第165回:プロ雀士インタビュー 二階堂 亜樹 インタビュアー:黒木 真生
2017年05月31日
何に焦がれたのか。
何者になりたかったのか。
誰かの何かになれたのか。
まだまだ道半ばですが、そんな半生を物語として、二階堂亜樹に興味がある方はもちろん、無い方にも是非観て頂きたいと思います。
二階堂亜樹の半生を描いた劇画「aki」が映画化されることが決まり、モデルになった亜樹本人からのコメントが求められた。
上記はその一部である。
冒頭の3行、中でも2行目を見て、私は20年前のことを思い出した。
思い出して、いろいろと書きたいことがあるのだが、それだとインタビュー記事にならないので、亜樹さんに直接うかがうことにする。
誰かの何かになれたのか
黒木「映画ですよ、映画。」
亜樹「ね。」
黒木「小島武夫も漫画にはなってるけど、映画にはなってないからね。」
亜樹「畏れ多いです。それと、実感ゼロです。誤解を恐れずに言えば、完全に他人事です。」
黒木「なんでよ。こんなチラシとかポスターとか目の前にしてるのに。」
亜樹「だって、現場に1回行っただけだし。まだ映像も見てないし。自分が何か努力したわけじゃないですから。」
黒木「確かに。でも嬉しいでしょ?」
亜樹「当たり前ですよ。それはもう感謝しかないです。出演されてる方も素晴らしいし、こうして夏目坂スタジオにもポスター貼ってもらったりとか。幸せですよ。でも、頭のどこかで冷めてる私がいて。私、そういう人間なんです。これだけ麻雀の世界に長くいて、いろんな経験をさせてもらっても現実感がない時があるっていうか。私は誰で、何をしようとしてるんだろうって、変に冷めて考える時もあります。」
黒木「あなたは二階堂亜樹で、一番人気がある麻雀のプロですよ。間違いなく。誰かの何かになれたのか、というコメントがありましたけど、確実に誰かの何かにはなれてますよ。その誰かは、少なくとも千人単位だろうし、下手したら万単位ですよ。」
亜樹「そうだとしたら、とてもありがたいんですけど。でも確実に、何者になりたかったのかは、今でも全然わからないです。」
黒木「まぁ、それは世の中の皆がそうかもしれないけど。でも現実に二階堂亜樹というプロ雀士として素晴らしい活躍をしてるんだから、それでいいじゃないですか。」
亜樹「現状に不満があるとかじゃないんです。もっと別の誰かになれたんじゃないかとか、そんなことも考えないんです。ただ、ふとした時に思うことがあって。私なんかがプロ雀士を名乗ってて良いのかな、とか。そういう不安に近いものかな。」
黒木「コメントをもらったとき、僕の知らない間に亜樹さんにゴーストライターがついてて、その人が書いたのかと思いました。でも、自分で書いたって言うから、意外とコメント力ある! と感心したんです。」
亜樹「そうですか、ありがとうございます。映画には、そういうこと、描かれていましたか?」
黒木「あんまり内容については言わない方が良いと思うけど、描かれていたと思います。ていうか、亜樹さんのコメントがなければスルーしていた部分かもしれない。亜樹さんのコメントありきで観ると、作り手の皆さんが表現したかったことに気付けるのかも。そういう意味でも良いコメントだったんじゃないでしょうか。」
亜樹「そうなんですね。初日の舞台挨拶の前に観る予定なんで、それが楽しみです。」
※編集部注:初日舞台挨拶のチケット発売中です。
黒木「僕もラッシュ(荒編集)しか観てないので、完成版を観るのが楽しみです。亜樹ちゃん、大きくなったなぁ、て感慨にふけって、泣いてしまうかも。」
亜樹「そんな小さい時から知り合いじゃないですよね(笑)。」
何者になりたかったのか
黒木「亜樹さんは覚えてないでしょうけど。僕は初めて亜樹さんと会った時のことを覚えています。20年前、有楽町の錦江荘でリーグ戦を打ってる時に初めて見て。小柄で可愛らしい、ショートヘアの女性が帰っていくのが見えたんです。女性ていうか、まだ子供かと思ったけど。」
亜樹「ちゃんと対局に集中してくださいよ。」
黒木「それほど存在感があったんです。というか、珍しかった。」
亜樹「当時の麻雀界は、若い女性は(清水)香織さんか(最高位戦の渡辺)洋香さんぐらいでしたもんね。」
