第238回:プロ雀士インタビュー 皆川直毅 インタビュアー:菅原直哉
2022年05月12日
皆川直毅との出会いは18年前。僕がまだ髪がフサフサしていた20歳の頃、当時僕は麻雀が好きで好きでたまらなくて、ろくに学校にも行かずバイトと麻雀に明け暮れていた。
大好きな麻雀をやりながら、バイトで日々の食費を稼げたらいいなぁなんて、麻雀好きな学生なら誰しもが通る道だと思うのだが、ご多聞に漏れず僕もその道を歩んだ。そこのお店で皆川直毅と出会った。お互い麻雀バカで歳が近いということもあって、すぐに仲良くなった。(注意、僕のほうが年下である。)当時から皆川さんの麻雀の技術力はかなり高かった。勤務中、皆川さんが本走しているのを後見していたが、合理的で無駄が無い、且つ自然に高打点を目指すその手順は何度となく感心し、美しいとさえ思った。
僕が学校を卒業し、就職しても付き合いは変わらず、数え切れないくらい麻雀を打ち、何度なく麻雀談義に花を咲かせた。僕がプロになったのも、皆川さんが一緒にやらない?と誘ってくれたからである。
そんな良き友であり、(本人は笑って否定しそうだが…)良きライバルである(大分置いて行かれてしまったが…)皆川直毅プロが第18回日本オープン優勝!!G1タイトルを見事東北にもたらしてくれた。インタビュー記事のお話を聞いた時、居ても立っても居られず、「皆川さんの初タイトルのインタビューは是非僕にやらせてください!」と武藤本部長に僕からお願いさせていただいた。快くインタビューを承諾してくれた皆川さんにもこの場を借りて御礼を申し上げます。
仙台 某所
「皆川さん!日本オープン優勝おめでとうございます!」
「ありがとう。」
「G1タイトル初決勝、緊張とかはありませんでした?」
「いや、それがねぇ、不思議と緊張しなかったんだよ。凄く自然な気持ちで卓に着けたね。」
「たしかに、対局観てて、イレ込んだり、焦って前のめりになり過ぎる所が無かったですね。序盤の展開的に僕だったら焦りますけど。」
「そうそう、序盤は本当に苦しかったね。そもそも手にならなかった局も多かったし、勝負手負けるし、ラスに落ちちゃうしで。それでも、変に焦るって事はなかったよ。自分なりではあるけれど、しっかり打ててるって感触はあった。」
「それは僕も思いました。随所にthe皆川さんって感じの選択がありましたね。」
「何それ(笑)」
「2回戦目の東2局1本場と3回戦目の南3局1本場ですね。」
実は、インタビューの話を受ける前に5時間も日本オープンの決勝戦について語りあっている。全局紹介したい気持ちもあるのだが、この2局にプロ雀士皆川直毅の思考が凝縮されていると感じたので取り上げさせていただく。
※2回戦目 東2局1本場 南家
ドラ
1巡目にが切られるのだが、これをスルー。
「これ、僕だったらノータイムで鳴いちゃいますね。1回戦目ラスだったし、どうにか加点したい局面だと思うので少しでも手を進めたいですね。」
「うん、鳴かない(笑)まだ1巡目だし、を鳴いちゃうとドラを持ってくるかトイトイまで伸びないと満貫止まりになっちゃうじゃん。メンホン七対子ドラドラでリーチするかは場況次第だけど、ツモって倍満まであるよ。」
「そりゃそうですが…」
「七対子ドラドラなら待ち頃の牌を探してリーチしてツモって跳満、裏ドラ次第で倍満。こっちの方が高いし、放銃するリスクも下げられるでしょ。」
「この手牌、1巡目でホンイツ見切る事やオリる事まで考えますか…」
「考えるよ(笑)」
本人笑っていたが、このやりとりをして僕は驚愕してしまった。自身初タイトル決勝の映像対局で、しかも1回戦目をラスで終え、劣勢に立たされている状況。その冷静さと自身のスタイルを貫く精神力に脱帽である。
※3回戦目 南3局1本場 東家 5巡目
ドラ
この形でをポンせず、しかも次巡2枚目の
もスルー。
「これは何故ポンしなかったんですか?」
「ポンしたらドラを切らなくちゃいけないよ?ポンテン取れる形ならポンしたけど。あの形なら最高形で四暗刻見えるし、70,000点持ってるけど、まだ追いかける立場だから5,200点のためにリスクは侵したくない。」
打点とリスク…いつだって我々麻雀打ちはその天秤を秤りながら打牌を進めていくが、それにしても徹底している。一見、最高打点を目指しているように見えるがその実、守備や立ち回りにもケアした選択である。実は紹介させていただいたこの2局はアガリに結びつかなかったがこの2局にこそ、皆川流とも言える麻雀スタイルを象徴するものだと思う。
「今年は東北盛り上がってますよね。」
「そうそう、帝杜戦ね!毎回Mリーガーのゲスト来ていただけるし、僕自身も凄く楽しみ」
「しかも優勝者は帝王戦の挑戦権までもらえるという。」
「ねー!来て楽しい、観て楽しい、打って楽しい大会なんて滅多にないよね。アマチュアの方だけじゃなく、プロ側にもビックチャンスあるからお互い燃えるよね。」
「盛り上がっていると言えば、ここ数年の東北在籍プロの活躍も凄いですね。」
「そうだね、菊田君は鳳凰リーグB1まであっという間に行っちゃったし、去年は佐々木俊哉が活躍したし、この前の若獅子戦は櫻井と小熊がいい所まで行ったしね。」
「そして、皆川さんがG1タイトル獲得…と」
「背中見せれたよ(笑)ちょっと安心した(笑)」
「東北にG1タイトル持って帰れたっていうのは僕らにとってかなり大きな希望というか、夢を見せてもらえたんですが、若手に向けて何か一言いただけますか。」
「やっぱり挑戦することだね。」
「挑戦ですか。」
「そう。数年前から僕も鳳凰リーグ参戦して、出場できるタイトルは積極的に参戦してるけど、そこでの経験が大きく自分の麻雀を成長させてくれたと思うよ。そこで切磋琢磨しているプロと話すだけでも良い刺激もらえるし、なにより僕にとって前田直哉さんとの出会いが大きいね。」
「なるほど。」
「どうしてもね、地方にいると毎回東京に行くっていうのはハードルが高いんだけど、それでも果敢に挑戦して行くっていう事は麻雀プロとして後々大きな財産になると思うよ。それにこれは若手にだけ言ってるんじゃないんだよ。」
「と、言うと…?」
「菅原君に言ってるんだよ!!(笑)」
「が、頑張ります(笑)」
至高の面前派で無類の麻雀バカ、ラーメン好きの猫好きな彼はこれからも挑戦し続け、きっと今まで以上に活躍するだろう。コロナ禍で行動が制限され続けているここ数年、東北の麻雀熱を盛り上げてくれたことに大きく一役買ってくれたことは間違いない。帝杜戦ではMリーガーのゲストだけでなく、皆川プロも参戦するので、面前高打点打法を味わいたい方は是非、奮って挑戦して楽しんでください。
カテゴリ:プロ雀士インタビュー