プロ雀士インタビュー

第235回:プロ雀士インタビュー 佐々木寿人  インタビュアー:岡崎涼太

皆さんはじめまして。
今回寿人さんの鳳凰位連覇のインタビューを勤めさせていただきます日本プロ麻雀連盟34期前期岡崎涼太です。
拙い文書ですが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

岡崎「改めまして、連覇おめでとうございます!」

寿人「ありがとうございます。」

岡崎「まず決定戦が始まる前に心構えというか、考えていたことはありますか?」

寿人「やる前までは予想もつかない展開だった。やっぱりキーマンは古川さんだったよね。」

岡崎「古川さんとは、初対戦ですか?」

寿人「ほぼ初対戦だね。昔マスターズで当たったことがあるくらい。古川さんが卓マスターで自分が色んな卓に回るやつ。(笑)」

岡崎「古川さんはコロナの影響もあり1年休場しましたけど、寿人さんと対戦したいからと言って今期参戦しましたね。この一言はやっぱり嬉しかったですか?」

寿人「めちゃくちゃ嬉しかった。そう言ってくれて尚且つ決定戦に残ってくる。凄いカッコいいよね。だからこそ簡単に負けちゃいけないとは思ったよ。」

岡崎「1年リーグ戦しなかったじゃないですか?それに関しての不安みたいなものはありましたか?」

寿人「あんまり別に特に。(笑)その分トレーニングできたしね。まあ実戦の数こそ少なくなったけど、リーグ戦もゆっくり見れたし、そこはあんまり不安は無かったかな。」

岡崎「家族の支えなどはかなり大きいと思うのですが、始まる前に何か言われたりしましたか?」

寿人「いや、なんも普段と変わらない。ウチはそういう感じ。(笑)初日がさ、水曜日だったのよ。息子保育園なんだけどさ、今日は大事な試合だから全部やってくれって言ったんだけど、いや、そういうのも普段と一緒の方がいいからって、それでいつも通り保育園に送ったわけさ。」

岡崎「確かに手塚さんツイートしてましたね。(笑)」

笑いも交えつつ、気さくに話をしてくれる寿人さん。
僕の緊張も、ほぐれてきました。

岡崎「麻雀の話もしますか。初日は結構良いスタートでしたもんね?1人浮きの。」

寿人「そうね。けどね、初戦は結構苦労したんですよ。前田さんが6,400アガって、9,600アガって、黒沢さんが3,000・6,000引いて。割と劣勢だったんだけど、自分も1回だけ決まったんだよね。リーチタンヤオドラ3。供託もあったんだけど、リーチいきました。」

 

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ここでリーチといける寿人さんのいつも通りの麻雀に興奮したことを、僕も覚えている。

岡崎「今回の決定戦においてのテーマはありましたか?」

寿人「親の時にいかに稼ぐかと、大きな放銃をしない。」

岡崎「そうなのですね。大きな放銃をしないと言うのは昔からですか?」

寿人「昔からではないね。昔は関係なかったもん。打っても取り返せばいいと思ってたから。ところが人間考え方も変わってくるわけよ。歳をとって。今は、無駄なことを出来るだけ減らしたい。」

岡崎「いやぁやっぱり見ていてメリハリが凄いなといつも感じます。」

寿人「まあテーマ通りいったんじゃないかな。そういう意味では。」

岡崎「初日は古川さんが沈んだじゃないですか?キーマンと言っていた。その辺は何かありましたか?」

寿人「自分が1人リードしてたけど、それでも古川さんは結構毎局のようにアガリに向かって仕掛けてきたんだよね。じゃあ自分も合わせていけばいいかなと思ったかな。前田さんと黒沢さんの2人は高打点でゆったり構えるタイプだから、古川さんと僕でスピード寄りの麻雀を打っていけば、いい感じになるかなとは思ったよ。」

岡崎「それを意識して、2日目からはそうしてたんですね。」

寿人「そうね。2日目からは捌き手もあったし、あんまり打点にも拘ってないし、2人で局回しできればいいなと思ってた。」

岡崎「それはやっぱり初日のアドバンテージが大きいですよね。」

寿人「6半荘連続で浮けたんだよね。それがやっぱり良かったよね。」

岡崎「本当に上手いですよね。ゲーム回しが。」

寿人「2日終わって1回だけだったかな、沈んだの。その時点で+93.0Pくらいで終わったのかな。けどそっからもやっぱり負けられないからさ。気は張り続けるよね。あそこから負けたりしたらダメージも大きいしさ。より守備意識は芽生えるよね。かと言って、毎回毎回守っていてもダメだしね。攻め時もあるからね。」

岡崎「それで3日目になりますが、9回戦目がちょい沈みみたいな感じでしたよね。それで10回戦目が決定戦初めての、大きなラスと。何か考えることはありましたか?」

寿人「10回戦目は自分がダブ東ドラ1の7,700をアガるところからスタートしたんだよね。けど、その後古川さんに11,600の放銃があってさ、それがちょっと痛かったね。」

 

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岡崎「それでトータル+50ポイントくらいになったじゃないですか?その時はどう言う心境でしたか?」

