プロ雀士インタビュー

第242回:プロ雀士インタビュー 奈良圭純  インタビュアー:阿久津翔太

3度目のG1タイトル優勝という偉業を成し遂げた奈良圭純プロ。
その内面に迫ろうと、インタビューをするために都内某所で待ち合わせ。

阿久津:優勝おめでとうございます!

 

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この日の前日、奈良プロは1軒目で飲み足りず、2軒目にどうしても行きたくなるも、財布にお金が無く、銀行のカードも使えない時間だったため、キャッシングをしたらしい。
どうやらカードの手数料を払いたくなかったらしいが、代わりにキャッシング手数料を払っているから無意味な気がする。
そんな奈良プロだが、麻雀に対する姿勢は真摯なものだった。

奈良:決勝の面子が決まった時に、優孝さん、売れっ子の白鳥、浅井君…(自分が)圧倒的4番人気だと思ったから、ぜったい倒してやるぞって気持ちはすごいあった。

阿久津:他の3人を応援してる方にも見せつけてやるぞと。

奈良:倒しがいのある、良い面子が揃ってくれたなって(笑)。

強い敵を前にしてそれをチャンスと捉える奈良プロだが、1回戦で待ち受けたのは試練だった。

 

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阿久津:1回戦ホウテイで18,000放銃になった時はどんな気持ちでしたか?

奈良:あの時はね、ハイテイでドラ掴んでしかも裏裏かよ!って思ったけど、まぁでも1回戦目で良かったなって。不思議と全然焦りは無かった。

過去の優勝も1回戦ラスからの逆転ということで、引きずることなく徐々に巻き返していき、最終戦最後の親番で白鳥プロを逆転できる位置につける。
しかしその運命の親番の配牌はあまりにも悪かった。

 

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奈良:今日イチ(の配牌)頼むっ!って念じてサイコロ押したんだよね。 そうしたら最初の4枚が発九万九索九筒だったの(笑)。 まじ終わったって思って、せめて発重なれ!って思ったけど酷かった…

アガれば優勝の白鳥プロにあっさりとテンパイが入るも、アガリが出ないまま奈良プロの最終ツモ番に。テンパイできなければ連荘できずに敗北が決する運命のツモ番…

 

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奈良:あの時は本当に楽しくて、もう終わっちゃうのかー、もうちょい麻雀打ちたいなって感じだった。

テンパイできなければ敗北という崖っぷちの状態で奈良プロにあったのは、もっと麻雀がしたい…まだここで終われない…そんな気持ちだった。
この時実況席にいた私は、ここで決着がつくかもしれないと思ったが、牌は奈良プロにチャンスを与えた。

 

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奈良:次の局の2,600all(は2,700all)は自画自賛のアガリだった。 裏乗ってー!って思ったけど(笑)。

 

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複数の分岐点を見事正解し僅差ながらも逆転。
次局、白鳥プロが再逆転手を入れるもツモることはできず、奈良プロの劇的な優勝となった。

 

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阿久津:優勝が決まった瞬間はどういう気持ちでした?

奈良:1回目、2回目の時はめっちゃ嬉しい!だったんだけど、今回は嬉しいとホッとしたが半々だった。前に連盟の先輩と話したことだけど、2個目のタイトル勝った時はあんまりチャンスをもらえなくて。だから評価せざるを得ないぐらい勝ちまくるしかないなって、それをずっと思ってたから…だからどうしても勝ちたかった。

プロとして活躍していくには色んなものが必要になってくるが、その中でも重要なのは強さであり実績である。それを奈良プロは渇望し続けていた。

奈良:今若手のさ、若獅子戦とかできてさ、それが結構刺激になってる。僕が20なんぼの時より明らかみんな強いわけ(笑)。ちょっと負けてらんねぇなぁって気持ちはすごい刺激になってる。

阿久津:うかうかしてるとどんどん若手がのし上がってきますよね。(本当は自分がのし上がりたい)

せっかくなので、若手プロにアドバイスとかありませんか!

奈良:まだ自分のことで精一杯(笑)。 それに、お前鳳凰戦何リーグだよって突っ込まれそうだし(笑)

と言いつつ酔いも回って奈良プロは次第に饒舌に…

奈良:先輩に言われて思ったのは、今まで気になったとこは人に聞いてたんだけど、聞く前に1回自分で考えるのはマジで大事だなと思った。自分で掘り下げて考えてみると、結構見えるものがでてきて。そういう考えるのが大事だと思った。

阿久津:実際その人だけには見えていた景色もありますもんね。

奈良プロは先輩だけでなく後輩にも積極的に気になったことを聞いて、どこからでも吸収しようとしてきた。だが、それよりもさらに思考や読みを深めるために自分で掘り下げていったことで、以前よりも読みの精度が上がっていったと言う。

奈良:あと、本当はしょうがなくないミスをしょうがないで済ませないように気をつけなきゃなとは思ってる。

阿久津:そこが自分の中でなぁなぁになってしまうといけないですよね。

奈良:なぁなぁになってくると良くない。でも、ずっと結果が出なくてモチベーションが段々と下がっていくと、そういうふうになっちゃうんだよね。だからそこだけは気をつけてる。

大きいタイトル戦などで結果を出すというのは本当に難しい。結果というのは一番モチベーションに影響する要素であり、モチベーションというのもまた、結果に影響する要素である。
結果が出ずに苦しい期間も、負のスパイラルに入らないよう、奈良プロはひたすらに自身の麻雀、そしてあらゆるプレイヤーの麻雀と向き合い続けた。

酔いも回って今日もまた2軒目へと向かう奈良プロだったが、麻雀に対する姿勢はどこまでも紳士だった。