第13期九州皇帝位決勝戦初日レポート
2013年03月25日
今回のレポートを担当させて頂きます、九州本部26期生、福田正道です。
どうぞ、最後までお付き合い願います。まずは決勝メンバーの御紹介。
・リーグ戦1位通過 西原亨
Bリーグから昇級し、今期が初のAリーグで勢いそのままに40半荘の闘いもぶっちぎりで決勝進出!
1歳になった娘に優勝の二文字をプレゼント出来るか?
・リーグ戦2位通過 藤原英司
Aリーグ在籍4期目にして念願の決勝戦へと駒を進めた。
真っ直ぐな攻め、そこからくる爆発力には定評があり、大舞台でどこまで力を発揮出来るかに注目される。
悲願の初優勝なるか?
・リーグ戦3位通過 東谷達矢
九州の若きエースの1人。既に九州プロアマ混合(ばってん)リーグでの優勝経験あり。
今年度新人王3位。去年の皇帝位決勝惨敗の悔しさを忘れず、精神と技術を磨き再び決勝の舞台に返ってきた。今年こそは!の想いで優勝を狙う。
・リーグ戦4位通過 浜上文吾
現皇帝位であり、九州プロ1期生。言わずもがな九州のエース。
今年度の十段戦の決勝は記憶に新しく、受けの麻雀を基本とし、何度も訓練し身に付けた構想力で初手からアガリまでを見る打ち方は、麻雀示現流(じげんりゅう)と恐れられる。
勝ちよりも、勝ち方に拘って最大の敵、自分自身に打ち勝ち、前人未到の皇帝位2連覇の金字塔を打ちたてられるか?
~プロローグ~
今回のレポートは私自らが志願しました。
書くにあたり注意した点は、打ち手の心情を計りながら書くこと。また間違っていてもいいから私がプロ活動を通じて感じたり、身に付けた考えもふまえて局面を紹介していくことです。そうすることで麻雀という競技が心理面に置いて多分に勝敗を左右する要因になりえることや読んでくださる皆様が競技麻雀に少しでも興味を持って頂けたらという想いで書きました。しかし何分文章を書くのが下手な私ですので、感じた事や言いたい事が上手く伝わらないこともあるかと思いますが、その点御了承頂けたらと思います。
■1回戦(起家から、浜上・西原・藤原・東谷)
1回戦の闘い方はその日1日のテーマや方向性を模索する闘い方でもあると位置付けられる。誰がどのような手組みをし、勝負にどう入っていくかに着目したい。そして対局者には、これから長い長い試練の道が各々に科せられる。
東1局、9巡目。無風状態で東谷(北家)が先制リーチを打つ。
捨て牌 ←リーチ
リーチ ドラ
最初のリーチ者が東谷なら、最初の放銃者は藤原(西家)であった。
藤原は半ばオリ打ち気味な放銃であった。これは4者の河にが全て見えていたことに起因するかもしれないが、東谷の河を見れば変則手も匂わせる河である。
放銃したことは致し方ないが、(これで打てば高いな。)という覚悟があっただろうか?