寿人「まあでも、同じようなラスを続けて食わなきゃいいからさ。」

岡崎「いやぁけど僕なんかは、続けて食わなきゃ良いと思えば思うほど、余計食いそうで怖いです。笑」

寿人「まあどうやって立て直していくかって感じだよね。あの古川さんの11,600の放銃だって無駄な仕掛けっちゃ無駄な仕掛けだったよね。あれも別に辞めれば大きく凹むことも無かったかもしれないしね。あれはちょっとテーマからズレた仕掛けだったね。」

岡崎「僕はすぐ仕掛けちゃいそうです。(笑)」

寿人「まあもう1回冷静になってやるしかないよね。そしたら11回戦に黒沢さんから11,600アガったのかな。で、その半荘は2番手だった前田さんが沈んだんだよね。それで12回戦は七対子ドラドラの七万タンキかな。アガって。」

 

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岡崎「あー、あのかなり終盤にアガったやつですよね?確か八索タンキから変えたやつ!両方ともかなり良く見えたと思うのですが、七万にした理由などありますか?」

寿人「どっちも良いけど、より七万の方が良いよね。六万が4枚飛んでるからさ。だからリーチもあるんだよね七万タンキで。まあ念には念を入れてヤミテンにしたけど。笑」

岡崎「なるほどなるほど。どっちも山に2枚残りでしたね〜。」

寿人「アガリの精度は大事だからね。」

岡崎「そうですよね。そう意味では寿人さんは結構サンマを稽古に使うことが多いと思うのですが、サンマは大事ですか?」

寿人「あれは大事っす。そっちにかなり意識いくじゃん?どうやったらアガれるかって言う。1回アガリ逃したら大体やられるじゃん。」

岡崎「本当そうですね。三麻は四麻よりもより顕著に出ますよね。」

僕も普段から寿人さんに麻雀の稽古をつけて貰っているが、待ちの選択を間違えないことや、アガリへの嗅覚は群を抜いていて、いつもとても勉強になっている。

岡崎「そういった良いアガリをして、3日目は少ないマイナスで済んだんですよね。」

寿人「最初2戦はマイナスで来たけど、残り2戦はプラスで終わって、▲16ポイントで終わったのかな。」

岡崎「最初の2戦を考えると、それは大きいですよね。それで最終日はトータル+77.2Pの1人浮きで迎えられたと。しかも最終日の1回戦目も1人浮きのプラスでしたもんね。」

寿人「あの親が良かったのよ。あんな親をやりたかったのよずっと。けどなかなかできなくてさ、あれが理想的だね。」

岡崎「高打点中打点を織り交ぜて、メンゼンと仕掛けも使って、まさに寿人さんの時間帯って感じでしたね。とは言っても、去年の沢崎さんの四暗刻のような事もありますし、油断は絶対出来ないですよね。やっぱりあの経験は大きいですか?」

寿人「大きいすよ。相手はさ、絶対優勝を目指して来るわけじゃん。気を抜くのが馬鹿馬鹿しいよね。どんなことが起きても、ブレるわけにはいかないね。」

岡崎「14回戦は厳しかったところから、オーラスにトイトイの7,700は8,000をアガって着順を1ランク上げましたね。」

寿人「そうね。で、次の局も凄い良い手が入ったのよ。けど下家の古川さんに甘い牌打ってたら3フーロされてテンパイ入れちゃって、当たり牌の六万九万を持って来たのよ。目に見えて満貫だからね。もうかなり濃いところだったから辞めたんだけど、あれも15年前だったら、多分打ってた牌だったな。(笑)」

 

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寿人「で、次の半荘だなあのリーヅモ西は。」

岡崎「黒沢さんからド級の追っかけが入った時ですよね。(笑)」

寿人「Twitter見た?あれをさ、作ってくれたのさ」

岡崎「見ました!ケーキですか?」

寿人「馬鹿、ケーキじゃないよ。(笑)ケーキじゃなくて作品だよ。凄いんだよあれ。」

 

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岡崎「そうなんですね!凄い!失礼しました。(笑)家に飾ってあるんですか?」

寿人「飾ってるよ。」

岡崎「いいっすねー。さっき15年前なら打ってたって言ってましたが、その寿人さんがスタイルチェンジしたのはいつ頃ですか?」

寿人「いつ頃だろうなぁ。A1上がれなかった辺りじゃないかな。」

岡崎「あー、あの前原さんに競り負けたやつですよね。結構前ですよね。」

寿人「まああの時はまだまだ甘かったと言うところかな。」

岡崎「じゃあ今思えば、その時上がれなくて良かったですか?」

寿人「今思えばね。その分色んな事を身につけてさ、戻って来たわけだからさ。負けは大事よ。」

岡崎「負けは大事と!自分にも言い聞かせます。(笑)あの後、次の年には降級もしましたもんね。B1に。けどそこからずるずる行かないのが、寿人さんの強いところですよね。」

