インターネット麻雀日本選手権2017観戦記 山井 弘
2017年08月08日
半年ほどまえ、近代麻雀からアンケート企画への協力依頼がきた。
「あなたがいま、一番強いと思う男性プロはどなたですか? ご自身以外で1人お答えください。無記名投票なので貴方のお名前は出しませんが、よろしければ投票した理由を簡単にお答えください。」という内容だった。
私の頭の中である男の顔が浮かんだ。
決勝の1回戦であれば、今日一日の運勢を占う上でもできれば先手を取りたいものだ。
配牌
ドラ
いきなりドラ2枚の勝負手が入った。
巡目は進み8巡目。
ツモ
手牌は1シャンテンまで伸び、あと一歩で先制できる。しかも打点が見込める。
しかし、上家のcmj5330さんの捨て牌が尋常ではない。
明らかに変則手であることは明白で、打の先切りも考えたそうだ。しかしここはをツモ切り。すると次巡のツモは。
今ここで3枚目のを切っておけば、後で4枚目を引いた時にと振り返ることができる。どのみちこの手は勝負手なのだから早目に国士に危険な牌を処理しておく。上家は1巡の間にを手から切ってはいるが、まだはっていないだろうとを先切り。
東1局、いきなり大きな失点となった。
決勝の大舞台、しかも初戦の東1局でいきなり役満が飛び出すというのはあまり聞いたことはないが、それに遭遇してしまった佐々木は一体どんな心境だったのだろうか。
動揺してこのあと冷静に打つ事ができなくなってしまう者もいるだろう。しかし佐々木にそのような動揺は見られない。
次局もピンフドラ1のでリーチを打ち、それがカンに引き負けても、次局またリーチと何事もなかったかのように攻める。
親番もこれでもかとリーチで攻め続ける。
リーチ ドラ
これに対してポン、ポンとオタ風を仕掛け返してきた藤崎だが、アガッたのはピンフのテンパイをしていた七瀬。
ようやく向かえた佐々木の初アガリは東4局2本場だった。
ポン ロン ドラ
この8,000を七瀬から打ち取る。しかしまだラス目。二の矢はこれだ。
ポン ポン ツモ ドラ
これで七瀬を交わしてラス抜け。
佐々木は1回戦いきなり国士放銃という厳しいスタートから3着で粘りを見せた。
2回戦は荒れた。終わってから佐々木に、
「なんであんなを打った人に天和が入るんですか?麻雀に流れはないんですか?」と聞かれた。
佐々木はこの回ラスで、トータル▲59.3Pと優勝するにはギリギリのラインと言っていいほどの位置まできてしまった。
3回戦は藤崎に1,000点を一度打っただけで3着。
そのまま4回戦はラスとなり、5回戦を向かえたころには優勝の可能性がほぼなくなってしまった。
「麻雀に無駄がなく思考もシンプル。また、麻雀で一番大切な精神力がプロの中でもNo.1だと思います。それは普通中々身につけることができるものではなく、凄まじい経験の中で身につけたもので、他の人では身につけることのできないものを持っているのではと思います。」
私は頭に思い浮かんだ佐々木寿人の名前と一緒に、こう理由をつけて送信ボタンを押した。
数日して、選出理由と私の名前が近代麻雀の企画ページに掲載されていた。
インターネット麻雀日本選手権2017の予選は2月から始まった。
一般の予選は、ハンゲーム麻雀4とロン2の各サイトで行われ、プロのほうでもプロ予選が行われた。
「予選からもう一つ勝ちたい、もう一つ勝ちたい、と思ってやってきました。」
七瀬はこう思いながら決勝まで勝ち上がってきた女流の選手だ。
私が彼女と初めて会ったのは、彼女がまだプロになる前である。
池袋のとある麻雀店に遊びに行ったとき、ひときわ華やかな女性の店員さんがいた。
すると彼女は私に「今度連盟のプロテストを受験します。よろしくお願いします」と挨拶しそのまま同卓した。
一生懸命打つ彼女の姿勢が印象的で、少しでも私にいいところを見せたかったのかもしれない。
それから5年。彼女は母親になっていた。7月で1歳になるそうだ。
