プロクイーン決定戦 レポート

第14期プロクイーンベスト8A卓レポート 日吉 辰哉

100

 

茅森早香(最高位戦日本プロ麻雀協会)
和久津昌
大里奈美
二階堂瑠美

童瞳の頭上に輝いた第13期プロクイーンの栄冠。
『天才』『アマゾネス』『東北の新星』『天衣無縫』を向こうに回し、その頂点に輝いた。

運命の導きか、神様の悪戯か。
第14期プロクイーンベスト8A卓では昨年の決定戦で涙した者達の対局。
リベンジの舞台に立てるのは2名。

 

1回戦(起家から大里・茅森・和久津・瑠美)

去年の決勝メンバー。緊張とは程遠い雰囲気。
東1局、先制攻撃は和久津。16巡目のテンパイを茅森から8,000。

二万三万四万五万六万三索三索五索六索七索二筒三筒四筒  ロン四万  ドラ三索

巡目も深く七対子1シャンテン。茅森らしくない放銃に感じた。
東2局の茅森の親を速攻で流した瑠美。さらに東3局では2,000・4,000。

三万四万五万六万七万八万五索六索七索一筒二筒中中  ツモ三筒  ドラ中

瑠美の攻撃は止まらない。東4局、迎えた親番で5,800の加点。瑠美の仕掛けと和久津のリーチに挟まれた大里は痛恨の放銃。3局連続のアガリとなった瑠美は持ち点が45,000点を超え、好調さが伺える。
次局1本場でも4者1シャンテンのなか最初のテンパイは瑠美。

七万八万八万九万九万八索九索七筒七筒七筒西西西  ツモ七索  ドラ六万

捨牌、ドラ表示牌を含めて、五万が3枚、七万八万九万が1枚ずつ捨てられている。
瑠美はノータイムで打七万としツモリ三暗刻でリーチ。

同巡、北家の和久津が以下の大物手テンパイ。

三万三万六万六万六万二索三索五索六索六索七索七索四筒  ツモ五索  打四筒

瑠美の河には四索が放たれておりここはヤミテンを選択。
そんな瑠美の一発ツモはドラの六万。選択が裏目に出る。
決着は13巡目。軍配は和久津。四索を手元に引き寄せ瑠美を逆転。

ここまで元気がないのが大里と茅森。特に『天才』と謳われる茅森。このまま黙っているはずがない。

南1局、親の大里は連荘をテーマとし、速攻を試みるも茅森が仕掛けて1,000。茅森の手牌はメンゼンであれば満貫クラスまで見えたがここは素早く対応。

南2局、親は茅森。11巡目に親番の無くなった大里がドラ単騎のリーチ。

五万六万七万一索二索三索九索一筒二筒三筒四筒五筒六筒  リーチ  ドラ九索

中を仕掛けていた茅森がリーチ宣言牌の発を仕掛けて追いつく。

六索六索八索九索五筒六筒七筒  ポン発発発  ポン中中中

数巡後、大里の河に七索が放たれる。前局に続き今局も大里の前に茅森が立ちはだかる。
2局連続のアガリで持ち点を回復した茅森であるが、和久津、瑠美の背中はまだ遠い。
しかし和久津、瑠美も迫ってくる茅森に対し焦りがあったかもしれない。

次局、和久津は早々に仕掛けて7巡目にテンパイ。当然茅森は黙っていない。8巡目に以下の牌姿から発進。

一索三索五索五索六索六索六索六索八索六筒七筒発発  ドラ発

五索ポン、打六筒。次巡、瑠美が七対子テンパイ。しかし茅森のツモは驚異的。発一索とツモリテンパイ。
3者のめくり合い。アガリをその手に掴み茅森の親を流したい。その気持ちが牌を河に放たせる。
大里同様、瑠美の河に放たれたのは七索。瑠美の表情は一切変わらないものの、現実はこの18,000で茅森は一気にトップ目に躍り出る。
しかし『アマゾネス』『天衣無縫』も日本プロ麻雀連盟のど真ん中を歩いてきた実力者。行く道は譲れない。

