広島リーグレポート/第1期 広島リーグ決勝レポート
2012年10月30日
まだ暑さも冷めやらぬ9月28日。
記念すべき広島支部第1期リーグ決勝戦が行われた。
プロ連盟入会当初から、広島支部の設立を夢見ていた私としては感動もひとしおである。
私自身は最終節まで5位と、決勝の椅子を争っていながらも、不甲斐無い結果に終わってしまったが…
私自身の事はともかく、決勝の椅子を勝ち取った4人を紹介しよう。
1位通過の清水。広島支部支部長であり、鳴きを駆使し隙あらばアガリを狙ってくるスピード重視の打ち手だ。
最終節も+100を超えるポイントを叩き、勢いも十分と言える。
2位通過の岩田。リーグ戦序盤のポイントを危なげなく守り、最終節の時点で唯一決勝の椅子をほぼ確実としたのが彼。
守備型の打ち手でリードする展開になれば打ち崩すのは難しいだろう。
3位通過の亀井。第1、2節のマイナスを物ともせず決勝の椅子に座る。
彼が第3節で見せた面前大三元、2回の70,000点オーバートップを取る爆発力は他家の脅威となるに違いない。
4位通過の蒼山。最終節で7位から捲りを入れてきた彼は、東京プロリーグにも参加している。
タイトル戦や上位リーグの観戦にも積極的であり、麻雀に対するモチベーションは随一。
特に、ここ最近の成長は目覚ましく、広島支部のエースと言っても過言ではないだろう。
1回戦(起家から清水・岩田・蒼山・亀井)
全4回戦という短いスパンで行われる今回のリーグ戦決勝。
誰もが最初にリードを奪いたいと思っているはずだ。
「チー」
静寂の中、最初に発声したのは支部長の清水。
チー ドラ
2巡目から普段通りの速攻。
躊躇なく発声出来ている彼に、緊張は微塵も感じられない。
そこは支部長、さすがと言ったところか。
しかし、この局は清水の鳴きで好牌が流れた蒼山に軍配が上がる。
ツモ
400・700のツモアガリ。
こうして決勝戦の幕が開けた。
東2局、岩田の親番9巡目。
ツモ ドラ
–の受けが良さそうに見えたが、岩田はを残し打とする。
その後のツモは、とリーチをかけていれば2,600オールのアガリを逃した形となった。
「が危険になると感じた」との本人談だが、まだ開始間も無い1回戦目東2局の親番。
初めての決勝の舞台で緊張するのも無理はないが、ここは守備より攻撃を重視するべきだった。
この結果、テンパイを入れていた蒼山が、前巡に通っていたを切り岩田の形式テンパイにハイテイで放銃となる。
ロン
結果こそ3,900の加点と連荘だが、ミスと捉える人も少なくないだろう。
そして、このアガリに蒼山も違和感を感じたことが表情からも読み取れた。
私は与えられた手牌には手牌に即したアガリがあり、そのアガリ形を掴まえられなければ展開は徐々に歪んでいくと考えている。
ここからどういう展開になっていくかが気になるところだ。
その影響があったのかどうか、1本場からは清水が加点を続ける。
道中で2,000点の放銃があったものの、3,900、8,000、11,600と打点も十分だ。
目立ったアガリはないが、放銃の無い亀井がそこに付いていく形となった。
チー ロン ドラ
チー チー ロン ドラ
ロン ドラ
本人も悔やんでいたが、1シャンテンからチンイツに放銃してしまった岩田はケアが足りなかったか。
圧巻は3度目の親番でのアガリだ。配牌がこの形。
ドラ
ここからと一切の無駄ヅモ無しで高目を引き、4巡目で最高形に到達。
リーチで6,000オールを引きにいくかと思ったが、ここはきっちりとヤミを選択し、蒼山から11,600のアガリ。
南1局1本場では亀井が反撃に出た。
好配牌をもらった亀井は、2巡目にリーチ。6巡目にを暗カンし満貫確定となる。
暗カン ドラ
しかしこの局は流局。これが今回の決勝戦で初の流局となった。
続く南2局2本場では、清水の七対子、蒼山のタンヤオ三色のテンパイをかわし、ドラを重ねた亀井がリーチからの満貫をツモアガる。
