特別昇級リーグ 決勝観戦記

第18期特別昇級リーグ 決勝レポート 清原継光

梅雨も明け、灼熱の炎天下が続いた中での一日。
四谷の連盟道場の一室、冷房の効いた部屋で涼をとる麻雀プロたちがいた。
彼らは、この日までに特別昇級リーグを戦い、その最後の試合を残すだけであった。
1位と2位の差は約30ポイント差、3位との差は約60ポイント差、直接対決なら十分に逆転可能な数字だ。
対局前、これからはじまる熱い戦いに備えるかのように、個々人はそれぞれに静かに集中を高めている。
開始時間の5分前に東谷プロが入室、主役の4人が揃った。

決勝を戦うのは以下の4名(最終節開始時スコア)

ケネス 徳田 (+171.0P)  D1リーグ所属
東谷 達矢  (+138.3P)  C3リーグ所属
中村 慎吾  (+109.3P)  C3リーグ所属
藤井 すみれ (+5.8P)   C2リーグ所属

決勝戦は一発裏ドラなしの連盟Aルールによって行われる全4回戦の半荘勝負。
ポイント持ち越しのトータルスコアで勝敗が決する。

「今日は道場は貸切りだから」という藤原道場長の言葉が響き、卓の周りに4者が集まる。
張り詰めたような静かな空気の中、決勝戦は開始された。

——–1回戦 (起家から、中村・ケネス・東谷・藤井)——–

東1局、まずは東家,中村が主導権をとりにいく。
9巡目に以下の形で先制リーチ。

六万六万七万八万九万四索五索六索一筒三筒三筒四筒五筒  ドラ一筒

これを受けて西家,東谷はすでにこの形

二万三万一索二索二索六索七索八索一筒二筒三筒発発  ドラ一筒

10巡目に無筋のドラ一筒をツモ切りし、卓内に緊張が走る。
次巡、東谷がひいたのは四万一索を切ってのヤミテンを選択。中村の捨て牌にある発でのアガリに期待する。
12巡目に無筋の七万をツモ切るも、14巡目に三万をひいて撤退の発落とし。
結果は中村の1人テンパイとなったが、開局から、ギリギリまで踏み込んでアガリをものにする東谷らしい打ち筋を見せてくれる。

続く1本場は、ケネスが七対子で1,600は1,900を東谷からアガリ、その後も、小場ながら、東場で全員にアガリが出るところとなった。

南1局1本場、中村が積んだ親番で、11巡目に南家、ケネスが力強くツモる。

二万三万四万三索四索六索六索三筒四筒四筒五筒五筒六筒  ツモ五索  ドラ中

700・1,300は800・1,400。
道中、中村、東谷に大きく叩かせないことを意識して打っていたケネスの門前ツモアガリ。
出来の良い中村に一時並びかけることとなった。しかし、この半荘を制したのは中村。

南4局

六万七万五索五索六索六索七索七索一筒二筒三筒五筒五筒  ロン五万  ドラ南

6巡目で、すでにテンパイを入れていた東谷より五万を打ち取り、最大打点が2,600点の超小場を制する。
東谷はラスになり、優勝への道が少し遠ざかる結果となった。

1回戦成績
中村+16.9P ケネス+9.2P 藤井▲8.9P 東谷▲17.2P

1回戦終了時
ケネス+180.2P 中村+126.2P 東谷+121.1P 藤井▲3.1P

 

——–2回戦(起家から、東谷・藤井・ケネス・中村)——–

2回戦は1回戦とはうって変わり、超打撃戦となった。

東1局、まずは東家,東谷が6巡目に以下の形

三万四万四万一筒一筒一筒二筒二筒二筒五筒六筒六筒七筒八筒  ドラ四筒

ここから三万を切ってのヤミテンを選択。

この三万に西家、ケネスが反応する。

二万三万三万五万六万七万三索四索七索八索八索四筒四筒  ドラ四筒

ここから三万をポンして打二万
ドラが固まっていることを感じさせる仕掛けだ。

東谷、この仕掛けで七筒をツモる。
ツモアガリの牌であり、ケネスにドラの四筒が固まった良形が予想されるが、東谷は勝負に出る選択、四万切りと出た。
この選択が吉と出て、次巡に五筒を持ってくる。
8巡目でこのテンパイ