女流桜花Bリーグ、プロリーグはD2リーグで連盟のタイトル戦では初の決勝進出となった。
1回戦東1局の親番でいきなり国士無双が飛び出した。
放銃したのは佐々木寿人だが、
七瀬もピンフの1シャンテンで、恐らくはツモ切ったのではないだろうか。
もしくはツモられて親かっぶりし、大きな失点になった可能性もあっただけに、最悪は回避できたとホッとしたのではないだろうか。
決勝の1回戦となれば、まずは誰もが思うこと「早く1回アガリたい」。
東3局2本場、親番の佐々木からリーチが入る。
リーチ後、藤崎がポン、ポンとオタ風を仕掛けている。
七瀬は危険牌を打ち出すことなく、佐々木の現物待ちでテンパイが入った。
ドラ
は場に1枚切れているだけ。決勝の頭取りを考えるのであれば追いかけリーチもあるが、ここはヤミテンで一旦アガリを取ることを選択した七瀬。
この判断がうまく行き、cmj5330さんからでアガリとなった。
しかし次局、藤崎の仕掛けに捕まってしまう。
藤崎が親番でダブを鳴くと、
ツモ ドラ
カンが埋まった。藤崎の河はマンズが高く、とターツを払ってきていることから、マンズのホンイツ、もしくはドラ絡みと考える。
が後に危険になる可能性もあることから先に切る。上家であれば逆だが、下家であればこの判断に間違いはないと思う。
確かに打点など考えれば向かって行くほどの手ではないかもしれないが、ギリギリまで攻め込むスタイルが七瀬のフォームだ。
このが藤崎に鳴かれて、2巡後、有効牌のがツモ切られる。しかもは4枚切られ、数巡後には生牌のを掴まされる。
こうなるともう撤退で受ける形で終局を迎えることになりそうだが、次巡、薄いが入ってしまう。
こうなれば逆に藤崎の仕掛けでテンパイが入ったと考えることもできる。ならばドラ受けでもあるし、リーチへと一気に気持ちが傾くのも分かる。
しかしこのが藤崎の12,000に捕まる。
「実はプロになる前から寿人さんのファンだったので、対戦できてとても嬉しかったです」
七瀬は佐々木のスタイルに憧れている。打ちこんでもへこたれずに攻め続けるフォームだ。自身も「雀風はわりと攻撃型です!」と語っている。
東4局2本場 七瀬手牌
ツモ ドラ
ここから佐々木のホンイツドラ2に、こので放銃となった。
打ち込み出すと止まらない、そんなスタイルはマネしなくてもいいと思うのだが、そこも含めて佐々木のスタイルが好きなのだろう。
この半荘は、国士を放銃した佐々木に捲られラスとなってしまった。
2回戦東2局、藤崎の天和。
「役満が2回も出たのは苦笑いでした」
確かにこれだけは回避のしようがなく苦笑いするしかない。
南2局、天和で大量リードしている藤崎の親番。七瀬にチャンスが訪れた。
藤崎がcmj5330さんの第一打をいきなりポン。
ドラ
ここから動く藤崎を見るのは珍しい。
その後、七瀬以外の3者が動き、感触のいいテンパイが面前で入る。
ツモ
高目タンヤオの可能性が残るツモは好感触だ。即リーチに行くと、これが佐々木から一発でが出て7,700のアガリとなった。
そして次局、私がもし七瀬の敗因はどこですかと聞かれたらここだと思うと答える。
南3局、七瀬は感触のいいアガリで迎えた親番である。そしてドラ2枚のチャンス手がきた。
ドラ
ツモは、、ときて
こうなり、ここで藤崎から切られたをポン。ドラ2枚なので通常ポンするのは普通だと思う。
ただ、前局いい感触のアガリをし、配牌もドラ2枚でツモも割といい感じできていた。
私だったらこういう時に場の流れを変えるような行為は極力しないようにする。
当然2枚目であればしかたないと思うが、この1枚目のは見送ってもよかったのではないだろうか。
そうすれば違う未来があったかもしれない。
こんな話をすれば結果論に聞こえてしまうかもしれないが、このを見送って私は何度も好結果に繋げたことがある。
