第2期若獅子戦決勝レポート
2021年12月09日
【第2期若獅子戦~決勝観戦記~、優勝は松本峻!】
102名が参加した1次予選は8月末、もうだいぶ前のことのように感じる。
長きにわたる戦いも今日でいよいよ優勝者が決定する。
ベスト8が終わってから1ヶ月、選手はワクワクそわそわで落ち着かない日々だっただろう。
上田稜
「九州で応援してくれる人や普段応援してくれる人に恩返しができたらいいなと思います。」
野村駿
「全力でぶつかって必ず優勝します。応援よろしくお願いします。」
松本峻
「初めての決勝戦ですが、4人でいい麻雀をして最終的には優勝できたらと思います。」
福田雄大
「6年間プロをやっていて、何も結果を残せていないので、そろそろタイトル欲しいなと思います。」
インタビューでは緊張が見られた4選手だったが、始まってしまえば十二分に持ち味を発揮、非常に面白い決勝戦だった。
立会人の吉田がこう評価するのもうなずける。
僕としては、「今の20代ってこんなに強いの?」という驚きの連続だった。
それでは決勝の内容を振り返っていきたい。
1回戦、見応えがあったのは南4局2本場、
一度はテンパイを外して、234の三色同順を狙った松本だったが、上家野村のの手出しからピンズが手に無いと判断したか、引き戻したで今度はリーチを打つ。
すぐに親の福田にもテンパイが入った。
ドラの単騎、七対子のリーチ。出アガリ満貫、ツモれば跳満の勝負手だ。
松本は、親とのめくり合いになったことは怖いが、福田からリーチ棒が出たことで、出アガリでも浮くようになる。
2人のどちらかのアガリと思われたが、野村の打ちまわしが素晴らしかった。
リーチを受けた段階ではこの形だったが、リスクを取らず、かつ、可能な限り形を保った結果、
見事に七対子でのツモアガリ。3着に浮上して1回戦を終えた。
しかし、アガった野村はこの表情。
なぜなら、前巡、を切るときに小考。リーチをするかどうか考えていたのだ。
後半戦でスコア状況によってはリーチもあるが、出アガリでは浮きにならないので、さすがに1回戦からはリスクの方が高い。
とはいえ、気持ちは非常にわかる。
1回戦成績
上田+13.7P、福田+4.6P、野村▲4.5P、松本▲13.8P
1回戦ラススタートとなってしまった松本、2回戦は東1局から1人ノーテン、3,200+300の放銃と失点が続く。
全4回戦のため、この2回戦もラスをひくようだと、かなり優勝が厳しくなってしまうと、状況判断に長けている(後述)松本は思ったに違いない。
何気ない1局だが、リーチが打ちやすかった入り目にツモアガリと、松本を救った1局だったように思う。
偶然にも野村がミスと挙げた局なのも、また面白い。
(そこまで卑下することないよ、立派だったよ、とフォローしておきたい。)
このアガリをきっかけに松本が息を吹き返す。
この半荘の決め手となったのは南2局。
放銃した福田は、一度はを手に留めたものの、最悪のタイミングでの切り出しとなってしまい、やや後悔しているかもしれない。
2回戦成績
松本+30.8P、野村▲5.2P、上田▲7.6P、福田▲18.0P
2回戦終了時
松本+17.0P、上田+6.1P、野村▲9.7P、福田▲13.4P
3回戦東2局、親の野村はテンパイ取らずから、を引いてリーチと、お手本のような手順で2,600+100オール。
この局、アガリには結びつかなかったが親のリーチを受けた後の、福田の押しっぷりも見事だった。
無筋を切る怖さもあるし、力も入るだろうが、普段と変わらないモーションで押していく。
福田らしさが出た良い1局だった。
タラレバにはなってしまうが、入り目がだったら、安全なを切ってのリーチ、野村からのの出アガリだったか。
こればかりは仕方がない。
東2局3本場、この空切りリーチを取り上げないわけにはいかない。
細かい技術まで勉強しているのかと、驚愕する。
親の野村が追っかける。
上田のこの切りも読みの入っている一打。
自身のフリテンではなく、野村はを切ったときに小考しており、の方が安全と判断したのである。
今の20代はこんなにレベルが高いのかと、焦らされる。
結果は、野村がを掴み、福田のアガリ。5,200は6,100。
続く東3局、失点を取り戻そうとしたリーチだとしたら後悔があるだろう。
上田、ダブ東ホンイツの12,000!
頭取りなので野村のリーチが悪いとは思わないが、親の上田の早いドラ切りを評価してもよかったかもしれない。
結果としては痛い放銃だった。
続いて取り上げるのは南1局。
松本は守備寄りの雀風だと思っていただけに、上田のリーチにドラ単騎で追っかけたのには驚いた。
2回戦まではトップだったが、この3回戦のスコアを入れると、上田に25ポイント離されている状況。
もうリスクを承知で勝負しにいかなければならない。
それがちゃんとわかっている。
(結果は上田に2,600の放銃となってしまったが。)
振り返ると、リードしていた2回戦は、この手をヤミテン。(切りのところでテンパイ)
まだ1年目の選手とは思えない状況判断能力だ。
この3回戦、上田は、トータルトップだった松本をラスにして、自身がトップ。
大きなリードではないが最終戦を有利なポジションで迎えることができ、理想通りのゲームメイクができている。
3回戦成績
上田+20.7P、福田+11.6P、野村▲14.0P、松本▲20.3P
3回戦終了時
上田+26.8P、福田▲1.8P、松本▲3.3P、野村▲23.7P
最終戦、今日の福田にはチャンスがなかった。
東場の親番は、松本にリーチ、三色同順の5200の放銃。
南場の親番も、松本に6,400の放銃と、加点したい親番でどちらも避けられない放銃では苦しい。
福田は26歳。きっとまたこの舞台に戻ってくるだろう。
最終戦オーラス、上田と松本の一騎打ち。
上田は浮きに回って終局できれば、松本はその前にアガれば優勝。
松本はペンに託し、ノーテンにはできない上田もギリギリでテンパイを入れる。
決着は1本場。
どんなにいい試合でも、無情にも名を残せるのは1人しかいない。
最後はどちらが麻雀の女神に選ばれるかどうかだった。
第1期を優勝した阿久津翔太は、C1リーグに特別昇級の後、すぐにB2リーグに昇級。
また、優勝により選抜されたFocus M season6でも11月末時点で首位。
阿久津の活躍によって、若獅子戦の価値を高めたと言っても過言ではない。
松本もすぐに活躍すると思うし、活躍して若獅子の名をさらに高めてほしい。
上田、福田、野村は負けてしまったが、今日の決勝の経験や、ここまで勝ち上がってきたことは、今後の麻雀人生の財産となるだろう。
「若獅子戦での戦いが自分を強くした」
彼らがいつかこのような発言をすることを、楽しみに期待したい。
(文:福光聖雄)
カテゴリ:若獅子戦 レポート