一筒一筒一筒二筒二筒二筒五筒五筒六筒六筒七筒七筒八筒  ドラ四筒

同巡にケネスが八筒をツモ切る。ロンという声と共に開けられた手を見てケネスの表情がこわばる。
1回戦をうまく立ち回ってきたケネスにとっては、とても痛い18,000の放銃となった。

これを機に、同卓の3人がケネスに襲いかかる。

東1局1本場、まずは藤井。5巡目に

三万三万四万三索四索六索七索八索二筒三筒四筒中中中  ドラ二万

ここからテンパイとらずの三万打ち。かわし手ではなくあくまで本手でぶつけるつもりだ。
すぐに三索を引いて、四索切りの6巡目リーチ。
全員がオリる中、11巡目に中を暗カン、12巡目に五万をツモって、2,000・3,900は2,100・4,000のツモアガリ。
道中に二索五索はひいておらず、唯一のアガリ形であり、かつ、打点も十分。
トータル点差こそ離れているものの、あくまでも上を狙う藤井の強い意志が感じられるアガリであった。

東2局も東家、藤井は攻める。
苦しい配牌を育てて10巡目にドラドラの手から仕掛ける。

五万六万七万八万八万五索六索三筒五筒五筒八筒九筒九筒  ドラ八万

七索をチーして打八筒

この時、すでに南家、ケネスは

二筒三筒四筒七筒七筒八筒八筒九筒九筒白白中中

テンパイ。この仕掛けで一筒をツモって、ケネス小考、そして一筒のツモ切り。ツモ倍満の手を壊してあくまでも藤井への受けに徹する。
藤井の手の中にカン四筒の受け入れは残っている・・・。
そして、13巡目にケネスがツモってきた牌は四筒。すでに自分で四筒を1枚切っているため、自身から見て3枚目の四筒。小考後、・・二筒切り。

三筒四筒四筒七筒七筒八筒八筒九筒九筒白白中中

三筒単騎待ちのホンイツ七対子テンパイへと変化させる。
次巡に五筒を暗刻にした藤井から三筒が放たれる。ケネス、藤井より8,000点の出アガリ。
とても素晴らしいアガリでケネスが一矢報いる。

東3局は中村。8巡目にリーチ、11巡目にツモ。

四万五万六万一索二索四索五索六索四筒五筒六筒白白  ツモ三索  ドラ二筒

場況からも山に残っていそうに見えるソウズの下を読み通りにツモる。2,000・3,900のツモアガリ。
中村は山読みの精度がとても高く、ツモアガリの多い打ち手だなと度々感じさせられた。
会心のアガリの後に親かぶりをするケネスはあいかわらず苦しそうである。

東4局は藤井が8巡目

五万六万八万三索三索四索五索六索一筒二筒三筒白白白  ドラ八万

ここから五万切りのリーチを敢行。
見事、七万をツモり、2,000・4,000のツモアガリ。

南1局、
6巡目に西家、ケネスが白を仕掛け、7巡目にテンパイ

七万八万一索一索一索六筒六筒七筒八筒九筒  ポン白白白  ドラ八索

ケネスのテンパイ打牌の八索を北家、中村がポンして立ち向かう。
10巡目に東谷から二索をポンして以下のテンパイ。

六万六万一筒一筒一筒中中  ポン二索 上向き二索 上向き二索 上向き  ポン八索 上向き八索 上向き八索 上向き  ドラ八索

親の東谷も11巡目にリーチ。

五万六万五索六索七索二筒三筒四筒九筒九筒発発発  リーチ

3人のツモる動作に力が入る・・・。

ケネスが四万をつかみ、長考後、一索を切って撤退。
中村と東谷の一騎打ちは、14巡目に中村が六万をツモって2,000・4,000のツモアガリ。
いつも冷静な中村にしては珍しく力強い動作であった。

