北陸プロリーグ レポート

第20期北陸プロアマリーグ 決勝レポート

「麻雀は、プロがアマに百戦百勝できる競技ではない。だからこそ我々プロはマナーが良くなくてはいけない」
これは私がプロになったばかりのころ、先輩プロに教わった言葉である。勝って不必要に驕らず、負けて腐ることなく、勝負に対し常に真摯に取り組む姿勢を、他者はプロと評価するのだから。
この言葉は競技人生における指針として、今も私の胸に刻まれている。

お初の方は初めまして。ご存知の方は改めて失礼致します。第20期北陸プロアマリーグの決勝レポートを担当させて戴きます22期生の荒谷と申します。拙い文章ですがお付き合いの程、どうか宜しくお願い致します。

令和元年7月7日、元号が変わって最初の、そして北陸として節目の20期目のリーグ戦決勝が、金沢市の「禁煙麻雀じゅじゅ」にて行われた。
リーグ戦を勝ち抜いて決勝に進んだ4名には、順位に応じてポイントが付与されており、そのポイントを含めての4回戦の合計によって優勝が決定する。
決勝の椅子を勝ち取った4名と、その順位がこちらである。(敬称略)

1位通過 藤本(プロ)+60P

100

 

 

2位通過 阿戸(プロ)+30P

100

 

 

3位通過 小泉(アマ)+15P

100

 

 

4位通過 本田(プロ) 0P

100

今期はWRCルールでのリーグ戦に伴い、決勝のアドバンテージも増加している。
このポイント差により、いきなりではあるがある程度の条件を視野に入れた戦いが考慮される。
首位には首位の、最下位には最下位の立ち回りや苦悩もあるだろう。そんな各人の思惑を交錯させて、静かに決勝の幕は上がった。

 

 

1回戦 小泉―阿戸―本田―藤本

東1局ドラ八筒

全体的に平たく、突出した配牌の者はいない立ち上がり。
後半に差し掛かるころ、テンパイ一番乗りを果たしたのは親の小泉さん。

一万一万三万四万五万五万五万一索二索三索四索五索六索  リーチ

先制リーチで押さえつけにかかる。これにぶつけに行ったのはドラを暗刻にした藤本。
三索西のシャンポンでリーチと応戦。もし藤本が勝てば、ポイントのアドバンテージもあり序盤にしてリードを大きく広げることになる。
しかしながら、終盤に小泉さんが二万を引きアガって1,000オール。
小泉さんは勿論、本田と阿戸も胸を撫でおろしたかもしれない。

「失うものは何もない。普段より『二歩』踏み込んで戦います」と小泉さん

北陸においては名の通ったアマの強者であり、北陸プロアマリーグの参戦歴も長く、決勝の常連でもある。
雀風は、深い読みから他者をコントロールして場況を支配するタイプ。
打ち慣れた決勝の場で、今日はどのような麻雀を見せてくれるのだろうか。

東1局1本場 ドラ三万

1回戦にして、60Pという差を追う立場の本田。素点と並び、両方を意識した麻雀になるだろう。そんな彼の最初の本手。迷わず牌を曲げリーチ。

三万三万五万六万七万三索四索五索二筒三筒五筒六筒七筒  リーチ  ロン四筒

こちらも素点が必要な親の小泉さんから出アガリ、8,000は8,300をものにする。

「優勝したいです。ポイント計算しながらの戦いを、楽しみながら打ちます」と力強い笑顔を見せて語った本田。
鳳凰位戦でも鎬を削るC1リーガーである。攻守に卓越した押し引きを見せるバランス型。
攻めるしかない、ともとれる状況においての「楽しむ」との言葉。気負いなく戦う彼に今日は注目したい。

流局を挟んでの東2局1本場は小泉さんが700・1,300は800・1,400
続く東3局は藤本の初アガリ。

三万四万五万八索八索五筒六筒七筒東東  ポン南南南  ツモ八索 400・700

本田のカン八索リーチに対してギリギリに踏みとどまっての同テン引きアガリ。点数こそ安いが、藤本の今日に賭ける熱を感じた1局だった。

「ポイント差もある。今日は絶対勝つ」とインタビュー時に宣言したのは藤本。

北陸において、実力・実績共に抜けている大ベテランである。
北陸支部の前身・金沢支部の時も含めて、数えきれない決勝回数と優勝回数。
北陸プロリーグにおいても連続で決勝に進出しており、安定した強さは衆目の一致するところ。本日においても、勿論優勝の大本命。
雀風は自在の攻撃型。ポイントを守ることなく、多彩な攻めで決勝の場を沸かせてくれることだろう。