あとは鳴いて失敗するのと、鳴かないで失敗するのでどちらが精神的にダメージになるかだ。
私の場合は、圧倒的に鳴いて失敗したときのほうが後悔するので鳴かないことのほうが多い。
まだ残り3戦あると考えれば、精神的ダメージは少ない方がいい。
もしドラ2枚の時は必ず1鳴きするという人は、一度、調子がいいな、ツモがいいなというとき、試しに1鳴きしないで見送ってみるといい。
七瀬
cmj5330さん
佐々木
藤崎
鳴かないと4人の形は恐らくこうなっており、七瀬がほしいとドラの、は山に1枚ずつ残っていた。
どんな未来があったのか、もしかしたら写真の真ん中で目を赤くしてトロフィーを持っていたかもしれない。
人生初の天和をこの舞台でアガッたのは藤崎智。
佐々木の「何であのを打った人に天和が入るんですか?」との問に沈黙していたら、横から、「スター性じゃない」と突っ込んできたのは藤崎。
佐々木とは同郷で同じ高校の先輩と後輩になるそうだ。普段から仲もよくいつも2人で軽口をたたき合っている。
普段のタイトル戦決勝は無駄な会話は一切禁止されているのだが、今回のように他団体や一般の方も参加する大会においてはそのルールは適用されていない。
その藤崎にとっても1回戦の国士は肝を冷やしたのではないだろうか。
藤崎がを切った2巡後テンパイなのだ。手牌も345の三色が見える1シャンテンで恐らく七瀬と同じく、このタイミングであればツモ切ったのではないだろうか。
半荘1回に役満2回というのはあまり聞いたことがない。ましてやタイトル戦の決勝では尚のことである。
それが飛び出しそうになった。
1回戦東3局2本場、親番の佐々木からリーチが入る。
その局の藤崎の配牌が
ツモ ドラ
こうで、4巡目に、5巡目にを重ね材料は整った。その間、とが1枚ずつ切られているがまだ十分小四喜が狙える。
いや藤崎は狙った。それは手順からも分かる。
ツモ
まずここで七対子の1シャンテンになるがそれを拒否して打とする。次巡、ツモで一気に小四喜が現実となったところで打とする。
これは小四喜をアガるのであれば、で3メンツ1雀頭と考えるので、あと1メンツ作っておけばいいということである。
なので少しでも捨て牌を作るため、また安全な牌を残すための打なのだ。
ドラのは、都合よく親の佐々木が切ったときに合わせて目立たなかった。そしてその佐々木からリーチが飛んでくる。
ポン ポン
リーチ後、佐々木がとも掴み、このテンパイまで持ち込む。
こうなれば後は捲り合いなので、佐々木のピンフ待ちとどちらが先にいるかだ。
しかしここでアガったのは佐々木でも藤崎でもなかった。のピンフでヤミテンをはっていた七瀬だった。
佐々木の現物でcmj5330さんからの初アガリとなった。
観戦している者は勝手なものである。
佐々木には本当に申し訳ないのだが、国士に続いて、小四喜を放銃する姿を見たかったのは私だけではあるまい。
かく言う私も天空麻雀で佐々木に小四喜を放銃したことがあるが、そのとき先輩プロに「山井君は華があるからを掴むと思ったよ」と言われた。
ようは、役満はアガるものも振ったほうも華があるということなのだ。
次の局、七瀬から、
ポン ポン ロン
この12,000点をアガリ1回戦藤崎は2着となった。
2回戦、東1局2本場、
ドラ
ここから1枚目のを仕掛ける。
藤崎の軽い仕掛けはあまり見たことがない。軽いときは早いときである。そして仕掛けるときは高くなる要素があることが多い。
今回もホンイツかドラの重なりを見て打とする。藤崎らしい一打だ。
しかしが手残りしてしまっている状況でcmj5330さんからリーチが入った。
私は藤崎ならここは行かないと思っていた。
ポン ツモ
ここから打で満貫の放銃となった。
ちなみに、cmj5330さんの河にソーズは1枚も切られていないため、受けるにしても厳しい状況であったのは間違いない。
その攻撃的な姿勢が呼び込んだのかどうか私には分からないが、次局、藤崎は人生初の天和をアガる。
