第5期北陸プロリーグ 最終節レポート
2023年01月12日
1年。8節32回戦。
長くもあり、振り返ってみればあっという間だったようにも思える今期の北陸プロリーグも最終節となった。
今期の北陸支部の最後にお届けする声は、やはり決勝の椅子を自らの手で勝ち取った4名の強者達でなくてはならない。
堂々の首位通過は、志多木。
2節で抜け出した後は、圧巻の横綱相撲で他者の追随を許さず独走の決着である。
志多木 健 32期生 山口県出身の42歳。
豪放な風貌だが気遣いや男気のある好青年。
富山市で麻雀店を経営している。
「やっと決勝に残れたという安心感と、素直にとても嬉しい気持ちがあります。決勝に残るのに順位に拘りはないのですが、首位・志多木という響きが良くて守り通しました。」
志多木の麻雀は剛柔一体。余計な失点をしない丁寧さと、波に乗った時に1時間以上も親番を続ける爆発力を併せ持つ。
長期のリーグ戦でも、ワンデイの短期戦でも確実にアジャストしてくる実力者である。
「期を通して会心、と言えるアガリはありませんでした。対戦相手の嫌がる事をやり続けた事が結果に繋がったのだと思います。」
彼と期を通して何回も対局した私の印象だが、押すべき時に押し、引くべき時に引く。普通の期待値を積み重ねて最上の結果を得る。
誰もがわかっていてもなかなか出来ていない事をやり抜いた上での、ある意味当然ともいえる首位通過である。
「決勝までしっかり稽古して私らしい麻雀で良い勝ち方で優勝します。」
期を通して見た上で、勿論優勝候補の筆頭であろう。
影も踏ませなかった彼が、決勝の舞台でどのような麻雀を見せてくれるのだろうか。
2位での通過は女流の安城。
北陸プロリーグ5期中3期での決勝進出は抜群と言って良い安定感である。
「最終節、追われるプレッシャーからか、焦った麻雀を打ってしまい、2回戦までに大きくポイントを失ってしまいました。残り2戦、打つことが本当に怖かったです。」
豊富な実績と今期積み重ねた大きなリードを持つ安城でも、最後の最後、追われる者の重圧は本当に辛かったと安城は終わった後語っていた。
抜け番を挟んでの後半戦。ここで気持ちを切り替える事が出来た安城は、果敢に攻める麻雀を展開し、苦しいながらも最後のオーラスを自らの手で決着させる。
4回戦南4局北家 ドラ
ポン ポン ポン ツモ
この決勝を確定させる満貫に、張り詰めた緊張の糸を緩める事が出来た安城の声は震えていた。
「絶対に!優勝します!」
意気込みに関して、安城のそれは4人の中で一際力強く、思いが込められていた。
彼女にとって3度目の舞台。忘れ物を取りに行く道程に迷いは無い。
3位通過は南。
勢い、という点に関しては彼が随一であろう。
帝陸戦に唯一連続で決勝進出しており、前期は堂々の優勝。そして今期も危なげなくプレーオフに進出している。近年のリーグ戦において、最も結果を出している若手である。
「昨年の帝陸戦、掴みかけた優勝を己の詰めの甘さで逃した事を深く悔いています。今期はプロリーグ、帝陸戦共に、この悔しさを全てぶつける覚悟で臨みました。」
南 和之 34期生 石川県能美市出身の36歳。
柔和な外見と人柄に、似合わぬ熱さを内包した熱血漢。
勢いは止まず、ついにプロリーグ決勝の切符も手にする事となった。
「心が折れかけていた時、藤本プロから戴いた言葉に励まされてここまで来る事が出来ました。」
決勝が決まった時、彼が最初に述べたのは副支部長でもある藤本への感謝だった。
期の中で何度も藤本と相対することとなった彼だが、支部随一の実力者である藤本へのアンテナは常に張り巡らせ、集中を切らすことは無かったという。
7節目に同卓した際、藤本は国士無双をリーチしてアガるのだが、その危機を察知して無傷で回避できたことが今期のターニングポイントだったと彼は語った。
「決勝の相手は実力も経験も抜きんでている先輩方。実力差があれど、負けるつもりはさらさらありません。優勝は通過点。次のステージを見据えています。これまで支えてくれた人達、手を差しのべてくれた人達から貰ったパワーで僕が必ず勝ちます。」
勢い止まぬ南。決勝では台風の目となりうるか要注目である。
そして大激戦の残り1席を賭けた争いを制したのは、支部長の浦田。
第2期に決勝進出して以来の、3期ぶりの決勝である。
「第2期に木戸プロに負けて以来、なかなかリベンジする機会を得られませんでした。北陸支部も毎年新人が増えてきており、その方たちを研修する身として負けられないというプレッシャーを持って臨んだ1年でもありました。なので先ずは決勝に進出出来た事にほっとしています。」
浦田 豊人 8期生 石川県金沢市出身の55歳。
北陸支部長であり、北陸支部の創設者。
北陸において、競技麻雀に関して「顔」と言ってもよいであろう。支部を率いる彼も、近年は本田や里木に予選で阻まれ、決勝からは遠ざかっていた。
今期は失点を抑え、ここぞという所で大きく加点する、浦田らしい正統派の麻雀でポイントを重ね、最終節の直接対決でボーダーだった里木をかわしての決勝進出である。
3万点という重要な分岐点。
一発や裏ドラの無い連盟公式ルールでの独自の押し引き、判断。
これらにおいて一家言を持つ彼の麻雀は、放送対局で必見であろう。
「当日は放送対局なので、北陸から沢山の方が視聴されると思います。そんな中で少しでもワクワクしてもらえるような、面白いと思ってもらえる対局となるように、4者でしっかりと打ち切りたいと思います。その上で、前回の忘れ物を取って帰れればと思います。」