東2局、11巡目。浜上(北家)が、
ここにツモで1シャンテンになったところで生牌のダブ東をリリースし、これをドラ色ホンイツ気配の藤原(南家)がポン。すると浜上の次のツモがでこれを以下の牌姿でノータイムリーチ。
リーチ
藤原は、前巡にをトイツ落とししており、ドラ色のホンイツ模様でドラが1枚でもあれば打点は7,700からである。ましてや、自身の手はペンのドラ待ち。いったいどれほどの打ち手がノータイムでリーチと発声出来るだろうか?と私は思った。
実際には、藤原にソーズのターツがあり、ホンイツではなく結果として藤原に2,000を捌かれるものの、ここに浜上が今回の決勝をどう闘うかの姿勢が見える。
東3局、またしても浜上(西家)が終局間際の残りツモ1回で、
ドラ
これをリーチする。ツモればハイテイがつき、高目のツモで3,000・6,000だがこれもほとんどの打ち手はリーチしないのではないだろうか?結果は、順当ともいえる流局。
しかし、テンパイ形を見た他の打ち手はどう感じただろうか?私なら一発裏ドラがないこのルールで、リーチ棒を投げ出して、まさかの3,000・6,000を狙いにくる姿勢に恐さを感じる。
東4局1本場、東谷が2枚目のをポンしてほどなくテンパイ。
ポン ドラ
これに藤原(北家)が以下の牌姿から打で7,700に飛び込んでしまう。
東谷は、ポンの後に手出しでを切っている。
ドラのがポツリと浮いているこの手牌では、厳しいと私なら判断する。ここはマンズを払って再構築の道もあったはずだが、藤原はどういう心境でこのを打ち出したのだろう?ひょっとしたら自分の手牌に素直に構え、その上での放銃なら全くもって普通の事象だと捉えていて、失点ほどのダメージなど無いのかもしれない。と、能面のように変わらない藤原の表情を見て私は思った。
同3本場、今度は浜上(南家)が東谷に以下のヤミテンに放銃。
ロン ドラ
この時点で、東谷は50,000を超えて南入。去年の決勝では、まだ緊張して顔が強張っていた印象があるが、今年は1度経験した分、どうやら初戦から落ち着いているように見えた。
南場に入り、最初にアガリを重ねた東谷が、1人気持ちよく打っているのに対し他3人は苦しい展開が続く。そして1本場として迎えた南3局、この時点の各者の持ち点は、
東家:藤原 21,000
南家:東谷 60,500
西家:浜上 9,200
北家:西原 29,300
こうなっている。既に親番がない西原は、今後の展開も視野に入れてここはなんとしても浮きの2着で終わりたいと思っているだろう。無論、他の2人も西原が浮く分には良しと構えているはずである。しかし南3局1本場は、その西原の1人ノーテンで流局。
南3局、2本場。6巡目に西原(北家、持ち点26,300)が以下の牌姿でテンパイを入れる。
ドラ
そして、西原の選択はヤミ。確かにドラの振り替わりもあり、役牌がある分、ヤミでもロンアガリ可能なことを考えれば正解なのかもしれない。だが、私なら迷わずリーチをする。親番のない残り2局。まだ始まったばかりの1回戦とはいえ、東谷に60,000超えの1人浮きトップを取らすこと、それ即ち東谷を楽にさせると考えるからだ。
結果は、東谷からをロンアガリし1,900を加点するが、やはりラス前フォーメーションとしては弱く感じたが、皆さんの選択はどうだろうか?
そして南4局。西原(西家)の手に着目していると思わぬところから声があがる。
「ツモ。2,000・4,000。」声の主はなんと藤原(北家)。
ツモ ドラ
私はてっきり、浜上と藤原はこの半荘は沈みで終わるだろうと予想していた。藤原に関しては、2度ほど手牌が整っていないところからの放銃があったので、浮上はないとふんでいたのだが。ところが、である。
開かれた手牌は立派な満貫で、藤原の持ち点は22,000だったのでこれが2,000・3,900でも浮きは確保出来ていなかった(無論その場合はリーチを打つだろうが)。
