第51期 北海道プロリーグ 決勝レポート
2017年03月24日
「結果自然成」この言葉の解釈は、
人は誰もが成功や勝利を求めて生きる。そしてより良い「結果」を求める。
しかし「結果」のみを重要視したり、あからさまに「結果」に自分の利益のみを優先させる、そういった態度はとても醜いものだが、正しい目的に向かって日々たゆまぬ努力を続ける人には、必ずそれ相応の「結果」が現れる。
その結実はまるで季節が巡れば自然に果実が熟するように人間の思惑や計らいを離れている、という意味合いである。
第51期北海道プロリーグ、6節(24半荘)終了時の成績上位4人が得点持ち越しの上、決勝卓(4半荘)に進出。
3月11日に行われた決勝に進出した選手は以下の通り。
*敬称略
喜多清貴(28期 二段)
連盟入会期は遅いが北海道の麻雀業界を支えてきた功労者の1人。
入会後はコンスタントに上位争い、3度目の決勝進出で初の優勝なるか。
野々川博之(6期 六段)
こちらも北海道で麻雀の普及活動に力を注いできた1人。
北海道本部の年功者、35期以来の優勝を目指す。
三盃志(19期 五段)
北海道プロリーグ参戦者の中で年長者だが、速度のある麻雀が特徴。
過去2度の優勝経験があり、通算3度目の優勝に手が届くか。
石田雅人(26期 四段)
前節+90オーバーの成績で決勝に滑り込み。
ポイント的に厳しい戦いになるであろうが、持ち前の粘りと、高打点の手組で2度目の優勝をもぎとれるか。
これまでの成績は
喜多+210.1P
野々川+169.2P
三盃+140.5P
石田+120.8P
持ちポイント的には喜多が有利だが爆発力のある石田が4番手に控える。
野々川、三盃は喜多をこれ以上走らせないような展開に持ち込めるかが勝負の肝になりそうである。
どのメンバーも厳しく長年麻雀に対して努力と研鑽を続けてきた。
誰の想いが「結果」となって実るか。
それぞれが素晴らしい「結果」を求めて戦う火蓋が切って落とされた。
1回戦 (起家から、三盃・喜多・野々川・石田)
東1局 ドラ
勝負の入りを重要視する打ち手が多い中、一番の配牌を貰ったのはトータルトップ目の喜多。
3巡目に
ドラ
この形の1シャンテンになる。
すんなりドラを引き入れるようだと今日は喜多で決まりかなと思うような牌姿ではあったが、思うように手が進まないまま14巡目に親の三盃からリーチの発声。
リーチ
先にテンパイを入れていたのは野々川。
12巡目に5枚目のを打たれて喜多もチーテンを入れた。
チー
2人が終盤オリに回って流局。
喜多にとっては貰った配牌の形から考えるとなんとなく感触の悪い滑り出しとなった。
東1局1本場3巡目。
前局のリーチは不発に終わったが、親の三盃が積極的に仕掛ける。
上家から打たれたをチーして
チー ドラ
その後要牌を引き入れ
チー
この高め跳満テンパイを入れる。一気に突き抜けるかに思われたが、親の河を警戒して序盤からピンズのホンイツに向かっていた石田がを切るとロンの発声
西家・野々川
ロン
8,000は8,300のアガリで今日最初のアガリをものにした。
東2局、現状2番手の野々川に先行される立ち上がりになった喜多だが15巡目、
ツモ ドラ
この1,300オールをツモる。
ドラも見えていない三暗刻変化のある手牌だが、が場に3枚出とはいえリーチの選択肢もあったのではないか。
喜多は南2局の親番で苦悩を迎えることになる。
南2局、流局と小さなアガリで局が消化され迎えた喜多2度目の親番3巡目に、
ツモ ドラ
ここからホンイツへ一直線。
9巡目、持ち点が14,400になっていた石田からリーチが飛んでくる。
この時すでに喜多は
ドラ
このメンホンテンパイがはいっていた。すぐにを引いて
ツモ
ここで選択の機会。場にはももも放たれていないが喜多の選択は(リーチ者の現物)。
その後、裏目のをツモってしまう。石田の河にはもも出ていないが、もツモ切りとなった。
このまま終盤まで全部の牌を押し、当然のようにもツモ切ると石田の手牌が倒される
ロン
高めので7,700の放銃。この時喜多は何を思ったのか。
トータルトップ目の喜多が、ラス目の石田に放銃した事で野々川の士気も上がる。
その野々川の親番。
南3局、三盃が仕掛けて
ポン ドラ
野々川
チー
ここからを引いて打とした。ホンイツ気配の三盃をケアして迂回する選択だが、三盃は比較的全員に安全そうなを残して字牌を先切りしテンパイ気配を出していた。
終盤手出しでとしたのを見て
野々川
チー ツモ
このも最終盤にツモ切りとして結果1人テンパイ。アガリ同等の1,000オールとした。