自分の麻雀をしたいであったり優勝する、とのコメントの多い決勝への意気込みであるが、浦田の口から出た言葉は、視聴してくれる方々へのものだった。
無論、勝ちたい気持ちも誰に劣るものでもないだろう。だがそれ以上に、北陸の競技麻雀の未来を見据えた浦田の意気込みには重さがあり、熱さがあった。
必要以上にポイントを叩くでもなく、確実に4つの椅子の1つをものにした浦田。
実績ならば大本命。競技麻雀の真髄を、大勢の視聴者はその目に焼き付けて欲しい。
支部発足から13年。プロリーグ開設より5年と、比較的北陸支部の歴史はまだ浅いが、近年の若手の飛躍もあり、その認知度も徐々にではあるが上がってきている。
北陸という一地方ではあるが、その地域のレベルや競技麻雀への熱い思いは全国のどこと比べても恥じ入る事は無い、と自負している。
その思いの強さを。熱量を。
こうして文字に換えて少しでも多くの方にお届けすることが今年の私の役責でもあった。
麻雀も文責も、至らぬ身ではあるが1年を通して己を表現する場を与えられた事に感謝したい。
決勝は1月27日。夏目坂にて開催される。
私自身も共に戦った仲間として、また1麻雀ファンとしてこの戦いの行く末を見届けたいと思う。
皆様応援の程、どうか宜しくお願い致します。
最後になりますが、1年間拙い観戦記にお付き合いいただき誠にありがとうございました。またお目にかかる機会がありましたらどうぞ宜しくお願い致します。
(文:荒谷誠)
順位 | 名前 | 合計 | 1節 | 2節 | 3節 | 4節 | 5節 | 6節 | 7節 | 8節 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 志多木 健 | 214.7 | 35.0 | 81.0 | 21.8 | 28.2 | 53.1 | ▲ 1.0 | 12.7 | ▲ 16.1 |
2 | 安城 るい | 128.5 | 37.4 | 13.1 | 64.5 | 35.0 | 13.4 | ▲ 21.3 | 43.1 | ▲ 56.7 |
3 | 南 和之 | 112.4 | 54.5 | ▲ 43.7 | 52.5 | 21.1 | 16.2 | ▲ 11.4 | 38.5 | ▲ 15.3 |
4 | 浦田 豊人 | 68.3 | ▲ 10.8 | 12.1 | 73.9 | ▲ 11.8 | ▲ 16.0 | ▲ 9.0 | 0.0 | 29.9 |
5 | 成田 理良 | 48.8 | 22.7 | 1.7 | ▲ 17.3 | ▲ 16.9 | 14.1 | 67.8 | ▲ 38.9 | 15.6 |
6 | 文月 愛美 | 45.7 | ▲ 40.6 | 67.5 | 7.6 | ▲ 26.1 | ▲ 0.7 | ▲ 22.6 | 31.8 | 28.8 |
7 | 里木 祐介 | 33.5 | 70.5 | 27.3 | ▲ 5.8 | 51.8 | ▲ 68.0 | ▲ 28.0 | 5.4 | ▲ 19.7 |
8 | 梅本 翔 | 26.6 | ▲ 0.6 | ▲ 11.8 | 7.2 | ▲ 4.8 | 18.8 | 7.0 | ▲ 57.5 | 68.3 |
9 | 宮成 さく | 14.4 | ▲ 55.0 | ▲ 28.2 | 41.9 | ▲ 16.6 | 25.5 | 8.5 | ▲ 7.7 | 46.0 |
10 | 獅坂 祐一 | 6.5 | 58.8 | ▲ 6.8 | ▲ 27.9 | 20.3 | ▲ 65.6 | ▲ 18.1 | 1.7 | 44.1 |
11 | 藤本 鉄也 | ▲ 8.1 | ▲ 30.6 | ▲ 51.5 | ▲ 17.8 | ▲ 31.6 | 43.2 | 16.6 | 36.0 | 27.6 |
12 | 荒谷 誠 | ▲ 20.1 | ▲ 18.3 | ▲ 56.0 | ▲ 13.1 | 19.7 | 10.1 | 45.7 | ▲ 52.7 | 44.5 |
13 | 後藤 正博 | ▲ 44.1 | ▲ 36.0 | ▲ 7.2 | ▲ 66.2 | 25.8 | 3.4 | 17.7 | 58.5 | ▲ 40.1 |
14 | 木戸 僚之 | ▲ 50.5 | ▲ 38.0 | ▲ 29.6 | ▲ 11.6 | 0.0 | 30.0 | ▲ 23.7 | 22.1 | 0.3 |
15 | 松井 直大 | ▲ 64.3 | ▲ 34.4 | ▲ 49.8 | ▲ 49.3 | 3.0 | 38.3 | ▲ 28.2 | 54.7 | 1.4 |
16 | 堂垂 正裕 | ▲ 73.6 | 43.8 | 20.1 | ▲ 58.2 | ▲ 87.5 | ▲ 66.5 | 52.2 | 8.2 | 14.3 |
17 | 岡田 拓也 | ▲ 100.2 | ▲ 25.6 | 42.5 | 11.0 | 32.8 | ▲ 26.0 | 7.6 | ▲ 103.8 | ▲ 38.7 |
18 | 小林 和樹 | ▲ 146.9 | 4.4 | 14.1 | ▲ 19.7 | ▲ 34.9 | 45.6 | ▲ 36.0 | ▲ 25.4 | ▲ 95.0 |
19 | 如月 靖之 | ▲ 220.6 | ▲ 38.2 | 0.2 | 5.5 | ▲ 8.5 | ▲ 68.9 | ▲ 23.8 | ▲ 26.7 | ▲ 60.2 |
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