南2局
前局に勝負を制した中村が8巡目に以下の牌姿。

七万七万八万二索二索四索四索二筒二筒四筒四筒五筒八筒八筒  ドラ七万

タンヤオ七対子ドラドラのテンパイ、中村は五筒単騎のヤミテンを選択。
親の藤井のソウズ染め、南家、ケネスのマンズ染めを読んだ上での選択だと後に中村は語ったが・・・。
同巡、東家、藤井

八万九万一索二索四索四索五索五索六索七索七索白白  ドラ七万

ここから白をポンして打八万、その後三索をチーして打九万、その九万を南家、ケネスがポン。
すぐに中村が六索をつかみ、藤井に5,800の放銃となった。

藤井
四索四索五索五索六索七索七索  チー三索 左向き一索 上向き二索 上向き  ポン白白白  ロン六索  ドラ七万

南2局1本場
4巡目に北家、東谷が、以下の形から親の藤井の中をポン、打四万

四万一筒一筒六筒八筒九筒九筒西西北発中中  ドラ南

すぐにドラの南をひいてくるが、東谷はここで打六筒
あえて役牌を場に打ち出さないことで主導権をとりにいく。
その後、西も仕掛けることができた東谷に逆らう者はいないように見えたが、12巡目に藤井が南切りリーチ。

二万三万四万五万六万七万二索三索四索六索六索二筒三筒  リーチ

四筒をツモれば6,000オールの本手である。
しかし、同巡に東谷も藤井のあたり牌の一筒を引きいれる

一筒一筒一筒七筒八筒九筒南  ポン西西西  ポン中中中  ドラ南

このヤマ越しのテンパイ。
お互いに12,000点の本手同士、東谷も一歩も退かない。
結果はこの半荘初の流局となった。

南2局2本場
7巡目に南家、ケネスがリーチ。

一索二索三索九索一筒二筒三筒四筒五筒六筒七筒八筒九筒  ドラ八筒  リーチ

西家、中村も

二万三万二索三索四索二筒三筒四筒五筒六筒七筒八筒九筒  ドラ八筒

この勝負手1シャンテンでぶつける気満点も、すでにテンパイを入れていた北家、東谷が藤井から七万をアガる。

東谷
五万六万七万七万北北北  チー七筒 左向き八筒 上向き九筒 上向き  加カン発発発発  ロン七万  ドラ八筒

6,400は7,000点のアガリ。

南3局、ケネスの親は700・1,300であっさり流れる。

南4局3本場
中村が本場を積んだところで、西家、藤井がリーチ。

二万三万四万二索三索四索五索五索七索九索二筒三筒四筒  ドラ東

これに安牌に窮した東谷が飛び込み、2回戦はケネスの1人沈みの結果となった。

道中、トップ走者のケネスを苦しませることに終始した3人。
半荘終了後、ケネスが「長かった」と息を吐くようにつぶやいた。

2回戦成績
中村+21.8P 東谷+12.1P 藤井+5.5P ケネス▲39.4P

2回戦終了時
中村+148.0P ケネス+140.8P 東谷+133.2P 藤井+2.4P

2半荘連続1着の中村がついにケネスの尻尾をつかみ首位に躍り出る。ケネスは貯金を吐き出し追いかける立場となった。

 

