中部プロリーグ レポート/第25期中部プロリーグ 決勝レポート
2015年09月18日
半年間の戦いの末、第25期中部プロリーグ決勝進出メンバーは下記の4名となった。
通過順にメンバーと対局前のコメントを紹介していこう。
1位通過 寺戸孝志(21期生/四段)+167.4P
前期の中部プロリーグ決勝にも駒を進めており、2期連続の決勝進出となる。
「普段通りの麻雀を打ち、勝ちを目指す。みなさん決勝に残る実力者なので、油断せずに気を引き締めて打ちたい。」と対局前に語ってくれた。
前期は惜しくも準優勝だっただけに、前期の反省点を踏まえ、今期こそ優勝を目指す。
2位通過 土岐雄太(25期生/初段)+142.9P
今回が決勝初出場となる。
対局前に「言葉が出ないくらい緊張しています。」と言っていたが、前日に12時間この決勝に向けて調整セットをおこなったという。
他3名は全員優勝経験者。初出場の土岐はこの強者達相手にどのように戦っていくのか。
3位通過 杉村泰治(12期生/四段)+75.5P
守備を得意とする杉村だが、対局前のコメントでは「普段はリスクを負わない麻雀だが、今日はリスクを負う麻雀で優勝を目指したい。」語ってくれた。
いつもとは違う麻雀をどのタイミングで出してくるかが注目ポイントでもあり、優勝へのカギを握るポイントでもある。
4位 伊藤鉄也(22期生/三段)+25.9p
今回で5回目となる決勝である。
伊藤は今期プロリーグの4節目終了時14位の位置におり、決勝の舞台は厳しいかと思われたが、5節目に+70.4Pを叩き出し決勝の舞台へと上がってきた。
「いつも通りの麻雀を打って勝つ。厳しいところから決勝に上がって来られたので、このチャンスをものにしたい。勝ちます!」と語ってくれた。
5節目の爆発力を決勝の舞台でも出す事が出来るのか注目である。
1回戦(起家から伊藤・寺戸・土岐・杉村)
東1局
親の伊藤が2フーロし、その後テンパイを入れるも、流局。
伊藤の1人テンパイでこの決勝は幕を開けた。
東1局 1本場、伊藤が10巡目にリーチを入れる。
リーチ ドラ
土岐も12巡目に追いつきリーチ。
リーチ
この戦いは伊藤が4をツモり2,000は2,100オール。
伊藤が着実に点数を伸ばす。
東1局 2本場
出アガリ7,700のテンパイを入れヤミを選択していた寺戸が、8巡目満貫をツモりアガる。
親の伊藤の点数をきっちり削り、東1局から激しくぶつかり合う展開となる。
ツモ ドラ
しかしその後は1,500や2,600の出アガリと小さな動きが続く。
そんな中に、伊藤から寺戸への放銃、2,000があった。点数的には小さな動きだが、1つ大きな事実がそこにはあった。
それは伊藤33,100、寺戸33,300と首位に立っていた伊藤を僅か200点上回った事だった。
この2,000から均衡していた場の流れが一気に寺戸に傾き始める。
南1局
親の伊藤が8巡目にリーチを入れる。
リーチ ドラ
この時点でアガリ牌は山に6枚。
その後寺戸が10巡目にテンパイを入れヤミテンを選択。
この時点でアガリ牌は山に1枚であった。
このを伊藤がつかみ寺戸に放銃。時に麻雀は確率とは裏腹な事が起こり得る。
それもまた麻雀の面白い一面でもある。
このアガリで寺戸は、持ち点40,700まで伸ばす。しかしこれだけでは終わらない。
南2局
杉村が9巡目にリーチを入れる。
リーチ ドラ
このリーチに対し親の寺戸は無筋を2枚通し、13巡目にをポンしテンパイを入れる。
次巡あっさりツモリ2,000オール。
ポン ツモ
南4局
7巡目に親の杉村からリーチが入る。
リーチ ドラ
持ち点19,800と現時点で4着の杉村何としてもアガリたいリーチ、ツモる手にも力が入る。
