特別昇級リーグ 決勝観戦記

第31期特別昇級リーグ最終節レポート

【須浦の逃げ切りか、それとも…】

唐突だが、第7節までの成績に本日の2回戦までを加えたスコアだ。

 

 

2回戦で桜井が1人浮きのトップを取ったとはいえ、まだ須浦との差は100ポイント以上。
須浦と宮澤の差もだいぶ開いてしまった。
須浦の優勝はほぼ確定的で、この後の見どころは宮澤、原田が何位に食い込めるかだろう。

 

 

(左から、原田潤次、須浦正裕、桜井紘己、宮澤太佑)

特別昇級リーグのシステムの詳細はリンクからご覧いただきたいが、簡単に書くと、C1リーグの須浦、桜井はB2リーグに特別昇級する優勝しか価値がなく、Dリーグの宮澤、原田は2位(C1へ)、3位(C2へ)でも歓迎、といった思惑だ。

開催概要 – 特別昇級リーグ

3回戦東1局、親桜井のリーチを受けた原田

三索五索七索八索九索白白 ツモ一索 ポン東東東 ポン中中中 ドラ三索

まだ1年目の原田ではあるが、アガリやすさや、桜井への放銃率の差はわかっていただろう。
しかし、トータルポイントがそうさせる打五索
桜井、7,700のアガリ。

四万 上向き五万 上向き六万 上向き六万 上向き七万 上向き八万 上向き三索 上向き四索 上向き六索 上向き六索 上向き六索 上向き八索 上向き八索 上向き リーチ ロン五索 上向き ドラ三索 上向き

東1局1本場は宮澤の満貫。

四万 上向き五万 上向き六万 上向き八万 上向き九万 上向き白白 ロン七万 上向き チー二万 左向き三万 上向き四万 上向き 暗カン中牌の背牌の背中 ドラ二万 上向き

須浦にしては淡白な放銃に見えたが、おそらくテンパイで、放銃でも桜井の親が落ちるならという考えもあったか。

東3局桜井、嬉しい高目のツモで3,000・6,000。
須浦に親被りさせる。

四万 上向き四万 上向き四筒 上向き五筒 上向き六筒 上向き七筒 上向き八筒 上向き二索 上向き三索 上向き四索 上向き六索 上向き七索 上向き八索 上向き リーチ ツモ六筒 上向き ドラ四万 上向き

南3局、原田「宮澤さんがマンズのホンイツなので、三万から切らなきゃいけないんですよね。でも、桜井さんのリーチの間4間だったので切りきれなく、中からいってしまいました。」
終局後に反省点とあげたのはこの局。
親番がない21,000点持ちであり、トータルで桜井、宮澤を逆転しようと思ったら、この半荘、浮きに回らないと相当厳しい。
自身は跳満が見える1シャンテンだが、宮澤がダブ南を鳴きホンイツ模様、西家桜井からリーチが入っている。

三万四万三筒四筒五筒六筒六筒三索四索六索七索八索中 ツモ三万 ドラ八筒
中から勝負する気持ちも非常にわかる。

しかし、結果は悪い方に。五索を引いてリーチ宣言するも、宮澤への8,000点の放銃になってしまった。

一万 上向き一万 上向き四万 上向き五万 上向き六万 上向き七万 上向き八万 上向き ロン三万 上向き ポン中中中 ポン南南南

原田「途中敗退しそうだったのですが、第6節で大きくプラスできて、そのおかげで決勝まで残れて、非常によい経験になりました。桜井さん、宮澤さんは何度もあたったのですが、強かったです。打点が高くて、すぐ(点棒を)持っていかれました。」
結果は4位と惜しくも特別昇級には届かなかったが、まだ1年目、40人参加での4位は大健闘。
第6節の観戦記者を担当していた蒼山も「いい選手だね」と評価しており、これからが楽しみである。

3回戦は、桜井がトップ、2着宮澤、須浦は沈みの3着。
差は60ポイント強に縮まったが、先ほどよりは可能性が出てきたかな、といった程度。

 

 

迎えた最終戦、東1局に原田が桜井から7,700をアガリ、反撃の芽もついえたかと思われたが、東2局、早い桜井の11,600に須浦が飛び込む。

二万 上向き三万 上向き四万 上向き七万 上向き八万 上向き九万 上向き二筒 上向き四筒 上向き八筒 上向き八筒 上向き ロン三筒 上向き ポン東東東 ドラ八筒 上向き

須浦「巡目が浅く、今からのベタオリでは手づまりそうだった。筋を頼りにしたが、激痛だった。」
ここまで飄々と打っていた須浦だったが、この局以降、眉間に皺がよった苦しい表情。