次局、瑠美が和久津から8,000。この回復力。絵に描いたような乱打戦はまだ終わらない。
和久津とトップ目茅森の差はおおよそ10,000点。迎えた南3局、親和久津。淀みなく仕上げたこの手牌。

三万四万六万七万二索二索三索六索七索八索四筒五筒六筒  ツモ五万  打三索 左向き  ドラ七索

リーチでツモリ、裏ドラ1枚の6,000オール。何度目の逆転劇か。和久津のトップで終了。と、ならないのが筋書きのないドラマ。
この1回戦、主役はやはり『天才』。

次局7巡目、茅森は七対子1シャンテン。

八万八万八索八索二筒二筒五筒五筒七筒九筒白中中  ドラ八索

1枚目の中には見向きもせず。次巡ドラの八索を暗刻にすると、ここから発進。五筒二筒と仕掛けテンパイ。

八万八万八索八索八索中中  ポン五筒 上向き五筒 上向き五筒 上向き  ポン二筒 上向き二筒 上向き二筒 上向き

この仕掛けに対し瑠美が安手、愚形のリーチ。勝ちへの執念を見せる。
次巡、メンホン1シャンテンとなった親の和久津。2着目につける茅森との差はおおよそ15,000点。打牌候補も危険牌。
前局、ここまでの乱打戦に終止符を打つような6,000オール。ここでの撤退は常識的な判断。茅森の仕掛け、瑠美のリーチに対し、その道を譲る。
『アマゾネス』が背中を見せた瞬間だった。その直後、茅森が手元で中を躍らせた。

オーラス、何度目かの逆転劇を狙う和久津のダブルリーチ。
しかし、茅森が『アマゾネス』のお株を奪う真っ向勝負でアガリをもぎ取った。

 

100

 

1回戦終了時
茅森+39.4P 和久津+21.3P 瑠美▲16.3P 大里▲44.4P

 

2回戦(起家から大里・茅森・瑠美・和久津)

第13期プロクイーン決定戦。恋い焦がれた華やかな舞台。
優勝を決める放銃。苦い経験。辛い過去。その全てを胸に今期もベスト8まで進出してきた。
4者がリベンジを誓う中、彼女の想いは3者とは違ったものだったかもしれない。

大里奈美。
名実ともに3者とは大きな差があることは彼女自身が一番感じていることだろう。
それでも大里はベスト8A卓の全5回戦で2度のトップを手にする。

1回戦でその実力を存分に発揮した茅森が2回戦もゲームを引っ張る。
挽回を目論む大里の前に何度も立ちふさがる。手負いの者に強者はチャンスを与えない。2回の親番はどちらも一局で流された。

南3局1本場、ここまでの持ち点は

大里27,600 茅森37,200 瑠美26,700 和久津27,500 供託1,000

大物手を何度も潰されながらも、耐えに耐えてきた大里。4巡目に以下のテンパイ。

一万三万六万七万一索二索三索五索六索七索九索九索五筒  ツモ八万  打五筒 左向き  ドラ五索

大里はノータイムでリーチを選択。お世辞にも満足感のあるテンパイとは言えない。ピンフが崩れ、三色の渡りも遠くなるツモ八万
だからこそ即リーチは当然の選択かもしれない。

しかし、その画面越しからは大里の勝ちへの執念を感じずにはいられなかった。
7巡目に二万を引き当てた大里。裏ドラ1枚の大きな2,100・4,100。
リーチ、ツモ、ドラ、ウラ。不格好な手牌かもしれない。視聴者には華やかな手役を見せたいだろう。
それでも決定戦の席は譲れない。

 

100

 