このアガリに私は、東3局2本場の親番にアガれなかった藤原の手のその手順を思い出した。それは、
ツモ ドラ
この1シャンテンで、藤原は打と構えた。次巡、ツモで、
ツモ 打
打のリーチといったのだ。
結果は、手牌が開かれることはなかったが、藤原自身の意志が確かに感じられるものだった。そして改めて、2度の手バラからの放銃も藤原にとっては、アガリの可能性を放棄することの方が恐ろしいことだったのかもしれないと思わされた。
なにはともあれ、これをもって決勝の幕が開けたのである。
1回戦成績
東谷+33.6P 藤原+4.0P 西原▲7.8P 浜上▲29.8P
■2回戦(起家から、浜上・藤原・西原・東谷)
東1局は浜上(東家)が場に間に合わせるように2,000オールをアガる。
同1本場、浜上が7巡目にダブ東を西原(西家)からポンする。
ポンさせた西原は、
ドラ
こうで、リーチに行く。ポンさせた後に、と立て続けに引き入れた高目3,000・6,000の本手であるから感触は悪くない。しかしこれは浜上が西原からをロンアガリ。
ポン ロン
初戦ラススタートの浜上にとっては、いい再スタートになったという感情か。
東2局、先程競り負けた西原が4巡目にを一鳴きする。
浜上(北家)は「狼煙はもうあがってんだぜ」と言わんばかりに、ドラのをリリースして、これを西原(南家)がポンして1シャンテン。
ポン ポン ドラ
これに対し浜上は、ドラを鳴かせた以上、後退なしの構えでリーチで圧をかけにいくが、
リーチ
ドラをリリースして、鳴かせた以上、最後までという打ち手もいれば、ドラを鳴かれてもロンアガリが効くならヤミが得策だろうと思う方もいるとおもう。リーチの賛否は打ち手にとって、最も悩ましい議題のひとつだと私は思っている。どちらが正解というのはないが、いつも浜上の後ろで彼の麻雀を見てきた私がひとつだけ言えることは、昔の浜上ならこのようなリスキーな選択は出来なかっただろうということ。今は自分を成長させる為なら、自ら進んで棘の道を踏み込むということではないだろうか?と、私はみる。そして軍配はまたしても浜上に上がる。
リーチ ツモ
東3局、ここまで2度とも競り負けた西原(東家)。配牌では上手に寄せれば三色が見える手を観戦者の期待通り西原は8巡目、丁寧に以下に仕上げる。
ドラ
これを慎重にヤミにした西原。私は後ろで観戦しながら、どうしてもアガリたい西原の心境と、もし誰かがこの手に放銃したとしたらそのダメージの大きさからメンタルのブレが生じるかもしれない、という2つの事を考えていた。
結果は、2度競り負けした相手、浜上からのリーチ宣言牌を捕える。文字通り3度目の正直で待望の本手を決めた西原。この半荘が西原を勢いづけ、1人浮きのトップをもぎ取ることとなる。
反対に、やり返される形となった浜上。放銃する前の持ち点は44,500で、1回戦のラスを帳消しにしたかっただろう。しかし無情にも浜上はここから3度の流局と1度の放銃でこの半荘もラスになってしまう。きっと浜上は、今日は相当な我慢が必要だと、思ったに違いない。
2回戦成績
西原+25.8P 東谷▲1.4P 藤原▲9.1P 浜上▲15.3P
2回戦終了時
東谷+32.2P 西原18.0P 藤原▲5.1P 浜上▲45.1P
■3回戦(起家から、西原・浜上・藤原・東谷)
東3局3本場、東谷の手筋。
東谷(南家)が以下の配牌から14巡目にツモアガる。
ドラ
ポン ツモ
初手。ポイントは2巡目の打で、ドラがなのでもう少し抱える人もいるだろう。
東谷はドラを持ってくれば七対子に移行も出来るし、メンホンの場合もギリギリまで引っ張れる手組みであるとし、早くもをリリースし、受けと攻め攻守兼用の牌を1牌でも多く手牌に抱える。このアガリには東谷が自分の麻雀をこの1年考えてきた証が凝縮されていた。
南1局、今度は浜上(南家)が示現流を炸裂させる。
リーチ ツモ ドラ