東3局、さらに桜井は、親原田との二軒リーチを制して、5,200を加点する。

三万 上向き四万 上向き二筒 上向き三筒 上向き四筒 上向き五筒 上向き五筒 上向き五筒 上向き四索 上向き四索 上向き六索 上向き七索 上向き八索 上向き リーチ ロン五万 上向き ドラ七索 上向き

原田一万二万三万二筒三筒八筒八筒八筒一索一索一索二索三索 リーチ ドラ七索

開始時120ポイントもあった差は、なんと約20ポイントまで迫ってきた。
これまで座っていた立会人の藤原と紺野も、立ち上がって観戦している。

東4局、親は須浦。
早々にダブ東が鳴け、7巡目にこのテンパイ。
ここでの5,800のアガリは、安全圏になり、一息つけそうだ。

五万六万一筒二筒三筒三索四索五索西西 ポン東東東 ドラ三索

下家の宮澤が、2フーロしていたが、3フーロ目八万をチー。
手牌4枚から、さらに手出しが入る。
そして次巡、

三万 上向き四万 上向き五万 上向き七万 上向き ツモ七万 上向き チー八万 左向き六万 上向き七万 上向き ポン一万 左向き一万 上向き一万 上向き ポン二万 上向き二万 上向き二万 左向き

「2,000・4,000。」
こんな試練あるのかと、マスクの下で開いた口が塞がらない僕。
七万を2枚も食い取られ、当然、須浦の顔も歪む。

この半荘の持ち点が以下になって南入。(カッコ内は3回戦終了時の総トータル)
宮澤 41,400 (+173.0)
桜井 42,200 (+170.7)
原田 25,100 (+87.7)
須浦 11,300 (+234.6)
2時間前まで須浦優勝の雰囲気だったが、もう宮澤でも桜井でも4,000オールで並んでしまう点差になってしまっている。

南1局、須浦、白、ドラ1の500・1,000。
宮澤の親を落とす。

南2局、親は桜井。
須浦にとってはここが最終関門。
しかし、配牌が悪かったのか序盤から受け気味の捨て牌。
13巡目、とうとうきてしまった桜井のリーチ宣言。
引き入れたのは絶好のドラの西だ。

一万二万三万五万六万二索二索三索四索五索七索西西 ツモ西 リーチ 打七索 ドラ西

桜井「ワンチャンスあるかな、ってところまで差を詰めたんだけど、やはりスタートの差が大きくて厳しかった。全員が優勝狙いだったら、また違った結果だったんだろうけど。」
今日、ここまで面白い試合になったのは、桜井の諦めない粘りと打点を作る構想力の賜物だろう。
スタートの差を考えると、何もできない1日になってもおかしくなかった。

宮澤三万 上向き四万 上向き五万 上向き九万 上向き九万 上向き七筒 上向き八筒 上向き九筒 上向き二索 上向き三索 上向き四索 上向き五索 上向き六索 上向き ロン七索 上向き ドラ西

2位でもよい宮澤がいたこと、偶然にも宮澤と桜井が僅差だったことが、最後に須浦に味方した。
桜井のリーチ宣言牌に宮澤のロンの声。
辛うじて須浦は逃げ切り、優勝を手にした。

優勝:須浦 正裕
第2位:宮澤 太佑
第3位:桜井 紘己
第4位:原田 潤次

「優勝しか意味がなく(狭き門なので)、出るかどうかは迷った。でも、出てよかったね。」
終局後の須浦、流石に安堵の表情。
須浦は22期生の43歳。この特別昇級リーグ、以前は39歳以下にしか出場権利が与えられなかったが、近年、対象年齢が引き上げられたことで出場できることに。
その後に行われたリーグ戦最終節も、無事にプラスをキープし、B2リーグに特別昇級。

2位の宮澤、「特昇を通して運も良かったと思いますが、納得いく麻雀が打てました。D2リーグ一節目に大敗(▲91.6)してから手組、押し引きを見直してそれに結果がついてきてくれて良かったです。このチャンスを活かすためにリーグ戦絶対勝ちます!」と戦後のコメント。
+60ポイントはなかなか難しく、強気だなぁと思ったのだが、なんとこの男、3回戦までで+75ポイント、最終戦南3局までトータルプラス条件を満たしていたらしい。
しかし、非情にも南3局に他者の8,000オールのツモアガリ、数ポイント足らずでC1にはたどり着けなかった。
残念ながら、今回はチャンスを逃してしまったが、成長著しい。
すぐにリーグは上がっていくだろう。今後の活躍に注目である。

 

 

(文:福光聖雄)