2回戦成績
大里+25.5P 茅森+10.1P 和久津▲9.6P 瑠美▲26.0P

2回戦終了時
茅森+49.5P 和久津+11.7P 大里▲18.9P 瑠美▲42.3P

 

3回戦(起家から大里・瑠美・茅森・和久津)

『天衣無縫』
瑠美のキャッチコピーとなっているこの言葉。これを地で行く麻雀スタイルと人物像。華やかな手役と、豊かな表情で視聴者からの支持も高い。

そんな彼女は第11期のプロクイーンに輝く。12、13期は決定戦に進出したもののどちらも5位という成績で幕を閉じた。

決勝戦の椅子を譲れないのは彼女も同様。しかし、ここまで3着、4着と厳しい展開。この3回戦で連帯に絡めないようだと黄色信号点滅となる。

点棒移動も穏やかに、迎えた東4局1本場。4巡目に瑠美が七対子テンパイ。待ちごろの牌を待ってヤミテンに構える。
8巡目、親の和久津がリーチ。

八万八万二索三索三索四索一筒二筒三筒七筒七筒九筒九筒  ツモ八筒  打三索 左向き  ドラ四索

不運にも前巡、瑠美は八筒単騎に待ちを変えていた。一発目のツモは無筋の九筒。瑠美の手が止まる。

ポイントをリードされ追いかける立場。放銃は致命傷になりかねないが、和久津に引き離されるのも本意ではない。
アガリ逃がしの恐怖。ここまで瑠美の対局を多く目にしてきた私はどちらかを切ってテンパイは維持するであろうと思っていた。
八筒九筒か…

瑠美が導き出した答えは勇気ある撤退。
結果は2巡後に和久津のツモアガリ、4,000オール。
追う立場の瑠美にとっては大きなビハインド。しかし、ここで勝負を急がなかった瑠美に神様が微笑む。

次局、瑠美は高め三色の先制リーチを安目ながらツモアガリ500・1,000。
そして迎えた南1局。大物手が炸裂する。

5巡目、親の大里が三色確定のテンパイ。

六万七万八万二索六索七索八索一筒二筒三筒六筒七筒八筒  ドラ七万

好形変化を期待してヤミテンに構える。出アガリでも7,700、ヤミテンでも十分な打点。
次巡、場に安い一万単騎に待ち変え。

そして9巡目、配牌からホンイツ狙いの瑠美が追いつく。

五索七索八索八索九索九索白白発発中東東  ツモ七索  打五索

しかし、このままでは終わらない。次巡、更に強烈な手牌変化。

七索七索八索八索九索九索白白発発中東東  ツモ発  打中

高目出アガリ倍満の手牌をノータイムでリーチ。そして、ここまでヤミテンを貫いてきた大里がツモ切りで追っかけリーチ。
和久津、茅森はオリを選択。勝負は2人のめくり合いとなる。決着は16巡目。

大里の河には力なく白が置かれた。

 

100

 

二階堂瑠美。
決勝戦に向け茅森、和久津に一気に詰め寄る。

 

3回戦成績
瑠美+30.4P 和久津+17.0P 茅森▲14.6P 大里▲32.8P

3回戦終了時
茅森+34.9P 和久津+28.7P 瑠美▲11.9P 大里▲51.7P

 

4回戦(起家から和久津・茅森・大里・瑠美)