場に2枚切れている高目のをツモりあげての4,000・8,000である。実はこのアガリ、注目すべきは打点ではなく別のところにある。浜上の手牌は5巡目に以下で、ツモ西ときたところである。
ツモ
三色が見えるチャンス手。ここで浜上は、親の現物でもある場に1枚切れのを抱え、打としカンチャンに見切りをつける。ちなみに、はまだ1枚も姿を見せていない。
をツモってきたら打とする手順もある為、この選択が出来る打ち手は少ないのではないか?しかし、浜上の構想では4メンツ1雀頭は決まっていて、この何気ないツモ西の局面にこそ分岐点があり相手との距離感が抱えさせたであった。この選択が功を奏し、もう1枚ツモと持ってきたことでチャンタがついた。今の九州本部にこのアガリを成就させられる者は、浜上以外にほとんどいないと私は思う。浜上は自身が持つスキルを惜しむことなく後輩に教える義務があり、そして、後輩は浜上から盗めるだけ盗むべきである。
話がずれてしまって申し訳ない。話題を卓上へと戻そう。
示現流を炸裂させ、高打点を成就させた浜上であったが、この半荘でトップをもぎ取ったのは藤原。
そのアガリが以下である。
ツモ ドラ
このアガリを詳しく解説するために話を戻そう。
局面は南3局1本場、25,300持ちの親番である。6巡目までの各者の捨て牌が以下。
南家:東谷 ※仕掛けが入り1巡飛ばされている
西家:西原
北家:浜上
藤原は7巡目に以下の牌姿になる。
ツモ 打
南場の親番でドラが2枚なら形はどうあれ、どうしてもアガリたいのが打ち手の心情だろう。しかし藤原はこの各者の捨て牌相から、ツモってきたNを絞る選択をする。
「どうしてもアガリたい」のだからツモ切ることは簡単であり、手牌MAXで構えたい気持ちはやまやまなのだが、それをグッと堪えた藤原。打()としなかったのは、マンズにアガリがあると読んだのだろう。実のところこの藤原の距離感はピシャリで、この局は藤原以外が全員2巡目の時点で既に1シャンテンとなっていた。
この我慢が功を奏し、2巡後にを重ね東谷のリーチと西原の仕掛けを掻い潜り、アガリを手繰り寄せた。
3回戦成績
藤原+16.4P 浜上+9.7P 東谷+2.1P 西原▲28.2P
3回戦終了時
東谷+34.3P 藤原+11.3P 西原▲10.2P 浜上▲35.4P
■4回戦 (西原、東谷、藤原、浜上)
東場では藤原がひとり抜け出し、オーラス5本場を迎えた時点で各者の点棒は以下。
東家:浜上 16,300
南家:西原 29,300
西家:東谷 32,100
北家:藤原 41,300
原点確保して終わりたい西原だったが、最後のツモで藤原に放銃してしまう。
ポン ポン ロン ドラ
跳満である。放銃した西原の手牌は以下、
暗カン
こちらはなんと四暗刻単騎である。道中、三暗刻のみのテンパイも組めたのだが、その時点でテンパイ打牌になるを、西原は既に危険だと読んでいたのだろう。そのため三暗刻のみを拒否し、を使い切る形で闘おうとした結果が、上記の四暗刻単騎まで成長した。
この局面、藤原は6巡目にポンから仕掛けている。そして次巡すぐさまポン。
藤原捨て牌
5巡目の打と、をポンした時の打は両方手出しであるから、2度受け以外は、これがただの局を終了させたい一心で仕掛けた打点の低い仕掛けではないことは明白である。その2度受けも、西原自身が直後に打とし、否定されている。
元よりテンパイさえしてしまえば、アガれる公算が立つ手組みならから仕掛けずともよいので、を鳴かれた時点でこの仕掛けに対しては、やはり本手の可能性高く、更にリャンメンターツ拒否から縦の仕掛けと読むのが妥当だろう。
西原はアガリを追うなら、場に安い色で勝負したかっただろう。親の浜上がリーチをしていることも加味し、残りツモがないことを考えると、流局するという選択も視野にあったはずだが、ここはこのと共に最後まで行くと決めて果敢に踏み込んだ上での放銃であった。
4回戦成績
藤原+34.8P 東谷+6.1P 西原▲18.2P 浜上▲22.7P
4回戦終了時