ドラの重なりをギリギリまで待ってのドラドラテンパイ。打点の高さは亀井の持ち味の1つである。
ツモ ドラ
南3局11巡目、亀井の手牌。
ドラ
当然の手変わり待ち。ここにをツモりドラをリリース。
リーグ戦では四暗刻、大三元と二度の役満をツモっている亀井。
今回も魅せてくれるのかと思ったがここは清水に阻まれる。
チー チー ツモ
オーラスは、順位こそ変わらないものの蒼山の満貫ツモアガリ。
この1回戦は清水の47,900のトップとなったが、ここでオーラスの蒼山の1局に触れたいと思う。
9,600点のラスで迎えたオーラス、3着の岩田とは10,200点差でこのテンパイ。
ドラ
リーチを打てばツモアガリで3着浮上になるため、リーチを選択する人もいるだろう。
しかし蒼山はこれをヤミ。
「ラス目のリーチでは出てこないのでヤミにしました。
順位点より素点を意識しているのと、リーチしてアガれずの流局が一番怖かったので。
3着目から出れば幸運ですが、どこからでもアガリます。」
清水からの11,600はダメージが大きかったと思うが動揺は全くしていない様子。
ミスをしてしまった岩田もまだ折れてはいない。
1回戦成績
清水+25.9P 亀井+10.7P 岩田▲16.2P 蒼山▲20.4P
2回戦(起家から蒼山・岩田・清水・亀井)
開局から清水が1人テンパイ、2,600出アガリと勢いを感じさせる。
しかしここで待ったをかけたのが亀井だった。
東3局にこのテンパイ。
ドラ
ここに1回戦トップの清水がで飛び込み12,000のアガリ。
捨て牌も上手くピンズと字牌を散らしてあり、最良の結果を呼び込んだと言える。
続く東4局でも1,300オールをツモアガリ、亀井の半荘になるかと思われたが次は蒼山が食い下がった。
この配牌にまとまりづらいツモだったが、上手く七対子に仕上げ終盤14巡目にリーチ。
リーチ ドラ
安全牌の無い清水がこれに放銃し8,000点を失う。
「七対子は得意かつ好きな手役」と語る蒼山が、このアガリで本流に乗る。
南1局の親番で蒼山は、5,800、3,900は4200、9600は10,200と3本場まで積み上げた。
特に2本場での9,600の手筋には目を見張るものがあった。
ツモ ドラ
2巡目にこのツモ。難しい手牌だがか字牌に手をかける打ち手が多いだろう。
しかし蒼山は、ここで七対子に決め打つを選択。
その後ドラのを重ね、13巡目に最終形に辿り着く。
捨て牌は、
河だけ見れば想像するのは上の三色といったところか。
特筆すべきは、七対子以外ではテンパイに辿り着けていない部分だ。
七対子に決め打つ事が出来た蒼山ならではのアガリと言える。
3本場で、岩田の300・500は600・800のツモアガリで連荘は止められたが、この親番で得た点数は大きい。
その岩田が南2局の親番で、今日初めての勝負手が入る。8巡目にドラ切りリーチ。
リーチ ドラ
渾身のリーチだったがこれが空振り流局。
続く1本場では清水が5巡目に先制リーチ、亀井はドラドラのタンヤオ、
蒼山はホンイツ、岩田は15巡目で追い掛けリーチと4人の手がぶつかる。
ここで勝ったのは蒼山だった。
流局間際に岩田から3,900は4,200をアガリ、供託のリーチ棒も加え7,200の加点。
南3局にも2,000・3,900をツモアガった蒼山。
オーラスでは親番の亀井が4,000オールをツモアガり一矢を報いるものの、
1本場では再び蒼山が1,000・2,000は1,100・2,100のツモアガリ。
蒼山は67,900点のトップ、1回戦トップの清水は痛いハコラスとなった。
そしてトップこそ取っていないものの、放銃もなく親番で上手くアガリを重ねている亀井がトータルトップに立つ形となった。
2回戦成績
蒼山+45.9P 亀井+20.4P 岩田▲23.8P 清水▲42.5P
2回戦終了時
亀井+31.1P 蒼山+25.5P 清水▲16.6P 岩田▲40.0P
3回戦(起家から亀井・清水・岩田・蒼山)