黒木「今思うと、あの2人は何者になりたいかがハッキリしていた気がして。それでこの話を持ち出したんです。2人とも、この世界でやってやんよ! という雰囲気があった。でも、亜樹さんにはそれがなかった。」
亜樹「他人のことは分かりませんけど、その後実際に2人とも成功されてますね。香織さんは女性で初めてG1タイトルホルダー(第27期王位)になられてます。プロ入りして4年ぐらいだし、本当にすごいですよね。」
黒木「ヨーコさんはヨーコさんで、プロ雀士として初めて写真集を出したり、禁煙雀荘『fairy』を成功させたりと、清水さんとは違った方向性だけど、プロとして大成功されてます。」
亜樹「私からは、何も考えてない感が出てましたか?」
黒木「何か、場違いな娘がいるな、という感じでしたよ。掃き溜めに鶴と言っても表現が古すぎて分からないかもしれんけど。とにかく違和感が凄かった。」
亜樹「ふーん。自分自身が、何がやりたいか分かってなかったからですかね。」
実はこの時、私は帰り道で亜樹さんに会っている。銀座の地下街を歩いていたら、十字路のところで、さっき錦江荘で見た可愛らしい子がいて目があった。私は思わず「これからどこかに行くの?」と聞いてしまった。
もちろん、私にやましい下心があったわけではない。ただ目があったからそう言ったまでなのだが、亜樹さんはただ、首をかしげて、ニコっと笑っただけだった。
それ以上何か言っても彼女が困るだけだと思った私は、じゃあね、と言ってその場を去った。
いま思うと、亜樹さんはその時、本当にどこに行ったら良いのか、わからなかったのかもしれない。
普通の家庭に育って、普通に学校に行って、普通に好きな人ができて結婚する。あるいは、仕事に生きがいを見出す女性もいる。そういう人生なら「何者になりたいのか」という問答をしなくてもよかっただろう。いや、したとしても、社会や家庭が用意してくれた選択肢から選べたはずである。
しかし亜樹さんは、今の日本では珍しく、十代の中盤以降を一人で過ごしてきた。
何者かになろうとする前に、まず生きなければならなかった。
だから生きるという目的以外のことをしようとした時、答えがすぐ出てこなかったのじゃないだろうか。
もしかしたら、銀座の地下街の十字路で佇んでいた亜樹さんは、本当にどこにも行けず困っていたのかもしれなかったのだ。
黒木「あの時、銀座の十字路で見た亜樹さんの姿と、主演の岡本夏美さんの姿が重なって見えたんですよ。」
亜樹「てか、それいつのことか全然覚えてないです(笑)。たぶん、本当に人生どうするのかとか全然考えてなくて、麻雀プロの試験を受けて合格してリーグ戦の見学に行ったんだと思うんですけど。でも銀座の十字路は関係ないですよ。たぶん、普通に道がよくわからなかっただけですよ(笑)。」
黒木「あ、そ。」
何に焦がれたのか
黒木「何に焦がれたかっていうのは、これはもう麻雀で答えが出ているんじゃないんですか?」
亜樹「麻雀の何に焦がれて、ここまできたのかなーって。」
黒木「なるほど、何をどうしたものやらという亜樹さんの人生の中で、確たるものは麻雀だけだったってことか。」
亜樹「そうですね。もうずっと、麻雀にだけしがみついて生きてるって感じです。嫌なことがあったり、気に入らないことがあっても、そこに麻雀があるから、その場所に残っていたのかもしれません。麻雀にしがみついてなかったら、もうとっくにいなくなっているかもしれないですね。」
黒木「そんなに嫌なことが多かった?」
亜樹「今はだいぶ大人になりましたけど(笑)。昔はとにかくめんどくさいと思ったらすぐやめちゃうし。やりたいことだけやってた感じですね。」
黒木「平気でイヤです、って言ってた時もありましたね(笑)。」
亜樹「イヤなものはイヤですから。相手が相手の都合で頼んできても、私がイヤなら断ってました。困るのは相手だけだし。」
黒木「赤木しげるみたいなとこありましたよね。ものすごい話を持ちかけられても、気分じゃないんで、みたいな(笑)。」
亜樹「顔を青くするべきなのは、後ろのヤーさん連中さ、みたいなやつですね(笑)。いま思うと、生意気なガキだなーとも思いますし。すごいチャンスをいただいてたのに、乗っからなくてもったいなかったよなーとも思いますけど。でも、イヤなものはイヤでしょうがないですよね。」
黒木「それだけ言うと亜樹さんがイヤな性格みたいに思われるかもしれないけど、人一倍、気を遣う、優しい人でもあるんですよ。」
