北陸プロリーグ レポート

第5期北陸プロリーグ 第5節レポート

プロという立ち位置で、金沢の麻雀界発展に貢献したい。
10数年前、プロテストの面接官に語った言葉である。
「強くなりたい。」「タイトルを取って有名になりたい。」
そんなギラギラした若者たちに混じって、わざわざ金沢から名古屋までプロテストを受けに来た私のプロ志望動機は、綺麗事というか、20代の若者らしいどこかフワフワしたものだったのかもしれない。
だが、幸いにもその志は折れず、今日なお私はプロとして麻雀に携わらせてもらっている。
周囲の方々の支えと応援あってこそなのだが、その恩義は、北陸の地への麻雀の発展というモチベーションを一層強いものにしている。

令和4年9月25日 北陸プロリーグ第5節
上位、中位、下位と、今期の明暗が浮き彫りとなってきた後半戦の始まりである。
今期、全節においてプラスを積み重ねている志多木、安城。
今期の2人には少なくとも現時点では大崩れするビジョンが見えない。
2人の視線の先はすでに夏目坂を捉えているのかもしれない。

続く南、里木の良さは爆発力。
点棒を持った時点でなお手綱を緩めることなく加点する、強気のスタイルでグリーンゾーンを離さないでいる。
これに熟練の浦田、若さの岡田が追随しており、まだまだ上位陣のデッドヒートは最終節までもつれ込むであろう。

今回特筆したいのは、彼らに次ぐ好位置につけている小林である。

小林和樹 石川県根上町出身の27歳。
物腰柔らかく、年下や後輩に対しても腰が低く笑顔で接する、支部きっての好青年である。
前期プロリーグは初参加という事もあり苦しい結果となったのだが、今期はスコアを安定させ、充分上位を狙えるポジショニングをしている。

「今節は若獅子戦と新人王戦の反省を踏まえて、安易なリーチ棒を出さないよう心掛けました。」

そんな彼の印象に残った1局が下記

2回戦 南4局 ドラ五筒

四万五万六万三筒四筒六筒七筒八筒九筒九筒二索三索四索 ツモ五筒

ハイテイでツモりあげて2,600オール
結果としてこの半荘はラスで終えるのだが、間違えずに手を進めて点数を大きく戻せた事が後の勢いに繋がったという。
続く3、4回戦を連勝で締めくくる事となる。

「新人研修リーグでのご指導が、好結果につながっていると思います。対局中も、浦田支部長に後ろで見られている気持ちで集中して打てました。」

今期から始まった新人・若手を対象とした北陸の研修リーグだが、早々に好結果として現れているようである。

「残り3節もしっかり打ってトータルプラスを。欲を言えば30Pずつプラスして、決勝に残りたいです。」

控えめに笑ういつもの好青年が、チラリと見せた貪欲さ。
1節30Pは決して現実離れした数字ではない。
彼の後半の追い込みが耳目を集めるものとなるだろうか。

如月、堂垂、松井、宮成。
今期の支部の新人達は、リーグ戦において一様に苦戦を強いられている。
今回はインタビューをされていない最後の1人。如月に話を聞いてみた。

「現状の結果は明らかなので、優しい言葉はいりません。容赦なく厳しく書いて下さい。」

と、本来ならば話したくないであろう逆境の時でも己に厳しい姿は、プロとして間違っていない。

如月靖之 北海道札幌市出身の39歳。
年齢を重ねて後のプロ入りである。自身の麻雀に一層厳しいのはその求める麻雀像の高さゆえだろうか。

「現時点の自分の実力は、支部の中でも相当下位だと思っているので、先ずは公式ルールの研鑽を積むことを第一に考えています。」

前節までは何とかトータルプラスが狙える位置にいた如月だが、今節3ラスを受けて大きく沈む結果となってしまった。

「巻き返そうと欲が出てしまい、不必要な時に前に出過ぎての放銃を繰り返しました。」

そんな彼からの1局は、会心のアガリではなく痛恨の放銃であった。

二万三万四万六万六万六万 七万 ポン八万八万八万 ポン九万九万九万 ロン八万

ドラは八万

アガったのは親の浦田。
三段目の放銃である。

マンズ染め気配の親に対して終盤にテンパイ取りで4枚目のドラをぶつけて24,000。
テンパイが絶対に必要な局面だったのか。
当たらない読みがあったのかもしれないが、刺されば安くても18,000となるリスクは見なかったのか。
厳しく書いて欲しいとの事なので、擁護はしない。こういった放銃はリーグ戦において、1年を通しての失着となりうるだけに、彼の競技人生において忘れえぬ1局にして欲しい。
他の新人達と比べて年齢が高い分、求められるものも一層高くなる。
今後の飛躍を願い、叱咤激励の記事とさせて頂く所存である。

