北関東プロリーグ レポート/第3期 宇都宮リーグ 準決勝&決勝レポート
2013年10月22日
昨年の春より始まったこの宇都宮リーグ。早くも今日、第3期目の決勝を迎えた。
今期は第1期、第2期のチャンピオンが揃って準決勝へとコマを進めた。この2名はアマチュア選手である。
今期は準決勝にアマチュア選手が5名、プロが3名。普段からAルールには打ちなれているはずのプロがリーグ戦で負けてしまったのだ。それだけ今期の参加者のレベルが高かったということだろうか。
負けてこのレポートを書いている自分がいうと言い訳のようになってしまうが、実際にリーグ戦はレベルの高い内容だったと思う。それだけに、今回も準決勝からハイレベルな闘牌が期待できる。
自分もレポーターとして楽しみである。
前置きが長くなってしまったが、まずは各選手を戦前のコメントと共に紹介していこう。(敬称略)
1位通過 町野高司
「運の爆発に期待します」
本人は運と言っているが、予選のリーグ戦は運だけでは勝てない。実力が伴っての堂々1位通過である。
2位通過 黒木聡太
「最後まで頑張ります」
今回最年少の大学生。第1期のファイナリストでもある。大学では麻雀サークルに所属する宇都宮期待の星である。
3位通過 弓削雅人プロ 28期生
「前回準決勝はノーホーラでしたが、今回はがんばりたいです」
プロ連盟に入会した第2期目から参加し2回とも準決勝進出。また先日の高崎でのプロアマリーグでも決勝に残っており、今回も決勝を狙う。まだ21歳という若さの北関東支部の若手ホープ。
4位通過 桧山拓
「まずは決勝に残れるように頑張ります」
第2期のチャンピオン。予選最終節はマイナスできないポジションだったが、持ち味の粘り強い麻雀でポイントを伸ばし準決勝進出。本人も連覇を強く意識していることだろう。
5位通過 須長正和プロ 18期生
「決勝にいかないことには始まらないので、まずはそこからです」
前回は準決勝で敗退。事務局長として北関東を支える縁の下の力持ち。前回の雪辱に燃える。
6位通過 佐々木浩行
「優勝を目指します」
今回最年長の打ち手。初参加での準決勝進出はお見事。熟練の麻雀力で決勝進出なるか。
7位通過 中津真吾
「来週のためにも優勝します」
第1期のチャンピオン。一週間後にプロ連盟の受験を控えやる気は十分。2度目の優勝なるか。
8位通過 吉田幸雄 5期生 北関東支部長
「勝つつもりできたけど」
これまで北関東支部のタイトル戦で何度も決勝に残ってきた。しかし優勝はまだない。おそらく一番勝ちたいと思っているのではないか。実績、実力共に大本命であろう。
正直この中で誰が勝ってもおかしくはない。多数のプロが参加する中、リーグ戦を勝ち抜いたアマチュア5名。そして今年の十段戦では揃って九段戦Sまで勝ち残ったプロ3名。
この強者たちの戦いを一番間近で見られることが打ち手としても楽しみである。
それでは準決勝の模様からお伝えしていこう。
準決勝、1、3、5、7位と2、4、6、8位の2卓に別れて3回戦を行い、上位2名が決勝進出となる。
A卓 町野×弓削×須長×中津
1回戦。弓削が3,900オールをアガリ一歩抜け出すも町野さんが南場で捲って逃げ切り。
2回戦。初戦ラスだった中津さんが奮起してトップ。2着に町野さんで、町野さんが一歩抜け出す。
2番手争いは、3人が10.4Pポイント差の接戦となる。
3回戦。南場の親番で粘った中津さんが町野さんも捲って首位に立つ。弓削、須長共に食らいついていくが及ばず。プロが2人揃って負けてしまった。
決勝進出 中津さん、町野さん
B卓 黒木×桧山×佐々木×吉田
1回戦。オーラスで吉田が大爆発。接戦からあっという間に80,000点オーバー。
時間打ち切りがなかったら何点までいったことやら。早くも当確ランプが点灯。
2回戦。吉田が連勝するのだが、桧山さん、佐々木さんも浮きにまわる。
やや離された黒木さんは最終戦での爆発にかける。
3回戦。2番手争いは佐々木さんが9.9Pリード。東場で佐々木さんが桧山さんから2回の5,200直撃で優位に立つ。しかし、南場で桧山さんが佐々木さんから9,600直撃。さらに2,600オールツモで佐々木さんを逆転する。
そしてオーラス、黒木さんは連荘を目指し、佐々木さんは満貫ツモまたは3,200の直撃条件となるが、最後は吉田がアガリきり桧山さんが2番手で勝ち上がり。
決勝進出 吉田プロ、桧山さん
こうして決勝進出者が決まったのだが、前回に続きプロ1人アマチュア3人の戦いとなった。第1期チャンピオンの中津さん、第2期チャンピオンの桧山さん、そして予選リーグ1位の町野さん、そして北関東支部長・吉田幸雄プロ。支部長、そしてプロの意地を見せられるのか。それとも2人のチャンピオンが2度目の王座に就くのか、はたまた新チャンピオンの誕生か。
20分ほどの休憩をはさみ大激戦の決勝が始まった。
決勝戦
1回戦 (中津、桧山、吉田、町野)