リアルの対局と違い、アガリがあるとすぐに次局へ行くため、視聴者のかたには一瞬だったので改めて牌譜を掲載しておこう。
本当に一瞬の出来事だった。ツモという吹き出しがパッと見えて、その瞬間、次の局へスッと進んだため、解説席は一瞬パニックになった。
対戦者もこれには苦笑いする他ない。防ぎようもないことなのだから。
しかし藤崎、この半荘はトップになったのだが、天和を1回アガっただけであった。
トータルでもトップ目に立つが、何かいつもの藤崎の勝ちパターンではなかったような気も、今になってみれば思える。
3回戦は藤崎とcmj5330さんとの競り合いとなった。
東4局2本場、藤崎は親番で、
ロン ドラ
これをトータル2番手で追いかけてくるcmj5330さんから打ち取る。これは大きなアガリとなった。
そして次局、ダメ押しといってもいいアガリがでる。
リーチ 一発ツモ ドラ 裏
これを一発でアガリ4,000オール。得点も天和をアガった半荘を超え64,900点となった。
次局、佐々木から早いリーチが入る。
リーチ ドラ
このとき藤崎の手牌は、
ツモ
まだ攻める手にはなっていなかった。しかし安全牌を切っている内に、
ツモ
ここまで伸びたので打で様子見とすると、次のツモはでこれは当たり牌である。
ここで藤崎は打と受け気味に進め、次にツモでオリになってしまう。
結果はこの局、cmj5330さんがホンイツの満貫をアガるのだが、トータル2番手のcmj5330さんにアガられるくらいなら、佐々木に3,900か満貫なら放銃になってもよかったかもしれない。
これはあくまで結果論だが、そうすれば佐々木が2着目になり、cmj5330さんは苦しい展開になったかもしれない。藤崎の守りの堅さが裏目になった可能性もある。
3回戦も藤崎とcmj5330さんとのワンツーで終わり、これで残り2回戦。ほぼ2人の一騎打ちとなった。
4回戦はその2人の壮絶なアガリ合戦となった。
藤崎はこの半荘でcmj5330さんより上の着順であれば、ほぼ優勝と言っていい。
ドラ
ここからポンと多少、無理目の仕掛けだがアガリ切る。
チー ポン ツモ
次局も
ドラ
この手からをポンと、アガリまでは結びつかなかったが、明らかに攻め手を緩めず、この半荘で決めにきているのが分かる。
競っているcmj5330さんの親番では、
ドラ
ここからを仕掛けていく。少し仕掛けが多くなってきた印象もあるが、ここはしっかりとアガリ、cmj5330さんの親番を落とすことに成功。
チー ポン ロン
しかしどうしてもこの半荘、cmj5330さんより上に行けず、藤崎は2着。残すはあと1戦となった。
最終戦、cmj5330さんとのポイント差は36.0Pである。
トップラスで6,000点差付けられると捲られるという状況で迎えた。
東2局1本場
リーチ 一発ロン ドラ 裏
藤崎は佐々木からこのアガリをものにする。
このアガリの価値は、ラスになる可能性が低くなったということだ。
トップがcmj5330さんでも藤崎はラスさえ引かなければ、2着順しかつかないため、16,000点差まで耐えられる。
cmj5330さんが2着であれば、さらにプラス10,000点の余裕ができる。
藤崎がこれだけ点差をつけていて負けるイメージがない。
しかしこの後、藤崎はオーラスまで一度も手牌を開くことはなかった。
これまでインターネット麻雀日本選手権で一般ユーザーが優勝したのは一度だけ。
2013年のロン2ユーザー代表のクラピカさんだ。
ユーザーが決勝まで駒を進めたのは、今回のハンゲーム代表cmj5330さんで8人目となる。
cmj5330さんというハンドルネームの由来だが、cmjは好きな漫画から、5330は個人情報なのでここでは明かせないということだった。
ハンゲーム歴は1年ほどで、麻雀は幼いころからされていたそうだ。
