北陸プロリーグ レポート

第5期北陸プロリーグ 第6節レポート

態勢、とは不思議なもので、往々にして良かったり悪かったりするものだが、1日、或いは1ヶ月、1年という単位で崩すこともあれば、たった1局でガラリと雲行きを変えてしまうこともある。
「麻雀とは運の芸」とは誰の言葉だったか。我々競技麻雀打ちにとって、技術の研鑽と同様に、態勢の整え方も至上の命題であると思う。
特に1年をかけて争うリーグ戦の場において、高い技術と態勢を維持できた者が結果を残すのは必然であろう。未だ浅学の身。まだ見ぬ高みを追求し、私は日々摸打を繰り返す。

令和4年10月23日。北陸プロリーグ第6節が金沢にて開催された。
上位陣に大きな変動は少ない。ここまでを通してスコアのまとめ方に長けた者たちである。特に志多木、安城辺りは視界の端にゴールテープを捉えているだろう。大きな無理をせず、確実に決勝枠を奪いに来るのではないだろうか。

その中でも今節、大きくスコアを伸ばしてグリーンゾーンに名乗りを上げた者がいる。
未だ当観戦記でも紹介の無かった、成田に今節はスポットを当てたい。

成田 理良(なりた りょう) 北海道札幌市出身
寡黙で求道者然とした風貌の44歳。二つ名は「結果至上主義へのアンチテーゼ」
龍龍への参戦率が高く、その方面においては支部きっての有名人だろう。

「今期は耐える展開が多く、なかなかスコアを伸ばせませんでしたが、常に『追う』イメージを持ち続けていました」

我慢して集中力を切らさない、受けの麻雀が成田の最大の持ち味だと私は彼のデビュー当時から評している。
そんな彼の我慢が実ったか、固まりつつあった上位陣の顔ぶれに一気に割って入る形となった。

彼の会心となる、耐えていた展開を変えた一局が下記

1回戦東1局西家 ドラ九万

七万九万七筒八筒九筒一索二索三索七索八索九索白白 ロン八万

その日の開局、誰もが早々にアガリの欲しい場面だが、成田は打ち出された2枚の白を微動だにせず見送り、面前にて本手に仕上げて安城より8,000をアガる。

「ボーダーまで70P必要な私にとっては当たり前と言えば当たり前の手順なのですが、幸先の良いスタートになりました」

これをきっかけに、機を通して耐える展開だった成田の態勢が大きく動き、今節はオールプラスで70P弱のプラスを叩き出す結果となった。

「7節は追われるプレッシャーが加わり、今期で一番厳しい戦いになると思います。自分の先に対局者がいる。まずは自分に負けぬよう修練して、次節もベストを尽くします。」

対局者に負けず。己に負けず。
「麻雀は哲学」と謳う成田の、己との戦いも最終局面に差し掛かろうとしている。

度々取り上げているのだが、今期は新人達にとって苦難と研鑽の場であろう。
ルーキーイヤーから結果を残す者もいれば、早々にプロの壁にぶつかり、もがき苦しむ者もいる。今期の新人達は、一様に後者として日々努力を重ねている。
その中で一筋の光明が見えたか。ここまで大きくスコアを崩していた堂垂が態勢を立て直し、最下位脱出に成功する。

「リーグ戦前日に行った、勉強会セットの成果は間違いなくありました。目標とする打点や躱し手、リーチ判断などを言語化して議論することで、多くの意見を学べて、迷いなく自信を持って打つ事が出来ました。」

手前味噌ではあるが、私荒谷が、リーグ戦の前日に堂垂、如月、宮成の新人3人と勉強会という形でセットを催し、リーグ戦に臨んでいた。
その成果、と言ってくれるのは先輩冥利に尽きる事もあり、また彼自身の成長速度に目を細めるばかりである。

「会心、と呼べるアガリはありませんでしたが、明らかに勉強会後で変えたのはリーチ判断です。多くの局面で積極的に参加して、場をリードしていけたと思います。」

浦田、木戸、里木といった勝負巧者を正面に迎えての見事な立ち回りにて手にした50P超のプラス。
期を通してみればまだまだ苦しい順位にいる堂垂だが、この経験は来期以降の彼の得難い財産になったのでないだろうか。

「最下位を脱出したとはいえまだまだマイナスは大きいです。少しでも上の順位を目指せるよう、自然体でプラスを積み重ねていければと思います。」

勉強会の場でも誰より多く意見を述べ、私のアドバイスにも真摯に耳を傾けていた堂垂。
彼の逆襲の狼煙が上がるのは、来期か、或いは来節か。
才気ある若者の行く末が楽しみでならない。

今節、大きくプラスを伸ばしたのがリーグ内で3名。
上記の成田、堂垂。そして当観戦記の筆を執っている私荒谷である。
自らを評するのも些か面映いが、北陸支部の一員として、紹介の場を頂きたい。