また、私事であるが、私荒谷の今節の1局を残しておきたい。

2回戦 東4局 西家 ドラ一万

一万一万二筒二筒三索三索三索七索七索七索八索八索八索 ツモ二筒

北陸プロリーグでは通算2度目の役満であった。
会心とは言えないが、このアガリが無ければ今節50Pクラスのマイナスを背負っていたことを考えれば、僥倖の一言に尽きる。
だが、これを後ろで見学していた、私を応援してくれている方に見せられたのは素直に良かったと思う。
まだまだ苦しい位置にいる今期の私だが、負債を減らし、周囲の方々の応援に応えられる様な麻雀を見せていきたいと思う。

最後になるが、副支部長の藤本にも話を伺っている。
全期において決勝に残っている彼も今期は相当苦しんでいる。
そんな彼から戴いた言葉は、個人のものではなく支部全体の未来を見据えたものだった。
その言葉で今回の観戦記を締めくくりたいと思う。

「本田プロの大活躍をきっかけに『本田ロード』という言葉ができ、地方所属プロのマイルストーンになっていると感じる。北陸ではこれに続く形で里木、志多木、文月、宮成、梅本など、放送対局まで勝ち進むプロも増えてきた。北陸プロリーグを土台として活躍する選手が今後も出てくるよう頑張って行きたい。リーグ戦参加者も増加してきたことで、2部リーグ化を具体化してより切磋琢磨の場を作り上げていきたい。また、選手としてももちろんだが、支部活性化に尽力し、今の自分の立ち位置に変わっていく支部員を育てなければと思っている。」

個々人のプロとしての立ち位置、思い、その責任感。
皆が皆、譲れぬものを背負って、またリーグ戦は続いてゆく。

次回第6節は10月23日。
応援の程、宜しくお願い致します。

(文:荒谷誠)

順位 名前 合計 1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 8節
1 志多木 健 219.1 35.0 81.0 21.8 28.2 53.1
2 安城 るい 163.4 37.4 13.1 64.5 35.0 13.4
3 南 和之 100.6 54.5 ▲ 43.7 52.5 21.1 16.2
4 里木 祐介 75.8 70.5 27.3 ▲ 5.8 51.8 ▲ 68.0
5 浦田 豊人 47.4 ▲ 10.8 12.1 73.9 ▲ 11.8 ▲ 16.0
6 岡田 拓也 34.7 ▲ 25.6 42.5 11.0 32.8 ▲ 26.0
7 小林 和樹 9.5 4.4 14.1 ▲ 19.7 ▲ 34.9 45.6
8 梅本 翔 8.8 ▲ 0.6 ▲ 11.8 7.2 ▲ 4.8 18.8
9 文月 愛美 7.7 ▲ 40.6 67.5 7.6 ▲ 26.1 ▲ 0.7
10 成田 理良 4.3 22.7 1.7 ▲ 17.3 ▲ 16.9 14.1
11 獅坂 祐一 ▲ 21.2 58.8 ▲ 6.8 ▲ 27.9 20.3 ▲ 65.6
12 宮成 さく ▲ 32.4 ▲ 55.0 ▲ 28.2 41.9 ▲ 16.6 25.5
13 木戸 僚之 ▲ 49.2 ▲ 38.0 ▲ 29.6 ▲ 11.6 0.0 30.0
14 荒谷 誠 ▲ 57.6 ▲ 18.3 ▲ 56.0 ▲ 13.1 19.7 10.1
15 後藤 正博 ▲ 80.2 ▲ 36.0 ▲ 7.2 ▲ 66.2 25.8 3.4
16 藤本 鉄也 ▲ 88.3 ▲ 30.6 ▲ 51.5 ▲ 17.8 ▲ 31.6 43.2
17 松井 直大 ▲ 92.2 ▲ 34.4 ▲ 49.8 ▲ 49.3 3.0 38.3
18 如月 靖之 ▲ 109.9 ▲ 38.2 0.2 5.5 ▲ 8.5 ▲ 68.9
19 堂垂 正裕 ▲ 148.3 43.8 20.1 ▲ 58.2 ▲ 87.5 ▲ 66.5