第13期プロクイーン決定戦最終日観戦記 白鳥 翔
2015年11月20日
7回戦(起家から大里→和久津→童瞳→瑠美)抜け番:茅森
東1局、和久津が道中ドラのを重ねカンでリーチ。
次巡、大里が追いつくも、待ちはカンチャンでリーチのみという手牌。
親番とはいえこれまでの大里の打ち筋を見ていると、2日目の最初に訪れたこの選択は興味深かった。
意を決してリーチといく大里。いつもより攻撃的な姿勢でいくことを決めたか。
しかしここは和久津が瑠美から出アガリ。
瑠美もドラトイツとはいえ、まだ2シャンテン。少し勝負を焦ってしまった感は否めない。
とはいえ2日目の初戦東1局。瑠美の麻雀感からすればここは放銃よりも万が一の勝負手のアガリ逃しを恐れたのか。
東2局も和久津は5,800を童瞳からアガって点数を増やすも、1本場に童瞳がリーチのみのリャンメンリーチ。
すぐに持ってきたを暗カンすると新ドラは雀頭の。アガリ牌をリンシャンから手繰り寄せ2,000・4,000の力強いアガリ。
東3局、童瞳の親番。
大里は前巡にリーチで宣言牌は、それを和久津がチーして打としてテンパイを取った。
童瞳はを打った所でドラのを打てば、カンのテンパイが入るがトラズの打としてソーズに変化を求めた。
ソーズにくっついたところであまり良い待ちにはなりそうもないので、テンパイは取りそうなものだが、トラズならば万が一の(2枚切れ)ドラ引きも考え打の方が優秀かなと思う。
テンパイを取ってヤミテンに構えていると9割方こので大里からのアガリ。
ここでツモときて童瞳切りリーチと行った。
ここもテンパイ取りはの一手だと思う。2枚切れでドラとのシャンポンはないし、自身の打点も変わらない。
和久津もテンパイということを考えれば放銃率もの方が高いだろう。
童瞳、1日目は安定感があったが日が変わってプレッシャーが襲ってきたか。
しかし、大里の待ちは山に残り1枚、和久津はすでに山に残っていないシャンポン。
対して童瞳の待ちはまだ山に4枚生きている。しかしここはすぐに童瞳が最後のを掴んで大里に2,600の放銃。
次局も童瞳にドラトイツの配牌。今度は丁寧にまとめてリーチといくと、まっすぐいった親の瑠美を捉えて裏ドラも乗せ12,000のアガリ。
しかし大里、和久津が親番で加点し終わってみれば童瞳は3着に。
和久津が大きめのトップでこの回を終え、茅森に迫った。
7回戦結果
和久津+40.3 大里+6.8P 童瞳▲6.1P 瑠美▲41.0P
7回戦終了時
茅森+65.9 童瞳+24.7P 和久津+23.3P 大里▲21.8P 瑠美▲94.1P
8回戦(起家から大里→和久津→童瞳→茅森)抜け番:瑠美
東1局から南家、和久津に分岐点。
345の三色が見えるこの手牌。ピンズにアガリはないと見切り、ここから打とする。
を残すということは、ピンズでとの2メンツを考えるということだが、実際この時点では三色になるが1枚だけ。
とはいえ、三色確定のとドラのを拒否する選択は常人にはできそうもない。
しかし無情にも次のツモは。思わず力が入る。終盤にもツモってくる和久津、心して決めた選択とはいえ普通は精神がぶれそうなものだ。
東2局2本場、和久津の親番
先ほどと似た三色含みの牌姿。ここも三色は捨てマンズとピンズで勝負と打。
他3者の牌姿を見ればお分かりだと思うが、ここもは山には既に生きていない。
次巡にをツモるとでリーチ。これも凄い。を打った同巡にをもう1枚打たれていて、見た目にそれぞれが3枚打たれている状況だ。
大里もメンホンテンパイでリーチといくが、和久津がすぐにをツモ。大きな4,200オールのアガリとなった。
ここからは和久津の独壇場。大里も丁寧に加点していき終わってみれば、茅森が箱下のラスに転落。
和久津2連勝でトータルトップに立った。
8回戦結果
和久津+42.0P 大里+16.2P 童瞳▲12.1P 茅森▲46.1P
8回戦終了時
和久津+65.3P 茅森+19.8P 童瞳+12.6P 大里▲5.6P 瑠美▲94.1P
9回戦(起家から大里→茅森→瑠美→和久津)抜け番:童瞳
東1局、和久津が大里から8,000をアガって迎えた東2局、和久津がダブリー。
それを受けて茅森の一発目。
出ている情報は瑠美の第一打がなので一発でを打ってしまいそうなものだが、一発は打として回避。
生放送の対局のため、きっちりと理牌してからリーチといった和久津であったが、もしかすると和久津との対戦経験が豊富な茅森は観ている側もとらえられない様な本当に若干の間を和久津から感じ取ったのかもしれない。
シャンポン待ちとすればとのシャンポンよりとのシャンポンの方がリーチといきやすい。
次巡に放銃してしまった茅森だったが、裏ドラがであったため一発で打つと12,000だったところが8,000の放銃になった。
和久津3連勝かという雰囲気もでてきたが、この一発を回避した差が後に生きてきたら面白いなと観戦しながら見ていたが、現実にその通りとなった。
一旦和久津を捲くり50,000点付近まで点数をのせてきた茅森が、南4局、和久津の親番で一旦捲くられるも、和久津のドラトイツのリーチを跳ね返し、アガればトップのカンを見事和久津から直撃。
