.7P  安田▲114.5P
第11期プロクイーン、優勝は二階堂瑠美。
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今回の決定戦、選手それぞれの持ち味が存分にでていた試合だった。
和久津の最後の追い上げは見事だったが、昨年の女流桜花の時の様に、エンジンのかかりが少し遅かったかもしれない。
優勝した二階堂は、本当に安定感が抜群だったと思う。
攻める所はきっちり攻めていたし、例え放銃になったとしても、次にやるべき所をしっかり抑えて打っていた様に思う。決定戦10回を通して、4着を1回も引いていない。素晴らしい内容だった。
たまに「瑠美は麻雀の内容が趣味に走り過ぎだ」とか、そんな声も耳にする。
しかし、この決定戦はどうだっただろう。
勝ちたい意志が強く出ていたと思う。泥臭い仕掛けもたくさんあった。
それほど勝ちにこだわっていたのだと思う。
じゃあ普段は勝てなくていいと思っているのかと言われれば、きっとそうではなくて、麻雀プロとして自分の麻雀をどう魅せようかという思いが先行しているだけだと思う。
麻雀プロとしてどうあろうとするかは人それぞれなのだから。それでいいとさえ思う。
今回の決定戦で、いつもとは違った二階堂瑠美を見ることができて嬉しかった。
他の選手も、今回の決定戦での経験を活かして、また素晴らしい戦いを見せて欲しいと思った。
瑠美さん、連盟初タイトルおめでとうございます!
また来年も、現プロクイーンとして強い瑠美さんを見せてくださいね!
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