東1局、親の中津さんの配牌がいい。
ドラ
まずはを切り出す。すぐにをポンしてソーズの面子を崩していく。かなり積極的な仕掛けだ。今日の気合いが麻雀にも出ているようだ。しかしこの仕掛けには3人が対応してテンパイ止まり。
1本場、この決勝戦の初アガリは桧山さん。
親の中津さんとのリーチ合戦を制し3,000・6,000。
中津
リーチ
桧山
リーチツモ ドラ
暗刻の高目をツモられて、親かぶりの中津さんの心中やいかに。
東2局、気分よく親番を迎えた桧山さん。それに待ったをかけるは町野さん。
ドラがトイツの好配牌から暗刻にして気分よくリーチ
リーチ
親の桧山さんも
この配牌を
この形に仕上げてリーチ。
この勝負は桧山さんが最後のツモでを掴んで町野さんに軍配。
この後、横移動が続き1人置き去りにされる吉田プロ。辛抱、忍耐の麻雀で失点は最小限に抑えてはいるものの、オーラスを迎えてこの点棒状況。
中津 31,600
桧山 31,800
吉田 21,300
町野 35,300
1人沈みは免れたい吉田。逆転トップで勢いをつけたい中津さん、桧山さん。親番の町野さんはさらにポイントを伸ばしたいところ。
この大事なオーラスで先手を取ったのは現状1人沈みの吉田。ドラドラのカンチャンで即リーチである。中津さんから出アガリ以外は後からリーチ棒が出ない限りツモっても浮かないし4着のままのリーチなのだが、4回戦あるこの決勝戦で大きく離されなければいつでもチャンスがあるとふんでのリーチであろう。
結果は桧山さんから5,200。
最高の結果には至らなかったが、ここはこれで良しといったところか。終了後の吉田の顔からもそれが伺える。
一回戦終了時
町野+13.3P 中津+5.6P 桧山▲7.4P 吉田▲11.5P
2回戦 (中津、吉田、町野、桧山)
流局を挟んで親の中津さんが1,500は1,800、3,900は4,100オールと点棒を積み上げる。
3本場では町野さんがドラドラのリーチ。これを受けて親の中津さんは一度トイツ落としで回るのだが役なしのフリテンテンパイでワンチャンスの無スジを押す。しかしこれが町野さんの5,200に御用。
本人も対局後にこの放銃を悔やんでいた。一度引いた局面で中途半端に押しての放銃である。麻雀の神様は中途半端は許してくれないのだ。
東2局では親の吉田の手順が光る。
こんな配牌だったのだが
ドラ
と引き入れカンでテンパイ一番乗り。
もちろんこの時点で役なしである。ここにを引いてタンヤオになる。ここで桧山さんのリーチを受けるのだが、さらにを引きと入れ換え、を引いて切りリーチ。そして当然のように一発ツモ。吉田の手元には。あれ?引くところでしょ。
リーチツモ
この時応援に駆けつけてくれた北関東プロアマリーグを制した西尾さんや、桝井さん、久保プロを含めギャラリーも多くいたのだが、吉田の席の後ろは観戦するには狭くなっており後ろにはだれもいなかった。この手順を知っているのはレポーターである自分と吉田本人だけである。開かれた手牌を見ただけでも「?」という感じだが、この手順を知っている吉田と自分はなおさら感じてしまう。実際に吉田も「なんであれがなんだべ」と首をかしげていた。
この後吉田は、2,900は3,200をアガリ、トップ目に立つのだかいまいち波に乗りきれない。南場に入りノーミスでテンパイした桧山さんの七対子ドラドラに自然な形で放銃となってしまう。南2局の親もあっさり700,1300で蹴られてしまい、南3局では桧山さんに3,900。
オーラスを迎えた時には32,500点と浮いてはいるものの3着目。そのオーラスは中津さんが1,300,2,600。吉田にとってはなんとも煮え切らない半荘となってしまった。
2回戦
中津+19.8P 桧山+5.1P 吉田+1.2P 町野▲26.1P
2回戦終了時
中津+25.4P 桧山▲2.3P 吉田▲10.3P 町野▲12.8P
3回戦 (中津、町野、吉田、桧山)
開局を制したのは町野さん。先ほどの1人沈みを取り返すべく、2,000・3,900。
親番では吉田の三暗刻ドラ3のテンパイを掻い潜っての2,000。本人は知るよしもないが観戦しているものから見れば点棒以上の価値があるアガリである。
こうなると自然と風も吹いてくる。
オーラスまで大きな失点もなく現状トップ目に立つ中津さんを沈めたまま終わらすことができれば優勝もグッと近づいてくる。
そのオーラスの点棒状況は
中津 27,100
町野 37,800
吉田 30,400
桧山 24,700
吉田はなんとか中津さんを沈めたまま加点しておきたい。町野さんは吉田も沈めて1人浮きが理想。中津さんは浮きに回れば最終戦は大きなアドバンテージを得ることができる。桧山さんは何とか親で連荘して最終戦につなげたい。
その思い思いのオーラスは中津さんが制する。
まずは桧山さんが先制リーチ。
リーチ ドラ
これを受けた中津さんに選択肢。
ダブ南か不確定のタンヤオか?