藤原+46.1P 東谷+40.4P 西原▲28.4P 浜上▲58.1P
■5回戦(起家から、西原・藤原・東谷・浜上)
東2局1本場、藤原が以下の牌姿と捨て牌で12巡目にリーチにいく。
リーチ ドラ
捨て牌 ←リーチ
この手牌に放銃したのは西原(北家)。リーチ一発目に持ってきたのはで、
ツモ
打で放銃する。見事に現物が1枚もなかったので、一見仕方ないようにも思える。
しかし、藤原の捨て牌にあるの内、2枚は手出しであることが西原に見えていたなら、かなり特殊なケースを除き、「このは通る」と読み切り1巡は回避出来ただろう。
読者の方に私がわかって頂きたいのは、いつもの彼ならその手出しに気付いているはずが、気付けずにで放銃してしまったのには、前回(4回戦)のオーラスにで放銃したことが彼にとって、少なからず精神的な面で影響を及ぼしているのではないか?ということである。そして、それがこの決勝という舞台と相まったなら、誰でもそうなる可能性があるということが伝えたいことの1つだ。
前回のオーラスに起きた事象と、今回の12,000放銃は全く別の事象と思ってはならないと私は考えている。それほどまでに、麻雀は精神面が大きく結果を左右させる競技なのだ。
この辺りから、私や観戦者にはより明確に歯車が咬み合うものと、狂ってきているものが傍からみて感じられただろう。
同2本場、前局12,000をアガった藤原が5巡目に仕掛けを入れる。
チー ドラ
リャンメンチーから入り、打ち出されたのがドラのである。これを西原がポンをし、そこに東谷(南家)が、8巡目、
ツモ
ここで打とし、続く9巡目も、
ツモ
打と被せる。
藤原は親で2,000、12,300とアガリ46,300持っている。その藤原がリャンメンチーから入り、ドラをリリースしてきた。藤原はこの局面で、1,500や2,900のテンパイを5巡目リャンメンチーから入れる打ち手ではない。それはリーグ戦を闘ってきたからよくわかる。私が対局者なら、チーテンの役牌で7,700、ダブ東で満貫以上と読む。実際には、このもダブ東も声は掛からなかった。ではかからなかった時はどうか?
それは役満が隠れているか、チンイツである可能性が高くなる。(この時点ではのトイツがあるが、直後にをツモりテンパイ取らずの打として実際にチンイツに向かっている。)つまりこのとダブTは通ろうが通るまいが、切らない方がよいのでは?東谷のポイントは+40.4Pあり、無理をせず受けにまわって欲しかったと言うのが私の本音であり、それこそが東谷の試練だと思う。
結果は、藤原の仕掛けに丁寧に対応した浜上(西家)が七対子で捌く。
この局を取り上げたのは、東谷には打たずして受けに回る繊細さがあるはずだが、打たせてしまったのは、あくまで主観だが、ある種のプレッシャー、もしくは焦りを感じていたのかもしれないな。という風に私には感じられた。
結果としては影響がなかったが、今後どこかしらで影響してくるのでは?と心配させる場面でもあった。
5回戦成績
藤原+30.0P 東谷+12.2P 浜上▲14.9P 西原▲27.3P
5回戦終了時
藤原+76.1P 東谷52.6P 西原▲55.7P 浜上▲73.0
■6回戦(起家から、東谷・西原・藤原・浜上)
5回戦を終え、初日も残すところあと1回戦となった。
浜上と西原はこれ以上、上位2人にポイントを許すと、2日目最終日に更なる厳しい闘いを挑むこととなる。対局者1人1人が己の中に抱える重圧と葛藤の狭間で、いい形で締め括り、2日目へと繋げたい気持ちは手に取るように分かった。
オーラスの点棒状況は以下の通り。
東家:浜上 36,900
南家:東谷 32,000
西家:西原 26,300
北家:藤原 24,800
オーラスを迎えて、トータルトップの藤原が微差ながらラスにいる。
各自の思惑は何だろう?東谷は親の浜上に対して無理はしないこと。西原は原点復帰だろうか。藤原はトータルポイントで少し余裕がある分、ラスを受け入れた打ち方をしてくるかもしれない。
