鳳凰の部屋/『借力』
2012年10月24日
鳳凰戦の予選は40回戦。12名の中から上位3名が挑戦権を得ます。
そして、決定戦は20回戦となります。
今日と明日の2日間がその総決算、泣いても笑ってもそれですべてが決します。
選手の思いは皆同じで、自分のすべてを出し切ること。これに尽きます。不完全燃焼では悔いが残るからです。
全部出しきって、それで負けたらしょうがない。そこには運の要素もあるし、勝負のアヤもある。
しかし、敗者は負けの因をそのせいにしてはならない。すべては自分の能力と思うことが大事です。
そしてまた鍛錬に励み、次のチャンスを待つ。これができるのが一流の打ち手の、条件といえます。
しかしこの年の決定戦、望月雅継は不調だったといえるでしょう。
手が入らないしアガリも単発で、後が思うように続かない。
満を持して臨んだ11回戦でしたが、1人沈みのラスを引く。
やることなすこと暖簾に腕押し、ヌカに釘です。
彼の実力はこんなものではない。それはボクも知っているし、瀬戸熊も右田も承知しています。
ボクが望月に持つ印象は、麻雀に対する姿勢が純真あること、そして雀風がパワフル。
純真さとパワフル…これも一流の打ち手には大事な要素です。
11回戦終了時
荒+56.8P 右田+45.8P 瀬戸熊▲7.8P 望月▲92.8P
その望月が、今までのうっ憤を晴らしたのが次の12回戦。
瀬戸熊が親で連荘して好調でしたが、その親で満貫を引いてまず逆転。
次が親番で、泣く子も黙る6,000オール。
連盟のAルール(一発・裏無し)でも打点が高いのが、望月の持ち味です。
こんなアガリをされたら、誰だって…(そりゃあニャーだろう)と云いたくなります。
そしてダメ押しの止めがこれです。
今度は4,000オールで、これが望月のパワーなのです。
こうした流れで戦い抜くコツは、頭を低くし好調の望月にけっして逆らわないことです。
嵐が過ぎるまで、家の中でじっと我慢です。それが賢明。
願いは、身近なライバルが勇気もって戦ってくれるのを祈ります。そして勢いの差で、たぶん彼に討たれる。これが、よこしまなボクの考え。
いくら望月がツモアガろうと、出ない限りボクと、瀬戸熊、右田との点差は詰まらないからです。これも戦いの兵法でしょう。
しかし、残念ながらそんなことは皆、百も承知ですから誰も出ていきませんでした。
ここで勇気を出す打ち手は、A1の椅子には座れない。なぜなら、それは勇気ではなく一見、勇気に見える無謀に他ならないからです。
結果、この半チャンの結末は次の通り。
ボクはこの後、粘って幸運にも浮きに回ることができました。これで十分です。
近かった右田とは点差が開き、マークしていた瀬戸熊とは、約90Pの差となっています。
麻雀は自分の力だけに頼らず、状況に応じて相手の運量を見極め、その反動を利用することが大事。
これが相手の力を借りる、借力です。
この半荘、ボクには理想の展開だったといえます。
一方、望月は失点を大きく減らし名前の通り…次に望みを継いだといえるでしょう。
しかし、どちらにせよ勝負はまだ途中経過、油断は禁物です。
12回戦終了時
荒+61.6P 右田+18.7P 瀬戸熊▲34.9P 望月 ▲43.4P
そして13回戦のサプライズ。
それは、ボクが南2局の親のときです。この時点でボクの持ち点は27,500。
一方の瀬戸熊は、38,400。右田は32,000で、望月が22,100。
望月はやっぱり不調。前回あれだけのトップを掴み取ったにかかわらず、今度はラス目。普通の流れなら2、3連勝と続くものです。
瀬戸熊からすれば、トップ走者のボクを沈めてトップを決める絶好のチャンスです。そうすれば一気に点差が詰まる。
瀬戸熊の8巡目の仕掛けが、自風のを鳴いてこう。
ポン ポン
そして、瀬戸熊の河がこう。
ボクには、ホンイチのテンパイに見える。この時、ボクの手がこうである。
親でがドラだから、ただ指を食えて見ているわけにはいかない。
取りあえず、上家の右田から出たに食いを入れてみた。遠い仕掛けは覚悟の上です。
いわばアガキ、よく言えば粘りです。
この食いを誰がどう見るか、それは分らない。
ただ、ボクの両面鳴きは相当の手が入っている証拠と、瀬戸熊は見ることは確かです。
ドラドラか、ドラ3のクイタンです。すると、このチーで下りてきたのが・・の3牌なのです。
そして手牌がこう。
チー
で当たると満貫、トイトイが付くと跳満まであるから打つ気はありませんでした。
でも、なら一度は勝負するつもりです。
すると、瀬戸熊から一瞬の間があって、手出しのが出てきました。謎です。
どうも…怪しい。手が決まっているなら、手出しはないのが普通です。となれば、ノーテンの場合もあり得る。
単純な手変わりなら危険なのは–か、ボクはそう考えます。そしてボクの次のツモがドラの。で、を勝負します。
チー
もちろん、この手がアガれるとは思ってもいない。流局で御の字です。
ところが、最後の打牌で瀬戸熊から一瞬の間があって、なんとがツモ切られたのでした。
間があるのが妙で、これも謎です。
ボクは、ただア然です。これがサプライズ。
この時ボクは、瀬戸熊の精気が消えていくのを感じました。
しかしサプライズは、連動したのです。
との謎の検証は、次回となります。(以下次号に続く)
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