伊藤が放銃し、5,800を得て親を継続させる。
南4局 1本場
杉村1シャンテンまで行くもテンパイせず流局。寺戸の1人浮きで1回戦は終了した。
1回戦成績
寺戸+28.7P 土岐▲3.1P 杉村▲8.4P 伊藤▲17.2P
2回戦(起家から土岐・寺戸・杉村・伊藤)
寺戸を除く3名からすれば、もう1度寺戸に走られれば今後の戦いが苦しくなっていくのは事実だ。それは何としても避けたい。
それを踏まえ各人どう戦っていくか見物である。
東2局
土岐から14巡目にリーチが入る。
リーチ ドラ
これに対し16巡目に親の寺戸がテンパイを入れを放銃、値千金の満貫をアガる。
東3局
1フーロ、ピンズのホンイツ気配の寺戸にとを勝負する伊藤。寺戸の河にはとが捨てられているが前に出る。
15巡目の伊藤の手牌
ドラ
ここに14巡目からテンパイしていた土岐が
この形にを引いて打とし、伊藤への8,000の放銃となった。
南4局
伊藤44,000 杉村31,300 土岐29,500 寺戸15,200
2回戦ここまで苦しい展開の寺戸から7巡目リーチが入る。
リーチ ドラ
これを受けて親の伊藤は1歩も引かない。
4巡目にをポンしている状態から8巡目にをチー、11巡目にをチーしてこの形まで持ってきた。
この間無筋を4枚も通している。
チー チー ポン
一見やりすぎに思えるが、仮に寺戸に振り込んだ場合でも跳満までなら1着をキープ出来る事と、1回戦目の成績の事を踏まえると、更なる加点を求め攻める事も選択の1つである。
結果は寺戸がをツモり700・1,300のアガリとなったが、伊藤の優勝へ強い想いが伺えた一局であった。
2回戦成績
伊藤+12.7P 杉村+0.6P 土岐▲1.2P 寺戸▲12.1P
2回戦終了時
伊藤+3.5P 杉村▲3.8P 土岐▲8.3P 寺戸+8.6P
3回戦(起家から杉村・伊藤・土岐・寺戸)
小さな点棒の動きを重ね、場が流れていく。
南1局終了時で1着杉村31,800 4着土岐26,900と差はわずかであった。
南2局
杉村の配牌
ここからマンズのホンイツへ向かい7巡目にテンパイを入れる。
ポン ドラ
これを11巡目に寺戸から放たれたでアガリ3,900を得る。
今まで1回戦から本手を空振り苦しい状況にあった杉村が、この均衡した点棒状況の中で大きな収入を得る。
決勝戦終了後のコメントで3回戦目のこのアガリからようやく手ごたえを感じ始めたと
言っていた。この後、南4局にもその言葉を象徴するようなアガリが生まれる。
南3局 1本場
杉村が7巡目にリーチをかける。
リーチ ドラ
この時点でアガリ牌は山に1枚しか無かったが、それが杉村の手元へ。
11巡目にをツモりアガリ、良い手ごたえを残しつつ3回戦は杉村が制する事となった。
3回戦成績
杉村+11.9P 伊藤▲2.3P 土岐▲4.4P 寺戸▲5.2P
3回戦終了時
杉村+20.1P 伊藤+0.2P 土岐▲15.7P 寺戸▲4.6P
4回戦
各々優勝に向けテーマがはっきりしてきた頃だろう。
開始早々激しい動きになる。
東1局(起家から伊藤・土岐・寺戸・杉村)
伊藤が7巡目にを仕掛け以下の形となる。
ポン ドラ
その直後に土岐がテンパイを入れリーチをかける。
10巡目寺戸が追いつきリーチをかける。
伊藤も15巡目にテンパイを入れる。
ポン
三つ巴の戦い…。結果は…。
16巡目に寺戸がをツモり3,000・6,000と大きなアガリで4回戦は始まった。
しかし他の者も負けてはいられない。
東4局
親の杉村の手が早く、3巡目の手牌が以下の通り。
ドラ
次巡にドラを持ってくる。杉村の選択は…。
ここで杉村はを1枚外し2シャンテン戻しを選択する。