3回戦でトップを取り追い上げムードの瑠美。
東2局、大里のリーチに真っ向勝負で追っかけリーチ。

西家 瑠美
三万三万五万六万七万七万九万三索七索八索九索七筒八筒  ツモ八万  打三索 左向き  ドラ一万

ラス牌の八万を引いてテンパイ。そしてラス牌の九筒をつもアガリ2,000・4,000。

瑠美の猛追。茅森、和久津も黙ってはいられないだろう。
南2局、親番の落ちた和久津が以下の配牌。

六万四索三筒八筒九筒東西北北白白発発  ドラ一索

1巡目から発を果敢に仕掛ける。西白と引き込み1シャンテン。
7巡目に親の茅森がリーチ。

一万二万三万三万四万五万二筒三筒四筒四筒五筒八筒八筒  リーチ  ドラ一索

このリーチに対して受けた瑠美が北のトイツ落とし。これを和久津が仕掛けてテンパイ。

八筒九筒西西白白白  ポン発発発  ポン北北北

両者のめくり合い。そんな中、大里が手詰まり。ワンチャンスを選択し、和久津に対し痛恨の放銃。
この放銃で大里が大きく後退。それでも親番が残っている大里。どこまで踏ん張れるか。

3者の激しい睨み合い。親番大里への放銃は即脱落という状況も味方したか。大里は苦しい手牌が続くも粘り続ける。
南3局3本場、瑠美が仕掛けてテンパイの中、大里が追いつく。

三万三万六万七万八万五索六索五筒六筒七筒  暗カン牌の背三筒 上向き三筒 上向き牌の背  リーチ  ドラ六索五筒

やっと手にした大物手。これを見事に引き当てた。大里が粘りを見せ、この4回戦で再びトップで終了。
4者がトータル順位と逆の着順で終了し争いは更に混沌としていく。

 

4回戦成績
大里+30.3P 瑠美+8.6P 和久津▲13.3P 茅森▲25.6P

4回戦終了時
和久津+15.4P 茅森+9.3P 瑠美▲3.3P 大里▲21.4P

 

5回戦(起家から茅森・大里・和久津・瑠美)

大混戦で迎えた5回戦。昨年のリベンジを果たすために負けられない一戦となる。

まずは瑠美が先制、東2局5巡目。

一万一万六索七索八索四筒五筒六筒七筒八筒中中中  リーチ  ドラ二万

このリーチに対し茅森が真っすぐ押し返す。これが瑠美への一発放銃。裏ドラ1枚の8,000。
『天才』いよいよ追い込まれる。瑠美にとっては当面のライバル茅森からの大きなアガリ。

しかし、瑠美に大きな落とし穴。更に加点を目論む瑠美。親番、和久津の仕掛けに飛び込んでしまう。

二万三万四索五索六索一筒二筒三筒中中  明カン東東東東  ロン四万  ドラ三万七筒

瑠美は対局後、この放銃を敗着と語った。これ以降、瑠美が戦線に戻ってくることはなかった。
和久津は更に次局、通過を決定的にする6,000オールのツモアガリ。

 

100

 

これで茅森、大里の一騎打。まずは大里。東3局2本場。

七万七万一筒二筒三筒四筒五筒六筒七筒八筒九筒南南  リーチ

これを瑠美から出アガる。裏ドラ1枚の8,000。追い込まれていく茅森。
迎えた南1局の親番。この時点でトータル順位は大里に逆転されている。

大里が果敢に仕掛け茅森の親を流しに行く。しかし茅森は苦しいところから押し返し、安手ながらアガリをもぎ取り連荘。
そして南1局1本場5巡目。

一万二万二万二万二索四索四索四索六索七索五筒五筒五筒  ドラ南

この手牌に五筒をツモリ、暗カン。リンシャンから一万を引き込む。この局のテーマをしっかりと見据えノータイムでリーチ。これが山に8枚残り。
2巡後に引き当てる。決勝進出を決める大きな4,100オール。
その後、大里は最後まで喰らいつくも茅森の壁を破ることは出来なかった。

 

5回戦成績
和久津+39.5 大里+13.6P 茅森▲11.2P 瑠美▲41.9P

5回戦終了時
和久津+54.9P 茅森▲1.9P 瑠美▲45.2P 大里▲7.8P

 

決定戦進出
和久津昌 茅森早香

4者がそれぞれの想いを抱き臨んだこの一戦。
大里、瑠美は敗れたものの、その存在感を十分に見せつけた。
和久津、茅森がリベンジの舞台への進出を決めた。