プロ雀士インタビュー

第192回:天空麻雀20男性大会優勝特別インタビュー 荒 正義  インタビュアー:増田 隆一

第20回と言う記念すべき「天空麻雀」が行われた。表舞台で闘う選手はもちろん、テレビ局関係者や、撮影現場のスタッフ、そして楽しみにしてくださる視聴者の方、全ての人たちの支えで、20回と言う放送回数を迎えられたのであろう。素晴らしいことである。そして、この舞台で優勝したのは荒正義。
早速、荒にアポイントを取り、インタビューを行わせてもらうことになった。

 

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“入り方”

 

増田「まずは優勝おめでとうございます!」

荒 「ありがと!」

増田「早速なんですが決勝のメンツを見て、何を感じましたか?」

荒 「(仕掛けの多い)灘さんが入ってて、真っ直ぐなチームガラクタ(※前原、ヒサト)2人でしょ?やりづらいなと」

増田「少しでも気を抜いたらすぐに置いていかれそうなメンツですもんね」

荒 「前原、ヒサトのリーチには、自分が1シャンテン以上なら打ち抜いちゃおうと思ってたね」

増田「なるほど。そして1回戦、淡々と進み、3着ながら、それ程トップの灘さんと差もなく終わりましたね」

荒 「1回戦目は何もなかったでしょ?原点で3着かよと。まあ見せ場は2回戦だから(笑)」

増田(あっ、1回戦目の話は終わったのね。実に荒さんらしい)

 

 

“風を掴む”

 

増田「なるほど(笑)。そして2回戦」

荒 「どうせトップは絶対だから。その上で灘さんを3着にすれば優勝と。点差も大してないし、どこかで1回噴き切ればいい。リーグ戦不調だからその分、他は全部勝つ気でいるから(笑)」

増田(2回戦目に入る時の心構えを聞こうとしていたのだが、質問する前に答えてくれた。よく場面が見えてて流石です!)

荒 「カン五筒ツモで、ちょっと風(キッカケ)を掴んだかなと」

 

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増田「待ちがドラの表示牌とキツく、三色の手替りもあるなど、ヤミテンにしたくなる要素もありますよね?」

荒 「様子見も兼ねて、親で連荘してる灘さんの押さえ込みに行ったんだよね。どこかで風を掴んで一気に決めないとやられちゃうから」

増田「それが功を奏し、さらに加速する12,000と」

 

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荒 「コッチはもちろん知る由もないんだけど、終わった時にヒサトがなんだよチクショウって言ってたよ(笑)」

増田「向こうからは開いた手を見て、五索が出ない形になったの分かりますからね」

 

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荒 「そして6,000オールと。95〜97%くらいは決まったと思ったな」

 

 

“感性と葛藤の話”

増田「その次局、アガリ逃しがありましたよね?確かに一筒四筒が4枚切れですが、荒さんは勢いのまま行き切るかなと思ったんですが?」

 

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荒 「ああ、あれね。感覚的には負けないと思ってるんだよ?感性がそう言ってるから。でも、(ほぼそのままで勝ちの状況で)4枚切れで追い掛けて、もし負けたら何を言われるか分からないじゃない?普段の麻雀ならトドメだから行き切るよ。この辺はテレビ対局の葛藤だよね」

増田「それ言っちゃっていいんですか?」

荒 「プロが感性だけでなく、そう言う葛藤とも戦ってるって見てる人が知ったら面白いじゃない?面白ければいいんだよ。あ、今日喋ったことは何書いてもいいからね(笑)」

増田(さすがのサービス精神です…)

 

 

“灘さんへの想い”

 

荒 「その後の灘さんのヤミテンは見事だったな。コッチは点差的に絶対リーチに来ると思ってるから。まさかヤミテンにするとは思わないじゃない」

増田(あ、別の局に移ったのね)

 

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増田「確かに、追う立場があそこでヤミテンはないと思いますよね」

荒 「あの辺りのセンスって言うか、感性っていうか凄いんだよね。小島先生も死んじゃったし、灘さんにはたとえ弱くなっても元気で麻雀を打ってて欲しいな…」

少し話は逸れたが、その後のオーラス勝負、荒は見事にアガリ切り、第20回「天空麻雀」優勝の栄冠を手に入れた。

 

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“プライベートの話”

 

増田「読者の方が、テレビや雑誌などで、荒さんを見かける機会は多いと思うんですが、プライベートでは最近何かありましたか?」

荒 「猫が3匹死んじゃって、まあみんな20歳以上で老衰なんだけど、ときどき落ち込むんだよな…でも、犬のエマが死んだ時が一番落ち込んだな…」

増田「それは辛いですね…」

荒 「キーホルダーにして持ち歩いてるんだよね」

 

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私も数年前、実家の犬を看取ったことがある。老衰とは言え、ペットとの別れは辛いものだ。荒は私との間に流れたしんみりとした雰囲気を感じ取ったのか、イタズラっぽく笑いながら…

荒 「エマは勝又くんに似てるんだよね。ブログで書いたら本人喜んでたよ(笑)」

増田「それ見ました(笑)」

荒 「でもさ、エマが死んだの勝又くんに伝えてないんだよね。気落ちするかもしれないし、勝負前にそんなこと言えないじゃない」

増田(最後は笑い話にして雰囲気を変える気配り。これだけ空気が読めるから、当たり牌も止まる訳だ。それにしても、勝又もまさかこんな所で話題にされるとは思うまい…)

 

 

“高齢者の星”

 

荒 「じゃあそろそろメシ食べようか」

増田「ご一緒させていただきます」

食事中のたわいも無い話のどこから繋がったのかは記憶にないが、荒がふと話したこんな会話が頭に焼き付いている。

荒 「仲間でも、奥さんでも誰でもいい。1人でもいい。応援してくれる人がいるだけで力になり、ファイトが湧く。その人だけは絶対に見てるから、いい麻雀を見せたい。66歳からタイトルを1、2個は取って、まだがんばれるぞという応援歌として、高齢者の人たちにがんばりを与えたい」

どんな世界でも、同年代が一線級でがんばる姿は励みにもなり、がんばりの素となると思う。

 

 

“気配りの人”

 

インタビューの最中、荒は何度も「ボリューム足りた?」(※この内容で必要文字数に達する記事を書くことが可能かという意味)と繰り返していた。後輩が記事を書くにあたり、困らないかを気遣う、実に荒らしい言葉である。

 

 

“荒に向けて”

 

最後になったが、荒が灘に思う気持ちと同じで、私も荒にいつまでも元気で麻雀を打っていて欲しいと切に願う。まだまだ強くいてくださいと、一言だけ我儘を添えて…