そんな4者の思考を考えていると、親の浜上から13巡目にリーチが入る。
リーチ ドラ
競技麻雀のルールは、オーラスの親のアガリ止めは無いルールなので、出来るだけ連荘して、少しでも藤原のポイントを減らした上で明日を迎えたい気持ちが、親の浜上にはあるだろう。
しかしこの時、わずか1巡前にテンパイしていた者がいる。西原だ。
西原の持ち点は26,300であるから、ロンアガリでも当然原点には足りない。浜上がリーチ料を出す前は、例えリーチしたところでロンアガリなら同じく足らない。仮に1人テンパイで終局しテンパイ料3,000を得たところでも結果は変わらない。となると、ここは親のリーチや仕掛けに対応するべくヤミにしていたのは良い判断だと私は見ていた。
焦点は、親のリーチが入った今、どこまで押すのか?というところにある。幸いにも親の現物にがある・・・・・・・と思っていた西原の次のツモがなんとである。
ツモ 打
ツモ・イーペーコーの500・1,000であるが、浜上のリーチ料と足しても原点には足らないことが、西原をある1つの決断をさせる。
ツモアガリを拒否したのだ。この打は浜上の宣言牌があって選ばれただろう。しかしこの打が浜上のシャンポンリーチにブスリと刺さる。
打における賛否は卓で勝負しているもので無ければ問えないと、私は思っている。しかしそれでも、言うなれば西原の優先順位の中に【藤原がラスであること】というのが含まれてなかったのだろうか?
麻雀は、巡変わるだけで劇的な変化をする競技である。それは巡目が進めば進むほど比例して変化する。私もよく、ツモってきた牌によって当初イメージしてあった優先順位を変えてしまい失着打をすることがあるが、ポイントは西原の中で【自分が原点復帰すること】と【藤原がラスであること】の優劣をどう捉えていたか?による。
これを放銃する形となってしまった西原は、自身が選択した決断に苦い表情を思わず浮かべてしまった。
オーラス1本場、勝負の世界に「失敗はしても後悔はしない。」という言葉がある。勝負の最中に後悔なんかしても、何1つ良いことは無いのは頭ではわかっていても、心はテレビのチャンネルを変えるように簡単には切り替わってくれない。
それでも西原は、必死でもがき苦しみながらも7巡目にリーチにこぎつける。
リーチ ドラ
前局の選択を自問自答しながらも、誰もが悩むターツ選択を正解させたのは流石の一言。
まだまだ負けるわけにはいかないのだ。これに東谷(南家)が以下の牌姿で7,700(8,000)を放銃する。
ツモ
打で放銃となる。よりもが先となったのは、本人の中でが通るであろう算段があったのかもしれない。
ここまでも東谷は、1回戦目でトップスタートを切りポイントを持ってからも東谷は一貫してアグレッシブに攻めてきた。それは多少放銃しても闘える心算があったからに他ならない。
自身が放銃して原点割れをしたとしても、3着ならまだ闘えるという心算がそこにはあるが、では反対にもしこの打牌が放銃になり自分がラスに転落してしまった場合、トータルトップ藤原とのポイント差は離れてしまうという危険察知はどうだったのだろう?
【自身が放銃して半荘が終了するケース】の中に、3着ならまだ闘えるという心算があるからこそ、そこにスポットライトが強くあたり、【ラスになれば、藤原とのポイント差は離れてしまう】というケースが闇に隠れてしまったのかもしれない。どちらが自分や周りにとって避けたい結果だったか?は今一度考える必要があっただろう。
決勝という特別な舞台が醸し出す見えない重圧。
この半荘はその重圧を一人ひとりが必死に耐え、自分自身と闘う姿がヒシヒシと感じられた、そんな半荘だった。
6回戦成績
浜上+17.3P 西原+5.9P 藤原▲9.2P 東谷▲14.0P
6回戦終了時(初日最終成績)
藤原+66.9P 東谷+38.6P 西原▲49.8 浜上▲55.7
カテゴリ:九州プロリーグ レポート