3回戦は最高打点が2,000オール、流局が3回と今までと打って変わって静かな半荘となった。
上位2人は最終戦に向けて大きなマイナスは避けたいところだが、その辺りの思惑が結果にも現れただろうか。
東1局から清水が役牌を一鳴きし、スタイル通りの速攻で6巡目に2,000点のツモアガリ。
追う立場でもスタイルは崩さない、清水の強みだ。
ポン ポン ツモ ドラ
東2局、蒼山が先手を取る。
絶好のを引き入れ6巡目にテンパイ。
ドラ
リーチかと思ったが蒼山はヤミを選択、8巡目に1,000・2,000のツモアガリ。
「リーチの方が良かったかもしれない。」と本人も振り返っていたが、ここは即リーチの方が強かったと思う。
東3局、東4局と清水のリーチで清水の一人テンパイ。
Aルールではこのテンパイ料で開く差が大きな意味を持ってくる。
東3局、親番であった岩田だが、この3回戦では先制リーチに対してもう少し押し返して欲しかった。
確かに岩田の配牌とツモは苦しい場面が多かったが、安全牌以外を河に並べたがらない印象を受けた。
ここでポイントを叩かないと優勝は厳しいだけに、歯を食いしばって攻める姿勢が必要だったのではないか。
南1局2本場、その岩田がリーチをかけてピンフをツモアガリ。
700・1,300は900・1,500と供託の2,000点を手にする。
岩田はここで、是が非でもトップが欲しいだけに、1つもアガリは取りこぼしたくない。
南2局、ここまでリーチの空振りが続いている清水が親番で待望のアガリ。
ツモ ドラ
ドラこそないものの、この小場で2,000オールは大きい。
南2局1本場、岩田が仕掛けからアガリをものにする。
ポン ポン ロン ドラ
トップの清水との差を6,000点に縮め、南3局の親番に臨む。
しかしこの局を制したのは清水だった。
チー ポン ポン ロン ドラ
その清水が九種九牌流局を挟んでオーラスもツモアガリ。
ツモ ドラ
清水が危なげなくトップを取り、ついに最終戦を迎える。
3回戦成績
清水+22.1P 岩田+6.3P 蒼山▲11.1P 亀井▲17.3P
3回戦終了時
蒼山+14.4P 亀井+13.8P 清水+5.5P 岩田▲33.7P
4回戦(起家から岩田・清水・蒼山・亀井)
最終戦を迎えてトータルトップの蒼山は+14.4P。
点棒にして600点差で追う2着の亀井は+13.8P。
3着には再び浮上してきた清水、+5.5P。
ここまでが苦しい展開の岩田は▲33.7P。
3人のデッドヒートが予想されるスコア状況だ。
岩田は厳しいが、最後のチャンスが消えるまでは諦めないだろう。
東1局、先手を取ったのは蒼山。
自風牌を仕掛け7巡目に300・500のツモアガリ。
岩田の1人ノーテンを挟んで、東2局1本場には親番の清水が役牌のみの500は600オールをツモアガる。
この半荘も小場になるかと思いきや、2本場で蒼山が一歩抜け出した。
ポン ポン ツモ ドラ
亀井のリーチをかわして1,300・2,600は1,500・2,800のツモアガリ。
リーチ棒も合わせて7,800点の収入だ。
蒼山自身も優勝に向けて、確かな手応えを感じたに違いない。
しかし蒼山はここから我慢の局が続く。
東3局は清水の1人テンパイ、東4局1本場は蒼山の1人ノーテンとなり、
次にアガリが発生したのは東4局2本場だった。
ツモ ドラ
リーチから力強いツモアガリを見せたのは清水。蒼山と亀井に肉迫する。
南1局、後の無い親番の岩田の6巡目リーチ。
リーチ ドラ
しかしこれが流局してしまう。
今日の岩田は出アガリは勿論、ツモアガリが出来ていないのが苦しい。
続く1本場では岩田より早く清水がアガリに辿り着いた。
チー ポン ポン ロン ドラ
ここに蒼山がピンズのメンホンの1シャンテンからのターツ落としで放銃。
このアガリで蒼山は原点を割ってしまい、清水がトータルトップに立つ。
この局、清水の配牌は八種八牌だった。