——–3回戦(起家から東谷・中村・ケネス・藤井)———

東1局
東家、東谷が6巡目に以下の牌姿

一万一万三万四索五索六索七索二筒三筒四筒六筒七筒七筒八筒  ドラ一筒

ここから一万のトイツ落としをして本手に向かう。
11巡目に

四索五索六索七索七索二筒二筒三筒三筒四筒六筒七筒八筒  ドラ一筒

このテンパイを果たしリーチ。

同巡、南家,中村に以下のテンパイ。

一万二万三万六万七万一索一索六索六索六索五筒六筒七筒  ドラ一筒

打点こそ1,300であるが、河の情報からは待ちの五万八万はとても優秀に見える。
中村は追いかけリーチの判断に出た。が、中村の次のツモは四筒
東谷に11,600の放銃、結果は中村にとって最悪のものとなった。

一転、追いかける立場になった中村は攻めに転じる。

東1局1本場、9巡目に南家、中村

二万二万二万一索二索三索五索五索五索六索七索二筒三筒  リーチ  ドラ二筒

しかし、リーチに対応した北家、藤井が素早く仕掛け

三万三万三万四万北北北  ポン南南南  ポン八万 上向き八万 上向き八万 上向き  ツモ五万  ドラ二筒

1,300・2,600は1,400・2,700のアガリ。中村はまともにツモる機会すら与えてもらえない。

東2局、14巡目に南家、ケネス

三万四万四万五万五万五万六万七万九万九万三索四索五索  ロン三万  ドラ五索

見事な手牌変化のヤミテンで注文通り中村から3,900をアガる。

東4局、西家、中村がリーチ。

四万五万六万五索六索二筒二筒二筒東東白白白  リーチ  ドラ五索

しかし、すぐに中村の現物でテンパイを入れた親の藤井が東谷から5,800をアガる。

三万四万七万八万九万四索五索五索六索六索七索五筒五筒  ロン二万

中村は苦しい状況が続く。

この後、3,900は4,500、1,300と2局連続でアガった中村、なんとか立て直そうと、この半荘、5本目のリーチ棒を出す。
南2局、東家、中村6巡目リーチ。

二万二万二万七万八万三索四索五索一筒二筒三筒八筒八筒  リーチ  ドラ七索

しかし、同巡に北家、東谷

四万五万六万六万八万二索三索四索六索七索四筒五筒五筒  ドラ七索

ここから七万を引きいれ、中村の入り目筋の四筒を切ってリーチ。
そして中村が次につかんだ牌は無情にも八索。東谷に7,700の放銃となった。

南3局、中村が意地を見せる。

二索三索三索四索四索五索五索六索七索四筒五筒中中  リーチ  ロン三筒  ドラ中

すでに七対子のテンパイを果たしていた東家,ケネスから5,200のアガリをもぎとる。
ケネスはテンパイからのワンチャンスを追っての放銃。
この放銃で原点を割る26,700点となる。失った点棒以上に痛い放銃である。

南4局、今度はケネスが意地を見せる。12巡目。

一万一万五索五索五索七筒八筒九筒東東中中中  ドラ五索

ドラ暗刻、ツモれば3,000・6,000のテンパイを入れる。
しかし、中村の仕掛けでテンパイを入れた東谷が14巡目にケネスから七索を打ち取り2,000点のアガリ。

三万四万五万七万八万九万五索六索四筒四筒五筒六筒七筒  ロン七索

ケネスにとっては2回戦に引き続き、沈みの手痛い3回戦となった。

3回戦成績
東谷+20.9P 藤井+12.6P ケネス▲9.3P 中村▲24.2P

3回戦終了時
東谷+154.1P ケネス+131.5P 中村+123.8P 藤井+15.0P

トップだった中村が沈み、最終半荘を残して東谷が逆転トップに立った。
しかし、2着との差は22.6P、3着との差は30.3P。
トップラスで16Pの差がつくことを考えれば、まったく気が抜けない点差である。

 