この選択がはまり、この後、、と引き入れリーチをかける。
これに対し寺戸が9巡目にテンパイし、リーチをかわしに行こうと勝負したで放銃。
11,600と痛い失点となる。
南3局
杉村41,900 伊藤27,800 寺戸27,000 土岐23,300
10巡目の親の寺戸の手牌。
ツモ ドラ
場には、共に1枚切れ。
私なら切りのリーチとしてしまいそうだが、寺戸は切りのヤミテンを選択。
対局終了後に切りの理由を聞いてみたところ、ツモって3,900オールを逃したく無かった事と、何より杉村の捨て牌にが捨てられていた事で切りを選択したようだ。
結果は伊藤が500・1,000をツモリアガるが、優勝する為には誰の点棒を削らなくてはならないのか、現時点でどのくらい点棒を稼がないといけないのか。
一局一局変わりゆく状況の中で、与えられた手牌と共に自分の置かれた立場を整理し、
よりベストな選択をし続けなければ優勝への道はない。
南4局は16巡目に伊藤が1,000・2,000をきっちりツモり、浮きに転じる。
泣いても笑ってもあと1半荘。果たして優勝の栄冠を手にするのは誰なのか。
4回戦成績
杉村+9.4P 伊藤+3.8P 寺戸▲5.0P 土岐▲8.2.P
4回戦終了時
杉村+37.5P 伊藤+8.0.P 寺戸▲13.6P 土岐▲31.9P
5回戦(起家から土岐・寺戸・伊藤・杉村)
東3局 1本場
伊藤31,000 杉村29,000 土岐29,000 寺戸31,000
現在総合ポイントで優勝に1番近いところにいる杉村の配牌。
ドラ
これが10巡目この形となり、14巡目に決定打ともなり得るアガリを見せる。
ポン ポン ツモ
総合ポイントで暫定2位に着けていた伊藤にも親かぶりさせる2,000・4,000。
杉村が優勝へ1歩前進する。このまま決まってしまうのか。
東4局
杉村37,300 土岐26,900 寺戸28,900 伊藤26,900
前局のアガリを見て、伊藤が黙ってはいない。
11巡目
ドラ
この形からを引き入れてリーチ。
14巡目にをツモり1300・2600のアガリ。
今度は杉村に親かぶりさせる会心のアガリを見せる。
南1局、南2局と伊藤が2,000・1,000と出アガリし親を持ってくる。
南3局
伊藤36,100 杉村34,700 土岐24,600 寺戸24600
ここまで来ると、寺戸、土岐の優勝はかなり厳しいか。
伊藤はこの親番をいかに維持出来るか、杉村はいかに親を落とすかがカギである。
伊藤配牌
ドラ
杉村配牌
杉村が2巡目にをチーし三色へ向かう。
この一手さえアガリ切ってしまえば勝ちは目前である。価値ある千点への第1歩だ。
伊藤の7巡目手牌
ツモ
三色も見える1シャンテンまでこぎつけ、打。
このに杉村がチー。打とし、優勝をたぐり寄せる千点までたどり着いた。
チー チー
相手から見ればチャンタ系や三色を考えさせられる鳴き。テンパイ打牌の打もチャンタを匂わせるポイントの1つ。
だが実際はどちらも絡まない待ちである。
伊藤9巡目
ツモ
ここで伊藤は打の三色の天秤にはいかずを切る。
杉村に打ってしまえばほぼ優勝の目は終わってしまう。慎重に牌を選ぶ。
そして10巡目伊藤も念願テンパイを果たす。
ツモ ドラ
リーチをかけでツモれば2,600オール、私はリーチと行くと思ったが、伊藤はヤミテンを選択する。
次巡、すぐにをツモりと振り替えここでリーチをかける。
そして15巡目にをツモり4,000オール。持ち点を48,100まで伸ばす。
南3局 1本場
伊藤が10巡目にリーチをかける。
リーチ ドラ
杉村も11巡目にテンパイを入れる。
ツモ
ここを勝負所と見た杉村、を切りリーチと出るが伊藤に放銃。7,700のアガリとなり総合ポイントでトップに立つ。