細かい所までのケアが行き届いている。当たり前の打牌を当たり前のように。思っている事をしっかりと反映させる野々川らしい一打だった。
次局は石田のリーチに3人がオリてオーラスを迎える。
南4局2本場
持ち点は、野々川36,100 三盃34,400 喜多24,400 石田24,100
ラス目のラス親でここを落とすと更に苦しくなる石田にチャンス手。
ドラ
しかし今日の石田はなかなか有効牌を持ってこない。終盤にかけてなんとか2つ鳴いて、
チー ポン
最終ツモは。当然のように河に置くも、下家の三盃が静かに静かにそっと開いた手牌は、
ロン ドラ
8,000は8,600で大事な初戦を制した。
1回戦成績
三盃+22.3P 野々川+10.1P 喜多▲9.6P 石田▲22.8P
1回戦終了時
喜多+200.5P 野々川+179.3P 三盃+162.8P 石田+98.0P
2回戦 (起家から、喜多・野々川・石田・三盃)
初戦を終えて野々川と喜多の差はおよそ20ポイント。
三盃と喜多も40ポイントとかなり肉薄してきた。
喜多としてはこの2回戦で、また突き放したいところであるが、最初の親番は手が進まないまま流局となってしまう。
勝負が動いたのは東3局。前局300・500をツモアガった三盃が、
ドラ
このテンパイをすぐにツモりあげ2,000・4,000。
1回戦トップの三盃がこのまま連勝となれば更に勝負はもつれるが、次局三盃に親番は野々川が動いて300・500。
喜多が親番でテンパイ流局連荘したあとに、1,000は1,100オールをツモった後の南1局2本場、野々川が以下の形でリーチ。
リーチ ドラ
高目のもまだ山に生きていたが、をツモって1,300・2,600は1,500・2,800のアガリ。
リーチ ドラ ツモ
南3局も積極的に動いていた野々川が、
チー ポン ツモ ドラ
この単騎のテンパイ。
喜多もタンヤオの渡りがある形式テンパイに向かうが、が浮いている。
単騎をケアして放銃はなさそうであるが、無事にと振り替わらないまま終盤の野々川
チー ポン ツモ
待望のドラを持ってきて、高目のドラで7,700に変化。
ドラはまだ生きていたがアガリは生まれずにオーラスを迎える。
南4局2本場は、親の三盃が先制でリーチを打って1人テンパイ。
これによりオーラスの持ち点が
喜多27,800 野々川35,200 三盃37,300 石田17,700こうなった。
南4局3本場 供託2.0
ここも三盃がポンから動いて
ポン ポン ドラ
としたが、全員が被せ気味の打牌になった道中、南家・喜多
ドラ
ここからをチーしてテンパイ。
石田からで2,000は2,900と供託の2,000を取りきって浮きの3着を確保した。
チー ロン ドラ
2回戦成績
三盃+15.3P 野々川+8.2P 喜多+3.7P 石田▲27.2P
2回戦終了時
喜多+204.2P 野々川+187.5P 三盃+178.1P 石田+70.8P
3回戦 (起家から三盃・石田・野々川・喜多)
東1局野々川が、
チー ドラ
ここからをツモってを切ってテンパイだがは三盃がトイツ。
喜多もテンパイ取るが終盤オリにまわり、野々川が1人テンパイ
東2局1本場、野々川が先制リーチしてツモ。
ツモ ドラ
1,300・2,600は1,400・2,700。
東3局は喜多が300・500をツモアガリ。
東4局、三盃がピンズのホンイツに向かうが道中、意図的にホンイツ臭を消した手組にしていたところに、絶好のツモで以下の形。
ポン ポン ツモ ドラ
野々川からで7,700。
南1局は喜多が300・500をツモり迎えた南2局。
親番を迎えた石田、ただ黙っている訳にはいかない石田がここで魅せる。
ドラ
このペンテンパイからをツモり、フリテンの高目6,000オールリーチを敢行する。
石田はこのリーチがアガれずに親権を流してしまう。
ここまで苦しい戦いを強いられている石田だが最後までしっかりと自分の打ち筋を貫いていた。
今期の決勝はこのリーチがアガれなかった時点で、4回戦があるとはいえほぼ終戦となったように思えた。
南3局は喜多が
ツモ ドラ
これをツモで1,300・2,600。
そして大事なオーラスを迎えて点棒状況は
喜多32,900 三盃30,700 野々川29,500 石田26,900
オーラスの親番は前局のアガリでトップ目に立った喜多。
良いとは言えない配牌の中、局を捌きに行くが、野々川が中盤に
ポン カン ドラ
このテンパイを入れる。喜多も粘りに粘って単騎のテンパイ。
山にはが2枚、が1枚生きていた最終盤に野々川若干トーンの高い「ツモ!」の発声。
ポン カン ツモ ドラ