リーチ棒が出たので2,000点でも浮きになる。
中津さんの選択は打。これが吉。すぐにをポンしてツモの500・1,000。
違う選択をしたらどうなっていたのだろうか?まだ山に眠るを堀当てもっと高い打点になり、トップになっていたかもしれない。逆に桧山さんにアガられて4着に落ちていたかもしれない。ただ中津さんの選択は最速のアガリをものにし吉田を3着に沈めて自分は浮きの2着になるという結果を得たのだ。そして大きな大きなアドバンテージを持って最終戦を迎えることとなる。
しかしこのあとまさかの大波乱が待っていようとは誰が想像できたであろうか?
3回戦
町野+15.3P 中津+4.1P 吉田▲4.1P 桧山▲15.3P
3回戦終了時
中津+29.5P 町野+2.5P 吉田▲14.4P 桧山▲17.6P
最終戦 (町野、吉田、桧山、中津)
泣いても笑ってもこれが最終戦。追う3者にとってはわずか1半荘。逃げる者にとっては長い長い1半荘。
戦っている選手たちはどう感じているだろうか?
まずは逃げる者が先手をとる。中津さんが町野さんから2,000。
追う者は少しずつ追い詰められていく。しかし逃げる中津さんに試練が訪れる。
東2局1本場では町野さんが2,100・4,100。
東3局では親の桧山さんが4,000オール、2,100オール。
この時点ではまだリードは保っている。
そして2本場。
失った点棒を取り返すべく中津さんのリーチ。
リーチ ドラ
ここに吉田、このテンパイで追い付く
この状況で吉田がオリることはないだろう。あとはどちらで待つか?リーチを打つのか?
どの選択も中津さんのリーチに通る保証はない。
吉田はノータイムで牌を横にしてを河に置く。すると中津さんがを掴む。
この時点で吉田も浮きに回り、1人沈みとなった中津さんは町野さん、桧山さんに捲られてしまう。しかしまだ接戦。先頭に立った桧山さんと最後方の吉田のポイント差は約15P。
東4局では、中津さんが
リーチ ドラ
これも不発に終わり、続く1本場は桧山さんが粘って500・1,000をアガリきる。
こんな状況でも冷静に粘れるのが桧山さんの持ち味だ。
そして誰にでもチャンスのある状態で南場に突入する。
南1局では桧山さんが8,000点のアガリ。連覇に近づく。
南2局では親の吉田が仕掛けて役牌ホンイツの7,700を町野さんから。
これで吉田も桧山さんに迫るが1本場は町野さんが1,000・2,000。
そしてオーラスを迎えての条件は、町野さんは2,000・3,900以上のツモアガリ、出アガリなら12,000、直撃なら5,200以上。吉田は12,000以上の直撃、3倍満以上のアガリ。中津さんは桧山さんを逆転するまで親を連荘すればいい。
しかし、桧山さんの粘りの麻雀の前にこの条件が満たされることはなく桧山さんの連覇が決まった。
優勝 桧山拓
「今回は吉田プロのおかげです。」
本人は謙遜しているが、粘ってチャンスをモノにした堂々の連覇である。来期ぜひ3連覇を狙ってほしい。
2位 吉田幸雄
「2着ばっかりなので次は優勝します」
前回に続き2位ではあったが、見せ場は十分最後まで期待させるプロらしい麻雀を見せてくれた。
3位 町野高司
「全力でいきましたがダメでした」
初の決勝の舞台で、最後まで諦めず戦う姿勢を見せてくれた。またこの決勝に帰って来てほしい。
4位 中津真吾
「今回は勉強になりました」
最後は4位であったが一番頂に近い所を走っていたのも彼である。
最終戦で崩れてしまったが、この経験を次週の試験でも活かしてほしい。
桧山さんおめでとうございます。次は自分もこの決勝に残りたいと強く思わせていただきました。
また素晴らしい対局を見せてくれた選手の皆さんありがとうございました。
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