東4局ドラ九万
ここまでは全て受けに回っていた阿戸が、ドラを重ねてリーチに打って出る

五万六万七万九万九万二索三索四索四筒五筒  暗カン牌の背一索 上向き一索 上向き牌の背  リーチ

新ドラは乗らずも、裏次第では大化けのある勝負リーチ。若武者の手に力が入る。

「無駄な放銃を避けたいです。藤本さんに、勝ちます!」

4名で唯一、はっきりと個人名を出して戦いに臨んだ阿戸。
新人プロながら、並み居る強豪を撃破し、初の決勝の椅子を勝ち取った、今一番勢いのある選手だろう。その熱量を他の3名も無視はできない。
「オールマイティな麻雀を目指しています」攻守自在な麻雀を作り上げるべく、若武者が決勝の舞台で暴れることができるか。

だが、決着はピンズのホンイツに回した本田が、藤本から5,200の出アガリ。
阿戸は無念ながら、本田トップ、藤本ラスの並びが発生する。

南場に突入するも、本田の手が軽い。
南1局、藤本の仕掛けを1,000で捌き、南2局は5巡目のリーチで電光石火の1,300・2,600。
ポイント付与の無い本田、ここはトップを確実にとって次に繋ぎたい。
そして、次いで素点が必要な小泉さんが次局本手をものにする。

南3局 ドラ六万

六万六万六万七万八万九万六索七索八索四筒五筒九筒九筒  リーチ  ツモ三筒 2,000・4,000

本田、小泉さんが浮き、阿戸、藤本を沈めるという条件的に良い着順。
勿論、沈む2人は甘んじて受け入れるつもりはないだろう。

南4局 ドラ一筒

ドラトイツの藤本が積極的に仕掛ける。対照的に阿戸は動かず、ポンテンを拒否してテンパイを入れてのリーチ。

二万三万四万六索七索八索四筒五筒五筒五筒六筒七筒八筒  リーチ

配牌オリの小泉さん。流局間際に「これは義務でしょう」とチー、阿戸のハイテイをずらす。
結果、1人テンパイでこの半荘は終了するのだが、阿戸が本来掴むはずだったハイテイ牌は、無常の三筒だった。小泉さんの、サボらない姿勢が光った局面だった。

1回戦成績
本田(+27.8P) 小泉さん(+9.6P) 阿戸(▲11.5P) 藤本(▲26.9P)

総合成績
藤本(+33.1P) 本田(+27.8P) 小泉さん(+24.6P) 阿戸(+18.5P)

1回戦にして混戦模様。並びを作った本田と小泉さんの卓回しが光る半荘だった。
一応ながらも首位キープの藤本、失点を最小限に抑えた阿戸。勝負はまだ横一線である。

 

 

2回戦 本田―小泉―阿戸―藤本

東1局 ドラ四筒
ソーズの一色に走る小泉さん、マンズの一色に走る藤本、しかし、1回戦トップで波に乗ったか、本田がこの半荘もアドバンテージを握る。

二万三万四万六索七索八索四筒五筒五筒六筒六筒中中  リーチ  ツモ四筒 4,000オール

手数、打点共に現状では本田が抜けている。
この態勢差を見て、他の3者はどのように戦術を修正してくるだろうか。

東1局1本場 ドラ東

三万四万五万三筒三筒四筒五筒六筒七筒七筒七筒東東  リーチ

4巡目に阿戸がドラシャボでリーチ。受け重視の打ち手ならばダマで待ち変化も見るか。だが躊躇わずのリーチ。彼らしさを失ってない、好印象のリーチである。
これにぶつけたのは小泉さん。南をポン、七筒八筒九筒チーのカン三筒
藤本の打三筒にかかる二つのロンの声。
阿戸、再度の試練は無念の頭ハネ。1,000は1300で東1局は終了する。

東2局にも阿戸に手が入る。しかし今度は藤本の上手い仕掛けに8,000を放銃。
阿戸、大きなミスこそないが未だアガリのない苦しい展開。

東3局、東4局は本田の連続アガリ。1,300・2,600、300・500と着実に加点。やはり本田が良い。

南1局も本田が2本積んだ所で、小泉さんが必死の300・500は500・700。どうにか親を終わらせる。
しかし本田の勢いは止まらない。南2局を500・1,000、南3局を1,300で他者に付け入る隙を与えない。完全に本田の流れのまま、オーラスに突入する。