——–4回戦(起家からケネス・中村・藤井・東谷)——–

この半荘が最終半荘である。最終半荘はそれまでのトータルポイントで席順が決まる。
ケネス、中村はできるだけ早めに東谷をつかまえておきたいところだろうか。

東1局、最終戦の緊張の中、7巡目に北家、東谷。

五万五万七万三筒五筒五筒六筒六筒東東南西北  ドラ一筒

ここから五万をポンして打七万
東谷のこの仕掛けが全員のツモをチグハグにする。
ケネスの手はまったく伸びず、七対子ドラドラ1シャンテンの中村も必死に戦うが牌が重ならない。
東谷の手も伸びなかったが、

八万九万四筒五筒五筒六筒六筒七筒東東  ポン五万 上向き五万 上向き五万 上向き  ドラ一筒

このテンパイを終盤に入れ、大きい1人テンパイを得る。

次局も全員ノーテンの流局、その後1,600は2,200を中村がアガって迎えた東4局。
西家,中村にダブルリーチが入る。

六万六万七万二筒二筒四筒四筒六筒六筒七筒七筒発発  リーチ  ドラ八筒

親は東谷、ツモっても出アガリでも、中村にとっては優勝へ大きく近づくアガリになる。
しかし、丁寧に丁寧に打ちまわしたケネスが10巡目に中村から1,300のアガリ。

二万三万四万四万五万六万七万七万五索七索三筒四筒五筒  ロン六索

南1局
まずは6巡目に親のケネスがテンパイし、ヤミテンに構える。

六万七万八万一索一索二索三索三索四索五索一筒二筒三筒  ドラ九万

10巡目に中村が仕掛けてすぐにテンパイ。

三万三万五万六万七万八索八索二筒三筒四筒  ポン七筒 上向き七筒 上向き七筒 上向き

この仕掛けで藤井に手が入る。
11巡目

一万二万三万九万九万二索三索六索七索八索四筒五筒六筒  リーチ

同巡、ケネスも二索をひきこみ奇しくも同じ待ちでリーチ。

六万七万八万一索一索二索二索三索三索四索一筒二筒三筒  リーチ

勝負所、ケネスの牌を切る動作も自然と力が入る。
しかし、オリる東谷の手の中に一索四索は吸収されていく。東谷の手の内に4枚、ケネスの手の内に3枚、あと1枚。
そして、ツモと発声したのは中村。ハイテイまぎわ、ヤマにいる八索を見事にツモりあげ300・500のツモアガリ。

南2局
親の中村がチャンタ三色を狙い一打逆転を狙うもツモが伸びない。
終盤にケネスのキー牌となる南をつかみ、オリを選択。残り2局に賭けることになった。
残り2局、点数はケネス29,800点、中村32,0000点、東谷32,700点。

南3局
局を進めたい南家、東谷が積極的に役牌を仕掛ける。
この仕掛けで西家、ケネスが13巡目にテンパイ

三万五万五万六万七万八万八万五索六索七索二筒三筒四筒七筒  ドラ南

一瞬七筒に手をかけるが、小考後三万を切り出す。狙いはタンピン三色、優勝しか見ていない。
この三万を北家、中村がチー。

二万二万四万二索三索四索二筒三筒四筒六筒七筒八筒南  ドラ南

二万を切り出し、直前に東谷が切った南単騎で3.900のアガリをとりにいく。
しかし、この二万が東家、藤井のメンホン12,000への放銃となった。

一万三万三万四万五万九万九万西西西中中中  ロン二万  ドラ南

中村にとって優勝が厳しくなった瞬間であった。

南3局1本場
西家、ケネスに大きい手が入る。ケネスが2巡目に以下のテンパイ

四万四万五索五索九索九索一筒西西白白中中  ドラ四万

七対子ドラドラ6,400の一筒単騎テンパイ、これを東谷からアガるかツモれば優勝が現実的に見えてくる。
東谷も黙っていない。6巡目、ケネスがツモ切った発を仕掛けて打六索