亜樹「いや、別にフォローとかいらないですよ。」
黒木「僕も色々とお仕事を頼んできて、これは姉妹(姉は同じ日本プロ麻雀連盟所属の二階堂瑠美)はイヤがるだろーなー、というのが見えてる時が多かったけど。僕が頼んだから請けてくれたっていうのあったと思ってます。自分の味方だと判断したり、お世話になったと感じた相手には、多少イヤでもサービスしてくれてたでしょ?」
亜樹「サービスって言うと偉そうですけど。そういうところはあったかもしれません。」
小島先生との出会い
黒木「昔は自由奔放な二階堂シスターズでしたが、ある時突然変わったんですよね。1年ぐらい、一緒にがっつりとした仕事をしない時期があって、久しぶりに仕事をした時、変わったなーって。」
亜樹「日本文芸社から麻雀入門書を出版した時ですよね。」
黒木「写真を撮る時、姉妹が自らポーズを取り、撮影はものすごくスムーズで、びっくりしたんです。で、きみたち、変わったねって言ったら、瑠美さんか亜樹さんか忘れたけど『ぐずぐず言ってても終わらないんで。さっさとやってさっさと終わらないと迷惑かかるんで』と返されて。ああ、この人たちはプロになったんだなーと思いました。」
亜樹「その当時、麻雀格闘倶楽部のイベントで、瑠美ちゃんと小島(武夫)先生と3人で全国のゲームセンターを回る仕事が多かったんですよ。その影響ですね。」
黒木「でも小島先生って人に説教したりしないよね?」
亜樹「何も言われないんですけど、見てたら、めちゃめちゃファンを大事にするんですよ先生は。当時でも70歳近くて、私らより45歳ぐらい年上ですよ。長旅で、私らは疲れて正直ダルいーって時でも、先生はお客さんに自分から話しかけたりとか、ずっとニコニコして、常に神対応ですよ。」
黒木「確かに、僕もいろんな現場で先生の行動を見てるけど、率先してスタッフの人の言う通りに動かれてて。あと、新しいものにもチャレンジされますよね。ロン2のサービスが始まるや否や、パソコンを購入して『激打』でブラインドタッチの練習を始められた時はビックリしました。」
亜樹「私、そういう先生の姿を見ていて恥ずかしくなってきて。瑠美ちゃんと一緒に、これじゃいけないよねって。天下の小島武夫が神対応しているのに、私らがしんどいとか言ってられないよねって。そこから変わりました。そういえば、行きと帰りの新幹線の中でも、私らに気を遣ってくれるんです。普通、後輩が大先輩に気を遣うのが常識なのに。」
黒木「それ僕も経験しています。だから僕、世界選手権でパリに行った時は、小島先生のお世話をしますって言って同室にしてもらって、実は先生から逆に気を遣ってもらってました。その時、似たような話をして。ファンを大事にされるのは分かるけど、この年でパリまで来て大変だったでしょうって言ったら、『麻雀のプロなんて大したもんじゃないんだよ。でも、誰かが喜んでくれるんなら、そこに価値が見出せるじゃない。ね!』と言われて。やっぱり小島武夫カッコええわーって、しびれてたんですよ。」
亜樹「小島先生の影響があったから、私も『誰かの何かになれるのだろうか』と考えるようになったのかもしれません。自分が何者になろうとしているか、の前に、そっちの答えが先に来るのかもしれませんね。」
黒木「劇画では小島先生との出会いがプロになるきっかけになってますけど、実際には違いますよね。」
亜樹「まぁ、劇画は劇画で、映画は映画なんで。私の人生をモデルにしてもらってて、ストーリーは皆さんが楽しめるようにエンターテインメントっていうか、フィクションももちろんあります。でも、私がどういう気持ちだったかとか、何を考えていたのかとか。そういうことは、プロのクリエイターの方々が全力で作ってくださっているので。私にとっても新しい発見があるかもしれないです。」
ノンフィクションのaki
黒木「どこまでがフィクションでどこまでがノンフィクションなのか気になるところではありますが。」
亜樹「実家が鎌倉で雀荘やってて、7歳の冬にお母さんがいなくなったのが事実です。」
黒木「実家が雀荘で、お母さんがいなくなって、そのうちお父さんも行方不明で、中学卒業後すぐ一人で東京に飛び出したっていうのが劇画のストーリー。映画では、瑠美ちゃんの年齢が少し上に設定してありますけど。あまり言うとネタバレになっちゃうので、とりあえずは事実だけを話してもらいましょうか。それが映画でどうなっているか、お楽しみ、という感じで。ではまず、お母さんが突然いなくなって、どう思いましたか?」