そんなcmj5330さんだが、ここまで強豪プロたちを倒し勝ち上がってきた。
ハンゲーム予選では和泉プロ
ロン2本選では魚谷プロ、高宮プロ
ベスト16では忍田プロ
ベスト8では森山会長と瀬戸熊プロ
恐らく、このような舞台に立つのも初めてだろう。緊張もあったと思うが、いきなり役満をアガった。配牌は8種。ツモで9種になった。
ツモ ドラ
開局ということから流す人もいるだろうが、cmj5330さんはここから打とし国士を狙い、それが見事9巡目に決まった。
大きなリードを得て、少し緊張も解けたのではないだろうか。
そして次局cmj5330さんの雀風が分かる局だ。
ドラ
国士をアガった次局の親番。3巡目に出たを1枚めからポン。
これでまず仕掛けも多用する打ち手ということが分かる。そして打。これで打点よりもスピード重視。
すぐにが鳴けてテンパイが入る。
チー ポン
を鳴いて打ということは良形を作りにいくタイプということになる。アガリ易さ重視。
そして次が一番大事なところで、6巡目、国士をアガった佐々木からリーチが入る。
親とはいえ、打点、待ちともに攻め返せるほどの手ではない。
しかしcmj5330さんはをツモ切り勝負にいった。
これである程度の攻撃型で、仕掛けても簡単にはオリないタイプということが分かった。
このとき、もしここで簡単にオリるようであれば、国士をアガったといえ、残りの戦いは相当厳しいものになるだろうと思っていた。
点数をもってそれを守りに行けば、それが隙になり、百戦錬磨の藤崎や攻撃型の佐々木、七瀬にとっては戦いやすい相手になってしまう。
麻雀を理屈で捉えれば、例えば、このような状況が千回あれば千回を切っていくほうが成績は残ると思う。
しかし、決勝だけは不利な状況でも、確率の薄いほうを引き当てられるのであればそれを逃してはいけないと、戦い方を分かっている打ち手といえる。
次局、すぐにを引き寄せた。
強いて言えば、長引いたときの押し引きをもう少し見てみたかった。
この局の戦いを見ていただけに、次のは正直止まらないのではと思っていた。
確かに藤崎が親のリーチ後に攻め返しオタ風を2つ鳴いている。よく考えればこのは止まって当然だが、本当に冷静な判断だったと思う。
ここは七瀬にでピンフの放銃となったが、七瀬がリーチだと局面は長引いただろう。
1回戦成績
cmj5330さん+45.8P 藤崎+14.9P 佐々木▲21.2P 七瀬▲39.5P
2回戦
東1局2本場、藤崎よりドラので出アガリ8,000点。
藤崎からドラが出るなんてcmj5330さん本人がビックリしたのではないだろうか。
しかし次局、親の藤崎が天和。これもアガった本人がビックリ、他3者は苦笑いするしかない・・・
2回戦成績
藤崎+46.5P cmj5330さん+6.4P 七瀬▲14.8P 佐々木▲38.0P
2回戦終了時
藤崎+61.4P cmj5330さん+52.2P 七瀬▲54.3P 佐々木▲59.3P
3回戦は開局すぐに佐々木から満貫をアガってリードするも、東4局2本場で藤崎に痛恨の12,000放銃。
ロン ドラ
これは藤崎のスピードをはかりそこねた。
そしてその藤崎に4,000オールを引かれ、トップが遠ざかる。これ以上は引き離されたくない状況だ。
次局、このままでは藤崎に持っていかれるので、自風のを仕掛けていく。すると佐々木からリーチが入る。正念場となった。
cmj5330さんはすぐにテンパイするも待ちがペンとまだ不安が残る。
藤崎も生牌のを押してきている。やはりリードしているからと言って、簡単にやめてくれる相手たちではない。
ここでcmj5330さんはこのをポンしていく。
待ちがよくなる分けではないが打点が上がる。タンキでまわしておけば好形に変化する可能性もあるし、いよいよともなれば危険な牌で回ることもできる。
しかしcmj5330さんの選択は打。打点を上げたうえで安全策をとった。
