戦術の系譜

戦術の系譜21 本田 朋広

戦術のコラムを担当してから決勝戦に対して書かせて貰いましたが、今回はトーナメントの戦い方に対しての戦術を書いてみようと思います。

私はここ数年トーナメントで調子が良く、自慢ではありませんがグランプリ、十段戦、最強戦と決勝戦にのる事に成功しておりました。
具体的にトーナメントはこう打つと言った偉そうな事は言えませんが、自分はこんな感じで考えて戦っていた事を書いてみました。

まずは安全なスタートを切りながら、大きく離されることなく4回戦以降に持ち込むという事です。
それは最終戦まで制限なく打ち切る為の戦術なのです。
敗退ポジションや大きく沈んだポジションでは、終盤につれてアガリに制限があったり、捌ける局面を捌きに使えなかったりと、選択肢の少ない局面を作ってしまうからです。
当然そんな事を考えている人もいるでしょうし、それが上手くいかないのも麻雀の面白さの1つでもあるでしょう。
まずはこちらの局面です。

 

100

 

7巡目にテンパイが入ります。打点はタンヤオピンフドラ1と、勝負手で文句なくリーチに行きたいところです。
他家の河を見ても全員が1枚ずつ切っており、まずまず良さそうにみえ良い点と悪い点を考えてもリーチ判断が良さそうだと思います。

ですが私はヤミテンを選択しました。

悪い点は、まず自分の目から見て待ちの枚数が4枚見えている事と、他家は字牌を処理してからの捨て牌になっているので一色手に以降した様子もなく、手牌にまだ使われている可能性があると言う事。
リーチをすると自身の河がとても弱く、他家は勝負手でない限り切ってくれない可能性があり、そうなった場合、苦しい待ちで勝負手の相手とぶつかることになってしまいます。

勿論自身が勝負手なのでぶつける価値はあると思いますが、自身で六筒を持ってきたり二筒を持ってきたり、もしくは二索五索を持ってきた時にドラ付近である為に八索と入れ替えも可能です。
打点上昇の可能性もまだありますし、危険牌に対しての選択も残す事ができるのにリーチをしてしまうとその選択ができなくなってしまいます。

リーチをかける良い点は、打点が上昇したり、他家が真っ直ぐな手牌進行ができなくなります。
ヤミテンであれば3,900で、リーチをすると7,700のアガリ。
ツモアガリはヤミテンで5,200、リーチをすると8,000点の加点になります。(順位点の考慮しておりませんが)
打点の上昇は長期的なリーグ戦であればとても魅力的な1つではありますが、トーナメントでは大きく離した勝ち上がりでも小さく離した勝ち上がりでも、勝ち上がりに対する特典は同じになります。

勿論この戦い方は私にとって最善策と思ってやっているだけで、リーチをかけて勝負手を決め1回戦目を勝負半荘とするやり方もありだとは思います。
実際はリーチを受けて、それでも危険牌を切りながらヤミテンでツモアガリましたが、オーラスには浮く事ができませんでした。

リーチをしていればオーラスに浮く事も可能だっただけに、この決断が十段戦ベスト16トーナメント敗退に繋がったのかもしれません。
ですが、小さく沈めば小さなトップ、大きく沈めば大きなトップが必要であり、最後まで制限なく打つ為にはなるべく少ない失点で抑え、最後まで戦いやすい状況を作り出す事を私はトーナメントの戦術としています。