私は七対子を見ながら、オリ気味に打つかと思っていたが、この形からアガリを手に出来るのは見事というべきだろう。
対して、放銃してしまった蒼山は、手の入らない局が続いて少々焦ったか。
点数こそ2,000であり、で放銃するのならば安い、自分はメンホンの1シャンテン、という状況。
私も放銃自体が悪いとは思わないが、普段の蒼山ならもう少し丁寧な打ち回しを見せる気がしてならない。
南2局、亀井の先制リーチと、この局を勝負局と読んだ蒼山の仕掛けがぶつかる。
亀井
ドラ
蒼山
ポン ポン ポン
は亀井の手元に置かれた。
この2,000・4,000で亀井も優勝に手を伸ばす。
南3局、親番の蒼山と亀井の2人テンパイ。
1本場、ここでなんとかアガリが欲しい蒼山だがツモが利かない。
11巡目そこに容赦なく清水からリーチが入る。
ツモ ドラ
手変わり待ちでヤミテンの選択もあるだろうが、清水は切りでリーチとした。
この時点でアガリ牌のとは山に3枚。
こういう局面でも、場況を見て即リーチに踏み切れるのが清水の強さなのだろう。
このアガリで清水はトータルトップのままオーラスを迎えた。
ついに迎えたオーラス、実質3人の戦いになる。ここでの点数は
清水 40,400
蒼山 28,300
亀井 28,100
清水はアガリトップ、蒼山は満貫もしくは清水からの3,900以上直、親番である亀井は安全圏まで点数を重ねる事が条件。
まずは亀井が10巡目に蒼山から2,900のアガリ。
チー ロン ドラ
このアガリで蒼山は跳満条件となり、1本場。
12巡目、各家の手牌はこう。
亀井
ドラ
清水
チー
蒼山
既に鳴きでテンパイしている清水。
優勝条件を満たすためのテンパイとなるを待つ蒼山。
タンヤオ1シャンテンの亀井。
亀井のツモ切りで置かれた牌に清水から声がかかり、広島支部リーグ戦、初の優勝者が決定した。
チー ロン ドラ
4回戦成績
清水+19.7P 亀井+8.4P 蒼山▲10.7P 岩田▲17.4P
最終成績
清水+25.2P 亀井+22.2P 蒼山+3.7P 岩田▲51.1P
ここで全員のコメントを紹介したいと思う。
4位 岩田宗大
「最初に清水支部長のチンイツに振り込んでからは配牌とツモも苦しかった。
どうにか会心の一手を作っても当然アガりきれず。
麻雀はやはり間違った事を犯すとツキが逃げていくという事を、今回の決勝卓で痛感した。」
3位 蒼山秀佑
「序盤からあまり状態がよくないと思いながらも、アガる所はきっちりアガる事が出来ていたのは収穫だと思う。
ただ、そこまでの試合運びが上手くいった分、最終戦南場までトップだったにも関わらず、守りきれなかったのは悔やまれるし、今後の課題。
最後は好きな七対子で、優勝を決めたかったです。」
2位 亀井貴之
「アガれたはずの局面でミスをしてアガれなかった事が全ての原因。力不足でした。」
優勝 清水 真志郎
「先輩として負けられないと思いました。後輩達にはまだまだ高みを目指してもらわないといけませんから。
そう簡単に優勝してもらう訳にはいきません。後輩達の壁となり、目標となるのが私達の役目ですからね。」
優勝した清水は支部長らしく頼もしいコメント。
そして清水は麻雀プロとして、後輩達の模範として、こうあるべきだと思わせる麻雀を打ち、優勝という結果を残してくれた。
私もこの広島支部の中に所属すれば古株のプロである。
清水に倣い、良き模範とならなくてはいけないと来期の決勝卓に座る事を誓った。
何も言わずとも、自分の麻雀を通してこそ教えられる事もあるだろう。
本当に後輩達に伝えるべき事はそんな中にあるのかもしれない。
広島支部の今後は、若い後輩達は勿論、清水をはじめ私達先輩プロの肩にもかかっている。
まだまだ支部として未熟な部分が多い広島支部だが、今後の成長に期待して欲しい。
後列左から 3位:蒼山秀佑 2位:亀井貴之 4位:岩田宗大
前列 優勝:清水真志郎
カテゴリ:広島リーグレポート