亜樹「最初は、ああ、そうなんだって。瑠美ちゃんとは『パパとママも男と女だから、いろいろあるよねって』言ってました。お母さんがいなくなってからは、お婆ちゃんの家に預けられたんですけど、ちょうど冬休みだったんで、ずっとそこに住むとは思ってなくて。ある時、もう生まれ育ったお家には帰れないんだって気付いて、急に泣いちゃった記憶があります。」
黒木「その後、お父さんもいなくなったんでしょ?」
亜樹「お父さんはしょっちゅう行方不明になっていたので(笑)。またか、って感じでしたけど、最後のは結構長くて。最後っていうのが、ちょうど中学を卒業するぐらいの時ですね。」
黒木「ご両親がいなくなったところで、出て行っちゃったわけですか?」
亜樹「その頃、お婆ちゃんの家も色々とあって大変だったんですよ。そこに私らがいても負担だし邪魔だろうなーって思ってて。それと、時々家出もしていたし。いつ、どのタイミングで家を出たっていうのが、記憶としては曖昧なんですよね。」
黒木「瑠美さんも同時期にいなくなっちゃったんですよね。」
亜樹「はい、別々に生活してましたね。瑠美ちゃんは高校をやめて、とんかつ屋さんでアルバイトしながら自活していたんですけど、あまり会いには行かなかったです。」
黒木「家を出て、結局麻雀ばかりやっていたというのが謎っていうか、しっくりこなくて。無理矢理、麻雀を続けていたら両親と会えるような気がしたとか、理由付けをしたくなるんですけど。」
亜樹「そういうのはなかったですね。ただ、実家が雀荘だったし、心の奥底で、自覚のないレベルで、そういう気持ちがあったかもしれません。14歳で東京に飛び出して、わけがわからない中で、麻雀だけが頼りだったのかも。」
黒木「主演の岡本さんの演技を見て、麻雀に対する姿が初々しくて、昔の自分を思い出したと言ってましたよね。やっぱり最初、知らない人と麻雀をやった時はドキドキしましたか?」
亜樹「私はあまり緊張とかしないタイプなんですけど、その時ばかりは少しドキドキしましたね。自分のことでいっぱいいっぱいで、相手がどんな人だったかとか、全然覚えてないんですよ。」
黒木「映画の予告編では、めちゃくちゃキレられてましたけど(笑)」
亜樹「それ私も観ました(笑)。実際には、まったくキレられるようなことはなくて、ものすごく可愛がってもらいましたよ。みんなとても優しかったです。」
黒木「最初から勝てましたか?」
亜樹「負けてばっかりですよ。私って本当にセンスないなーって思ってました。まったく向いてないしって。でも、好きで好きで仕方なくて、なぜかずっと麻雀をやってしまうんです。」
黒木「理由はなく、とにかく麻雀が好きで、麻雀が持つ何かに焦がれていたってことなんですね。でも、麻雀のおかげで、あり得ないような奇跡の出会いがあったわけですよね。」
亜樹「そうなんです。私が八王子の漫画喫茶に行ったら、そこにお父さんがいたんですよ。」
黒木「ありえないよね。」
亜樹「ありえないっす。鎌倉で離れ離れになった親子が、八王子の、しかも漫画喫茶ですよ。私はともかく、相手はいい歳したオッサンですよ。漫画喫茶とか行くなよって(笑)。でもいてくれたから、出会えた。お父さんは家に帰ったら私も瑠美ちゃんもいなくなってて、あらら、って思ったけど、まぁ探しようもないし、しょうがないって。それでまた、自分も東京に出てきちゃってたみたいで。」
黒木「八王子の雀荘にいたんですね。」
亜樹「私がいた雀荘から見て、その漫画喫茶をはさんで反対側の雀荘で働いてたんですよ。それで連絡が取れるようになって、後日、瑠美ちゃんも呼んで、一緒に麻雀をやりました。」
黒木「雀荘で生まれた姉妹が、18年を経て、初めて家族麻雀か。そのエピソードを漫画にしても、そんな都合のいい話あるかよって言われて、ボツにされそうですよ。」
亜樹「携帯もない時代ですから、1回離れちゃったら、もう二度と会えない可能性もあったわけで。」
黒木「麻雀のプロはいつ頃から目指し始めたんですか?」