藤崎は当たり牌のを掴まされて受けに入った。そして見事正解を導き出すcmj5330さん。
ポン ポン ツモ ドラ
このアガリで藤崎を追う一番手となった。
3回戦成績
藤崎+54.8Pcmj5330さん+8.9P佐々木▲15.7P七瀬▲48.0P
3回戦終了時
藤崎+116.2P cmj5330さん+61.1P 佐々木▲75.0P 七瀬▲102.3P
4回戦は藤崎にトップを取られればほぼ優勝が決まってしまう。
正確に言うならば、cmj5330さんより上の着順であれば決まりだろう。
cmj5330さんが仕掛ければ、それに合わせて藤崎も仕掛け、cmj5330さんにはアガらせてくれない。
東4局、2巡目でドラのを切ってテンパイ。
ドラ
一手変わり三色だが、7巡まわしてもは引かない。その間、藤崎はcmj5330さんのドラ切りに反応したのか、を1枚目から仕掛けてプレッシャーをかけに行く。
このあたりは本当に試合巧者だ。
あまりに手も変わらず、捨て牌の状況もよくなったため、cmj5330さんはリーチに踏み切る。
すると七瀬からも追いかけリーチが入る。一転してピンチになったcmj5330さんだったが、手詰まりした藤崎からを打ち取る。
その次局、cmj5330さんはホンイツで仕掛けていく。
ポン ポン ドラ
ここからを鳴いて、打でカンのテンパイ。鳴かせてくれた七瀬からリーチのおまけまでついてきた。
リーチ
一発でを掴みを勝負。次のを無筋だが打つ。そしてのアガリまでたどり着いた。
ラス前では、今度は佐々木とのリーチ合戦だ。
cmj5330さん
リーチ ドラ
親番佐々木
リーチ
本当に一人旅はさせてくれない。誰かが必ず立ちはだかってくる。これが決勝という舞台なのだ。
cmj5330さんはこれも引きアガリ、裏ドラも乗せて藤崎を引き離しギリギリのところでトップになった。藤崎はしぶとく2着に粘った。
4回戦
cmj5330さん+29.3P 藤崎+10.2P 七瀬▲12.3P 佐々木▲27.2P
4回戦終了時
藤崎+126.4P cmj5330さん+90.4P 佐々木▲102.2P 七瀬▲114.6P
最終5回戦はcmj5330さんと藤崎の差が36.0P。
トップラスで6,000点の差をつければcmj5330さんの優勝である。
いよいよ決着のとき来る。
並びは藤崎起家でラス親がcmj5330さんとなった。
これはいつもの連盟規定ではなくネットでの対戦のため、ランダムに親が決まる。
ラス親がある分だけ若干、cmj5330さんのほうが有利だが、藤崎とはある程度点差があるため離すか、並びを作らないと厳しい。
東1局、ライバルの藤崎から打ち取る。
藤崎
ポン ドラ
藤崎はここからをポンして勝負に出た。
の仮テンで、これをアガリ切れば優勝は目前。道中、1枚切れのタンキへ待ち変え。
cmj5330さん
リーチ ロン ドラ 裏
藤崎がをポンしなければ、局面は長引きどうなったか判断できないが、ここはcmj5330さんに軍配が上がる。
裏ドラが乗って、大きな5,200直撃となった。
東2局1本場
リーチ ロン ドラ 裏
しかし藤崎はすぐにこの満貫をアガる。
これのままcmj5330さんに離されなければ優勝だ。
七瀬は親で6,000オール、佐々木は次の局2,000・4,000と少しエンジンがかかるのが遅かった。
これで苦しくなったのはcmj5330さん。トップが遠くなる。
そして南2局1本場、私はこの局がcmj5330さんにとって勝負になった局だと思う。
親の七瀬が超大物手をテンパイ。
リーチ ドラ
これに追いついたのはcmj5330さん。
ツモ
浮いているはまったくの無筋。
少し1回戦の東2局と似ているような気もする。
決勝のこの場面、もちろんリーチの手は分からないが、最後の親でリーチときた七瀬に放銃すれば、何ヶ月もかけて戦ってきたすべてが終わってしまいそうな究極の場面だ。