オーラス時 本田54,700 藤本28,700 小泉27,900 阿戸9,000

南4局ドラ西

ラス親の藤本、ここで意地を見せる
小泉さんに1,000点で3着落ちという局面、ここで沈めば、逆に本田に独走を許すことになる。そんな中での下記の手牌

四万四万四万六万八万三索三索三索五索五索三筒四筒四筒  ツモ四索

咄嗟に正着の見えない牌姿。藤本の選んだのは打三筒
次巡のツモ二筒で僅かに顔が歪む。しかしすぐさま四筒をポン、打四索五索をポン、打八万。そして四筒五索を加カンして新ドラに三万がめくられる。藤本、電光石火で最高形に仕上げて12,000を引きアガる。

四万四万四万六万三索三索三索  加カン四筒 上向き四筒 上向き四筒 上向き四筒 上向き  加カン五索 上向き五索 上向き五索 上向き五索 上向き  ツモ五万 4,000オール

「あれは心にくるアガリ」と後に本田と小泉さんは語った。藤本らしい、強いアガリ。
本田の独走に待ったをかけ、親マンでひとまくりの位置につける藤本の意地である。

南4局1本場 ドラ八索

ここでもう1人、見せたのが阿戸。ラスではあったが、諦めることなく手牌を最高形に仕上げて、高めをツモる。
結果は変わらずのラスだが、次につながる、受け止めたラスである。
若武者にようやく初日が出る。

五万五万五万六万七万五索六索六索七索七索八索五筒六筒  リーチ  ツモ七筒 3,100・6,100

2回戦成績
本田(+32.6P) 藤本(+9.3P) 小泉さん(▲14.2P) 阿戸(▲27.7P)

総合成績
本田(+60.4P) 藤本(+42.4P) 小泉さん(+10.4P) 阿戸(▲9.2P)

 

 

3回戦 阿戸―小泉―藤本―本田

ポイントにやや開きが生じてきた3回戦、阿戸と小泉さんは最終戦に繋げるためにトップが欲しい。藤本も本田より下の着順は取れない。また本田とて決して安全地帯にいるわけではない。そんな各人の思惑から生まれる牽制か、東場は全て2翻以下の小場で終了する。

南1局ドラ六万

配牌に東南北がトイツの藤本、手の内から789の面子を落として強引とも思える一色寄せ。
これが奏功し阿戸より3,900を出アガる。

三筒四筒五筒東東北北  チー九筒 左向き七筒 上向き八筒 上向き  ポン南南南  ロン北

南2局、前局の離れ業で勢いに乗ったか、藤本は2巡目にしてメンホンイーシャンテンに。
ほどなく二万五万中のテンパイを入れるが、本田が小泉より1,300。
ここを制していればこの半荘をほぼ手中にできていたであろう藤本、無念の横移動である。

南3局 ドラ南

親番の藤本、「これが俺のスタイルだ」と言わんばかりに積極的に仕掛けてすぐさまテンパイを入れる。

四索五索六索五筒五筒七筒八筒  ポン東東東  ポン九万 上向き九万 上向き九万 上向き

これに追いついたのが阿戸。ドラを重ねて躊躇い無くリーチに打って出る。ツモればトップの公算は高く、次戦に希望を繋げることができる。

二万三万三万四万四万五万一筒二筒三筒六筒七筒南南  リーチ

しかし、この局を、ひいてはこの半荘を制したのは小泉さん。
「あのラス前は自分にとっての勝負局でした」と後述したその場面
両者にピンズの上だけは打てないと判断し、九筒を固め、阿戸の当たり牌である八筒を止めて無筋勝負のリーチ。息詰まる競り合いを制し、値千金の価値ある2,600を出アガる。

五万六万七万三索四索五索一筒二筒三筒八筒九筒九筒九筒  リーチ  ロン七筒

南4局ドラ二筒
本田32,500 藤本32,500と全くの同点。これに小泉さんが30,700で続く大接戦。
しかし必然と言うべきか、前局の攻防を制した小泉さんが最速で条件をクリアするテンパイを入れ、本田のテンパイ打牌を捕える。