南3局 2本場
流局。勝負はいよいよオーラスへ。
南4局 3本場
現在の状況を一度整理しよう。
親の杉村22,700 南家土岐20,600 西家寺戸20,600 北家伊藤56,100
現時点での総合ポイント
伊藤+46.1P 杉村+29.2P 寺戸▲28.5P 土岐▲46.8P
寺戸、土岐の両名はかなり厳しい状況。
実質伊藤vs杉村の一騎打ちか。
親の杉村は何としてもアガらなければならない状況である。
最低でもテンパイ流局が必要だ。
伊藤が10巡目にを鳴き三色のテンパイを入れ優勝への王手をかけた。
チー ドラ
12巡目の杉村の手牌。
2シャンテンである。形は悪くないが伊藤が先手を取っている。果たしてどうなるのか…。
伊藤のアガリ牌は姿を見せないまま、杉村が14巡目にを鳴き、次順を引き入れ
執念のテンパイ。この局は杉村、伊藤の2人テンパイで決着は次局へ。
南4局 4本場
8巡目に伊藤がテンパイを入れ2度目の王手をかける。
ドラ
ヤミテンを選択。引きアガるか、がこぼれるのを密かに待つ。
しかし杉村が13巡目にを鳴き下記の形でテンパイ。
チー
同巡、伊藤が掴んだのが。こので伊藤は少し考えたが河に放つ。杉村5,800は7,000。
再び杉村が総合トップに立つ。激しい2人の優勝争いは続く。
いったい誰が優勝するのか…。観戦者達は皆かたずを呑み見守っていた。
南4局 5本場
現在の伊藤と杉村の点数を見ておこう。
杉村31,200 伊藤50,600
総合ポイントは6.1ポイント差で杉村がリード。
そんな中伊藤の手が5巡目で止まる。
ツモ ドラ
考え抜いた末に伊藤の選択はリーチ。
これに対し10巡目、杉村の手牌に安全牌が1枚も無くなり、を切りついに決着の時が来る。
激しいデットヒートの中、第25期中部プロリーグは伊藤の逆転優勝で幕を閉じた。
5回戦成績
伊藤+39.3P 杉村▲6.5P 寺戸▲16.4P 土岐▲16.4.P
5回戦終了時
伊藤+47.3P 杉村+31.0P 寺戸▲30.0P 土岐▲48.3P
4位 土岐雄太
「攻守のバランスがおかしくなっていた。」対局終了後そう話してくれた。
本人のコメント通り攻撃と守備のバランスが噛み合っていない印象を受けた。
今回の経験を活かし、再び決勝の舞台に上がってくる事を楽しみにしている。
3位 寺戸孝志
「2回戦目、東1局のドラ単騎でリーチを打たなかった事。ここからおかしくなりました。この局以外は自分らしいいつもの麻雀が打てました。」と話してくれた。
リードしているからこそ、守りには入らず点数を叩ける時に叩く。という姿勢の寺戸が攻撃的に行かなかった2回戦の東1局。
本人のコメント通りここからバランスを崩した様に思えた。麻雀は1度バランスを崩すと修正するのに時間がかかる。
今度こそ決勝の舞台で勝ち切る麻雀を見せてほしい。
準優勝 杉村泰治
「惜しいところまで行きましたが、優勝者の伊藤プロがしっかり打ってらっしゃったので負けました。また頑張ります。」と話してくれた。
見応え満載の麻雀を見せてくれた杉村。途中リスクを背負って前に出る場面も垣間見れた。
今回は惜しくも優勝を逃したが、また決勝の舞台で見応え満載の麻雀を見せてほしい。
優勝 伊藤鉄也
「自分の思い描いた展開に持ち込めた。2回戦目以降寺戸プロに走らせない事と、最終戦に杉村プロとのさしの勝負に持ち込めれば勝機があると思った。優勝出来て嬉しいです。」と話してくれた。
今回予選、決勝と逆境の中見事な逆転優勝を果たした伊藤。観戦者達を湧かし魅了する素晴らしい麻雀であった。
前列左より:伊藤鉄也、木村本部長 |
カテゴリ:中部プロリーグ レポート