細い糸を手繰り寄せる様な渾身のトップでこの回を終えた。
9回戦結果
茅森+31.4P 和久津+19.2P 瑠美▲14.0P 大里▲36.6P
9回戦終了時
和久津+84.5P 茅森+51.2P 童瞳+12.6P 大里▲42.2P 瑠美▲108.1P
10回戦(起家から和久津→童瞳→瑠美→茅森)抜け番:大里
この10回戦で途中敗退者が決まる。抜け番は大里のため、瑠美が途中敗退を免れるため、いや優勝するためには大きなトップが絶対条件。
9回戦が終わってやはり今年も和久津、茅森のマッチレースかと思われたが、この半荘の主役は3番手につけていた童瞳。
東1局に満貫をツモるとそこから加点に成功。
和久津も更に攻め立てるが、この半荘悉く童瞳に捕まる。
逆に童瞳は、南場の和久津の親番もうまく七対子で捌いて連荘を許さない。
瑠美も必死の連荘で踏ん張ろうとするが、この半荘で途中敗退となってしまった。
そしてここで童瞳がトータルトップに踊り出た。
10回戦結果
童瞳+44.1P 瑠美+8.5P 茅森▲17.0P 和久津▲35.6P
10回戦終了時
童瞳+56.7P 和久津+48.9P 茅森+34.2P 大里▲42.2P 瑠美▲99.6P(途中敗退)
11回戦(起家から童瞳→和久津→大里→茅森)
残り2半荘。常に淡々と摸打を繰り返している様に見える童瞳だが、心の中はどんなものか計り知れない。
初タイトル、それもプロクイーンというタイトルが現実的に目の前まできている。
この半荘は今決定戦で一番の打撃戦となった。とにかく大里以外の3人がアガリまくる。
童瞳が和久津に12,000放銃したかと思えば、すぐさま童瞳も満貫をツモってリカバリー。
ここへきて童瞳もプレッシャーからか失着が多くなっている様に感じられる。
ここに割って入ったのは天才・茅森。
南1局にリーチのみのリャンメンをリーチしてツモると、裏2枚で2,000・4,000で童瞳に親カブリさせると、次局の和久津の親番はわずか5巡で捌いて2,600の出アガリ。
そして南3局、
ノータイムでを横にして、一発ツモで3,000・6,000のアガリ。
もも1枚切れだが、は一打目に和久津から打たれていて、は7巡目に大里から。
心理的には自分が南家なので単騎には取りづらいところではあるが、捨て牌が若干変則的に見えるため、七対子と読まれていたらどちらのタンキにとるのも同じ。
誰かがトイツで持っていると仮定するならば、遅い巡目に切られた役牌の方が手が整っていて鳴きやすい形であるため鳴かれやすい、つまりこの場合(が鳴かれていない)の方が山に残っていやすいと見た、というのが僕の考えだが茅森はどの様に思考したのだろう。
南4局は和久津が満貫をツモって茅森との差を縮め、童瞳は今決定戦初めての、そして痛恨のラス。
11回戦結果
茅森+37.7P 和久津+14.8P 大里▲19.3P 童瞳▲33.2P
11回戦終了時
茅森+71.9P 和久津+63.7P 童瞳+23.5P 大里▲61.5P
最終12回戦(起家から和久津→童瞳→大里→茅森)
茅森と和久津は童瞳にまくられなければ着順勝負。
童瞳は2人を沈めなければならないので、かなりきつい条件になってしまったか。
大里はもうどこまでも連荘して得点を積み重ねるしかない。
東1局、童瞳がドラ2の配牌をまとめて2,000・4,000。
そして東2局の親番。
たった2局で茅森と並びまできた。
次局も2,100オールで茅森を抜き去ると、2本場の茅森の先制リーチにも、リーのみの1シャンテンから無筋を連打して追っかけリーチ。
ここは茅森が700・1,200をツモるが、童瞳、かなりの腹のくくり方だ。
しかし茅森も親で連荘して原点復帰。簡単には引き下がらない。
和久津はなんとか割って入りたいがここへきて手が重い。
最後の親番も大里のリーチに放銃して流れてしまいここで事実上脱落。茅森と童瞳の一騎打ちとなった。
そして南3局1本場、大里の親番。
現状、茅森の方が7.6P童瞳よりも上。ここを2,000点でアガリきってしまえば、オーラス童瞳に満貫ツモの条件を押し付けることができる。
2,600をアガった場合は、跳満ツモ条件を押し付けることができる。
ここは茅森、意を決したように無筋を4連打。かなり気持ちが入っているのが観ている方にも伝わってくる。
そして大里からが放たれた。動きが止まる茅森。と掴もうと手がかかるが手が止まる。今決定戦茅森の初めての長考だ。
そして茅森の下した判断は、で晒しての打。12,000の放銃となった。
南4局、童瞳が先行で待ちのテンパイ。
茅森もカンを引き入れ執念でのテンパイをいれるも最終手番で大里が手詰まり、童瞳に放銃。
これで童瞳の優勝が決まった。
後日、童瞳に獲ってからの気持ちの変化はあった?と聞くと、より一層しっかりした麻雀を打たなければと思います、見られる機会が増えるから、と返ってきた。
これから童瞳はプロクイーンというとてつもなく重いものを背負って戦い続ける。
この優勝がフロックと言われないためにも童瞳の戦いはここからが勝負だ。
トンちゃん、おめでとう。
カテゴリ:プロクイーン決定戦 決勝観戦記