あの時、画面越しで見ていた寿人さんと、こんな風に麻雀の話が出来ることが感慨深い。

岡崎「かなり親交が深いと思われる前原さんから今回は何かお言葉はありましたか?」

寿人「何も言われない(笑)あ、そういや関係ないけど、前原さんが昔ね、古川さんのことを『道端に落ちてるチューインガムみたいな人だ』って言ってたな。勿論称する意味で言ってるんだけど(笑)分かる?踏むとずっとくっ付いてくる感じ。もうずっと絡みついて鬱陶しいみたいな(笑)」

岡崎「ほーー(笑笑)もう常にいるって事ですね本当に。」

寿人「本当に毎局参加してるからね!絶対いるよね。凄いわあのバイタリティは。」

岡崎「それでたまに本物があるわけですもんね。」

寿人「そうね。今回の決定戦も、最終的には2位まで勝ち上がってきてるわけだからね。+40ポイントくらいで終わったのかな?最後。初日が▲40だったところから3日で80ポイント浮いてるわけだもんね。やっぱ凄いよね。」

インタビューの節々から、古川さんへの尊敬の念が伝わってくる。

寿人「古川さんの仕掛けで前田さんと黒沢さんがちょっと引っ掻き回された事もあって、特に黒沢さんは大物手狙うしか無くちゃったもんね。最後の方は。たまに後付けとかもしてたもんね。来期からは普段のリーグ戦からやってくるかもな。(笑)」

岡崎「確かにしてましたね!けどあれは凄く黒沢さんの勝ちに対する思いが伝わりました。普段の自分のフォームとは真逆の事をやって。」

寿人「あと、そういや、最終日に家族が迎えに来てくれたんだよ。スタジオまで。」

岡崎「へー!ほーほーそれは嬉しいですよね!」

寿人「そうねーでまあ疲れてるからさ助手席に座って帰ったと。(笑)」

岡崎「良い家族で良い話ですね!寿人さん見てると結婚もいいなと思いますよ。(笑)」

寿人「今いくつ?」

岡崎「23です。」

寿人「23って言ったら古川さんが鳳凰位獲った時くらいか。16.17.18期だもんな。」

岡崎「その方が今も現役って凄すぎますね。古川さんは僕の3倍違いますからね。(笑)」

岡崎「僕も寿人さんと戦えるよう頑張ります。何年かかるか分かりませんが。(笑)」

岡崎「少し麻雀の話に戻るのですが、寿人さんは字牌の扱いが丁寧なイメージがあるんですけど、その辺は意識してることはありますか?」

寿人「結構鍵になる事が多いからね、字牌は。場に合わせることかな、ベースはね。マークしてる人に対しての現物を持ちたい時もあるから、必ずではないけど。サンマは字牌の扱い大事だし良い勉強になるでしょ?」

岡崎「なります!あ、あと、少しMリーグの事も聞いていいですか?」

寿人「あーそうそうMリーグの不調がずっとあるからさ頭の中に。鳳凰戦やってる時も。Mリーグはなんとかしたいっすよねぇ。」

岡崎「今年は盟友の滝沢さんも加わって、ファンの方の期待も例年以上に高まっていますよね。」

寿人「そうな。伊達もいいしな。」

岡崎「今は寿人さんには珍しく、ポイント的にはチームに引っ張ってもらってる感じですが、それもそれで良いですよね?チーム戦ならではと言うか。」

寿人「まあ、あんまり足引っ張んないようにしないとな。もう終盤だからさ。」

岡崎「弱気ですね。これまた珍しく。(笑)」

岡崎「若獅子戦や桜蕾戦の3期目も始まるので、若手の方に一言お願いします。」

寿人「最近はさ、鳳凰位よりもMリーガーになりたいって人が多いよね。若獅子戦とか桜蕾戦とかの資料見たら将来の夢Mリーガーって書いてる人が多かったし。まあどっちが良いって事はないんだけどね。食えなきゃしょうがないもんなプロは。なので、とにかく打ち込むしかないでしょう。麻雀を。」

岡崎「打ちまくると。分かりました!」

先日のスタジオでは、後輩たちに「また麻雀やるか!」と誘ったら全員に断られたらしい寿人さん。
「三田(晋也)以外誰も一緒にやってくれない。」と、嘆いていました。(笑)
黒木さんにも声掛けてみたところ、「やらんわ!」と言われたらしいです。(笑)

岡崎「では最後に、今後の目標をお願いします。」

寿人「えーとね。鳳凰位戦に関しては、防衛回数だね。具志堅さんの13回に負けないくらいの。(笑)」

岡崎「それボクシングやないですか!(笑)ボクシング好きですもんね」

寿人「鳳凰位戦は、3連覇した人が2人いるんだよね。古川さんと阿部さん。まあそれに追いつき追い越せって感じだね。」

岡崎「4連覇した人はまだいないですもんね。最多が安藤さんと前原さんの4回ですかね。まずは3連覇ですね!」

岡崎「本日はありがとうございました。改めまして本当におめでとうございます。」

インタビューの後は皆さんももしかしたら想像がついたかと思いますが…寿人さんに稽古つけてもらいました。(笑)

 

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