三万四万五万五万五万二索三索四索二筒四筒南南南  ロン三筒 2,600

自身の条件を繋ぐトップであり、トータル首位の本田を3着に沈める理想のアガリ。
最終戦、逆転のシナリオを描くことができるか

3回戦成績
小泉さん(+18.3P) 藤本(+7.5P) 本田(▲5.1P) 阿戸(▲20.7P)

総合成績
本田(+55.3P) 藤本(+49.9) 小泉さん(+28.7P) 阿戸(▲29.9P)

 

 

4回戦 藤本―小泉―阿戸―本田

いよいよ最終戦である。本田と藤本は完全に着順勝負。小泉さんは素点または並びに条件を付けたトップが必要。阿戸は特大のトップ条件か。
最終戦を前に、細かな計算をする4者。会場の空気も張り詰めたものが漂う。
ここまで来たら、優勝したい、勝ちたい想いの強さは全く同じ。勝敗を分けるのは、ここに至るまでのプロセスか、麻雀に向き合う真摯な姿勢か、勝利の女神の気まぐれな微笑みか。泣いても笑っても、この半年の総決算。静かな会場に4者の「宜しくお願いします」の声が響いた。

東1局は、小泉さんが速攻の1,000を本田より出アガる。
僅かな加点だが、藤本の親を落とし、本田を削る意味のあるアガリ。

東2局ドラ東
素点の必要な小泉さんが親で気を吐く。

四万四万九万九万三索三索九索四筒四筒五筒五筒九筒九筒  リーチ  ロン九索  裏九筒 12,000

場況を読み、絶好の九索に受けてのアガリ。放銃の阿戸は、さすがに終戦か。

東2局1本場ドラ西

藤本から本手のリーチがかかる。

四万五万六万一索二索三索五索六索四筒五筒六筒西西  リーチ

先に仕掛けていた本田も、藤本のアタリ牌である七索を止める形でテンパイをぶつける。

七万七万七万七索七索白白  ポン二万 上向き二万 上向き二万 上向き  ポン二筒 上向き二筒 上向き二筒 上向き

意地をぶつけ合う両者だが、またも小泉さんが絶妙のアガリで加点する。

四万五万六万三索四索五索五索六索七索五筒六筒七筒西  ツモ西 2,000は2,100オール

巧い。思わず嘆息する。この局面でこの形しかないというアガリで小泉さんが瞬間的にではあるがトータル首位に躍り出る。
続く2本場は、これ以上の差は決定的になると判断したか、本田が役牌の北を仕掛けて阿戸より出アガって局を消化させる。

東3局ドラ八万

流れを引き寄せたか、小泉さんが5巡目にしてツモスーのイーシャンテンに。
親での連荘に全てを賭ける阿戸がメンピンでのリーチも、勿論小泉さんは怯まない。
だがここは阿戸に2,900の放銃。勝利の女神はまだ誰にも微笑んではいない。

続く1本場は阿戸と本田の2人テンパイ。
そして次局、振り返ってみれば分水嶺がここだったのだろう、という局がやってくる。

東3局2本場ドラ八索

9巡目の阿戸の手牌

四索五索六索八索二筒二筒二筒二筒四筒四筒六筒六筒北北

阿戸の選択はドラの八索
好意的に見ればストレートな一打なのかもしれないが、ここは打北ではないだろうか。
ツモ七索八索、または三索六索でも良い、ドラを使って仕掛けのできる形に構えるのがベストバランスに思える。また、より柔軟に打二筒で七対子も視野に入れる打ち手もいるだろう。
この後、3段目間際に阿戸は二筒を暗カンし四筒をポン。北六筒の形テンに受ける。
WRCルールにおいて、仕掛けて暗カンを入れて自分は形テンというのはあまりに心許ない。
他者の本手を誘発するのではなかろうかと懸念した矢先に、2,000点のヤミテンを入れていた本田が満を持して牌を横にしてリーチといき、新ドラの九筒を高らかにツモりあげる。