親番も残していて、果たして何人の人がこの手で勝負をかけることができるのだろうか。
cmj5330さんは腹をくくった。
これは強烈なアガリであった。そして七瀬のインターネット麻雀日本選手権はこれで完全に終わった。
現状2着と3着なので、まだ藤崎が10.6Pリード。しかし、着順が1つでも離れてしまえば一気に逆転になる。
南3局
cmj5330さん
リーチ ドラ
このリーチで決めに行くが、ここは藤崎も少しでもオーラス有利な条件で迎えるため、このアガリを阻止するべくリーチで迎え撃つ。
リーチ
最後の親番、佐々木からもリーチが入ったところで、cmj5330さんがをツモ。これで佐々木の親も落とし、ついに最終局面を迎えた。
オーラス
藤崎18,600
cmj5330さん44,400
cmj5330さんが七瀬を交わしてトップになったため、藤崎とは2着順離れた。そのため16,000点差つけていればcmj5330さんの優勝である。現状、258,00差あるので藤崎のほうが下で9.8P足りない。
藤崎はツモ2,000・3,900、cmj5330さんからは3,900直撃(cmj5330さんが2着になるため)、他2人からは12,000点の出アガリという、守るのではなく逆にアガらなければいけない条件をcmj5330さんから突き付けられていた。
藤崎はこれま何度もこのような場面で戦ったことだろう。それだけこの最終戦を迎えたときあとはどう打てば優勝への道に繋がるか熟知しているはずだった。
守りのスペシャリストはただ守るだけではない。安全圏に入るまではギリギリまで攻める。有利な状況で攻めておく。
そして、優勝が揺るぎないものとなった時に始めて守る。そして勝つのだ。
その戦いでここまで何度も栄光を手にしてきた。そして今回は天和という天運にも恵まれた藤崎だったが・・・
通常、配信している対局(タイトル戦の決勝)の優勝条件は、本人はもちろん現場のスタッフ含め間違いのないよう計算する。
今回は比較的簡単な計算だったので、スタッフが条件の確認にいったところ、藤崎から「大丈夫です」という答えが返ってきた。
スタッフもそれを信じた。
藤崎はオーラス1,300をアガった。しかしそれは優勝には届かないアガリであった。
5回戦成績
cmj5330さん+29.4P 七瀬+14.5P 藤崎▲15.1P 佐々木▲28.8P
最終成績
cmj5330さん+119.8P 藤崎+111.3P 七瀬▲100.1P 佐々木▲131.0P
点差を10.0P勘違いしたため、自分のほうが現状0.2P上だと思ってしまったのだ。
優勝したと思いホッとした表情が、一点して血の気が引くのが分かった。
百選練磨の藤崎でもミスはある。通常のリアルで打つ対局と違い、何時間もヘッドフォンをして外の音を遮断した状態でネット麻雀を打つといういつもとは違う環境の中での戦いだった。
そして、それだけ藤崎を追い詰めた相手がいたということだ。
cmj5330さんは開局いきなり国士をアガった。しかしそれを活かして、逃げずに戦いさらに加点してきた。その姿勢が今回の優勝に繋がったのではないだろうか。
誰かが終わってから、
「藤崎さんは、最後条件勘違いしなかったらマンツモあったんですかね?」との問に、
「いや、cmj5330さんの戦いかたが素晴らしかったから、結局、満貫ツモはなかったと思うよ」と誰かが答えていた。
私もそう思うと静かに横で頷いた。
これだけのプロを相手に勝ち上がり、そして決勝でも見事な戦いを見せてくれた。
ハンゲーム麻雀4代表のcmj5330さん、本当に見事な勝利おめでとうございました。
インターネット麻雀日本選手権。今年はユーザーの勝利で幕を降ろした。
来年もまた、cmj5330さんのような選手が挑戦し勝ち上がってくることを期待したいと思う。
参加したいという麻雀サイト様は、是非、連盟ホームページまで!!
カテゴリ:プロ雀士コラム