第233回:プロ雀士インタビュー前編 魚谷侑未 インタビュアー:福光聖雄
2022年02月15日
2022年1月5日、A2リーグ最終節A卓の対局を祈るように観戦する僕がいた。
魚谷、初戦をトップ。やや安堵する僕。
しかし、僕の祈りとは裏腹に、その後4着を3回。
魚谷の降級は決定的になってしまった。
(補足:サムネイルは、最終節の対局後のインタビューのキャプチャ)
ファンの方は想像つきにくいかもしれないが、――まあ、なったことのない僕が言うのも違和感があるが――Aリーグからの降級は非常に重いし、悔しい。
この数日後に予定していた女流桜花と鸞和戦の優勝インタビュー、その優勝など吹き飛んでしまい、慰撫するインタビューになってしまうのではないか。
そんな心配をしながら、インタビューに臨んだのである。
【麻雀の変化】
もう一つ僕には心配事があった。
お互いに麻雀には熱く、盛り上がるのはいいのだが、熱くなりすぎてしまい、インタビューが麻雀だけにならないかと。
重要なイベントとして、魚谷は昨年に結婚している。
魚谷ファンは目を瞑りたくなるかもしれないが、そのあたり、しっかりとインタビューしていきたい。
福光「去年の出来事を振り返って、どんなことがありました?(露骨)」
魚谷「あー、結婚したねぇ。1月に入籍したからそろそろ1年だわ。」
福光「うんうん。急だったからびっくりしたよ。他にはー?」
魚谷「リーグ戦で最下位になった。」
魚谷「リーグ戦で最下位になったときに、麻雀を見つめなおさないといけないなと思ったの。そこまでは何かしっくりきてない感覚はあったのだけど、忙しいことを理由に向き合えてなかった。」
世の中にコーチが存在するように、自分で自分のプレーを見直して修正していくのは難しい。
結果が偶然に左右される麻雀は特に難しいと思っている。
魚谷はさらにこう続けた。
魚谷「一昨年、黒沢さんがリーグ戦でA1に昇級したじゃん。リスペクトもあって、もう少し打点寄りにしたほうがいいのかなーと鳴きを減らしたのよ。でも、その弊害で、鳴くべきときにも仕掛けてなくて、それがダメだった。」
魚谷「あと、自分にはそのスタイルが合わないのもあった。今期は(よく仕掛ける)藤島さんが勝ってるし、今は自分に合った麻雀にした方がいいって思ってるよ。」
魚谷の強さの一つは『理詰め』であると思う。
女性は感覚的、男性は理論的な人が多いと一般的には言われているが、魚谷と麻雀の話をすると、理論がちゃんとしているなぁと思わされることが多い。
この自己分析も印象的だったが、夏以降、練習量を増やしたと断言したのも驚いた。
魚谷自身も、この修正と練習量の増加による効果を実感しているという。
魚谷「あともうちょっとで残留に届きそうだったけどねー。前半(内容が)悪かったから仕方ないよ。そこから立て直そうと最善は尽くせたから。」
とサバサバした様子。
【Mリーグ、セガサミーフェニックスに東城りおが加入】
福光「今期から後輩にあたる東城さんが加入して、なにか変化はあったりする?」
魚谷「心の部分で、どういう心構えで打ったらいいかは、よくアドバイスしてるかも。元々メンタル強いからあまり心配はしてないけど。チーム戦って思うと、日和ったり行き過ぎたりしちゃうから、個人戦と思ってやりな、って言ってるよ。そういうのはベテラン3人が引き受ける。」
今期始まってすぐだったか、『自分でなんとかしなきゃって思っちゃったよー。チームメイトを信じなきゃ。』と内輪のグループLINEに嘆いたことがある。
責任感の強い魚谷らしいエピソードで気に入っている。
左ビスコ、右もちゃ。最近のプライベートは猫しか語ることありませーん、とガード固し。
「もういい!一人で生きてく!」「ダメです。結婚しなさい。」こんなやりとりした仲じゃん。
【13年間の思い出】
魚谷と僕は同期の25期生。今年度が終わって、プロ入り後13年が経過する。
ほぼ13年の付き合いなのだが、どういうキッカケで仲良くなったのかは全く覚えていない。申し訳ない。
プロ13年間の思い出を聞いたら、意外な答えが返ってきた。
魚谷「福光くんが1年目の夏に新人王を獲ったとき、すごいなーって感動して泣いてたけど、その時すみれに『悔しくないの?私は悔しいよ』って言われたのを覚えてるよ。」(藤井すみれ、同期の25期生)
魚谷「最初の女流桜花。あのときのメンタルはよかった。焦ることはなくて、出来ることをやろうという気持ちだった。勝たなきゃとも思わなかったな。」
魚谷「同期の中でヤス(安村浩司)が最初にBリーグに昇級したとき、このときはすごく悔しかったね。」
魚谷が最初に女流桜花を獲ったときの最終戦南3局。
ダブを鳴いて、ドラ待ちのカンチャンをツモったのを、なぜか今でも覚えている。
この頃は人気も実力もトッププロになるとは全然想像つかなかったなぁ…
【とうとう仲田加南をマーク?】
福光「今期の女流桜花決定戦は歴代一番の内容だと思ったけど、結婚した影響とかあるの?」
魚谷「それは無いね。やっぱり夏以降に増やした稽古のおかげだと思う。」
福光「(ちぇー。無いと言い切られた…)」
魚谷「終わった後、仲田さんに『初めてゆーみんにマークされて嬉しい』って言われたのよ。観て気づくのは難しいかもしれないけどね。他の2人に利するリスクもあるから、あまりやりたくないんだけど、初めてマークする戦法を使ったよ。」
福光「初日のレポートを書いたけど、わからなかったなぁ」
魚谷「仲田さんに自由に打たせない、点数を持たせない。これを意識してやっていたよ。それでも紙一重の差だったからツイてたよ。」
ヤミテンにされていたら放銃していた、と魚谷は語る。
仲田のリーチの是非は難しく、たまたま自分にいい結果になっただけだったと。
(後編に続く)
(文:福光聖雄)
カテゴリ:プロ雀士インタビュー