亜樹「意識し始めたのは結構早かったです。家出してすぐ、プロ雀士というものの存在を知ってからは、いつかはなってみたいなーって。でもなれないだろうなーって。そう思ってましたよ。だから、実際になった時は、あれ? 私なんかがなっていいの? って気持ちでしたね。」
黒木「これまたご都合主義的で悪いんですけど、前に聞いた時は『プロ雀士をやって有名になれば、どこかでお母さんが見つけてくれるかも』と言われたんですよね。」
亜樹「そういう部分もあった、って話ですね。別にお母さんに見つけてほしいから麻雀のプロをやっているわけじゃないんです。でも、やってたら、そういうこともあるかなって。けど、そこそこ露出が増えて、街中とか電車の中で声をかけられるようになっても、お母さんはまったく連絡くれない。ああ、私たちのことは、もう触れたくない過去なのかなって、瑠美ちゃんと言ってたんです。こんなに目立つ名前で、姉妹で同姓同名とかもあり得ないから、成長して顔が変わっててもわかるでしょって。」
黒木「諦めていたら、ある日突然、ですよね。」
亜樹「ロン2の名古屋の大会に来てたんです。いきなり『覚えてますか?』って言われて。すみません、覚えてないですって言ったら、そうですよね。だいぶ会ってないからって。こちらこそすみません、どなたですか? って言ったら『お母さんです』って(笑)。」
黒木「天然すぎるでしょう(笑)。可愛いお母さんですね。」
亜樹「すごく瑠美ちゃんに似てて、だから最初あれ? って一瞬思ったんですけど、でもさすがにって。で、お母さんて分かって、瑠美ちゃんにそっくりですねって言ったら、やだ、私そんな美人じゃないよって(笑)。」
黒木「いや、親子だから似てるって話なのに。」
亜樹「今から7年前ぐらいですかね。それまで全然、お母さん気付いていなかったらしくて。美容院かどこかで読んだ雑誌で見て、驚いたそうです。で、ロン2の大会に出て、予選を勝ち上がってきたそうです(笑)。」
黒木「いやそれもロン2事務局に電話とかメールでいいでしょう(笑)。勝たなくても会わせてもらえるじゃないですか。」
亜樹「でも、予選を一生懸命やってくれたのが、すごく嬉しくて。しかも勝つところがいいじゃないですか。」
黒木「やっぱりあなたたちは、麻雀に導かれて、麻雀のために生きてるんですよ。陳腐な言い方になってしまうけど。」
亜樹「いえいえ。嬉しい言葉です。いまだに麻雀に見捨てられるんじゃないかと不安になる時があるんで。」
黒木「もう大丈夫ですよ。昨年、女流モンド杯で予選敗退して、次の開催に出場できないかもってところから、入れ替え戦で勝って、女流モンド杯でも優勝したわけですから。それ以降、女流プロ麻雀日本シリーズ、麻雀最強戦女流プロ代表決定戦と、優勝三昧。そして昨年から今年にかけて、著書が4冊ですよ。映画も始まるし、子供は可愛いし、旦那さんはちょっとイチビリなところもあるけど、優しくて、一応は元ジャニーズだし。順風満帆とはこのことですよ。」
亜樹「おかげさまで幸せな生活をさせていただいてます。」
黒木「映画で描かれる時代は、今の大成功している亜樹さんと比べて、どんな過去でしょうか?」
亜樹「まだ予告編しか観てないですけど。15歳で家族はバラバラで家もなくて、ただ麻雀しかなくて。でも、何かになろうとする人の、一生懸命に生きる姿が描かれているような、そんな気がします。私もチラっと出演させてもらったんですけど、その時にいらっしゃったスタッフの皆さんの熱気とかは、凄いなって思いました。監督さんもアツい人で、主演の岡本さんも、可愛らしいけど芯の強そうな人だったし。きっと、素敵な作品に仕上がっていると期待しています。ほかにも出演されている役者の皆さん、すごい人たちだとうかがってますが、現場で皆さんとは会えませんでしたので。舞台挨拶の前に拝見するのが楽しみです。あと、友情出演で、宮内こずえプロ、和泉由希子プロ、魚谷侑未プロ、高宮まりプロ、東城りおプロ、小笠原奈央プロと、こちらも超・豪華メンバーが出てくださいました。そちらもお楽しみにしていただければ幸いです。」
20年前、銀座の地下の十字路で迷っていた少女は、こんなに立派なプロになりました。
映画「aki」では、それよりもっと昔の二階堂亜樹の姿が描かれています。
何に焦がれたのか。
何者になりたかったのか。
誰かの何かになれたのか。
私も映画館でその答えを考えてみたいと思います。
カテゴリ:プロ雀士インタビュー