第29期鳳凰戦の軌跡~反応~
2013年08月28日
9回戦のオーラス、暴牌とも言えるを打って終えた僕は、つかの間の休憩時間、
ふと今朝の光景を思い出していた。
朝食の最中、大家さんがきんかん(金柑)を持ってきてくれた。
すぐに食卓に出されたけど、僕はあまり食べたことがなかったので、「夜食べる」と言ったら、
「今一粒でも食べた方がご利益あるよ」と言われる。
「?なんで?」
「だってきんかんだよ。漢字は違うけど、戦の前に金の冠が届いたんだから」
「金冠かぁ。じゃあ食べたい」
上手い事言うなと5回戦分5粒食べた。
「食べ過ぎると、おなか下すから気を付けてね」
「・・・・・」(緊張でずっと下し気味である)
戦いとは違う緊張感が生まれそうだ。
そうこうしていると、今度は宅配便が届いた。中身は米、調味料、お菓子から野菜まで、段ボール箱いっぱいに詰められている。極貧時代の名残りで、今でも実家から定期的に小包と言う名の救援物資が届くのだ。
もう親の心配をしなくてはならない歳なのに、ありがたい想いと少しだけ恥ずかしい想いが交差する。
先日、山梨の温泉旅館に「鳳凰の間」というのを見つけた。
優勝したら、両親にプレゼントすると決めていた。
何で今思い出したのかは分からないけど、気合と感謝の気持ちを持って、卓に着いた。
10回戦東2局1本場
テンパイ濃厚な前原さんの仕掛けに、ツモときて、を強打。前原さんの少考。
通ったようだった。が、次の瞬間「カン」の発声。通ったはずが、通らなくなるケースがある。
リンシャンに手を伸ばしてから打牌を終えるまでが、長い長い時間だった。事なきを得る。
しかし、当然のようにその後、リーチの荒さんから出アガる。
実は似たケースが、前日の4回戦にもあった。
藤崎さんの打牌のに、荒さんが大明カン。
そして2巡後、藤崎さんに重なっていたはずのドラを喰い取ってのアガリ。
もう理では説明がつかない戦い。それは本当の意味での死闘になりつつあった。
そして迎えた10回戦東4局3本場。
親番、持ち点36,900のトップ目で連荘中の場面、ついに手が入る。
配牌
ドラ
打として、次巡ツモ! 打。
どこまで伸びるのか解らなくなるくらいの手牌。
だが、そんな空気を察して、南家・前原さんが動きソーズのホンイツへ。
「やっかいだな」
前原さんから余ったをポンして、わずか4巡目で12,000点のテンパイ。
待ちはソーズで、下家の前原さんとかぶっている。
僕がツモ、ツモ切りすると前原さんがチー。そして打。
無意識に反応していた。
「カン!」
もちろん、ここのリンシャンでツモれば、トータル2着の前原さんに18,000をかぶせられるとか、もうソーズ待ちだから隠す必要がないとか、色々理由付けはできる。だが、正直な所は身体が勝手に動いただけだ。
リンシャン牌は。最悪だ。打か、打か。
やり過ぎ感を出してはいいけない場面。(もう充分にやり過ぎかもしれないが)
自分を抑えるようにツモ切り。下家の前原さんがチーをしてテンパイ。
チー チー ポン
テンパイを入れさせてしまう。
数巡後、ツモの4,000オールをアガる。カンをしようがしまいが結果は同じであった。
後輩の解説陣もア然とする1局。
そのステージを目指す未来ある彼らに見せたかった戦い。本能の戦い。
この場所に立つまでの日々を想い出せば、苦しいけどこの上ない幸せな時間。
10回戦終了時成績
瀬戸熊+72,5P 前原+30.6P 藤崎▲47.0P 荒▲56・1P
家路に着き、パソコンを開くと、9回戦のオーラスの打ドラ打ちは、瀬戸熊らしいが7割、やり過ぎが3割の視聴者意見だった。
信頼する友の一言。「打つと思ったよ」僕は「そっか」とだけ答えた。
この一言が、OK、OKと言っているように思えた。
勝負は中間点を終えた。
リードはしているものの、追って来るのは麻雀界最高峰の猛者3人である。
次の対局まで1週間あった。
先頭で待つインターバルは、長い長い1週間になりそうな気がしていた。
そして、それは現実のものとなり僕に襲いかかるのであった。
第29期鳳凰戦の軌跡~圧迫~へ続く。
カテゴリ:鳳凰の部屋