四万五万六万二索三索四索七索八索九索七筒八筒北北  リーチ  ツモ九筒  裏三万二索  3,200・6,200

小泉さんを躱して再度の奪首。この跳満は僥倖なのか必然なのか。このリードにより藤本と小泉さんは条件を押し付けられる形となる。

東4局は無理をする必要のなくなった本田の親番。
阿戸と藤本の2人テンパイで無難に局が進む。

南1局ドラ六万

藤本にとっての最後の親、ミスは許されない局面において彼独自の感性か、綱渡りのような牌寄せにて、唯一ともとれるアガリを手にする。

四万四万四万六万七万八万八万八万八万四筒四筒五筒六筒  ツモ七筒 2,000オール

ツモ宣言時に僅かに不満げな藤本
「あそこはリーチだったのかもしれない」と後に語る。

より良い両面以上への変化や、出アガリ重視の単騎変化を見ている間にツモってしまったという。
結果論ではあるが、2,000オールと4,000オールではその後の手作りに影響を与えないはずがない。卓抜な押し引きを見せる藤本の、僅かな後悔がそこにあった。

更なる加点を期する1本場だったが、5巡目にピンフテンパイを入れた本田が7巡目に1,000は1,600を小泉さんよりアガって大きな難所を1つクリアする。
本田、大きな大きなアガリ。

南2局、小泉さんの意地の見せ所。
5巡目にリーチで、早々の1,300オール。素点はまだ足りないが、この半荘での再度トップに立つ。

続く1本場。本田が沈んでない以上、素点で2万点弱の差をつける必要がある、何が何でも連荘したいところである。
だが、西を暗カンした阿戸に無念の放銃。4,500は4,800の失点は点数以上に痛恨であったか。

南3局、阿戸の最後の親番。
前局の4,500も、シビアに見れば正着であったか意見が分かれるだろう。
親も残っているし、僅かでも加点に意味は見いだせるが、リーチドラ1での裏期待というのは些か打点不足ではないだろうか。
最後の大逆転に一縷の望みを賭けた彼の親番は、本田の電光石火の2,000点で幕を下ろす事となる。
蛇足になるが、若さと勢いで決勝に臨んだ彼には、やはり経験が不足していた。
打牌のリズムや所作において他の3者に決して見劣りせず、寧ろ堂々と戦い抜いた彼だけに、決勝という場での戦い方の隙が、結果として大差を生んでしまった。
だが逆に言えば、足りないのは経験である。この敗戦を糧に、再度リベンジに臨むことを期待してやまない。

南4局ドラ東

ラス親はトータルトップの本田。実質の最終局である。
本田42,300 小泉さん36,600 藤本28,700 阿戸12,400

小泉さんは倍満ツモ、藤本は跳満ツモ条件が残っていた。
藤本は七対子ドラに全てを託し1枚の東と共に絵を合わせに行く。
だが女神は微笑まず、最後は全員が静かに手を伏せて、長い戦いに終止符が打たれた。

4回戦成績
本田(+27.3P) 小泉さん(+11.6P) 藤本(▲6.3P) 阿戸(▲32.6P)

総合成績
本田(+82.6P) 藤本(+43.6) 小泉さん(+40.3P) 阿戸(▲62.5P)

「1回戦、藤本をマークしてトップラスを決められたことが大きかった。コンスタントに配牌が良かったが、特に要所に条件に見合った手が入ったことが勝因だと思います」

照れくさそうに語る本田だったが、そこには長い戦いを制した確かな充足感も感じられた。
栄えある勝者は1人きりだが、他の3人も決して敗者とは呼び難い。
常に局面を意識し、誰にも楽をさせずに丁寧に打ちまわした小泉さん。
状態の悪さを意識しつつも自分の麻雀を貫き、最後の瞬間まで可能性を諦めなかった藤本。
未熟ながらも必死に喰らいつき、精一杯に手を作り続けた阿戸。

レポートを多く手掛ける私から見ても、近年に無い名勝負だったと思う。
優勝した本田も、また惜しかった3人はそれ以上に、胸を張って欲しい。
一度の勝利が、あるいは一度の敗戦がその者を大きく成長させる事がある。
冒頭の言葉に戻るが、今日を戦い抜いた4者のマナーは、何処に出しても恥ずかしくないものであったと思う。彼らと同じリーグで鎬を削れた事、また決勝の場に立ち会えた事に感謝したい。
改めて、優勝の本田プロ、本当におめでとうございます。

第21期北陸プロアマリーグは、9月1日(日)~富山にて開催されます。
皆様のご参加・ご観戦を心よりお待ちしております。

最後になりますが、至らぬ文章にお付き合いいただき有難うございました。またどこかでお目にかかる機会ありましたら、どうぞ宜しくお願い致します。