値千金の2,000・4,000は当面の敵喜多を沈みの2着にしての1人浮きトップ。
野々川の日々真摯に取り組んだ想いが牌に「結果」として伝わったツモアガリだった。
3回戦成績
野々川+19.5P 喜多▲2.1P 三盃▲4,3 石田▲13,1
3回戦終了時
野々川+207.0P 喜多+202.1P 三盃+173.8P 石田+57.7P
いよいよ第51期北海道プロリーグ決勝も最終節最終戦となった。
上位3人に優勝の可能性が残る。野々川と喜多はほぼ着順勝負、三盃は両者より上の着順になった上で3万点近く差をつければ優勝である。
石田が150P以上離された位置で、どのようにプロらしさを表現していくのかも注目したい。
それぞれの思惑が交錯する中最後の挨拶が交わされた。
4回戦
連盟規定に乗っ取り席順が決定(起家から、喜多、三盃、石田、野々川)
東1局、喜多の親番は石田が
ツモ ドラ
この2,000・3,900をツモ。
終始苦しかった石田に最後に軽く安い手が入るのもまた麻雀か。
その石田が親権を維持した東3局1本場にリーチ
リーチ ドラ
その時喜多も以下の形でテンパイしていた
ポン ドラ
ここからツモでツモ切り、カンのまま押し切るも終盤石田がをツモって1,300は1,400オール。
これをアガればという喜多のホンイツだったが実らず。勝負は南場にもつれる。
南2局1本場、親の三盃がペン待ちの一通でリーチ。
リーチ ドラ
このゲームここまでラス目の喜多が
リーチ
これでリーチ。道中、ホンイツとの岐路も役牌2種を見切って最高形に。
次巡、をツモリ3,100・6,100で一躍トップ目に。
喜多、初優勝まであと2局!しかし次局に落とし穴が。
南3局10巡目
野々川
ポン ロン ドラ
ドラを手放したのは1シャンテンの石田。その是非はあえて問うまい。
喜多はこの形から野々川にで7,700を放銃
安全策の切りで粘る手もあったが。
野々川がラス親、残り巡目も考えるとこの結果は淡白すぎではなかったか。
南4局 ドラ
野々川36,100 石田33,400 喜多26,700 三盃23,800
喜多の逆転優勝の条件は
ツモアガリなら、1,600.3,200。出アガリなら12,000。
(野々川からの直撃なら5,200)
喜多8巡目
ツモで喜多本日最後の何切る?
ちなみには自身のフリテンで3枚切れ。ドラとは生牌。とは1枚切れ。は4枚とも切れている。
喜多はここで七対子に見切りをつける。
今局は選択を間違えることなく、ドラを引いて待望の再逆転のリーチを打つ。
リーチ ドラ
野々川も役牌を仕掛け喜多の現物待ちで1,500テンパイ。
喜多のリーチだけに、出たら連荘するしか術はない。
この後、両者のアガリ牌が場に顔を出すことはなかった。
最後のツモが河に置かれて優勝者が決まると同時にどこからともなく拍手が。
野々川博之が「結果」を最高の物として戴冠。
優勝おめでとう。
4回戦成績
野々川+13.1P 石田+6.4P 喜多▲5.3P 三盃▲15.2P
最終成績
野々川+220.1P 喜多+196.8P 三盃+158.6P 石田+64.1P
さて冒頭の一句には対句がある。
「一華開五葉」という言葉で解釈は以下の通り。
「一つの花がある。その花が五つの花びらを開いた、という意であるが、この花はあなたが生まれたときからあなた自身の深いところに咲いている花だ。
もしあなたが「五つの花びら」の意味を知りたいのなら、道はたった一つ。自身が心の中を深く訪ねて自分の力でもってその意味を体得するしかない。
その行はあなたの心に美しさを与え、そしてあなたの人生を限りなく豊かにするに違いない。
麻雀道に終わりはない。
昨年WRCリーグに出た時に同卓した今年鳳凰位を大観された前原プロも、「全節消化はできないが、麻雀を強くなりたいから参加した。それ以外に意味があるのか?」という類の事をおっしゃっていた。
結果を求めるためには研鑚を積むしかない。麻雀を強くなるためには沢山見て、沢山学んで、沢山打ってを繰り返すしかない。
いつか自分の花びらが「結果」となって開くか分からないが、これからも連盟の一員として麻雀道をしっかりと進みたいと思う。
また今期決勝の最後を盛り上げた2人は副本部長として新しい北海道本部を作る2人であった。両者の戦いを見て私は勿論の事、観戦者も皆胸に秘めた物があるのではないか。
次はこの場所でこの2人と、そう思える対局を見れた事に感謝の気持ち、対局を作った4人に感謝の気持ち、そしてこの対局を自分が文字にできることへの感謝の気持ちを込めて最後を締めたいと思う。
筆:真光 祐尚
カテゴリ:北海道プロリーグ 成績表