『麻雀の品格』
2012年12月26日
勝負は…一寸先は闇。下駄を履くまでわからない…とはよく言ったものです。
ボクもこの道に入って37年になる。名だたる者を相手に、テンから11連勝で勝ち切ったこともあれば、
7トップの後の8ラスもある。大抵のことなら驚きはしない。
前回、瀬戸熊をほぼ圏外と断定したが、そうではなかったのです。
麻雀で大事なことは、流れと勢いです。
流れを知ってどう対応し、自分にどう勢いをつけるかが勝負です。
それがついに来たのです、この日の瀬戸熊の嵐が―。
この最終日にそれが出るなんて、予想もしていませんでした。
この辺はまだいい。右田もボクも浮いていますから余裕があります。
今、ボクにとって大事なのは右田との距離です。瀬戸熊がいくら頑張ろうと、届くはずがないからです。
しかし17回戦、まずボクが転びます。
通ると思った後筋の打ち込み。(痛てててっ!)です。
安全牌がなく仕方のない放銃です。そして、この半荘の結末がこうです。
ボクが痛いラスを引きます。右田との差は縮まりましたが、貯金があるからまだいい。
問題は、18回戦の瀬戸熊の固めアガリです。
この親満からスタートし、どんどんとアガリを積み重ねます。
彼の勢いが止まらないし、止められない。
これで3人沈めての3連勝、これが噂の瀬戸熊タイムです。
なんと彼は、3日間の沈みをたった1日で取り返す気でいるから、驚きです!
こうなるともう、点差の近い右田より瀬戸熊をマークです。
この勢いを止めなければ、てっぺんまで突き抜ける可能性が大なのです。
彼の持ち味は、この爆発力にあるのです。
彼との戦いに勝つにはこの時間を作らせないこと、これに尽きます。
少なくともボクはそう思う。
ですから、初日第2戦にボクが右田にを抜き打ったのです。
それが当たりかどうかは分らないけれど、彼の足を止める努力はする。
瀬戸熊タイムは出たらお終いで、出る前に体を張って防ぐ必要があったのです。
プロ連盟は約600名の大所帯。
そのてっぺんに昇るためには、そのマークをも振り切り一番手でゴールする力が必要なのです。
瀬戸熊はその日のうちに、その牌譜を検証したはずです。
しかし彼はその後3日間、ボクに愚痴の一つもこぼさなかった。いや、こぼしてはならない。
これが勝負師としての瀬戸熊の、格調の高い「麻雀の品格」なのです。
麻雀は強さも大事だが、品格はもっと大事です。
この品格を身をもって示し、後輩につなげる。後輩はさらに下の後輩につなげる。
これがプロ連盟の伝統となるのです。
19回戦になって、彼の勢いがやっと止まりました。これで一安心です。
19回戦終了時の持ち点。
荒正義+67.2P
右田勇一郎+59.1P
瀬戸熊直樹+33.2P
望月雅継▲161.5P(供託2.0P)
競技麻雀は、ちぎって勝つのが理想ですが、見方を変えるなら、
黒棒1本でも勝ちは勝ちと、見ることができます。
ここまでの戦いで、ほぼボクの理想通りの駒組ができました。
駒組みとは勝負の組み立てで、後は仕上げをするだけです。
この結果、瀬戸熊が優勝するためには、素点で3万点差を詰めるのが条件。
ですが、相手が1人ならまだしも2人では、至難の業です。
右田との点差は8.1Pボクが上。しかし、この差はあっても無きのごとしの点差です。
最終戦は、右田とボクの一騎打ちが予想されます。
だがこれがまた、大きな波乱を呼んだのです。
カテゴリ:鳳凰の部屋