荒谷誠 生まれも育ちも金沢の22期生。
二つ名は「打撃型紳士」打撃の麻雀を旨とし、人に見られる意識を常に忘れず、ブレない雀風と所作を追求している。
麻雀店や麻雀教室等、麻雀に携わることを生業と出来ている日々と、支えてくれる方、応援してくれる方々への感謝の心を忘れない事が、自身の麻雀の原動力だと思っている。

「今期こそ決勝に、と意気込んだ期だったが、序盤から大きく崩れた態勢を立て直せずここまで来てしまった。私の麻雀を観てくれている方々の為にも、このままで終わるつもりは無かった。」

今節は勝負駆けと思い定め、先手を取られても充分形に仕上げて押し返す。
求める打撃の形が一つ具現化できた節だったように感じられる。

4回戦東3局東家 ドラ中

二万三万四万五万六万中中 ポン白白白 チー五万六万七万 ロン七万

序盤にここ以外は仕掛けない、と決めていたカン六万を鳴き、如月の先制リーチにピンズターツをぶつけて12,000をアガリ切る事が出来た。

結果として最上だが、紙一重だったかもしれないし、払ったターツが放銃だったケースも勿論あるだろう。
だが、私の麻雀を観てくれている方に応えたかった。
「結果放銃かもしれない。だがここでぶつけなければ打撃ではない。」
メンタルが崩れて失着をすることだけはしないよう、常に「見られている」意識を持って今期も最後まで戦い抜きたいと思う。

残るは2節。決勝争いを演じる者、少しでもスコアを良くしようとする者。その意趣は様々であろう。
だが我々競技麻雀打ちは、「人に麻雀を見せる」という職業でもある。
見てくれた方が、より麻雀の魅力を感じる事が出来るような、そんな麻雀を打つ事。
それが私を含めた、北陸支部の、麻雀打ちの目標としたい。

第7節は11月27日。
応援の程、宜しくお願い致します。

(文:荒谷誠)

順位 名前 合計 1節 2節 3節 4節 5節 6節 7節 8節
1 志多木 健 218.1 35.0 81.0 21.8 28.2 53.1 ▲ 1.0    
2 安城 るい 142.1 37.4 13.1 64.5 35.0 13.4 ▲ 21.3    
3 南 和之 89.2 54.5 ▲ 43.7 52.5 21.1 16.2 ▲ 11.4    
4 成田 理良 72.1 22.7 1.7 ▲ 17.3 ▲ 16.9 14.1 67.8    
5 里木 祐介 47.8 70.5 27.3 ▲ 5.8 51.8 ▲ 68.0 ▲ 28.0    
6 岡田 拓也 42.3 ▲ 25.6 42.5 11.0 32.8 ▲ 26.0 7.6    
7 浦田 豊人 38.4 ▲ 10.8 12.1 73.9 ▲ 11.8 ▲ 16.0 ▲ 9.0    
8 梅本 翔 15.8 ▲ 0.6 ▲ 11.8 7.2 ▲ 4.8 18.8 7.0    
9 荒谷 誠 ▲ 11.9 ▲ 18.3 ▲ 56.0 ▲ 13.1 19.7 10.1 45.7    
10 文月 愛美 ▲ 14.9 ▲ 40.6 67.5 7.6 ▲ 26.1 ▲ 0.7 ▲ 22.6    
11 宮成 さく ▲ 23.9 ▲ 55.0 ▲ 28.2 41.9 ▲ 16.6 25.5 8.5    
12 小林 和樹 ▲ 26.5 4.4 14.1 ▲ 19.7 ▲ 34.9 45.6 ▲ 36.0    
13 獅坂 祐一 ▲ 39.3 58.8 ▲ 6.8 ▲ 27.9 20.3 ▲ 65.6 ▲ 18.1    
14 後藤 正博 ▲ 62.5 ▲ 36.0 ▲ 7.2 ▲ 66.2 25.8 3.4 17.7    
15 藤本 鉄也 ▲ 71.7 ▲ 30.6 ▲ 51.5 ▲ 17.8 ▲ 31.6 43.2 16.6    
16 木戸 僚之 ▲ 72.9 ▲ 38.0 ▲ 29.6 ▲ 11.6 0.0 30.0 ▲ 23.7    
17 堂垂 正裕 ▲ 96.1 43.8 20.1 ▲ 58.2 ▲ 87.5 ▲ 66.5 52.2    
18 松井 直大 ▲ 120.4 ▲ 34.4 ▲ 49.8 ▲ 49.3 3.0 38.3 ▲ 28.2    
19 如月 靖之 ▲ 133.7 ▲ 38.2 0.2 5.5 ▲ 8.5 ▲ 68.9 ▲ 23.8