『サプライズ』
2012年11月28日
では前回に続き、瀬戸熊のと打ちの謎の検証に入ります。
どちらも一瞬の間でしたが、瀬戸熊が考えたことは確かです。目線が手に落ちたから間違いありません。
ボクは勝負の最中は、相手3人の視線を追い、それも推理の材料にします。目の条件反射や輝きには、嘘がないので当たる確率は相当高いと見ます。
瀬戸熊が13巡目に、ドラのを掴んだときの手牌はこう。
ポン ポン ツモ
途中を切らずを落としてマンズに染める手順もありましたが、ボクの親落としを優先したのです。
それはそれで間違いではありません。瀬戸熊はトップ目で、相手のボクが沈んでいますから、オヤ落としをかける手は当然のことです。
瀬戸熊から見れば、ボクの両面の鳴きはタンヤオのドラドラかドラ3枚の仕掛けと見ていますから、だからこのドラは打てない。
手牌も染め手でないので、手が安いという弱みがあります。なので、ここは受けに回り打。
受けと攻め…知らぬ間に立場が逆転していたのです。あの一瞬の間は、これだったのです。
この後、ボクがを打ち出した時の手牌はこうです。
は瀬戸熊に対しては強い牌です。
チー
そして河がこう。
瀬戸熊の切りの後のですから、強打です。
麻雀には伏せられた手牌と未知のツモがありますから、読みや推理が外れることも間々あります。それがこの局です。
しかし、そこで読みの限界を悟りあきらめてはいけない。大事なのはそこから先です。
それには日常の鍛錬で、読みと推理の精度を高める努力をすること、これが大事なのです。
瀬戸熊は1巡凌いでも、次の安全牌がないから苦しい展開が続きます。そして最後のツモで。
瀬戸熊の決断は、ボクの手を食いタンと呼んだ以上、を切るべきと考えたに違いありません。
これが2度目の間だったのです。
自分が信じた読みの継続の一打ですから、一貫性のある正しい姿勢といえます。
これは責められない放銃でしょう。
前回、瀬戸熊の精気が消えた…と述べましたが、本当にボクにはそう見え感じたのです。
(このシリーズの瀬戸熊は終わった―)
これはボクだけでなく、対局者も見ているすべてのプロも感じたはずです。
ところがこの後、瀬戸熊は1,000・2,000をツモり、次のラス親でこれをアガリます。
これが、瀬戸熊の根性であり精神力なのでしょう。再びボクを沈めてトップに返り咲いたのです。
驚きました。これが2度目のサプライズ。そして1本場、3度目の驚きがこれです。
12巡目に右田のリーチを受けます。ボクは浮くことがこの局のテーマですから、すぐに引くわけにはいかない。
押しながら引きながら打っていたら、結果がコレです。
牌姿も受けも変わりましたが、うまくアガれたのは自分でも驚きです。これもサプライズでしょう。
この時、ボクは初めて優勝を意識しました。
このシリーズを振り返れば、ボクはオーラスに強かった印象があります。
麻雀はアガリも打ち込みも、連動します。けれど、サプライズも連動するとは思いもしませんでした。
そしてその驚きは、視聴者にきっと感動を与えることでしょう。
しかしこの日、瀬戸熊の踏ん張りもここまでした。
彼は14回戦にラスを引きます。
続く15回戦でもラスを食らいます。
あの瀬戸熊が…冴えない。やはり打ちで、体に毒が回っているのだと思いました。
これで3日目が終了。そして総合得点がこうです。
荒+99.2P 右田+48.9P 瀬戸熊▲57.8P 望月▲90.3P
この時点でボクの見立ては、望月は圏外。瀬戸熊もほぼ圏外。
ボクの理想は、瀬戸熊に最終日までに80Pの差をつけることでしたから、目的は達したといえます。
いや、デキすぎかも知れません。
明日は右田と一騎打ちになる、と予想しました。
ボクにとっては理想の展開です。
ところがその予想に反し、最終日は思わぬ方向へと麻雀が動いたのです。
(以下次号)
カテゴリ:鳳凰の部屋