一万二万二万三索四索一筒二筒三筒五筒五筒  ポン発発発

そして、8巡目にドラ表示牌の三万をひきいれ二索五索待ちテンパイ。
10巡目、ケネスが五索をつかむ。ケネスの手が止まる。・・大長考。

東谷のテンパイ気配を感じているのだろうか。
しかし、七対子ならば五索はツモ切らねばならない。五索を使い切るならばトイトイへの変化を考えているのか・・・。

時計の針の音が聞こえるかのような空白の時間が経過した後、ケネスは五索をツモ切った。
東谷が手牌を倒す。瞬間、ケネスは天を仰いだ。

南4局
ケネスの条件は跳満ツモで優勝、中村の条件は跳満ツモで2着である。

中村の配牌
三万四万五万四索五索一筒二筒三筒七筒八筒西発発  ドラ発

いきなりの好配牌、しかし、跳満ツモ条件では発を暗刻にする必要がある。
だが、この手がまったく動きもしない。最後までテンパイせず。

一方、ケネスは苦しい配牌をノーミスで10巡目に七対子のテンパイ。

二万二万一筒一筒四筒四筒五筒五筒九筒九筒四索九索九索

こちらも跳満ツモ条件のためドラを2回ひく必要がある。
それにしてもケネスは七対子が上手だ。

13巡目にケネスが二万をツモってくる、四索を切ってテンパイを壊すケネス。
15巡目のケネスのツモは待望の九筒、四暗刻の1シャンテンとなった。
河から情報を得ようとするも難しい。ケネスの選択は一筒切り。
17巡目、・・・有効牌をひかなかったケネスは静かに手を壊した。
・・・熱い戦いは幕を閉じた。

4回戦成績
藤井+15.8P 東谷+8.3P ケネス▲5.8P 中村▲18.3P

最終成績
東谷+162.4P ケネス+125.7P 中村+105.5P 藤井+30.8P

——-表彰式——–

特別昇級リーグは東谷達矢の優勝で幕を閉じた。
表彰式、喜びの東谷とは対照的な2人がいた。
後悔、反省、悔恨。雑多な感情の混ざった空気をまとった中にも、雪辱を期す決意のまなざしをもって東谷を祝福するケネス、中村の姿があった。
優勝した東谷はもちろん、肉薄したケネスと中村、最後まで貪欲に上を目指した藤井も含め、今後の活躍を予感させるには十分であった。

最後に、決勝を戦った4名からコメントをいただいた。

東谷「決勝が始まる前から紆余曲折ある4半荘になると思っていたけれど、実際にとても大変な4半荘になりました。優勝できたのはもちろん嬉しいですが、内容の濃い対局となり本当に良かったです。今後も精進し、また決勝の舞台に立てるようがんばります!!!」

ケネス「1回デカラスでも、まだ並び次第・・・と悠然に構えたことが敗因でした。決勝だけにもう少し危機感持てればよかったかも・・・。」

中村「2回戦終了時点で、一度トータル首位に立ったのですが、3回戦の東1局に東谷さんに打った11,600が痛かったです。勝負に行ったので後悔はしてないですが、その後、終始苦しい展開になってしまいました。来期も特昇権利を得ることができたので、今回の敗戦を糧にして頑張りたいと思います。」

藤井「3人に失礼のないように一生懸命に打とうと思って決勝に来ました。(もちろんひそかにキセキを願っておりました・・・)。次回はもっと優勝争いに参加できるようにがんばります!全員、本当に強かったです。」

最後に、この度、観戦記者として、特別昇級リーグ決勝戦に立ち会うこととなったが、記者の責務は決勝の熱い戦いを読者に届けることと考え、異例の長さの観戦記となったこと、主観的な解釈を多々加えたことを謝罪したい。
決勝を観戦し、強い意志をもって麻雀を打つ4者から麻雀の魅力を再確認させられることとなった。
決勝で素晴らしい闘牌を演出してくれた4名のプロ、このような機会を与えてくださった編集部、そして、愚筆につきあっていただいた読者に感謝の意を表して、締めくくらせていただく。